Alena Dvorakova、Viktor Fischer写真展「WATER」(銀座ニコンサロン)



私たちは普段、身のまわりの水の存在をかろうじて気にかける程度だが、長期プロジェクト「Mission」において作者たちは、生活における水の現実と、真の重要性を存分に知ることとなる地域と関わった。

地球は面積の3/4が水で覆われていることから、よく「ブループラネット(青い惑星)」と呼ばれる。水の94%は海であり、淡水はわずか6%しかない。現在、世界の全人口で地球上の淡水の54%を使用しており、これが人口増加により2025年までに70%にまで跳ね上がるといわれている。もし同時に水の消費量が増大し続ければ、今後25年以内に最高90%もの水源を使い果たすことになるだろう。

淡水の不足は、いまや私たちの未来の発展において、気候変動に次ぐ最も深刻な問題とされている。21世紀は水をめぐる戦争の時代と定義されており、世界的な水の危機について公然と議論してきた1990年代から、潜在的震央は100以上も記録されているのである。

世界規模の産業は、毎年最大5億トンもの重金属と有機物による汚染廃水を生みだしている。発展途上国では、産業廃水の70%が処理されることなく放流されており、過度の使用と汚染は、水と水に関わる生態系そして川や湖の状態に影響を及ぼす。

世界の最大河川500本のうち半分が深刻な汚染を抱え、魚類の1/5は絶滅の危機に瀕している。理不尽な汚染や水源の枯渇により、環境難民という新たなカテゴリーが生まれ、毎年2500万人もの人々がこのカテゴリーに加わっているのである。

おそらく世界で最も深刻な問題は、生活必需品の基礎である水の不足である。人類のほぼ1/4は清潔な飲料水を入手できず、世界人口の半分は衛生的に使える水の不足に苦しんでいる。毎年、500万人が水を介した伝染病で亡くなりなり、これは戦争で亡くなる人の10倍にも上る値である。発展途上国を中心とする人口増加により、この問題は人類の悲劇という規模にまで達している。よく知られる解決法は比較的単純なものだが、その範囲と財政負担の大きさから、実行するのは困難な状況だ。

問題地域の一つに暮らす写真家として、作者たちは急激に悪化する環境災害においての共通責任をはっきりと自覚しており、写真にはこのような深刻な問題の進展に対する影響力がある、ということを確信し、この非営利プロジェクト「Water」に取り組んでいる。

本展は、もはやほとんど注目されることのない普遍的な話題を示すことで想像力を刺激し、新たな関係を成立させることを目標としている。なぜなら、いまの時代は、私たちはあらゆるものに依存し、そのすべてが相互関係にあるのだから。モノクロ約42点。

(写真展情報より)

  • 名称:Alena Dvorakova、Viktor Fischer写真展「WATER」
  • 会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータギンザ)1階・2階「ニコンプラザ銀座内」
  • 会期:2012年8月29日〜2012年9月11日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:折本幸治)

2012/8/8 00:00