ライカ、銀座店で「M9チタン」「X1ブラック」などの説明会


 ライカは18日、直営店のライカ銀座店で新製品説明会を開催した。説明会は「Mini Photokina」と題し、フォトキナ2010に合わせて発表した新製品を同社プロダクト・マネージャーのステファン・ダニエル氏が紹介した。

会場のライカ銀座店プロダクト・マネージャーのステファン・ダニエル氏

 M9をベースとした限定モデル「M9チタン」は、ライカとフォルクスワーゲングループのコラボレーションで誕生した限定モデル。同グループのチーフデザイナーWalter de'Silva氏がデザインした。価格は238万円(予定)。世界限定500台で、ライカカメラジャパンでも予約を受け付けている。

 M9チタンは外観における全てのメタルパーツに無垢のチタン削り出しを採用。指紋の付着を防ぐため、表面にはセラミックコーティングを施した。また、「外観をシンプルに」というコンセプトに基づき、ブライトフレームの採光窓を廃止。光源にLEDを採用した。ファインダー周りでは、ブライトフレームの切り換えレバーも廃している。

 同様にケーブルレリーズソケットや、アイレットタイプのストラップ吊り環も廃止。外観のシンプル化を徹底した。また、「圧倒的にSDメモリーカードを使うユーザーが多いから」という理由でUSB端子もM9チタンでは廃止している。なお、裏蓋は「Mシステムの機能の一部」として継承している。

M9チタンLED光を利用したファインダー機構

 ダニエル氏は、「新しい空気を入れてほしい」として写真業界の人間ではないde'Silva氏がM9チタンを開発したと経緯を説明。自動車には「コンセプトカー」という概念があり、カメラにもカメラを見直すための「コンセプトカメラ」があってもいいのでは、という考えが開発のコンセプトだという。

 de'Silva氏はヨーロッパでは影響力の大きいカーデザイナーの一人で、日本でも有名な代表作としてアルファ ロメオ「156」、アウディ「A5」などがあるという。

Walter de'Silva氏のプロフィールde'Silva氏が手掛けた中で代表的な自動車

 de'Silva氏はベースとなる「M9」を手にした際、カメラ上面のホットシューを見て「この醜いものは何だ」と言ったという。ライカがホットシューの必要性をde'Silva氏に説明したことで残ったが、初期のデザイン案にはホットシューがないそうだ。完成品のM9チタンには、妥協案というチタン製のホットシューカバーが装着されている。

 また、ホットシューには500台限定を示すシリアルナンバー「001/500」から「500/500」に加え、4,000,001から始まるシリアルナンバーも刻印している。4,000,000番は、1975年に世界初のデジタルカメラを開発したスティーブン・サッソン氏に、その栄誉を讃え寄贈するそうだ。

 本体前面のロゴは、アクリル素材にロゴを掘り、白い塗装を施し、レンズ研磨の手法で表面を丸くしているという。革張りはアウディの高級車と同じ素材に、ピラミッドパターンのエンボスを施した。

Leicaロゴのバッジは手作業で加工M9チタンを手にするダニエル氏

 付属レンズはM9チタン同様に純チタン製の「ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」。距離指標をメートル表記のみとし、4つのスリットが空いたレンズフードが付属する。スリットを一般的な3つでなく4つとした理由は、「(3穴スリットフードを正面から見ると)メルセデスのマークみたい」とde'Silva氏が言ったからだという。

4穴スリットのレンズフードが付属レンズキャップ類も純チタン製

 製品パッケージには、M9チタンのメイキングやde'Silva氏のインタビューなどを収録したストーリーブックなどが付属。パッケージはドイツの。革張りの本などを作る工房による手作り。ホルスターやフィンガーループが付属する。ストラップは肩掛けが可能な通常のタイプのものも付属している。フォトキナでは2サイズのフィンガーループが付属するとしていたが、その後3サイズが付属することになったそうだ。

ストーリーブックには開発中のスケッチなどを掲載
ホルスターにカメラを収めたところ。カメラが飛び出さないよう内張りが保持しつつ、素早く取り出せるフィンガーループに指を掛けてホルスターからカメラを取り出すところ

 光源にLEDを採用したブライトフレームやEVFの次世代Mシステムカメラへの展開について、ダニエル氏は「(今後も)採光窓の代わりにLEDを使うかもしれないし、EVFの可能性も否定できない」としたが、ただアクセサリーシューに装着するタイプのEVFは採用しないと話した。

 続いてダニエル氏は、M9チタンと同時発表のコンパクトデジタルカメラも紹介した。「D-LUX 5」(13日発売)は35mm判換算24-90mm相当、開放F2-3.3の3.8倍ズームレンズを搭載。撮像素子は1/1.63型1,010万画素のCCDを採用している。新たにAVCHD Lite動画記録に対応した。価格は9万2,500円。

D-LUX 5(別売のEVF装着時)EVFは上90度までチルト可能
D-LUX 5の広告イメージ同社コンパクトデジタルカメラのラインナップを示すダニエル氏

 ダニエル氏はD-LUXシリーズを「ライカらしさを持ち、成功したカメラ」とし、一眼レフカメラユーザーやプロカメラマンのサブカメラ、セカンドカメラとして訴求するほか、「My first Leica」にも適しているとした。引き続きRAW記録に対応し、Photoshop Lightroom 3が付属する。

 高倍率モデルの「V-LUX 2」(13日発売)は、35mm判換算25-600mm相当の24倍ズームレンズを搭載。1,920×1,080ピクセル/60iのAVCHD動画記録に対応し、RAW記録も可能。撮像素子は1/2.33型1,410万画素のCMOS。探検家のA.v.フンボルトがエクアドルを旅したことにヒントを受けたイメージビデオなどを展開する。価格は9万8,700円。

V-LUX 2可動式の液晶モニターを搭載

 V-LUX 2にはPremier Elements 8を入手できるコードが付属する。10月1日に発売済みのPhotoshop Elements 9に関しても、最新バージョンとして配布できるようアドビと交渉中という。

 ダニエル氏はV-LUX 2のターゲット層について「探検家以外にも、オールインワンのカメラとして家族などで使ってもらえれば」と話していた。バードウォッチングを趣味とするユーザーも想定し、チャージャーや予備バッテリーが入るアウトドアケースも用意した。

アウトドアケースV-LUX 2の広告イメージ

 APS-Cサイズ相当の撮像素子を搭載するコンパクトデジタルカメラ「X1ブラック」は、世界的に人気という「X1」(スチールグレー)のカラーバリエーションモデル。X1発売時は新しい製品としてのイメージを意識したスチールグレーを発売したが、クラシカルなイメージのブラックカラーに対する要望も強く、発売に至ったという。価格は発売済みのスチールグレーと同じ。スチールグレーの実勢価格は20万円前後。日本では12月に発売する。

X1ブラックX1スチールグレー(右)との比較(フォトキナ2010ライカブースにて)

 またダニエル氏は、単眼鏡と双眼鏡の新シリーズ「シルバーライン」も併せて紹介した。従来はブラックのみだった製品にシルバーの表面処理を施したシリーズで、スタンダードサイズの「10×42」、「8×42」、コンパクトサイズの「10×25」、「8×20」、単眼鏡の「8×20 モノビット」をラインナップする。いずれも12月発売予定。

シルバーラインのラインナップ手にしているのは「8×20」

【2010年10月20日】M9チタンの価格は「予定価格」となるため、該当部分に追記しました。



(本誌:鈴木誠)

2010/10/18 20:01