赤城耕一の「アカギカメラ」
第111回:凝縮感に一目惚れ。直感的に“イケる”と確信した「Z50II」
2025年2月5日 07:00
久しぶりにニコンZにお越しいただきました。これまでZ6やZfcの使用経験はありましたが、いずれも筆者のカラダに合わず、別れを告げて、今日に至るまで、数本のニッコールZレンズの共に暮らしてきました。レンズはあるのにカメラボディがないので撮影できません。あたりまえのことですが、レンズを残したということはいつか相性のいいZにお越しいただくのは間違いないだろうと確信していたからであります。
お越しいただいたのはニコンZ50IIです。そうDX(APS-C)フォーマットの小型軽量ミラーレス機ですね。前機種2019年発売のZ50の後継機となります。
画像処理エンジンは上位モデルと同等のEXPEED 7になりましたが、Z50と画素数は変わらず有効2,088万画素のAPS-CサイズのCMOSセンサー搭載されており、もちろん像面位相差AFも搭載されています。
おまえさ、いちおうプロなんだからFXフォーマットのカメラのほうを選ばねえと恥ずかしいんじゃねえの?
と、いう意見は重々承知しとりますが、これは却下であります。
だって、筆者はOM SYSTEMやLUMIXのマイクロフォーサーズ機をアサインメントに投入しております。たしかにこれまで、スタジオさんや、被写体側になるタレントや俳優さんに、それらのカメラを使うと、珍しがられるということはたしかにあるのですが、フツーに写真撮影できますし、動画の撮りやすさもにもアドバンテージがあると考えております。
ならばニコンのDXフォーマットだと画質も十分すぎるくらいの余裕が出てくると考えます。実際に素晴らしく余裕を感じるのですが。
さらにDXフォーマット初のプリキャプチャーにも対応とか、より進化したAFを評価する人は多いですね。ただ、筆者にスペック云々のレビューはどなたも期待してはいないと思うので、適当なところで切り上げますが、そもそも栄光のFX(35mmフルサイズ)フォーマットのZではなく、なぜDXフォーマットの最新機種を選んだのは理由があります。
単純にいえばニコンZ50IIに一目惚れしてしまったからです。というのは大袈裟か、グリップを掴んだ時の心地よさに参ってしまったというのが正しい印象かもしれませんね。それくらい自分の手のサイズにあったわけです。
小型軽量であることは正義であります。それにZ50IIは“道具的”なボディサイズの凝縮感を感じました。見た時にイケると直感的に確信したカメラは筆者には最近では珍しいのです。
本機にもフラッシュは内蔵されていますが、その存在を完全に忘れてしまうボディ上部のデザイン処理もいいですね。ポップアップ箇所に隙間はたしかにあるのですが、さほど気にならないのは素晴らしいですね。
これで上部のダイヤルがモードダイヤルではなく、シャッタースピードダイヤルだったりすれば、筆者は本気で泣けるのではないかと妄想しました。でもこれは実現は難しいのだろうなと。そういうヤツはZfcを使えと。はいそうですね。
ボタンの押下感とかダイヤルの感触、メモリーカードスロットと、バッテリー室の同居問題、蓋のぶらぶら感、モードダイヤルの軽さなどに、お値段なりの感じはありますが、決してダメなわけではありませんし、エントリー機だけど頑張っている感じはあります。
こういう写りとは関係ないところまで気を使いはじめると、速攻で価格に反映されるというわけであります。カメラの価格が極端に高騰しているいま、Z50IIの価格設定はかなりの頑張りをみせていると言って間違いありません。エラいぞニコン!
今回は良い機会ですので、正直に告白しますが、筆者はZ系デザインはこれまで個人的にあまり好みではなかったのです。
たしかに一時期Z6やZfcと生活を共にしたこともあったのですが、前者はどうもピンとこなかったし、後者の場合、筆者はどうもヘリテージデザインのみを追い求めていたようです。
実際にZfcと生活してみて、自分で知ることになるわけですが、たとえばグリップ感の弱さなどは厳しいところです。もちろんアクセサリーなどで対応はできるものの、現行のデジタルカメラは当然、費用対効果というか、実用性もかなり重視しますから困ることが3回連続して起こるとイヤになったりするわけです。わがままです。仕方ありません年寄りですから。
ところがZ50IIはニコンがやりたいことが、ここにぜんぶ詰まっているように感じたわけであります。これはとてもいいことではないでしょうか。アサインメントでもプライベートでも分け隔てなくうまくやっていけそうです。
長いことカメラと戯れ、じゃない職業上、とりあえずカメラを必然のアイテムとしているわけですから、この直感というのはそうは外れないのであります。こういう価値観というのはカメラのクラスとは関係ありません。上位のミドルクラスやフラッグシップと比較してもZ50IIは満足できるものがあるわけです。
実際に撮影に持ち出した時の印象はどうでしょうか。筆者は「カメラはファインダー」であるとする考えを持っておりますが、内蔵のEVFは約236万ドットで倍率約0.68倍(35mm判換算)のZ50と変わらないけれど、輝度が約2倍となり、とくに屋外撮影では視認性の高い印象です。これはストレスはほとんどないですね。
AFの検出対象は5種あります。「人物」「動物」「鳥」「乗り物」「飛行機」。また「鳥」だけを独立選択できるのは本モデルの特徴ですが、「オート」にしておいても、こちらが頼んでもいないかなりの精度で合焦しますね。
勝手にAF作業をやっているという印象はありますが、高い確率で、こちらがお願いをしているわけでもないのに、筆者が見たい、見せたいところに勝手に測距点が飛んでゆき、ピタピタと張りついてゆくイメージで、撮影者の意思を読み取るような動作をします。他のメーカーのカメラでももちろん同等の優れた性能を持つ機種はあると思いますよ。けれどね、なぜかZ50IIのことを褒めたくなるわけです。「小さいのによく頑張ってるね、キミ」みたいな。
ためしに、顔の削れたお地蔵さんとか、壁のレリーフとか、地味な猫の置物とか、こういうものにでも、Z50IIくんはレンズの近い方の目に律儀に合わせてきます。真面目なヤツですね。
ならばいじわるして、こりゃ絶対ダメだろうなというもの、たとえばコントラストの低い白壁の角とか、枯れた空き地の草むらとか、連続した壁紙の模様などにレンズを向けても、「当然ここだろ? わかっているぜ」という感じで、かなりの高確率でフォーカスしてきます。
人物なんか後ろ姿で、画面内に小さく、レンズにそっぽ向いて存在していても、頭部にフォーカスしてきますからねえ。
「そこまでやらんでもいいんだよキミは。点景として人物を入れたかっただけなのだ」とボソボソとZ50IIに話しかけている筆者は、周りからみると危ない人に見えるかもしれません。
仮にこちらの意思とは異なるところに合焦すると、おお、「お前はココを見ろというわけか、なるほど」などと贔屓したくなるわけです。困るなあ。困らないけどね。
シャッターは動作音も含めて良い感じで“走り”ますね。Z50IIの動作音や操作性に重厚さを求める人は多くはいないと思いますが、メカシャッターもシャキシャキ動くし、実用上の問題はもちろんありません。
動作音に特別な印象はないのですが、かつてのニコンのエントリークラスの一眼レフよりも確実に良い気分で撮影できることは間違いないでしょう。一眼レフはエントリークラスの機種でも、ミラーを動かす必要もありますから、機構がフクザツでやらねばならない仕事をせねばならないことが、たくさんあったわけです。往時の設計者、製造の苦労が偲ばれます。いや、Z50IIが設計製造に手を抜いているという意味ではございませんよ。
話題の「ピクチャーコントロールボタン」はどうでしょうか。よく知りません。ふだん筆者は使わないんで。必要ならばNikon NX Studioで、撮影画像を編集すればいいと思うのですが、それではダメなのでしょうか。いくらでも時間使って気の済むまでイジくれますぜ。
なんでもボタンを押すだけで、ピクチャーコントロールの設定画面がふっと出現し、31種類のカラープリセットや、自分でカスタムした最大9つのカスタムピクチャーコントロールを反映できるそうです。へー。素晴らしいですね。頑張って表現の幅を広げるために使いこなしましょう(棒読み)。
なんせ、年寄りは新設のボタンにヘタに触れて、本体が爆発したり、暴走したり(しませんけど)、自分が設定したメニューが変わったりするとイヤなんで、なるべく触れずにそっとしておきたいわけです。興味がある方は優秀なレビューワーさんのページを参考にしましょう。
Z50IIくんを持ち出し始めてから、まだ日が浅いものですから、これから色々と不満、じゃない、改善点などを申し上げたくなる時がやってくるかもしれませんが、予想では不満に思うところは、そう多くはなさそうなのです。飽きやすい筆者ですから、決して将来にわたり保証はできませんけど、Z50IIは良いカメラだと思います。
非常に危険なのは、この勢いで、「よし、いけっ! FXフォーマットだ!」ということで、Z8に走り、購入してしまうことですが、FXフォーマットのカメラを使用することが必然となるアサインメントが発生する予定は現時点ではありませんから大丈夫でしょう。
いや、FXフォーマットのニコンZが堂々と使えるようなお仕事を広く募集しております。