中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

春満開ゆる鉄撮影地ガイド!④

東北編

今回のジョイテツ!は春の鉄道撮影地ガイドの4回目。「東北編」として、メジャーなポイントから、僕の大好きな「ゆる鉄」ポイントまで、北関東〜東北地方の桜の名所を解説しちゃいます。現在新型コロナウイルスの影響が続いていますが、北日本の桜が満開になる4月下旬ごろには出かけやすい状況になっていることを願いながら、11のポイントをドーンとご紹介します。

烏山線 滝駅付近(栃木県)

ソニーα7 II 70-400mm F4-5.6 G SSM II(80mm) 絞り優先オート(F5、1/200秒) ISO 1000 WB:日陰(G+1) 風景

烏山線は東北本線の宝積寺駅から烏山を結ぶローカル線。のんびりした里山を走る路線ですが、一番の撮影ポイントは龍門の滝と列車を撮れるこのポイントです。龍門の滝は幅65m、落差20mの立派な滝で、滝を撮るだけでも絵になります。さらに道路を挟んで烏山線が走っているので、このように滝と列車を撮れる、全国的に見ても貴重な撮影地でもあるのです。

基本は滝と列車だけを撮りますが、春には桜並木が満開になるので、とても贅沢な風景になります。滝と桜と列車と川という、素敵な被写体が渋滞気味になりますので(笑)それらをバランス良く配置した構図をつくるのが、一番のハードルとなります。見頃は4月中旬。

水郡線 磐城石井〜磐城塙(福島県)

ソニーα7 II 70-400mm F4-5.6 G SSM II(105mm) 絞り優先オート(F16、1/160秒) ISO 800 WB:日陰

水戸と郡山を結ぶ水郡線と樹齢600年のエドヒガンザクラを撮れるポイント。この桜は風景撮影では有名な「戸津辺(とつべ)の桜」と呼ばれる桜で、老木ながら、息をのむほどの迫力ある咲きっぷりに魅了されます。木の奥には水郡線の線路があり、左に列車、右に桜という定番の構図のほか、このように枝越しに撮る構図もオススメです。撮影した日(2015年)は季節外れの雪が積もり、幻想的な春の風景になりました。見頃は4月中旬。

水郡線 磐城棚倉〜磐城浅川(福島県)

ソニーα7S FE 24-70mm F4 ZA OSS(38mm) 絞り優先オート(F4、1/125秒) ISO 2500 WB:太陽光

ここは水郡線としだれ桜を撮れるスペシャルなポイント。風景写真家の間では「花園の逆さ桜」として知られています。風景写真を撮る方は、画面右側から山をバックに撮影しますが、撮る位置を変えると、こんなふうに背景に水郡線が入ります。ただ、線路の手前に電柱や電線があり、実際はなかなか難しい条件。桜をメインとして、できるだけ邪魔な被写体が目立たないように切り撮りたいところです。手前の水面は水田ではなくため池。風のない日だと、みごとな水鏡になります。終日逆光気味で、夕方からサイド光になります。見頃は4月の中旬です。

磐越東線 夏井駅(福島県)

ソニーα77 II 70-400mm F4-5.6 G SSM II(420mm相当) 絞り優先オート(F25、1/13秒) ISO 200 WB:日陰

郡山といわきを結ぶ磐越東線。夏井駅の近くには夏井川千本桜と呼ばれる桜の名所があるほか、駅の周辺にも多くの桜の木が植えられており、春になると華やかな風景になります。ただ桜の木はたくさんあるのですが、なかなかコレだ!というポイントがなく、構図づくりに苦労する場所でもあります。これは千本桜のほうから駅の方向を撮影しているため、桜のボリュームは充分なのですが、背景がイマイチ。なんとか桜の枝で背景を目立たないように撮影しています。低速シャッターで窓の奥に駅名板が来る瞬間を狙いました。

また、ここは満開になる時期を読むのがとても難しい場所です。通常福島県は4月中旬に桜が見頃を迎える場所が多いのですが、ここは冷えこみが強いせいか満開になるのが周囲にくらべてとても遅く、ほとんど北東北と同じタイミングに満開になることもあります。こまめに情報をチェックして出かけましょう。

会津鉄道 湯野上温泉駅(福島県)

ソニーα7R II FE 70-200mm F2.8 GM OSS(151mm) 絞り優先オート(F5.6、1/640秒) ISO 200 WB:日陰

茅葺屋根の駅舎があることで有名な湯野上温泉駅。駅舎内には囲炉裏もあり、のんびりと過ごすことができます。この駅のまわりにはソメイヨシノやハナモモが植えられていて、作例のようにゴージャスな春の風景になります。上り列車と下り列車がすれ違う駅なので撮影チャンスが多く、列車の速度も遅いため、スマホでも楽に撮影できます。見頃は4月中旬。

東北新幹線 福島〜白石蔵王(福島県)

ニコンD600 AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR(400mm) 絞り優先オート(F27、1/20秒) ISO 200 WB:曇天

ここは東北新幹線と桜を入れて撮影できるポイント。並走する東北本線では伊達〜桑折に位置しています。墓地に向かう道からの撮影ですが、撮影ポイントと新幹線の高架の間にボリュームのある桜があるため、それを手前にいれて望遠レンズで撮影できます。オススメは流し撮り。できるだけ画面の大部分に桜がくるような構図にして、思い切って流しましょう。高架なので車両の下回りは見えませんが、作例のようにスピード感と季節感を合わせた写真が撮れますよ。ぜひチャレンジを。4月中旬が見頃。終日逆光です。

東北本線 大河原〜船岡(宮城県)

ニコンD600 AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR(175mm) 絞り優先オート(F5.6、1/500秒) ISO 200 WB:日陰

東北本線と桜を撮影する定番ポイント。特に山全体が桜で覆われる船岡城址公園からの俯瞰撮影は有名ですが、僕がオススメしたいのは白石川の築堤に沿って続く千本桜の遊歩道。ここは線路と桜並木と遊歩道が平行に続いているので、お花見に訪れた人を入れて撮影することができます。以前は船岡城址からこの遊歩道に渡る踏切などがなく、かなり遠回りする必要がありましたが、最近跨線橋ができ、簡単に城跡と遊歩道を行き来できるようになりました。絶景だけでなく、お花見を楽しむ人たちと合わせて撮影すると、より温かい春の風景になりますよ。ほぼ東西に線路が伸びているので、撮影する向きと時間によって、順光と逆光を選択することができます。見頃は4月中旬。

秋田新幹線(田沢湖線) 羽後長野〜鑓見内(秋田県)

ソニーα77 II 24-70mm F2.8 ZA SSM(67mm相当) プログラムオート(F2.8、1/1,000秒) ISO 800 WB:曇天

桜並木と秋田新幹線こまちを撮影できるポイント。作例を見ると赤い欄干の鉄橋を列車が渡っているように見えますが、赤い橋は手前の道路で、それをうまく重ねて撮影しています。「道の駅なかせん ドンパン節の里」のすぐ近くなので、そちらも合わせて楽しめます。新幹線とは思えないゆる〜い風景をお楽しみください。見頃は4月下旬。

由利高原鉄道 久保田駅(秋田駅)

ソニーα77 II 24mm F2 ZA SSM(36mm相当) 絞り優先オート(F2、1/800秒) ISO 200 WB:日陰

羽越本線の羽後本荘駅から、矢島駅を結ぶ第三セクターの由利高原鉄道。久保田駅のすぐ横に桜並木があり、無人駅の風景とからめて撮影できる「ゆる鉄」ポイントです。何の変哲もない無人駅なのですが、青くてかわいい掘っ建て小屋のような駅舎に一目惚れして、お気に入りのポイントになっています。

作例では列車が写っていますが、いっそもう列車のことは忘れて、このゆる〜い駅舎と桜だけを狙ってみましょう。駅舎から桜並木が続く位置関係なので、前ボケを入れ放題。列車を入れる場合は、作例のように駅舎の存在感がなくならない程度に入れるのがオススメです。満開になるのは4月下旬ごろ。午前中が順光になりますが、午後の光線のほうが撮りやすいと思います。

五能線 陸奥森田駅(青森県)

ソニーα77 II 70-200mm F2.8 G(202mm相当) 絞り優先オート(F32、1/25秒) ISO200 WB:太陽光

桜の木は1本しかありませんが、奥に岩木山がドドーンと聳える贅沢なポイント。五能線と平行して走る国道101号から撮影しています。よく見ると電柱や電波塔などがあり、なかなか難しい撮影地ではありますが、岩木山と桜を一緒に写せるのはとてもレア! この年は線路の手前に枯れ草が生えており、列車をそのまま写してしまうと、とても邪魔な感じがしたため、あえて低速シャッターで列車をぶらして撮影しています。ちょうどタラコ色の車両が来てくれたので、国鉄時代っぽいカットになりました。

ここは次にご紹介する津軽鉄道の芦野公園とほぼ同じ時期に満開になることが多いですから、掛け持ち撮影してみてはどうでしょう。終日ほぼ逆光ですが、山がはっきりと見える確率の高い午前中が狙い目です。

津軽鉄道 芦野公園駅(青森県)

ソニーα77 II 16-35mm F2.8 ZA SSM(24mm相当) 絞り優先オート(F9、1/500秒) ISO 400 WB:太陽光

津軽鉄道の芦野公園駅は構内を囲むように桜の木が植えられており、ボリュームある桜と列車を絡めて撮影できます。定番は津軽中里方にある踏切からのアングルですが、僕があえてオススメしたいのは、五所川原方にある踏切付近。こちらは公園に入るメインルートになっているのですが、公園に入ると、ものすごい数の屋台が並んでおり、春のお祭りらしい風景が広がっています。列車をすっきりと撮ることは難しいですが、なかなかこれだけの数の屋台と列車を撮れる場所もめずらしいと思います。どこか昭和の香りがするお祭りの風景と津軽鉄道をぜひ狙ってみてください。この年は4月末に満開になりましたが、GW前後になることもあります。

ここで紹介している見頃の時期は、あくまでも目安です。今年は桜の開花がかなり早い予報が出ていますので、ご確認のうえお出かけください。

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中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

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