カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

海外の島国で暮らす島ネコを求めて(ブルネイ・前半)

日本全国の島をあちこち旅しては、ネコがいる島に出会ってきました。

この連載では、足掛け3年、ネコが暮らす24の島をご紹介しました。振り返って言えるのは、ネコがいるだけで島の長閑な雰囲気はさらに柔らかくなり、島の人たちと出会うことができ、とても印象的に心に残る旅ができたということです。

これは、ネコが与えてくれた、旅のお土産かなと思えます。

さて、今回は日本の島を飛び越え、海外でもっとも大きい島の一つボルネオ島のネコに出会いに行きました。

ボルネオ島は、マレーシア、インドネシア、ブルネイがまたがる巨大な島で、その中でもっともネコが多いと聞いたブルネイへ、カメラを抱えて、いざ旅してきました!

◇   ◇   ◇

◇   ◇   ◇


【これまでのねこ島めぐり】

◇   ◇   ◇

ブルネイは、東南アジアの中で小さな国ですが、天然ガスや原油が採れるため、とってもお金持ち。宗教はイスラム教で、街中にたくさんモスクがあるそうです。

日本から、香港を経由してブルネイの首都バンダルスリブガワンに向かいました。曜日が合えば、日本から直行便もあります。

ブルネイ空港から街中までは、タクシーで15分ほど。

市内のホテルに泊まって、翌日向かったのは「カンポン・アイール」という水上集落です。

水上集落の言葉通り、ブルネイ川の中に家々が浮かぶように建っている集落です。

バンダルスリブガワンのブルネイ川沿に、水上タクシー乗り場があり、片道1ブルネイ・ドル(約80円)。

茶緑色の川の向こうに見えるのが、カンポン・アイールです。

水上タクシーのおじさん、ご機嫌な感じで、パチリと1枚いただきました。

カンポン・アイールまで乗船たったの5分ほど。

ブルネイ川まで降りるような階段のある水上タクシー乗り場がいくつもあって、どこからでも乗ることができるそう。

水上から家の「足」がずらりと見えて、とっても不思議な光景!

歴史的には600年以上前から水上集落はあり、今では水道、電気も通っているのだから、普通の町と同じです。

水上タクシーに乗っている時、ふと目があったのは、黒ネコさん!

毎日、どんなヤツがくるのか見張りでもしているのかな?

事前に、バンダルスリブガワンの中でも、とくにネコが多く暮らすと聞いたのがカンポン・アイールでした。

さっそく、集落の中を探検します。

降りて、歩き出した途端に、美人さんに出会いました。

ちょっと警戒心のある「誰だよ?」感漂う表情を撮らせてもらいました。

せっかく寝ていたのに、ごめんね。

ぞくぞくとネコに出会いました。

木の板はところどころ朽ちて、ネコの写真に夢中になっていると、落ちてしまいそうで足がすくみます。

身軽なネコだからこそ、水上集落で生活できるのかもしれませんね。

おやすみ中を、パチリ。

家と家の通りは、木の橋みたいな道が延々と入り組んで作られています。

総距離にしたら、数kmにはなるのではないかと思います。

日本では見かけない家づくりで、かつ家の外観がカラフルなので、フォトジェニック。

写真を撮ろうとしたら、白ネコさんが現れました。

青い家の前で、誰かを待つようにして、そのまま座り込みました。

それぞれのネコには、「我が家」があるのかもしれません。

だんだんと、ネコを探すゲームのような感覚になってきました。

複雑な見た目の集落なので、ちょっと探しにくいですが、目を凝らすとネコの姿が浮かびあがります。

椅子の下を覗くと、寝ている双子さん?

日中は茹だるような暑さ。

避暑地を探して、じっとしているネコが多いです。

さて、水上集落にあった案内板に、「Pottery House」というのがあり、行ってみることにしました。

Pottery Houseへ行く道を迷っていたら、肩に仔猫をのせた女性にバッタリ。

「あなたのネコ?」

「そうよ!」

と、写真を撮らせてくれました。

ほへ〜と感心する私を置いて、「じゃあね」とスタスタ歩いていきました。仔猫はぴったりと肩にくっついて、一緒に出かけていきました。

肩乗り仔猫のお姉さんに、Pottery Houseまでの道を教えてもらい、ずんずん進むと、猫検問所です。

「どこからきたの?」

「どっちへいくの?」

「ごはんはあるわけ?」

という感じでしょうか。

アジアというと、やせ細ったネコが多い印象ですが、ブルネイのネコはそこまで痩せていないし、顔も綺麗。

ようやく、Pottery House に近づいてきました。板の道もだんだんカラフルに。
すると……。

とことことことこ。

勢いよく近づいてきたふわふわネコさん。

カメラに向かって一直線。

その後、あれよあれよとネコたちが集まってきたので、近くにいた人に写真を撮ってもらいました。

左側のブルネイ川が、こうして写真で見ると草原のように見えますね。

ようやく、Pottery Houseにつきました。

中におばあさんがいたので、一声かけると「中へどうぞ」と通されました。
すると、まあ、びっくり。

バスタオルを腰に巻いた半裸のおじいさんが、一心不乱に造花を装飾していました。

まるで、ユートピア。

おじいさんに写真を撮らせてもらいましたが、超フォトジェニック。

どうやら、木の板の床も定期的に描き変えているようですが、おじいさんの趣味みたいで、とてもほっこりしました。

ネコたちも、ぞろぞろと、「ここ、いいところでしょ?」と我が物顔。

ちょいちょと、写真を撮りにくる観光客がいるので、Pottery Houseは徐々に有名になってきているのかな?

ガイドブックには、ここが民家であることからおそらく載せていないのだろうと思います。

水上集落のユートピアに出くわして、心踊りました!

人懐こいネコたちは、撫でられるのも大好きみたい。

片手で写真を撮ったけど、じっとしていたくれたので、ブレずに撮ることができました。

ピンク色の板の上でごろんとくつろぐ茶トラさん。

カラフルな家に溶け込んでいます。

水上集落のネコたちは、総じてのんびり、おっとりしているので、みんな人間に可愛がられているか、うまく共生ができているようです。

「のびーっ」

ネコたちの様子をしばし眺めていると、こちらも「のびーっ」としたくなるほど、のんびりしています。

どこを切り取って写真をとっても、必ずカラフルな色彩が写り込んできます。

おばあちゃんが、どこかに出かけていきました。

ネコたちが、あわててついていくので、ほっこり。

さて、ずいぶんとゆっくり滞在しましたが、水上集落カンポン・アイールから陸に戻ろうと思います。

メインの水上タクシー乗り場には、ツーリストインフォメーションカウンターもあります。

ただし、お祈りの時間帯はクローズしています。

中は、ブルネイの伝統的な暮らしや歴史、民族学などパネル紹介しています。
残念ながら、ネコについては触れていませんでした(見つけられず)が、いつかネコについても展示してほしいな〜なんて思いつつ、後にしました。

世界最大の水上集落に来て、わかったことは、あくまでここは人が暮らす村であって、観光目的のために作られているわけではないということ。

民家だけでなく、学校や警察、モスクまであります。私にとって非日常的な村ですが、ここで暮らす人にとっては日常でしかないのです。

それでも、こんなワクワクとする村で、たくさんのネコに出会えたので、それだけでブルネイに来てよかった! と感じました。

くまなくゆっくりと巡ろうと思えば、半日は必要ではないかなと個人的には思います。

ぜひカメラを忘れずに、ネコとブルネイらしい暮らしを覗きにカンポン・アイールへ足を運んでみてはいかがでしょう?

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。