中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
初心者でも楽しく撮れる!「はじめての鉄道お立ち台ガイド」vol.04
ひたちなか海浜鉄道・銚子電鉄
2020年9月10日 06:00
鉄道写真の世界にたくさんある「お立ち台」と呼ばれる有名撮影ポイント。そうした条件の良い場所には百戦錬磨の鉄道ファンが多く集まるため、慣れていない方だとちょっと近寄りがたい雰囲気があるかもしれません。
この企画では、ふだん鉄道を撮らない初心者でも安心して撮れる、オススメの「お立ち台」をご紹介いたします。「撮影地が広く、たくさんの人が集まっても安心して撮れる」「カメラ位置が限定される車両アップではなく、風景と鉄道をからめて撮影できる」などなど、鉄道撮影がはじめてでも気楽に撮影できる条件のポイントを選びました。
今回も「絶景ポイント」と「ゆる鉄ポイント」に分け、作例をお見せしながら解説いたします。ふだんあまり鉄道は撮らないという人も、ぜひ鉄道写真にチャレンジしてみてくださいね!
絶景編:ひたちなか海浜鉄道「中根の田んぼ」(茨城県)
今回ご紹介するのは、茨城県を代表するゆる鉄、ひたちなか海浜鉄道です。常磐線の勝田駅から阿字ヶ浦まで14.3kmを結ぶ路線で、広々とした田んぼや畑の風景のなかをのんびりと走る、とても絵になる路線です。
沿線のなかでも僕が一番好きなのは、金上駅から中根駅にかけて広がる田んぼの風景。だいたい線路わきには電柱や電線がたくさんあって撮影するには邪魔なのですが、この区間は線路以外には何もなく、この作品のようにスッキリとしたローカル線の風景を撮影できます。どこにでもありそうな風景ですが、ここまでスッキリと撮れるポイントはなかなかありませんので、かなりオススメです。
城跡こそありませんが、田んぼの奥には昔お城があったという高台があり、そこから見下ろすと、広大な田んぼを入れて撮影することができます。繰り返しになりますが、電柱や道路、そして線路脇の設備などがない、ここまでスッキリとした風景はかなりレアだと思います。画面いっぱいに田んぼを入れ、畦のラインをうまく使いながら、奥行き感のある構図に仕上げました。
こちらは田んぼそのものではなく、色づいた田んぼの「色」を強調したかったので、1/4秒という低速シャッターで流し撮りしました。稲そのものはぶれて見えなくなりましたが、そのぶん秋らしい色彩を強調することができました。背景が暗い森なので、列車が浮かび上がるように写り、小さいながらも列車に存在感が出たのはラッキーでした。
この懐かしい車両はキハ205で、未だに現役で活躍しています。昭和40年製の古い車両なので、稼働日は少なくなっていますが、週末を中心とした運転日は以下のページで確認できます。
・ひたちなか海浜鉄道 週末列車
http://www.hitachinaka-rail.co.jp/weekday/
この中根の田んぼで一番オススメなのは、夜明けの時間帯です。季節によって線路の左右の位置は変わりますが、線路の奥から朝日が昇るので、ドラマチックな作品が狙えます。こちらは線路だけを捉えた写真ですが、それでも旅情たっぷりな作品に仕上がっているのがわかります。列車が来ない時間も、僕にとってはバリバリの撮影タイムなのです。
線路横の森のシルエットを入れて。列車の時間に合わせたかのように、太陽が昇ってきました。こういうときは太陽の露出に合わせてローキーにしたくなる状況ですが、列車の存在感を残すため、太陽が飛ばないギリギリの露出で撮影しています。
こちらも同じ森を入れて撮影していますが、太陽の位置が高くなったぶん、空の色は赤から金色に変わりました。朝の時間帯は色彩が次々と変化するうえ運転本数も(ローカル線としては)多いので、いろいろな構図にチャレンジすることもできます。こんなに線路際に邪魔な電柱などがない路線はほかにないので、しつこいですが(笑)、本当にオススメの撮影地です。
ゆる鉄編:銚子電鉄「19号踏切」(千葉県)
ゆる鉄編は、千葉県が誇る超絶ゆる鉄・銚子電鉄にあるちいさな踏切です。「19号踏切」という味気ない名称ですが、銚子らしい野菜畑のなかにポツンと立つ踏切は、まるで手作りの映画のセットのような味わいある風景なのです。撮影ポイントも、畑の真ん中の農道をぶらぶら歩いて5分くらいの位置なので、電車移動でも簡単に撮影できますよ。
列車を入れてふつうに写してしまうと、どうしても列車のほうが目立って踏切の存在感が薄くなってしまうので、ここではあえて列車をぶらして、踏切を目立たせました。
一面に広がるトウモロコシ畑が見事だったので、あえて画面全体をトウモロコシで埋め尽くして、列車がチラッと顔を出した瞬間を狙いました。電柱など雰囲気を崩しそうなアイテムは極力排除し、見渡す限りのトウモロコシ畑を表現してみました。今はなき、地下鉄丸ノ内線カラーの電車が、いい味を出してくれました。
撮影地につくと、どうしても構えやすい目線の高さだけで撮影してしまいがちですが、ここでは地面に寝転がって、超ローアングルで青空をバックに踏切を際立たせました。深い青をバックに浮かび上がる踏切がとても幻想的。それだけでもよかったのですが、ちょこっと列車が入った瞬間を撮影しました。2枚めは撮影シーンですが、暑さで行き倒れたおじさんみたいですね(笑)
踏切周辺にはのんびりした畑の風景が広がるので、気持ちのいい"ゆる鉄写真"を狙うことができます。味わい深い風景のなかに走る、どこか懐かしい車両。こうした風景が現代に残されていることは、奇跡のように思えます。
このときは野菜が収穫されたあとで何もない季節でしたが、それだけに傾いた電柱や、車両の味わい深さが目立ち、お気に入りの作品になりました。新幹線が300km/h以上で走る現代、こんなに電車がのんびりと走る光景は、まるで思い出の中に迷い込んだような魅力があります。いま銚子電鉄は廃線の危機にありますので、ぜひのんびりと電車に乗って、ぬれ煎餅を食べながら、懐かしい汽車旅を堪能してもらえればと思います。
次回も素敵な鉄道お立ち台をご紹介しますのでお楽しみに。
中井精也からのお知らせ
ゆる鉄画廊ギャラリーコーナーにて、中井精也写真展「鉄道写真印象派展」を開催します。
絵画に写実派と印象派があるように、僕は鉄道写真にも印象派があってもいいのではないかと考えています。この写真展では「ゆる鉄」をふくめて、僕が目指してきた鉄道写真の理想形を展示しています。中井精也ワールド全開の作品を、ぜひご堪能ください!
場所:ゆる鉄画廊ギャラリーコーナー
住所:〒116-0003 東京都荒川区南千住1-19-3
会期:9月4日(金)〜10月25日(日)
時間:13時〜18時
営業日:金〜日、第2・第4水、祝祭日
※祝祭日後の平日は振替休業日となる場合があります。直近の営業日は下記のページにてご確認ください。
https://garou.ichitetsu.com/