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富士フイルム「X-E2」「X-A1」「XQ1」の発表会レポート
新レンズ「XF 10-24mm F4 R OIS」「XF 56mm F1.2 R」のモックアップも
Reported by 本誌:鈴木誠(2013/10/18 17:52)
富士フイルムは18日、同日発表したデジタルカメラ新製品の発表会をSHOTO GALLERY(渋谷区松涛)で開催した。同日夜には同会場で一般ユーザー向けのタッチ&トライイベントも行なわれる。各機種の詳細は記事末リンクより既報記事を参照頂きたい。
Xシリーズは「画質&機動性」でアピール
発表会では、まず富士フイルム株式会社 取締役執行役員 光学・電子映像事業部長の田中弘志氏が登壇。同社のデジタルカメラへの取り組みなどについて説明した。
デジタルカメラ市況は、市場全体としてコンパクトカメラが苦戦。レンズ交換式も若干下降気味だが、付加価値の提供により単価は前年より多少高くなっていると分析した。その中で、同社が2011年から「プレミアムカメラ」として展開するXシリーズは「特にコンパクトカメラは多くの賞を頂き、評価されていると自負している」と述べた。
同社の実績はコンパクトデジタルカメラも数量ベースでは対前年アップ。レンズ交換式カメラは対前年340%で、レンズもそれに追いついて順調な伸びを示しているとした。
ミラーレスカメラの分野では、統計的にレンズ所有本数が1.2〜1.4本とされているが、それに比べてXシリーズのユーザーはレンズを多く購入していると説明した。X-Pro1ユーザーのXFレンズ平均所有本数は3.8本(同社調べ)という。まだレンズラインナップが不足と認識しており、更に充実していく方針という。
Xシリーズは「画質&機動性」が特徴。APS-Cサイズながらフルサイズセンサーもしくはそれ以上の画質に機動性を持たせることがコンセプトとした。機動性とは、小さく軽く静かで、持ち運びしやすく、操作が簡単であるという点。小さくするとコンパクトデジタルカメラのようになっていくが、センサーサイズも小さくなり、画質が多少劣るとした。
レンズ交換式の新機種2モデルは、X-A1が特に女性に向けたエントリーモデルという。X-E2はセンサー、プロセッサー、操作性などあらゆる場面で高機能なものにしたといい、「Xシリーズの決定版と自負している」と自信を見せた。
解像力やS/N比だけではない「画質」を意識
続いて富士フイルム株式会社 光学・電子映像事業部 営業部統括マネジャーの飯田年久氏が新製品の概要説明を行なった。
飯田氏は最初に、Xシリーズを使用する海外フォトグラファーの写真と、その撮影の背景をいくつか紹介した。Dabid Hobby氏がキューバでブルーアワーを撮った写真では、色再現性や高感度特性をアピール。ウェディングフォトグラファーKevin Mullins氏の「大きな一眼レフでは撮れない」というドキュメンタリーも紹介し、いずれも「Xシリーズでなければ撮れなかった」という共通点を強調していた。
本誌では両名も出演したトークショーの様子を既報記事「富士フイルム、海外写真家4名を招いた「X-Photographers」トークショーを開催」で掲載している。
続けて飯田氏は、「一瞬一瞬をストーリーとして残すカメラシステム」というキーワードを紹介。新機種の進化ポイントを説明した。
X-E2は、X-E1に比べて最大75%のAF速度改善。配置した位相差画素が多く、暗所でもAF速度が落ちないとした。EV3でもストレスなくAFを使えるとしている。従来比2倍の処理速度というEXRプロセッサーIIによる高速レスポンスも特徴とし、コマ速、起動時間、シャッタータイムラグ、書き込み速度などが向上したという。また、他社フルサイズ機と比べてもS/N比などがよいという。絞った時の回折を画像処理で克服するという。
X-E1で好評の操作性にもこだわり、シャッターダイヤルはAと1/4,000秒を離すなど細部を改善。露出補正ダイヤルの範囲も±3段まで拡大した。細かい変更点を挙げれば60ほどになるという。
また、小原玲氏の写真を例に、「画質」の奥深さについても言及。解像感とS/Nだけでないポイントについて、いくつか例を示しながら紹介した。
新たに「X-Trans CMOS II」線センサーを採用したことで像面位相差AFに対応し、同時にWi-Fi機能を搭載するなどの機能向上も図ったモデル。X-Trans CMOS IIセンサーは非周期性が高いという独自のカラーフィルター並列を持ち、光学ローパスフィルターレス構造ながらモアレや偽色が出にくいとするCMOSセンサー。
ほかにもレンズごとの特性を元に最適な画像処理で高解像を実現するという「点像復元処理」、MF時に「デジタルスプリットイメージ」も新たに利用できる。
エントリー機に位置づけるX-A1は、近接撮影でも白トビが起きにくいというスーパーiフラッシュなどを搭載し、入門機ながら中身にこだわったという。Wi-Fi接続と軽量ボディも特徴としていた。
APS-Cサイズ相当のCMOSセンサーを採用するが、X-Trans CMOSではなく一般的なベイヤー配列としている。発売済みの「FUJIFILM X-M1」(X-Trans CMOS採用)と本体形状は同じで、3色のカラバリを用意する。
また、新望遠レンズの「XC 50-230mm F4.5-6.7 OIS」も12月発売と発表。X-A1のダブルズームキットに含まれるほか、発売済みのX-M1にも新たにダブルズームキットを設定する。
ロードマップ上にあった10-24mmレンズ、56mm F1.2レンズのモックアップも展示していた。
レンズ一体型のXQ1は、スマートフォンの台頭で苦しい立場にあると言われるコンパクトカメラにおいて、画質と機動性という原点に立ち戻ったというモデル。発売済みの「FUJIFILM X20」と同タイプの2/3型センサーを採用し、センサーサイズは通常のコンパクトデジカメの2.2倍と説明した。コンパクトカメラからの買い替えだけでなく、普段一眼レフやミラーレスを使うユーザーのサブ機にしてほしいとの思いがあるという。
広角端F1.8の25-100mm相当レンズを搭載し、X-Trans CMOS IIセンサー搭載で像面位相差AFも利用できる。レンズ鏡筒根元部分にコントロールリングを備えた。Wi-Fi機能を内蔵。
発表会の質疑応答において飯田氏は、35mmフルサイズの予定について「研究はしているが、まだまだAPS-Cのフォーマットを充実させなければいけないと考えており、順番としてAPS-Cに集中している。スペック競争を追わず、フルサイズが必要と判断する時期がくれば、視野に入ってくると考えている」と述べた。レンズラインナップに関しては「ロードマップ上のものも入れて12本まで公開している。その先も開発計画は固まりつつあるが、詳細仕様などは来年度のロードマップで公開したい」とした。
田中氏は、市場で苦戦しているとされるコンパクトデジタルカメラについて「デジタルズームやiフラッシュなど、まだ差別化が可能と考えている。(スマートフォンのように)画像処理に特化してないプロセッサで処理した写真は、(デジタルカメラの)画質に追いつくにもまだまだ時間かかるのでは」と述べた。
また、「(富士フイルムは)スマートフォン用のカメラモジュールも扱っている。そこまでの高画素が必要かと思うようなモジュールも、要求があるので出している」(田中氏)とし、コンパクトデジタルカメラでも防水などの特殊なモデルはニーズがあり利益率も良いため、今後も続けていく考えという。