北京のカメラモール「撮影器材城」に行ってみた


 China P&Eの取材の合間を縫って、撮影器材城をのぞいてみることができたので、その様子をお伝えしよう。

 北京に行く前から撮影器材城と呼ばれるカメラ店が密集しているビルがあるらしいことは聞いて知っていた。しかし、日本で買ったガイドブックにはその情報がほとんどない。今回、香港経由で北京に入ったこともあり、香港で北京のガイドブックを探したところ、「北京 旅遊全攻略」(台湾・正文社刊)に器材城の情報のあるページを見つけたので、その本を買って持っていくことにした。

 さっそく、ガイドブック片手に器材城に出かけてみることにする。目指すのは北京の南西部、北京西駅の近くにある馬連道茶城の3階にある撮影器材城。ガイドブックには「北京西駅から路線バス414線で行く」とあったが、私はホテルからタクシーで向かうことにした。

 北京のタクシーは初乗り11元(日本円で約120円)。地下鉄の沿線なら地下鉄を使うのもありだが、土地勘のない北京だけに、ここはタクシーがお勧めだ。また、帰りもホテルの地図を見せれば、バス停や地下鉄の駅を探す手間なく帰って来ることができるので、時間のロスも少ない。地図をタクシーの運転手に示すと、すぐに車は走り出した。

 15分ほどで目的地に到着。そこは、街のあちこちにお茶の店が立ち並ぶ、中国茶の問屋街のようなところだった。ビルの駐車場まで乗り付けてタクシーを降りる。茶城と掲げられた大きな看板のそのうえに撮影器材城の看板が見えた。どうやらこのビルの最上階のフロアに器材城があるらしい。

エスカレーターで最上階まで上るとそこが撮影器材城。簡体字の漢字の中にLEICAの文字が目立つ。

 中に入ると、かすかにお茶の香りがする。正面に大きな階段とエスカレーターがあり、それを上り切ったところが撮影器材城のフロア。フロアの案内図によると、階段を中心にして南区と北区に分かれている。平日の午前中ということもあって人影はまばらだった。

 撮影器材城という文字の印象から「秋葉原のラジオデパート」や「香港の電脳市場」というような商品と人の溢れる場所だと勝手に想像していた。が、少なくともここはそういった雑多な感じはまったくない。整然と区切られたスペースに、いくつものカメラ店が入っている様子は、むしろカメラ専門のセレクトショップの集合体といった印象だ。

 ぐるりと1周してみて、ニコン、キヤノン、ライカの看板が異様に多いことに気づく。ショーウィンドウの中の商品もニコン、キヤノン、ライカの商品がほとんど。どうやらここは、器材の掘り出し物を探すようなところではないようだ。むしろ「正規品を適正価格で買う」ところといったところか。よくよく見ると、カメラの箱はどれも封印されている。つまり、開封されていないことをわざわざ分かるようにしてある。そのことが正規品である証明になるということなのだろう。ニセモノ天国で正規品を買おうとすると、それはそれで大変らしい。

キヤノンはキャンペーンを実施中。一眼レフは渡辺謙に対抗してか、ジャッキー・チェンがイメージキャラクター。ニコンの超望遠レンズがずらりと並ぶショーウィンドウ。
ライカ専門店。カメラバッグはビリンガムを展示していた。

 フロア全体を見て回ったところ、ニコン、キヤノン、ライカだけで全体の約75%、残り約25%が他の製品ということになりそうだ。他メーカーのカメラを置いてある店は非常に少ない。25%の内訳は、タムロンやシグマのレンズ、三脚やカメラバッグなどのアクセサリー、ストロボなどを扱うお店という構成。ちなみに三脚はジッツオ、カメラバッグはロープロの製品がもっとも多く目に付いた。

 中古カメラ店は、フィルムカメラを山積みにしてある昔ながらの店構えの雰囲気の店が3〜4軒ある程度。プリント店、額装店は隅の方に各1軒づつといった具合だ。フィルムを扱っている店は、1軒も見つけることができなかった。

二手はセカンドハンズ、つまり中古のこと。中古カメラ店の店内。
ライカMPのゴールドモデル(左)とM6の貼り革違い(右)と見られるモデル。ライカM9。中国限定モデルらしい。
ライカの超望遠レンズなど、希少アイテムを置いてある店も。ゴールドメッキを施した二眼レフ。

 試しに何件かの店でキヤノンEOS 5D Mark IIIの値段を飛び込みで聞いてみたところ、ボディのみで26800元(日本円で約34万円)、5D Mark IIは13800元(同17万5000円)と、日本とあまり変わらない価格で購入できることがわかった。交渉次第ではもう少し安くなるのかもしれない。

キヤノンEOS 5D Mark III熱買中。在庫ありということのようだ。

 ただし、問題なのは店員の多くが中国語しか話せないこと。英語もまったく通じないと思ったほうがいい。機種名ですら、中国語読みでないとなかなか伝わらないくらいだ。知っているカメラに囲まれていると、つい自分がどこにいるのかを忘れてしまいそうになるが、ここは中国のど真ん中なのだ。まあ、機種名やメーカー名くらいなら何とか英語でも通じないこともないだろうが、あとは筆談と電卓を叩いての交渉となることは覚悟しておいたほうがいい。

 私も日本で買うよりも安く買えるものがあるのならと甘い期待を抱いていたのが、まったく言葉の通じない状況に、早々に購入を断念した。もしかしたら三脚やカメラバッグは、日本よりも安いのかもしれないが、共通言語のない状況で値段交渉をする気にはなれなかった。

プリント工房。モニターを前に作業をしている様子が見られた。様々な額のサンプルを展示する額装屋さんらしいお店。

 実際に商品を購入する場合、正規品であれば製品に関しては国際保証書が付いてくるだろうし、デジタルカメラなら日本語メニューにすれば問題なく使えるはずだ。ただし、高額商品の場合には、帰国時に税関で申告する必要があるのをお忘れなく。また、中国国内向けの商品の場合には、充電器のジャックの形状が日本と異なる可能性があるので、その点を確認しておくことも必要だ。

 そんなことまで考えると、円高になっているとはいえ、海外でデジタルカメラを買うメリットは少ないように思う。よほど安いというなら話は別だが、私の知る限り新製品のカメラに関しては「海外で買った方が安い」は通用しない。日本の量販店の方が圧倒的に安いからだ。

 とはいえ、北京を訪れた際には、話の種に撮影器材城にも足を伸ばしてみることをお勧めする。後で北京通の何人かに聞いたところによると、撮影器材城と呼ばれる場所は、北京市内に何箇所かあるらしい。ただし、いずれも17時30分頃には閉店してしまうようなので、午前中に行くのがお勧めということだ。カメラ好きにとては、その辺の観光地に行くよりもきっと楽しい観光ができることだろう。

防湿庫の専門店もあった。エントランスには書籍の販売コーナーが。
様々な撮影技法書が並んでいた。カメラ修理の専門店。


馬連道茶城。ここの3階に撮影機材城がある



(柴田誠)

2012/5/14 00:00