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観客数93万人超の写真祭が今年も東京で

アジアから世界へ発信する「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」

今年で8回目を迎える「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」が10月3日(土)から10月26日(月)に、東京・八重洲、日本橋、京橋エリアで開かれる。6月11日(木)にプレスカンファレンスが行なわれたため、イベントの見どころをこのページでお伝えしたい。

無料の都市型写真フェスティバル

年々規模を拡大し、昨年はおよそ93万6,000人の鑑賞者を記録した。今年は13の展示とともに、併催行事として写真フェアの「T3 PHOTO ASIA」と、ブックフェア「T3 BOOK MARCHE」を展開する。

このフェアの特徴の1つが屋内外の会場を使い、無料で見られること。アートに関心のない人、ギャラリーなどに足を運ばない人たちにも作品に触れる体験を提供する。

T3ファウンダーの速水惟広氏は、このフェスの目的について「アジアで一番面白いアーティストが集まる場を作り、この街でつながっていく場を作りたい」と話す。

このコンセプトは、社会学者のリチャード・フロリダが著した『クリエイティブ資本論』から影響を受けた。面白い街には技術、才能、寛容性を持つ人たちが集まる。そこでこのフェスを通し、街にそのようなエコシステムをインストールしていく。

速水惟広氏

世界の見方を広げるメイン企画展

今年のテーマは「と(&)」。別のものを接続したり、対比したりするほか、日本語の「表裏一体」や、韓国文化の重要な概念である「陰陽」という言葉が示すように二項対立ではないモノの見方もある。

「写真は『と』の芸術。撮る者と写るモノが互いに目線を交わし合う。写真家が撮ったイメージ、世界の断片が展示空間では1つずつつながり、1つの場や物語を構成していく。小さな接続詞に注目することで、世界の見方を広げる24日間を作っていきたい」(速水惟広氏)

メイン企画展の1つがアメリカ出身の写真家ルーカス・フォグリアの「Constant Bloom」で、会場は東京ミッドタウン八重洲。

作者はアフリカからヨーロッパへ、世界最長の渡りを行なう蝶、ヒメアカタテハを追いながら、同じように国境を越えて移動する人々の姿を重ねた。

「人間が規定する境界の曖昧さ。生態系と政治、切り離されているように見えるものが、1つの連続した風景になっている」(速水惟広氏)

ルーカス・フォグリア〈Constant Bloom〉より
ルーカス・フォグリア〈Constant Bloom〉より
ルーカス・フォグリア〈Constant Bloom〉より

サラ・ファン・ライの「Atlas of Echoes(仮)」は三栄ビルの屋外壁面と東京建物日本橋ビルの内部空間で展開する。

オランダ生まれで、アムステルダムとパリを拠点に活動する作者は、ニューヨーク、パリ、ソウルなどさまざまな都市でストリートスナップを撮影する。

「彼女の写真は瞬間を切り取りながら、詩的な物語を感じさせる。コラージュを含めた展示で、東京という街と響き合う空間を作っていく」(速水惟広氏)

©Sarah van Rij
©Sarah van Rij

ヨーロッパ写真美術館との共同企画展となるのがアントニー・ケアンズとピータンによる展示だ。写真の技法、意味は大きく変化し、その境界線は曖昧で流動的になっている。

ケアンズは、1980年代のトイビデオカメラ「PXL2000」で撮影した夜の都市映像を使った抽象度の高いインスタレーション作品を制作する。

ピータンは写真が物質を情報に変換する装置と再定義し、その変換構造を作品として表す。会場はTODA BUILDING。

Exhibition view 'PXL CTY' by Antony Cairns at MEP – Maison européenne de la photographie, Paris, 2022. ©Tadzio
©PIDAN 字宙の一粒を持ち支えようとした妄想

TODA BUILDING 1階のGallery &Bakery Tokyo 8分では「鈴木のぞみ×上原沙也加」展を行なう。

二人は共通して「ある場所に刻まれた時間」をテーマに持つ。ただその表現方法は全く異なる。

鈴木さんはモノが持つ眼差し、モノから見える風景から展開させ、上原さんは複雑に折り重なる時間や出来事の痕跡や、もはや見えなくなっているものを風景の細部からすくい上げていく。

鈴木のぞみ《見沼代用水 通船堀をデザインした欄干の穴から 緑区 埼玉》 2023年 <Monologue of the Light>より
上原沙也加《沖縄県 豊見城市 浦添》2017年<眠る木>より ※受賞時の作品名「The Others, 2016–2019」から改訂

東京を写真文化の発信拠点に

今年11月から始まる「パリ・フォト」では約230のブース出展があるが、アジアからの参加は10%を切る20(日本は13)にとどまる。その中で韓国、中国ではバーゼルやフリーズなどの国際的なアートフェアが開かれているが、日本にはない。

写真フェアの「T3 PHOTO ASIA」はアジアの写真文化を発見・文脈化し、発信していく。ディレクターには韓国の複合文化空間THE REFERENCEの創設者である金廷恩(キム ジョンウン)を招く。会期は10月16日から19日で、会場はTOFROM YAESU TOWER。

ブックフェア「T3 BOOK MARCHE」は作家本人が直接作品を鑑賞者に届ける場だ。東アジアや中東も含め、ここでしか見られない興味深い作家を集める。このディレクターは中国出身の金秋雨(キン シュウウ)。

「韓国と中国のディレクター陣を招き、日本という場を使いアジアのハブを作っていきたい」(速水惟広氏)

昨年に続き、「T3 Talk Program」は10月17日から19日に催す。ホイットニービエンナーレのディレクターであるドリュー・ソイヤーが来日するほか、ポンピドゥー・センターで昨年開かれた「ティルマンス展」のチーフキュレーターを務めたフロリアン・エブナーらが登壇する。写真のカルチャーにおいて、東京が重要な役割を果たしていることを欧米のキュレーターを巻き込みながら作り上げていく。

さらなる展示情報、イベントの詳細などは8月上旬に公開予定という。

なおフランスにあるパリ日本文化会館で、5組の日本人作家による「Five views―箱庭日本―」を開く。会期は10月6日から11月14日で、最終週はパリフォトの開催期間と重なる。

これはT3が昨年から立ち上げた若手育成プログラム「T3 NEW TALENT」の一環で開く。参加作家はTHE COPY TRAVELERS、千賀健史、鈴木麻弓、南川恵利、宮地祥平。

開催概要

  • イベント名:T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026
  • 会期:2026年10月3日(土)~10月26日(月)
  • 会場:東京・八重洲、日本橋、京橋エリアの屋内、屋外会場
  • 入場料:無料

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。コロナ禍でギャラリー巡りはなかなかしづらかったが、少し明るい兆しが見えてきた。そんな中でも新しいギャラリーはいくつも誕生している。東京フォトギャラリーガイドでギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。