オリンパス・ペンを愛用する「LUNA SEA」ギタリストINORAN氏

〜アップルストア銀座でフォトイベントを開催

 アップルストア銀座は2日、ロックバンド「LUNA SEA」のギタリストINORAN氏とオリンパスイメージングの杉田幸彦氏を迎えたフォトイベント「INORAN PHOTO TOUR」を開催した。

会場のアップルストア銀座3階シアターは、女性を中心とした来場者で賑わっていたINORAN氏

 4月13日に発売した最新ソロアルバム「Teardrop」のアートワークをオリンパス・ペンで自ら撮影したというINORAN氏が、オリンパスイメージングSLR商品企画部長の杉田幸彦氏と写真をテーマに対談する趣旨のイベント。後半ではアップルの画像管理ソフト「iPhoto '11」を用いた写真の加工やスライドショーの上映も行なった。

広角をうまく使っている(杉田氏)

 INORAN氏がオリンパス・ペンを選んだきっかけは、ブログ開設にあたり「写真もこだわりたい」と考えたからとのこと。周りの薦めによりE-P2を購入したそうだ。使用感について杉田氏が訪ねると、「自分がプロになったようないい写真が撮れる」と話していた。

オリンパスイメージングSLR商品企画部長の杉田幸彦氏INORAN氏が各国で撮影した写真を上映

 スクリーンでは、2010年のLUNA SEAワールドツアーで訪れた各国でINORAN氏が撮ったという写真を上映。カメラは常に携帯しており、レンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」(35mm判換算18-36mm相当)をいつも装着しているという。杉田氏は「広角は難しいと言われているが、うまく使っていると思う」と感想を述べた。

 INORAN氏の写真の特徴について杉田氏は「白く飛ばしたり黒く潰したり、普通の人より極端にふっている。目線は同じになりがちだが、INORANさんは上を見たり下を見たり、どう自分なりに表現しようか考えて撮っている写真と感じる」と話す。

 それに対しINORAN氏は「最初は考えて使っていたけど、撮りたい時に撮るのが先だと思った。写真に悪いものなんかひとつもない。撮らないとその瞬間は2度と訪れないから、とりあえず撮りまくる」と考えを述べた。作画は無意識のものだというが、建物などを撮る場合、後ろにあるものを入れないと対象が際立たないと思う、と語る。

 撮影時の設定はカメラ任せだといい、アートフィルターもよく使っているとのこと。写真のポイントを技術的に解説するアップルストアのスタッフに対し、「考え過ぎじゃない?(笑)」とINORAN氏が話す場面もあった。

 杉田氏は「カメラがないと上を見たり下を見たりしないが、カメラがあると同じ旅も変わった旅になる気がする」とコメントし、INORAN氏は「それが一番かもしれない。カメラを持ってから空を見るようになった」と話していた。INORAN氏が撮影した写真には、空を写したものが多く含まれていた。

「悪いものはひとつもない」(INORAN氏)

 対談の中で杉田氏は、オリンパス機が搭載するアートフィルターについても言及。「写真はこれまで“再現力”といわれていて、忠実に撮る文化だった。これからの時代は再現だけでなく、自分なりの思いをこめて撮る時代に写真が変わろうとしていると思う。そのイメージに合わせた本格的な写真を撮る人に向けたフィルターを用意した」。

 INORAN氏はアートフィルターについて、「予測のつかない色になったりという発見がある。そうなることで、撮っている時に余計な考えがいらない」とコメント。自身の音楽と写真は同じ世界観に基づいているとし、どちらも“見る角度を変えていく”のだという。まずはやってみて、どうなるかはあとで判断するそうだ。ここでも「悪いものはひとつもない」と強調していた。

1年半前に購入したというE-P2を手にするINORAN氏装着レンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」。キットレンズも持っているが、いつもこのレンズを使っているとのこと

 「同じ写真は2度と撮れないから、自分のイメージでどんどん撮っていいのでは。INORANさんの写真は力強い。斜めにしたり黒く潰したりするせいなのかわからないが、力強い写真が多い印象」(杉田氏)

 「ペンで撮るようになって、自分のレンズがもう一つ増えたような気がする。それがまた音楽にフィードバックされたりして、すごく楽しい。それまでは携帯電話かコンパクトカメラで撮影していた。ペンを買う時は電気屋さんで2時間ぐらいずっと説明を受けたり、本体の色もどっちがいいか悩んだ」(INORAN氏)

編集は「いつまでやっても正解はない」

 続いて、アップルのiPhoto '11を用いた画像編集にも触れた。カメラを購入してからはLightroomで編集作業も自ら行なっているというINORAN氏だが、「いじって覚えるタチで、説明書も読まない」という。INORAN氏と杉田氏は「写真の編集はどういう時にすべきもの?」というテーマについてそれぞれ語った。

INORAN氏が「去年撮った中で一番」というロサンゼルスで撮影した虹の写真。飛行機雲や木と太陽の位置など、ブログで見て印象に残っている来場者も多いようだったLUNA SEAのレコーディング風景。杉田氏は「計算と思うようなスピード感・ライブ感がある」とコメント。特徴的なブレはカメラを意図的に動かしたことによるもの
PV撮影のスタジオでの1枚。広角を活かす斜めのアングルを「斜めに見たかったんでしょうね」(INORAN氏)と振り返る

 「おそらく3人が同じ空を見ても同じ色には感じない。気分が高ぶっていたり沈んでいたり、その時に見たものが必ずしも自分にとって正解とは限らない気がする。それを自分の記憶に合わせていくのが編集なのかなと思う」(杉田氏)

 「まさに(杉田氏に)近いかもしれない。昼に友達や知り合いとどこかへ出かけて、あとでご飯を食べている時にその話をするような感覚。その色や切り取り方によって、時間を振り返って面白さが倍増するときもあるし、寂しさを感じるときもある。景色にのった自分の感情がどう現れてくるか」(INORAN氏)

 写真の加工が好きだが、どんどんやめ時がわからなくなるという来場者に対し、INORAN氏は「音楽と同じで、いつまでやっても正解はない。ずっとギターをレコーディングしていて正解はないし、どんどん上手くなったり、下手になったりもする。どこかの“これだな”というポイントで止める」とアドバイスしていた。

 イベントでは、来場者が選んだ写真をINORAN氏がその場でiPhotoでライブ編集するシーンもあった。編集を行なう際は「適当にやっていって偶然を見つける」のだという。

iPhotoを利用した画像加工を実演スライダーで明るさやコントラストを調整したあと、周辺をぼかすエフェクトなども適用

 来場者から「INORANさんの写真の空はとても青い。空の色を青く写すのは難しいと聞くが、ペンを使っていて設定や加工なしに撮れるのか?」と質問があり、杉田氏が「オリンパスは“オリンパスブルー”と呼ばれる空の色が得意。各社に得意な色があるが、オリンパスは空の色にこだわっている部分がある」と説明した。INORAN氏は、空が狙った露出になる位置でフォーカスロックをして撮影しているとのことだった。

 また、1つの構図に対し3〜4枚撮影することが多く、だいたいその最初か最後が一番いいという。あくまで写真には正解も間違いもないとし、「これが一番好き」という基準で選んでいると話した。

 「写真はよく“構図が6割”と言われている。色はカメラ任せの部分もあるが、構図は個人の性格や伝えたい事がそのまま出るため、一番簡単だし一番難しい。どれが正しいではなく、自分がそこで表現したい形で出すのがいいと思う」(杉田氏)

 「写真を見るのは昔から好きだった。好みとして(被写体に)寄っていたり、シンメトリーじゃないものが好きだったりというのはある。見せすぎないのも好き。音も写真もそうだが、想像したい」(INORAN氏)

イベントの最後には、最新アルバムの「SuperTramp」をBGMに1分ほどのiPhotoスライドショーを上映した


(本誌:鈴木誠)

2011/5/17 00:00