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突然のインスタントカメラ「ライカ ゾフォート」詳報
ライカカメラAG社主カウフマン氏に聞く
2016年9月22日 17:04
ライカカメラAGは、フォトキナ2016にあわせてinstax miniフィルムを使うインスタントカメラ「ライカ ゾフォート」(Sofort)を発表。日本でも11月に税込3万4,560円で発売される。
ライカカメラAGのブースでは実機を展示。別会場に設けられたライカギャラリーでは写真展オープニングの壇上でライカ ゾフォートを披露し、集まった参加者を登壇者が撮影して配るなどのパフォーマンスがあった。
製品発表時のニュース:チェキフィルムを使う「ライカ ゾフォート」登場
「自分の存在をアピールするのも写真の世界」
突如として登場したインスタントカメラ(しかし、本誌でも大変に注目を集めている)について、ライカカメラAG社主のアンドレアス・カウフマン氏に狙いを聞いた。
率直に「なぜ、インスタントカメラ?」とぶつけてみたところ、「それはシンプルなこと」とカウフマン氏。写真の世界においてライカは安価な価格帯の製品をやってこなかったが、今のライカは数万円のコンパクトカメラから数百万円の中判カメラ「ライカS」まで商品レンジを広げており、あくまでその取り組みの延長線上にあるという。
ライカが考えるインスタントカメラの特徴は、撮影後に画像がすぐ出てきて、オンリーワンでありコピーもレタッチもできないということ。そういった点をスマホ世代に伝える役割に目を付けたというのが公式回答だ。
instax miniを使う、いわゆる「チェキ」には自分撮り用のミラーがお馴染みで、ライカ ゾフォートにももちろん備わっている。イマドキなセルフィー文化も「自分の存在をアピールするのも写真の世界(universe of photography)だと思う」と取り入れた。
筆者を含め"偉大なるライカカメラの歴史"を信仰する人間には、(新しいライカMも出なかったし)誰でも使える簡単な製品をネガティブに語りたくなるところもあるだろうが、カウフマン氏はゾフォートを手にして笑顔で「イイでしょ?」と一言。無粋な反応を一蹴する、強いブランドを背負ったロックスター的な模範解答だ。
ライカ ゾフォートの本体開発については"協力会社"と長期間のディスカッションがあり、特徴的なスタイリングはミュンヘンにあるライカのデザインチームが手がけた。手頃な価格帯の製品とはいえ、真剣にライカらしいデザインに仕上げたというのが自信のポイントだ。
ライカカメラAGのスタッフに聞いた話では、ライカはこれまで「エンジニアがデザイナーである」としてデザイナーを雇ったことがなく、2015年発売のフルサイズコンパクト「ライカQ」を手がけたメンバーにはじまり、現在は4名のデザインチームを擁しているという。そうした新しさも模索しながら、インスタントカメラに搭載のF12.7レンズに昔ながらの「ヘクトール」と名付けるなど、ライカのヘリテージも忘れていない。
ライカ ゾフォートのフィルムは既存の富士フイルムinstax miniをそのまま使えるが、ライカがinstax miniカメラをリデザインし、フィルムもライカから発売するにあたり考えたのが「モノクローム」だった。富士フイルムはinstax miniのモノクロフィルムを作る技術を以前から持っていたものの製品化に踏み切っておらず、今回のライカのリクエストで実現し、お互いのブランドで発売することになったとカウフマン氏は話す。
ちなみに、ライカ版のフィルムだけは「フレームをフレームらしく」とのアイデアでフチの部分がわずかにクリーム色。背面にはライカカメラAGのURLが記載され、注意書きもライカが使っているフォントで記されている。フィルムの発色はどちらも同じようだ。