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エプソン、顔料11色インクのB0ノビ対応大判フォトプリンター

画質と速度を追求 ライトグレーインクによるオーバーコートも

エプソン販売株式会社は、大判インクジェットプリンターの新製品として「SureColor SC-P9550」(B0ノビ対応)と「SureColor SC-P7550」(A1ノビ対応)の2機種を10月23日に発表した。どちらも12月上旬に発売する。

希望小売価格は、SC-P9550が79万8,000円〜、SC-P7550が税別47万8,000円〜(ともに税別)。

同社の大判インクジェットプリンター群の中でも、フォト・プルーフに属する製品。水性大判インクジェットプリンターとしては、最上位モデルとして位置付けられている。今回の製品の発売に伴い、これまで発売していた「SureColor SC-P10050」は終売となる。

今回の製品は写真・出力センター向けの製品であり、写真展などに展示する大判の写真作品をプリントすることも可能だ。エプソン大判プリンターのラインナップ中、写真画質においては最も優れているという。

まず、最大のポイントは、2.64インチヘッド(PrecisionCore MicroTFP プリントヘッド)を搭載したことが挙げられる。これは、1インチヘッド(PrecisionCore TFP プリントヘッド)を搭載する現行機「SC-P9050」と「SC-P7050」(いずれも継続販売)と比較して約2.3倍もインチアップしたことになり、総ノズル数も3,600ノズル(360ノズル/色)から9,600ノズル(800ノズル/色)と大幅に増えている。

結果として、印刷用紙「プロフェッショナル フォトペーパー<薄手光沢>」、A1サイズ、印刷品質レベル1、印刷パス開始からカットまでという条件で比べた場合、従来機では3.6分のところ、新型機では1.6分と印刷速度が向上している。

また、10列ヘッドから12列ヘッドへとヘッド数が増加。これに伴い、排他利用だった「フォトブラック」と「マットブラック」が独立。さらに、同じく排他利用だった「バイオレット」と「ライトグレー」も独立した(UltraChrome PRO12インク採用)。これは、インクチェンジによる時間ロスを避けるといったこともあるが、選択色だった「バイオレット」と「ライトグレー」を同時に利用できるようになり、粒状性とより深みのある青を再現できるようになったことが大きい。インクは全色顔料系。

ちなみに、PANTONE Digital Colorのカバー率はそれぞれ99%(従来機のSC-P9050は98%、終売となるSC-P10050は94%)になっている。

加えて、ライトグレーインクを用いたオーバーコート印刷(ブラック・エンハンス・オーバーコート)により、光源依存による黒濃度とコントラストの低下現象を抑制できるようになった。コンシューマ向け製品では、専用のクリアインクを使ったオーバーコートにより、表面の保護や耐候性をもたせる技術があるが、同製品ではライトグレーインクを代用としている。

なお、ヘッドが大きくなるということは、当然本体の振動・ブレも大きくなることが予想されるが、実機デモを見た限り、際立った変化というものは感じられなかった。また、ロール紙利用時におけるバックテンションの左右差を原因とした紙送りの不安定さについても、サブ紙搬送ローラーを導入したことで安定させているという。

B0用紙1枚分のインクを収納する内蔵バッファタンクを搭載したとも新製品の特徴。インクタンクの内容量がギリギリの状態で印刷してしまうと、印刷の途中でインク料が限界に達してインクの補充が必要になる場合がある。その補充時間で乾燥し、微妙なムラができてしまう恐れが生じるのだ。それが、バッファタンクのおかげで無理なくプリントできるようになった。

これまでさほど考慮されていなかった、ゴミやケバの侵入を低減する外装構造(防塵構造)も採用されている。これにより、ゴミやケバを原因とするノズル抜けを抑制できる。

また、ヘッド・キャップのセルフ清掃構造を採用しており、メンテナンスが自身でできるようになった。ちょっとしたメディアの紙粉やケバを取り除き、安定した稼働環境を保てるというのも大きな利点になりそうだ。

このほか、大型の警告灯や4.3型のタッチパネル、印刷状況を容易に確認できる内部LED照明、フェイスアップスタッカーなどを採用している。

また、これまで同様にHDD/PS拡張ユニットにも対応するほか、純正ソフトウエアRIP(Epson Edge Print)への対応も予定している。

現行モデルからの継承機能として、スピンドルレスの用紙装着機構や自動測色器オプションへの対応、ボード紙にも対応した斜め給紙レイアウトなどにも対応する。

飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。