中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

また訪ねたい海外の思い出「ジョイテツ! in the World」vol.08 リスボン編(その1)

ライカM-Pサファリで撮るリスボントラム

リスボンに暮らす人たちの生活感がムンムンと感じられるカフェと、市民の下駄代わりのトラム。生活とトラムの距離の近さを見せたくて、この場所で撮影しました。よく見ると、物理的にもかなり近いですね(汗)。とっても素直な描写をしてくれるエルマーの味を生かし、奇をてらわない自然な構図で素直に写しました。僕のエルマー50mmはMマウントの第1世代なので、製造は1957年あたり。もう製造から約60年経つレンズですが、必要なところにはシャープ感もあり、もう理論とかを超えた素敵さがあります。
ライカM-P(Typ240) ELMAR 50mm F2.8 絞り優先オート(F3.4、1/1,000秒) ISO 400 WB:日陰

コロナ禍でなかなか行けない海外の鉄道を紹介するこの企画。今回からご紹介するのは、ポルトガルのリスボントラムです。ヨーロッパらしい風情ある町並みを、可愛いトラムが縫うように走る風景は最高に絵になります。今回はこれまで撮影したなかから、ライカM-Pサファリで撮った作品をお見せしましょう。超望遠+高速連写の本気撮りもいいけど、M型ライカでフラフラと歩きながらのスナップは別モノ。その楽しさが伝わればいいなぁ。

ここで僕のM型ライカをご紹介。カメラはライカM-Pサファリ(Typ240)で、交換レンズは5本。写真の左から、ELMARIT-M 21mm F2.8 ASPH.、SUMMICRON-M 35mm F2 ASPH.、ELMAR 50mm F2.8(1958年登場のタイプ)、ELMAR 90mm F4(1954年登場のタイプ)、TELE-ELMAR 135mm F4になります。全てMマウントです。今回は望遠系のレンズは出番なしでした。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F2.8、1/750秒) ISO 200 WB:日陰

ポルトガルの首都リスボンにはトラムの路線がたくさんありますが、オススメは古い車両だけで運行されている28系統と12系統。主にアルファマ地区と呼ばれる旧市街を走るため、赤い屋根とカラフルな壁の建物がひしめきあう古き良きヨーロッパの風情が味わえます。

ここは28系統で最も狭い路地を通る場所。たぶん電車と建物の隙間は、僕のお腹の幅より狭いかも(笑)。リスボンの街は狭いので、晴れるとかなりの明暗差ができてしまうのですが、明るい色の建物がお互いにレフ板のように照らしあい、素敵な色彩になるのです。リスボンの迷宮のもっとも深い場所でみつけた、宝物のような風景。

ライカM-P(Typ240) ELMARIT-M 21mm F2.8 ASPH. 絞り優先オート(F2.8、1/1,000秒) ISO 400 WB:日陰

こちらはエルマリート21mm F2.8 ASPH.で12系統トラムの車内から撮影したカット。車で通るのもやっとな狭さの旧市街に敷かれた線路を見ていると、迷宮に迷い込んだかのような感覚になります。この写真は微妙にナナメになっていますが、無意識に構図を傾けています。このわずかなナナメ具合と、窓枠の前ボケが、この写真に臨場感をプラスしてくれました。旧市街の重厚な雰囲気をうまく表現できた気がして、お気に入りの作品です。

エルマリート21mm F2.8 ASPH.はカリッとまではいかないけど、かなりメリハリのある描写を見せてくれます。デジカメになってからは撮影時にコントラストの設定が変えられるので、レンズ性能だけを語るのは無意味な気もしますが、現代のレンズらしい描写力だと感じました。現代と言っても、1997年製ですが……。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F4.8、1/350秒) ISO 200 WB:日陰

リスボンにはトラムのほかに、いくつかケーブルカーがあります。街なかにケーブルカー?と不思議に感じると思いますが、ケーブルは地下にあるので、見た目はトラムみたいです。こちらはそのうちの1路線である「ビッカ線」。とってもかわいい車両ですが、落書きだらけなのがちょっと残念。でもそこにサングラスをかけたお姉さんを入れることで、全体をファンキーな雰囲気にまとめました。まるで映画のワンシーンのような雰囲気が、とても気に入っています。こんな至近距離のスナップも、ライカだと警戒されずに撮れるから不思議。

ライカM-P(Typ240) ELMARIT-M 21mm F2.8 ASPH. マニュアル露出(F16、1/500秒) ISO 200 WB:太陽光

かわいいピンク色のアパートがあったので、背景にしてパチリ。縦か横か構図に悩んだけど、とにかく交通量の多いリスボンでは、車が構図に入り込んでしまう確率が高いので、安全策をとって縦位置で撮影。手前に車がかぶらないタイミングで列車が来る直前に、ちょっとエスニックな雰囲気の女性が通ってくれたので、人物と列車がバランスいい配置になりました。スナップって楽しい!

機関銃のようなミラーレスの高速連写に慣れてしまうと、M型ライカで一瞬を切り撮るのは難しく感じますが、フィルム時代の撮影のような緊張感を久しぶりに感じながら1枚切り!まだ感覚は鈍っていなかったと、ひと安心。最新のレンズを使っている僕には、正直言ってライカレンズの味わいとかよくわからないのですが、どんなに古いレンズでも、歪曲収差の少ないことには驚かされます。このエルマリート21mm F2.8 ASPH.も、超広角ながら歪みがなく、いつも驚きます。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F4、1/4,000秒) ISO 200 WB:日陰

夕陽に照らされたリスボン大聖堂。そのハイライトをバックに、トラムのシルエットが浮かび上がるように撮影。トラムの道は車やバイクがひっきりなしに走るため、なかなかスッキリと電車だけを撮影できないのですが、このときは運良く車もなく、トラムを浮かび上がらせることができました。トラムにつかまってタダ乗りしているおじさんまできっちりシルエットになり、いい仕事をしてくれました(笑)。ズームだったら、無意識にもっと広角側にズームして教会全体を入れた無難な構図になっていたと思うので、ときには単焦点レンズのみで撮影するのも大切だなと感じた一枚です。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F2.8、1/1,500秒) ISO 200 WB:日陰

こちらは車内から撮影したもの。絞り開放にして、おじさんを無駄に美しいボケでパチり(笑)。遊び半分で撮ったけど、ズミクロンの美しいボケにより思いがけずいい写真になりました。プロの感想としては稚拙ですが、ライカで撮った写真って、味がありますよね。ボケ味なのか、カメラの描写力なのかわかりませんが、素直にそう思います。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F16、1/60秒) ISO 3200 WB:日陰

リスボンでは珍しいお寿司屋さんの前で、ぐて〜っと寝てるワンちゃん。飼い主さんはあえてフレームから外し、手前に線路と道路を配置しました。まるでワンちゃんが「俺、お寿司好きじゃないんだよなぁ……」って拗ねてるみたいなシーンになりました。ワンちゃんの表情を強調するために、モノクロで撮影しています。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F8、1/12秒) ISO 1250 WB:日陰

線路と線路が交差する平面クロス。その奥にフィアットのチンクエチェントが駐車しているのが実に絵になります。人がいない静寂感も素敵ですが、ちょっと物足りない感じがしたので、人物を入れて撮影しました。一番前の人が振り返りながら喋ってくれたおかげで、街の賑やかな感じが表現できた気がします。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F5.6、1/60秒) ISO 3200 WB:日陰

なんか昔の8ミリ映画の一コマのようなカットをモノクロで。実はここも車が通らないことがほとんどない目抜き通りなので、カップルが通るタイミングで車がほとんど写らなかったのは幸運でした。トラムは写っていませんが、こういう写真はむしろトラムがいないほうが人物が目立っていいと思います。そう考えると、列車が来ないときも、常に臨戦態勢でいることが大切なのです。

ライカM-P(Typ240) SUMMICRON-M F2/35mm ASPH. 絞り優先オート(F4、1/15秒) ISO 1250 WB:日陰

M型ライカを首から下げて、リスボンの街をフラフラ歩いていると、ついつい時間を忘れてしまいます。こんなスナップ撮影ではあえて三脚は持ち歩かず、ブレてもいいやくらいの気持ちで撮影するようにしています。M型ライカの機動性をいかしつつ、身もココロも身軽にして楽しむのが最大のコツかもしれません。

中井精也からのお知らせ

三ノ輪橋「ゆる鉄画廊」閉店のお知らせ

中井精也のギャラリー+ショップとして営業してきました三ノ輪橋の「ゆる鉄画廊」は8月22日を持ちまして閉店いたします。今後は固定の店舗は持たず、全国のギャラリーを行脚する「ゆる鉄画廊NOMAD」に移行いたします。営業最終日まで残り僅かですが、できるだけ中井精也が在廊いたしますので、ぜひお越しください。お得なセールも開催しております!
https://garou.ichitetsu.com/

ゆる鉄画廊NOMAD(ノマド)スタート!

「ゆる鉄画廊NOMAD」では、ノマド(遊牧民)のように全国を旅しながら、中井精也が自ら撮影した鉄道写真作品を展示・販売いたします。作品をさまざまな種類の額に入れて販売するほか、ここでしか買えない書籍やポストカード、グッズなど、バラエティーに富んだ商品をご用意してあなたの街を訪ねます。直筆サインや、記念写真撮影など、中井精也本人とふれあえる貴重な機会ですので、ぜひお越しください!

現在決まっている開催地は以下の通りです。詳細の記載がないものは、決まり次第ブログで告知いたします。

1.ギャラリー貸し小屋(吉祥寺・東京都)
2021年9月16日(木)〜9月23日(木)
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-33-2 吉祥寺プティット村
営業時間:11時00分〜20時00分(初日のみ13時開店、最終日のみ18時閉店)

まるで絵本の世界から抜け出してきたようなかわいいお店です。狭いながらも楽しい空間をお楽しみください。

2.両国駅イベント(両国・東京都)
2021年10月1日(金)〜10月3日(日)

3.ギャラリーpieni onni(岐阜・岐阜県)
2021年10月8日(金)〜10月10 日(日)
〒500-8178 岐阜市清住町2-4-2大一グリーンビル1F
営業時間:11時30分〜18時00分

岐阜駅のすぐ近くにあります。2020年7月に写真家の沢田ひろみさんがオープンした、とってもオシャレなギャラリーです。

4.しなの鉄道小諸駅(小諸・長野県)
2021年11月下旬予定

5.えちぜん鉄道福井駅(福井・福井駅)
2021年12月上旬

ゆる鉄画廊NOMAD図録発売開始

ゆる鉄画廊NOMADの2021年〜2022年の図録です。ミニ写真集のように作品をお楽しみいただけるほか、作品番号がついておりますので、番号で写真の注文も可能です。各地で開催するギャラリーはもちろん、ゆる鉄画廊オンラインストアでも発売中!
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12689193650.html

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

■TVレギュラー:「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム、「ヒルナンデス!沿線フォトさんぽ」/日本テレビ、「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合、中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS、カメラと旅する鉄道風景/CS各局