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ソニーの新フラッグシップスマホ「Xperia 1 VII」発表会レポート

AIエンジンにクリエイターからの意見を 2クリップ同時記録“オートフレーミング”のデモ動画あり

ソニーは5月15日(木)、新型フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 VII」の関係者向け体験会を都内で開催した。ここではその模様をお伝えする。

既報の通り、Xperia 1 VIIは6月上旬以降発売となるスマートフォン。新たな撮影機能の搭載やカメラ性能の向上などを図った。価格はSIMフリーモデルが20万5,000円前後からとなっている。

数少ないmicroSDカード対応機

本体はスレートブラック、モスグリーン、オーキッドパープルの3色が用意される。特にモスグリーンとオーキッドパープルは見る角度や光の当たり方で見え方が変わるデザインだった。ブラックはマット調で、精悍な印象と言えそうだ。

左からスレートブラック、モスグリーン、オーキッドパープル
メインカラーはスレートブラック

背面カメラは3眼で、超広角(16mm相当)、広角/標準(24mm相当/48mm相当)、望遠(85-170mm相当)。ZEISSの表記も見て取れる。

カメラ部分

右手で押しやすい位置にシャッターボタンを備えるほか、3.5mmオーディオジャックやmicroSDカードスロットも備える。昨今のスマートフォンは特に高級機でmicroSDカード非対応が多い中、クリエイター向けらしく大容量の内蔵ストレージとして使える点は注目される。

右側面の左側にはシャッターボタンがある
上面には3.5mmオーディオジャックを装備
底面にはUSB Type-C端子とmicroSDカード/SIMのスロットがある
microSDカードのトレイ裏側にSIMを入れる

オプションとしてスマートフォンケース「Style Cover with Stand for Xperia 1 VII(XQZ-CBFS)」が用意される。縦横両対応のスタンドを内蔵している。リングストラップも付属する。

Style Cover with Stand for Xperia 1 VII。各色用意される

クリエイターからのフィードバックを生かす

独自のAIエンジンをカメラ、ディスプレイ、オーディオそれぞれに活用しており、今回からそれらをまとめて「Xperia Intelligence」という名称で訴求していく。ソニーが保有するコンテンツ資産を学習したAI技術を最適化して搭載したという。

AI機能の総称を「Xperia Intelligence」と命名

カメラ機能ではミラーレスカメラ「αシリーズ」の姿勢推定技術や被写体認識技術などを取り入れており、会場には「α1 II」も並べて展示してあった。

αシリーズの実機展示も

カメラアプリは超広角の0.7倍から超望遠の7.1倍が選択できるようになっている。本体のボリュームボタンではズームを超広角から超望遠まで連続的に動かせる。なお、デジタルズームも組み合わせると望遠端は21.3倍まで利用できる。

カメラアプリの画面
ズームを最大にするとデジタルズームが加わって21.3倍に
引き続きテレマクロといった機能も搭載している
α同様の操作ができる「プロ写真モード」も搭載

分解モデルの展示もあった。チップセットは「Snapdragon 8 Elite」。バッテリー容量は前モデルと同じ5,000mAhだが、省電力になり稼働時間は延びた。「2日間動作」も謳っている。

分解展示
カメラ部分
バッテリー容量は5,000mAh
バッテリー寿命も延びて、4年使っても劣化しにくくなっているそうだ
Webブラウジングなどが省エネになるモードも利用可能
朝の4時から動画を再生しているデモ。7時間弱経って前機種は残り58%なのに対して、Xperia 1 VIIは79%も残っている

登壇したソニー モバイルコミュニケーションズ事業部長の大島正昭氏は、「様々な分野で活躍しているクリエイターとのコラボレーションで得たフィードバックを製品開発に生かし、彼らの想像を超える提案をし続けている。2024年のXperia 1 VIはクリエイターに非常に高い評価をいただいた。その正統進化としてXperia 1 VIIを発表した。『ソニーのXperiaだからこそ実現できる』をキーワードに、これまでこだわり抜いてきた本物の感動体験にさらなる磨きをかけた」と紹介した。

ソニー モバイルコミュニケーションズ事業部長の大島正昭氏

またソニー プロダクトプランナーの北澤英里氏は、新搭載した被写体を追いかける機能について「お子さんの入学式や運動会などで撮影に集中してしまい、自分の目で見たいのに画面ばかり見ている経験があると思う。今回、撮影はXperiaに任せて、その場だけの瞬間を目で見ることができる新しい撮影体験を提供する」と語った。

ソニー プロダクトプランナーの北澤英里氏

寄りと引きの両方が撮れる「オートフレーミング」

主な新機能の1つが「オートフレーミング」機能。全体の映像と選んだ被写体のアップの両方を同時に記録できるので、目では子供を見つつ同時に映像も残すといったことが可能だとしている。

全体の映像は4Kで、アップの映像は4Kから切り出したフルHDでそれぞれ記録される。選んだ被写体が画面内で動いてもアップの画像は追従して切り取ってくれるので、ある程度アバウトなフレーミングでも撮れるのがメリットだ。

端末内の解説画面(1/2)
端末内の解説画面(2/2)

体験会では3名のダンサーのパフォーマンスを撮影した。中央のダンサーを撮影前にタップして選択しておき、録画ボタンを押すだけでオートフレーミング機能が動作する。スマートフォンはほとんど動かしていないが、画面の左右と上下にダンサーが大きく動いてもアップの映像はしっかりと追従していた。

撮影中の様子。選んだ人物には枠が表示される。枠のサイズも変更可能
【Xperia 1 VII:オートフレーミング作例】
撮影サンプル。全体と、選んだ人物の映像を1画面に編集したもの

人物のフレームアウトを防ぐ「AIカメラワーク」

もう1つの目玉が「AIカメラワーク」機能だ。動きながら人物を撮る場合、例えば中央付近に捉え続けるのは難しくフレームアウトもありうるが、AIカメラワーク機能では4Kからの切り出しを利用することで人物を構図内の同じ位置に保ってくれる。

端末内の解説画面(1/3)
端末内の解説画面(2/3)
端末内の解説画面(3/3)

体験会では、歩いているモデルをXperia 1 VIIと従来モデルのXperia 1 VIで撮り比べた。AIカメラワーク機能が無い従来モデルはモデルの位置を補正していないのでフレームアウトしたり、最後の方では顔が切れてしまったりした。

撮影時の様子。上がXperia 1 VIIで、下は前機種
【Xperia 1 VII:AIカメラワークによる補正】
撮影サンプル。Xperia 1 VII(上)と前機種(下)の映像を編集で並べたもの

一方の新機種ではモデルが画面の外に出そうになっても、画面内に留められたほか、最後の部分も顔を含めた適切な構図になっていた。なお動きながら使うモードということで、AIカメラワーク利用時は通常よりも手ブレ補正が強力に動作する。

超広角カメラを刷新

カメラ部分のトピックとしては超広角カメラの進化がある。まずセンサーが従来の1/2.55型から1/1.56型へと2.1倍のサイズアップとなり、暗所撮影性能が向上。ソニーでは標準カメラと併せて「フルサイズカメラ並」と画質をアピールしている。

加えて超広角カメラのレンズも新しくなり、周辺で歪みの少ない光学設計となった。ソフトウェア補正に頼らないので周辺画質も向上しているという。またカメラの画づくりとしては、センサー性能を生かした自然なチューニングにしたとのこと。

夜景などではハイライト部分の再現性も向上したという
どちらかというとクリエイター向けを意識している画づくりのようだ

暗所撮影の体験も行われた。照明を落とした部屋の中にランタンが吊されているシーンで、肉眼ではほぼ真っ暗な状況となっていた。ここでは静止画を試したが、ランタンが白飛びせず描写できたうえ、肉眼ではほとんど見えなかった壁の木目も写すことができた。

撮影体験の様子。肉眼ではランタン以外ほとんど見えない状態
撮影サンプル。暗いシーンの雰囲気を壊さず自然に写せた

照度センサーの追加で見やすい画面に

ディスプレイでは新たに背面にも照度センサーを搭載し、どんな環境でも適切な明るさに調整されるようになった。

サボテンに強い逆光が当たるシーンをXperia 1 VIIと従来機で比較したデモを見ると、新機種の方が明るく表示されており、より実物に近い見え方なのが確認できた。

右がXperia 1 VII、左は前機種

またディスプレイの設定では忠実な見え方になる「クリエイターモード」を搭載している。デフォルトでは同社テレビ「BRAVIA」に合わせた色鮮やかな記憶色ベースの表示になっているが、クリエイターモードは制作用モニターをベースとした色再現になっており、映像のチェックなどに活用できるとしている。

左はデフォルト、右はクリエイターモード。背景の大きな表示はBRAVIA

15周年を迎える“Xperia”

日本市場にXperiaが導入されて15年ということで、会場には「Xperia 15年の歩み」と題したパネルで歴代の機種が紹介されていた。日本での初代Xperiaは2010年にドコモ端末として登場したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(当時)製の「SO-01B」だった。

「Xperia 15年の歩み」のパネル
日本市場の初代Xperia(SO-01B)

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。