富士フイルム、レンズ交換式ミラーレスカメラへの参入を予告

〜本木雅弘さんを招いた「FUJIFILM X10」発表会で

 富士フイルムは5日、レンズ一体型デジタルカメラ「FUJIFILM X10」の発表にあわせ、都内で発表会を行なった。

X10CMキャラクターの本木雅弘さん

 X10は、富士フイルムが10月22日に発売する4倍ズームレンズ搭載のデジタルカメラ。光学式ズームファインダーや電源に連動したマニュアルズームリングを特徴とし、2/3型のEXR CMOSセンサーを採用する。店頭予想価格は7万円前後の見込み。仕様の詳細については既報の富士フイルム、F2-2.8のマニュアルズームレンズを搭載した「FUJIFILM X10」をご覧頂きたい。

アダプターリングを介して52mmネジに変換し、フードを取り付けるファインダーのケラレ軽減のためスリットフードを採用
専用ケースを装着したところ。ストラップも付属する

Xシリーズの高倍率機・レンズ交換式カメラも

 最初に登壇した富士フイルム代表取締役社長・CEOの古森重隆氏は、冒頭の挨拶で3月に発生した東日本大震災における同社の取り組みについて話した。

富士フイルム代表取締役社長・CEOの古森重隆氏

 同社は医療機関のサポート、写真展の現場への支援サービス、世界グループ会社からの寄付金拠出など、事業の知見やノウハウを活かした支援活動を続けているとした。

 写真救済プロジェクトを立ち上げ、思い出の写真を修復するための取り組みも実施。当初は同社社員が被災地でボランティアへのノウハウ提供などを行なっていたが、現在では1,500名以上の社員・OBによるボランティア活動など、送付された写真の修復に会社全体で取り組むようになったという。これまでに17万枚以上を洗浄・修復し、現在も一般人を集めて続行している。

 古森氏は、「このプロジェクトを通じて人々がいかに写真を大事なものと認識しているかわかった」と話し、写真メーカーとしてサポートする責任があることを再確認したという。

 3月に発売したAPS-Cサイズセンサーを採用するデジタルカメラ「FinePix X100」は、当初予定を遥かに上回る需要で、今なおバックオーダーを抱えている状態という。販売台数はこれまでの半年で7万台を超え、年内に10万台を突破する見込みという。

富士フイルムのデジタルカメラ販売推移X100の販売状況
X100のユーザー属性

 日本におけるコンパクトデジタルカメラの市場は、CIPA統計で1月〜8月が金額ベースで対前年-18%のところ、同社は金額ベースで104%と前年を超えたと強調した。

 海外市場においては、成長性の高い新興国の拡販を強化するという。直近では中東ドバイに現地法人を設置し、ウクライナ、韓国、インドネシア、ベトナムでも現地法人の設立準備を進めているという。

 日欧米のデジタルカメラ市場は成熟期を迎えており、ニーズは「より高画質で残したい」、「決定的瞬間を逃さない」、「愛着を持ち続けられるカメラ」など本物志向にシフトしているとした。

 また、発表会では同日発表のX10に続くXシリーズ第3弾を紹介。26倍ズームレンズ、2/3型EXR CMOSセンサー、高解像度EVFを搭載した「X-S1」を年内投入するという。会場にモックアップを展示していた。

年内にXシリーズの高倍率モデルを投入X-S1モックアップ(手前)と発表済みのXシリーズ
X-S1の背面。高解像度EVFも特徴とする

 加えて、2012年春に「最高級のミラーレスシステム一眼を投入する」と明言。35mmフルサイズセンサーをしのぐ解像感や低ノイズを実現予定と話した。本来は2012年のInternational CES(PMA併催)で発表予定だったというが、それまでの日本での発表機会を考慮し、ミラーレス市場への参入表明を行なった。

Xシリーズのラインナップ

 同社が「Xミラーレス一眼」と呼ぶ同システムについて、現時点ではモックアップやイメージ写真などは一切なく、詳細は2012 International CESで明らかになるとしていた。レンズ固定式のFinePix X100や年内投入予定のX-S1との棲み分けについては、「多くのシーンは26倍ズームでカバーできると思うが、限界がある」、「その技術でより大きなセンサーを入れて、レンズ交換としたい」とコメント。一眼レフカメラの牙城を意識しているという。

 発表会の質疑応答において取締役常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏は、ミラーレスカメラの詳細について上記以外コメントできないとしつつ、「やるからには納得のいくものを出したい」と締めくくった。

独自技術で「最高品位カメララインナップ」を拡充

 電子映像事業部 商品部長の西村亨氏は、X10の主な仕様と特徴を解説した。

電子映像事業部 商品部長の西村亨氏

 X10は、X100に始まったXシリーズの基本コンセプトを踏襲。35mm判換算28-112mm相当、開放F2-2.8という望遠端まで明るいズームレンズを最大の特徴とする。光学ズームファインダーも高屈折プリズムなどを採用し、明るく広い視野と高い解像感を実現したとする。

Xシリーズの基本コンセプト手ブレ補正機構は撮影画質に配慮し5枚のレンズを動かす方式とした
FUJINONレンズの特徴光学ズームファインダーの特徴

 同クラスの他社製デジタルカメラはCCDセンサーの採用が多いが、X10はEXR CMOSセンサーの採用により、フルHD動画の記録に対応。連写速度も7コマ/秒を実現したという。

 操作感にこだわったという各パーツも紹介。ズームリングは適切なトルクを得るために金属カムを採用。レンズユニットも映画や放送での採用実績を特徴とするフジノンレンズを採用した。

X10のズームリングに採用する金属カム(手前)レンズユニットとファインダーユニット
X100(右)と比較

X10は“セリフのない演技”をしている

 発表会では、X10のCMキャラクターを務める本木雅弘さんが登場。トークショーを行なった。本木さんはFinePix F550EXRの同社CMが初出演。FinePix F600EXRのCMにも出演し、今回が3作目となる。FシリーズのCMは「日本の懐かしい風景を再発掘する」というテーマだったが、X10では海を超えて知らない世界に飛び出し、いろいろな風景に出会う感覚がテーマという。

 CMの舞台はチェコのプラハを走るタクシーの中で、本木さんがクルマから被写体を見つけて撮影するというもの。ドライバーがバックミラー越しに「Nice camera!」と声をかけると、本木さんはドライバーにクルマを止めるよう声をかけ、窓から身を乗り出してさらに外の風景を撮影する。

本木雅弘さんと古森重隆氏(右)

 本木さんは、「(このCMは)外国で撮影したが、タクシーの中だけというのがミソ」と話し、会場の笑いを誘った。何かに向かう高揚感と、それを味わうための自分だけの友・道具という感覚を表現したかったという。CMでは短い時間で“カメラを手にした至福”を表現するため、「撮影前の五感が開く感じや、開ききった感じ、予感に満ちた静かな高揚感にこだわった」と撮影を振り返った。

 X10でどんな写真を撮りたいかという質問に対し、「今この場で思いついたことだが」と前置き、義理の父の内田裕也さんとその孫のツーショットを撮りたいと話す本木さん。内田裕也さんは「独自の時間を生きていて、家族とのすれ違いの時間も多い」のだという。

 「メカに弱いが、X10のカメラ然とした佇まいに引き込まれた」という本木さんは、X10の10に隠された裏コンセプトという“10年デザイン”も評価していた。ズームリングと連動した電源スイッチには最初戸惑ったというが、「ファインダーを覗くとハンターのような気持ちになるところもある」と印象を語った。本木さんは、X10の佇まいを「セリフのない演技をしている」と表現した。

【2011年10月6日】会場での録音データに基づき、古森氏の発言のうち「解像度」を「解像感」に改めました。



(本誌:鈴木誠)

2011/10/5 20:57