エプソン、EVF向けの0.47型144万ドット液晶パネル

~中級以上のレンズ交換式デジカメ向け

 エプソンは14日、電子ビューファインダー(EVF)向けとなる小型高精細の高温ポリシリコンTFT(HTPS)液晶を量産開始したと発表した。ミドルクラス~ハイエンドクラスのレンズ交換式デジタルカメラへの採用を見込む。

0.47型で解像度144万ドットのHTPS今回の製品から「ULTIMICRON」(アルティミクロン)の名称で展開する
HTPS液晶ユニット(左)とドライブIC(右)EVFとしてのデモも実施。ドットはほぼ見えず、色鮮やかな再生画像との印象を受けた

 量産を開始したのは、0.47型で解像度144万ドットとなる液晶パネル。解像度は800×600ピクセルのSVGA。今回、RGBストライプによるカラーフィルター式を採用したことで、フィールドシーケンシャル方式に見られた色ずれ現象(カラーブレークアップ)が発生しない。カラーブレークアップは、眼の動きと被写体の動きの相互作用で発生する現象で、色が分離して見えてしまうため、ユーザーの違和感に繋がっていた。

 画素サイズは12×12μm。サブピクセル(1色分の画素)サイズは4×12μm。色域はsRGBカバー率92%。コントラストは280:1とこれまでの一般的なEVFの2倍程度に高めた。輝度は460cd/平方m。表示色は1,677万色。各色8bit制御だが、液晶の駆動をアナログ方式にすることで階調が無段階になり滑らかに表示できるとしている。消費電力も低減しており、460cd/平方m時で200mW以下に抑えた。バックライトは一体型の構造を採用している。エプソンでは、今回の新製品を「ULTIMICRON」(アルティミクロン)シリーズとして展開する。

色域はsRGBの92%をカバー構造。バックライトは一体型

 HTPSは、アクティブマトリクス駆動方式の透過型LCD。半導体とほぼ同じ方法で製造でき、微細加工が容易なことから小型化と高解像度化に向いているのが特徴。2,500dpi以上の解像度を高い開口率で実現している。

 エプソンではHTPSを3LCD方式のプロジェクターなどに採用しており、本体の小型化に加え、高解像度化、高輝度化に貢献してきた。エプソンにおけるHTPSの出荷実績は、累計5,000万枚以上になる。

液晶をアナログ駆動することで、無段階で階調を表現できるというフィールドシーケンシャル方式(時分割式)で発生する色ずれが無いのも強み
従来のEVFとの比較。高精細感をアピールしていた今回のプロセスルールは、同社の「D7」をベースにしている

フルHD解像度も視野に

セイコーエプソンTFT事業部の下斗米信行事業部長

 同日都内で開催した発表会で、セイコーエプソンTFT事業部の下斗米信行事業部長は、「業界トップクラスの超高精細」とULTIMICRONを紹介。プロジェクター用HTPSで培った高精細、高開口率技術、精密加工技術、加工のための装置の内製化を基に、プロジェクタービジネスでの経験と高画質化ノウハウを投入して量産化したという。「すべての項目で性能を向上させた。どこかをトレードオフすることなくトータル性能を持っている」(下斗米氏)。

 下斗米氏は、「2型以下の小型高精細領域は新しい分野。デジタルカメラのほか、業務用のデジタルビデオカメラ、ヘッドマウントディスプレイにも採用を増やしてきたい」と話した。

 今後は、解像度をフルHD(1,920×1,080ドット)まで段階的に引上げる。併せて色域もsRGBフルカバーを経てAdobe RGB対応を目指す。コントラスト比も最終的に500:1を実現したい考え。さらに、表示のタイムラグ低減や低消費電力化をさらに推し進め、応用分野の拡大を図る。

 価格や生産数などは非公開だが、既に数社のデジタルカメラメーカーにサンプルを提供しており、各社から好評だったという。また、量産自体は10月から開始しており、デジタルカメラメーカーへの製品版の納品も始まっている。ULTIMICRONを搭載したデジタルカメラについて、採用メーカーの数や国内または海外のメーカーになるのかなどを含めて詳細は明らかにしていないが、下斗米氏によると「ULTIMICRONを採用したデジタルカメラが、近いうちに発売になる」という。


LCDの分類エプソンTFT事業の歴史

 EVF分野でのシェアについては、「新市場なので予想は難しいが、40~50%を目指したい。顧客の反応を見ながらじっくり製品展開を考えていきたい」とした。なお、プロジェクター向け液晶パネルのシェアは現在50%弱で1位という。プロジェクター向けとEVF向けの生産比率に関しては、枚数ベースで15:1程度からスタートして徐々にEVF向けの比率を引上げていく考えを示した。(プロジェクターは1台当たり3枚のパネルを使用している)

 エプソンでは、8インチウエハーラインの諏訪南工場(1996年量産開始)と12インチウエハーラインの千歳工場(2005年量産開始)でHTPSを製造しているが、今回のULTIMICRONは基本的に諏訪南工場での生産になるとのこと。

プロジェクター向けの一方で、EVFなど超小型ディスプレイ向けの強化を図るHTPSの生産拠点。今回のHTPSを量産するのは諏訪南工場

EVFのイメージを払拭する製品

 続いて、セイコーエプソンTFT事業部の矢崎正幸技術部長が製品の概要を話した。

 近年レンズ一体型デジタルカメラの出荷台数が頭打ちになる中、レンズ交換式デジタルカメラ市場が急拡大している現状を挙げ、今後も年率8%程度で堅調に推移すると予想。ミラーレス機構を採用した新型レンズ交換式デジタルカメラという新機軸製品の市場拡大に併せたソリューションと説明した。

セイコーエプソンTFT事業部の矢崎正幸技術部長ミラーレスカメラでは、従来の一眼レフカメラに比べて小型軽量化、ライブビューなどが可能になる
独自技術で、業界トップの画質を実現した

 ミラーレスのレンズ交換式デジタルカメラについては、「オリンパス・ペンE-P1」やパナソニックの「LUMIX DMC-GF1」などマイクロフォーサーズシステム規格に準拠したカメラが登場している。ミラーボックスやペンタプリズム(ペンタミラー)が不要なことからシステムを大幅に小型化できるほか、動画撮影に適していることなどからユーザーが急速に増えている。

 矢崎氏は、「EVFによるカメラの利用シーンを広げることで購買層を広げたい。将来的には、スチルカメラとビデオカメラの融合を図るためのキーデバイスになる」とした。また、「従来EVFは画質面から利用が限定的だったが、ULTIMICRONはパネルの粒状感が無くこれまでのVFのイメージを払拭できるデバイス。ピントの山がつかみやすく、自然なボケ味を再現できる」と自信を見せた。

 パネルのサイズについては、カメラのデザインを損ねずにカメラメーカーの持つ光学系を活かせるサイズとして決めたという。ビューファインダーを覗いて確認できるサイズとして0.4~0.5型が適しているとの判断から0.47型に決定した。

 レンズ交換式に比べて市場の大きいレンズ一体型デジタルカメラ市場へのアプローチについては、「内部努力でコストパフォーマンスを高めつつ、最適なサイズなどについて今後検討していきたい」(矢崎氏)とした。


11月18日~11月20日に幕張メッセで開催される「国際放送機器展」(InterBEE2009)にULTIMICRONを出展する。エプソンブースはホール8、ブース#8205

(本誌:武石修)

2009/10/14 19:00