宮崎雅子写真展「The Other Side」(ギャラリー冬青)



一昨年の春 私は悶々とした気持ちを抱えながら 東京近郊へ撮影に出かけた。
木々に囲まれた小道に遭遇し 吸い込まれるように 私は入り込む。
日も傾きかけた頃で 人の気配が全くなく 少し心細い気持ちになったが
その先を見たい という気持ちが勝ったのだ。
その道を 一人 自分自身に問いながら 繰り返し考えを巡らせながら歩いた。
歩き続けると 覆い茂っていた木々が一気にひらけて 遠い向こう側に家の屋根がのぞけた。
私はその一瞬 緊張していた何かが和らぎ 思わずカメラのシャッターを切った。








不確かなものに覆われたもり

東へいって 西をのぞく
西へいって 東をあおぐ

どこでもなく
だれでもなく
何でもないものへ
憧れる

歩いて また歩く

気がつけば こちら側との狭間の世界

向こう側 を眺め続けている

私は一人


















小学校の頃 苦手な数学の時間に 空が青くどこまでも
続く窓の外を眺めていた遠い昔の日を思い出す。
突如 先生に強引に引き戻されて 驚きのあまり涙がながれた。
私は一瞬の間 教室のいすに皆と一緒にすわっているのに
一人 別の場所に浮遊していたように思う。
私はあのとき何を眺めていたのだろうか?

小さな旅行の計画か
この先におこる事の空想か
すでに失われてしまっていた夢の世界だったのか

私は写真を通して 浮遊している自分を掬いあつめて
こちら側と向こう側との橋渡しをしているのかもしれない。

(写真展情報より)

  • 名称:宮崎雅子写真展「The Other Side」
  • 会場:ギャラリー冬青
  • 住所:東京都中野区中央5-18-20
  • 会期:2011年11月4日〜2011年11月26日
  • 時間:11時〜19時
  • 休館:日曜・月曜・祝日

(本誌:折本幸治)

2011/10/21 00:00