iPad 2の「写真関連機能」をチェックする


 アップル「iPad」シリーズの新製品「iPad 2」が登場した。現時点のタブレット市場では圧倒的なシェアを誇るiPadの次期製品だけに、期待が大きかったユーザーも多いだろう。カメラを搭載し、さらに薄型になり、動作速度も向上したといわれるiPad 2だが、デジカメアクセサリーとしてのiPad 2の実力を見てみよう。

iPad 2(ブラック)

薄く、速くなったiPad 2

 iPad 2は、9.7型1,024×768ピクセルのXGA液晶を搭載ディスプレイ。駆動方式はIPS方式で、従来通り広視野角、高輝度で見栄えのよい画像を表示してくれる。液晶ディスプレイのスペック自体は、iPadと比べてみても差があるようには見えない。アップルからは液晶ディスプレイに関するアピールはないので、iPadと同じと考えていいだろう。

iPad(左)とiPad 2(右)。正面から見ると大きな違いはないが、iPad 2では上部にカメラが内蔵されている

 液晶ディスプレイ自体のスペックアップはないが、もともとiPadの表示品質はかなり良好だった。ほとんど真横からのでも画像が確認でき、横からでも色味の変化は少ない。明るさも十分で、直射日光を受ける屋外でもない限り、最大輝度まで上げればだいたい閲覧できる。

 色再現性はiPadとほぼ同等という印象で、実際よりもやや鮮やかな表示になるため、厳密な色再現までは期待できない。ただし、大まかな傾向を確認するだけなら十分なクオリティだ。引き続きAdobe RGBの色域に対応していないのは残念だが、一般的なJPEGを鑑賞する分には問題ないだろう。

実際に見てみると、iPad 2(下、右)の方が白っぽく、やや黄色みが掛かっているような印象があるが、経年変化によるものかは不明だ
どちらも最大輝度だが、iPad(上)よりもiPad 2(下)の方が明るく見えるiPad(左)、iPad 2(右)とも視野角は広い

 操作性に関しても同等で、標準の写真アプリはサムネイルの動作、単独画像の表示速度も高速。タッチしてすぐに画像が表示され、ダブルタッチで画像を拡大して閲覧できる。ピンチイン・アウトを使った画像の拡大縮小も快適に動作する。

 ピントチェックや露出のチェックにはまったく問題を感じない。指で直感的に操作でき、左右のスワイプで画像を次々送っていける操作は、むしろパソコンでの画像閲覧より快適と言ってもいいかもしれない。

 iPadからiPad 2に変わったとはいえ、既存のiPadでもアップデートすればiPad 2と同じOSで(ハードウェアに依存しない部分では)同じ機能が利用できる。搭載されているアプリも同様で、App Storeで購入できるアプリも同じなので、実際の利用ではiPadもiPad 2も同じ感覚で使える。


薄く軽くなったのは大歓迎

 最も大きな変化は、本体が薄くなった点だろう。本体サイズは、iPad 2(Wi-Fiモデル)が241.2×185.7×8.8mm、約601gに対して、iPad(同)は242.8×189.7×13.4mm、約680gとなって いる。薄く、軽くなった点がポイントだ。

本体の厚さを比べると、iPad 2が明らかに薄くなっているのが分かる。iPadは、一見するともう少し薄く見えるが、下部が中央に向かってふくらんでいるので、厚みはそれなりにあるより鋭角なデザインになったので、ボタンやDockコネクタ、スピーカー周りにも工夫がある

 ボディ全体が薄くなったことに加え、エッジが鋭くなってより薄さが実感できるようなデザインになった。iPadに慣れている場合、曲面に配置されているボタンやドックコネクターへのアクセスが少しやりづらくなった印象はあるが、全体としては薄く、軽くなったことは歓迎したい。

iPadに比べて、iPad 2だとエッジがより鋭くなっている

 重さ自体はそれほど大きな違いはないが、薄くなったことでさらにバッグの中への収まりが良くなった。長時間持ち続けると、さすがに疲れてくるが、短時間の利用や、ひざや机の上などで使う分には、より使いやすくなっている。

 もう1つの大きな違いがパフォーマンスの向上だ。プロセッサはiPadのシングルコアA5からデュアルコアのA5に変更され、メモリ容量も256MBから512MBになった。ほかのスペックもあわせて、だいたい2倍くらいのハードウェアスペックアップといっても良さそうだ。デュアルコア、メモリ倍増といったスペック向上によって、例えば画像編集アプリでの速度向上、より大容量画像の読み込みが可能になるといったメリットがある。

 実際に試してみると、例えばPhotoshop Expressで画像を編集して保存する場合、保存時間が6秒から3秒へと高速化。これくらいならばあまり大きな影響はないだろうが、大きなサイズの画像、動画の取り扱いで大きく影響しそう。ベンチマークテストをしてみると、例えば「OpenGL Extensions Viewer」では、iPad 2だとコマ落ちも少なく、最低でも45.5fpsをキープ。iPadでは最低で26.6fpsという大幅なコマ落ちや映像のストップまであった。「LINPACK Benchmark」では、100桁ではiPad 2が52.488Mflop/s、iPadが27.581Mflop/s、1000桁では同545.488Mflop/s、同63.332Mflop/sという結果だった。

 また、アップル謹製の動画編集アプリiMovieがiPad 2でしか利用できないなど、デュアルコア、メモリ倍増の効果は大きいと考えていい。


Eye-Fiで手軽に画像転送

 iPad 2の画像取り込みには、従来通りiTunes経由で画像を取り込むか、アップル純正オプション「iPad Camera Connection Kit」を使う方法がある。この2つの方法に関しては、以前のiPadの記事と内容自体は変わりない。やはりDockコネクタから飛び出す形で使い勝手はあまりよくないし、ボディが薄くなって挿しづらくはなっているが、挿せば使える手軽さは便利。

Camera Connection Kitを挿入すれば、すぐに読み込みが始まる画像を読み込むと、サムネイルが表示され、画像の読み込み、カードからの画像の削除が行なえる
選択した画像のみ読み込むこともできる

 iPadでは、画像の取り込み時に写真アプリが強制終了し、2重に取り込んでしまうという欠点があったが、メモリが倍増したことで取り込みが安定。テストした限りは強制終了したりせず、ストレスが大幅に減ったのはうれしいところだ。

読み込んだ後、読み込んだ画像を削除画像を削除できる。iPadをフォトストレージとして使い、カードを常に開放しておきたい場合に便利だ

 機能的には変更はないようだ。RAW画像の読み込みも可能だが、表示自体はサムネイル画像を利用しているようで、実際の画像サイズよりも小さいサイズになる。標準の写真アプリだけでなく、Photoshop ExpressやPhotoPadではRAW画像を読み込めず、FilterstormやPhotogeneでは読み込めるといった違いがあり、この辺りはアプリの処理方法の違いだろう。

読み込まれた画像は「最後の読み込み」アルバムと「すべて読み込み済み」アルバムに表示される。表示されている画像のウチ、下段の5枚はRAW画像で、そのまま表示されている

 iPad Camera Connection Kitで読み込んだ画像はすべてiPadのメモリに保存され、JPEG、RAW、RAW+JPEGのいずれの画像の読み込みもできる。画像はそのまま保存されるので、フォトストレージとしても利用できるだろう。

画像の単独表示。スライドショーや画像の共有、削除などが可能

 動画ファイルに関しては、ソニー・NEX-5のAVCHDファイルはインポート画面にも表示されず、やはり非対応のようだ。AVI、MOV、MP4といったファイルは従来通り読み込める。

 画像の取り込みでは、新たに別の方法がある。アイファイジャパンの「Eye-Fi X2」カードの新機能「ダイレクトモード」を使う方法だ。ダイレクトモードは、Eye-Fiの無線LAN機能を使って、直接iPadに画像を転送できる機能で、Eye-Fiをアクセスポイントにすることで、iPadから無線LANでカードに直接アクセスできるようになる。無線LANのコネクションが成立すると、自動で画像がiPadのカメラロールに転送される仕組みだ。

iPad版のEye-Fiアプリ。これをバックグラウンドでも起動しておけばダイレクトモードで自動で画像を取り込める

 Eye-Fiのアプリをインストールして、PC側の管理ソフトEye-Fi Centerで設定を行なっておき、iPadの無線LAN設定でEye-Fiを登録しておけばダイレクトモードを利用できる。撮影すると、Eye-Fiが無線LANアクセスポイントになり、iPadがそこに接続、すぐに画像転送が始まる。

 Eye-Fiのダイレクトモードでは、周囲に無線LAN環境がなくても画像のワイヤレス転送が可能になるため、iPadの無線LANモデルでも撮影したそばからその場で画像を取得して確認できるため、Camera Connection KitやPCを使う必要もないのが便利。

 ただし、iPadに転送された画像はすべて「IMG」から始まる連番にリネームされるようだ。デジカメがつけたファイル名を変更したくない場合は注意が必要だろう。また、ダイレクトモードで転送されたRAW画像はなぜかiPad側で再生ができなかった。RAW+JPEGで撮影すると、RAWとJPEGの2枚に分かれるもののJPEG側は閲覧できたので、これでピントや構図の確認は可能だ。さらに、保存されたRAW画像は、PCに接続して吸い出してみると拡張子がTIFになっており、表示できなかった。これを本来の拡張しに直すと再生できたため、この辺りは挙動が不思議だ。RAW画像が撮影の中心の場合は注意が必要だろう。

RAW画像を取り込むと、画像にRAWの表示のあるアイコン表示になり、画像の確認はできない

 また、iOSでは画面が消えている状態だと、Eye-Fiの無線LANアクセスポイントが起動したとしても検索が行なわれないようで、画像の転送が行えなかった。そのため、iPadが起動した状態で、バックグラウンドでも構わないのでEye-Fiアプリを起動しておく必要がある。例えば撮影の時だけiPadの「自動ロック」の設定を「しない」に設定しておくといいだろう。バッテリー持続時間は犠牲になるが、iPad 2の電池寿命は長く、ある程度は許容できるはずだ。一度取り込みが始まれば、その間は画面をオフにしても取り込みは継続するほか、Eye-Fi側の設定で転送完了後のダイレクトモードの状態をキープする時間の設定も可能なので、そうした挙動を踏まえて設定しておけば、今度はカメラ側のバッテリー消費の問題もあるが、ある程度使い勝手は良くなるだろう。

 いずれにしても、Eye-Fiのダイレクトモードを使うことで、いちいちカメラからカードを取り出してカードリーダーに接続して取り込み作業を行って……といった手順を踏まなくても、撮影後にはすぐにiPadで画像を確認することができるので、iPadをさらに活用できるだろう。


さらに持ち出しやすくなったiPad 2

 iPadの登場から1年でバージョンアップしたiPad 2は、薄く軽く、パフォーマンスも倍になるといった順当な機能向上を果たしており、画像ビューワーとしても画像編集マシンとしてもさらに使い勝手が良くなった。

 アプリは相変わらず豊富で、画像管理、編集アプリもさらに増え、動画編集アプリを使ったスライドショーやカメラ動画の編集まで可能になる。こうした幅広い機能の拡張はカメラ単体では難しく、パソコンでは可搬性や簡便性が足りなかった。そうした部分をうまく埋める形で、iPadは撮影のお供に最適なデバイスに仕上がっている。

 最大で64GBのモデルまでラインナップされており、大容量のフォトストレージとして、旅行先での画像の2重化という用途にも利用できそう。特に軽く薄くなった点は、持ち出しやすさにつながる大きなメリットと言えそうだ。



(小山安博)

2011/5/30 00:00