写真を巡る、今日の読書

第9回:心の中だけでも豊かな旅を。眺めるだけでも楽しいガイドブック

写真家 大和田良が、写真にまつわる書籍を紹介する本連載。写真集、小説、エッセイ、写真論から、一見写真と関係が無さそうな雑学系まで、隔週で3冊ずつピックアップします。

心の中だけでも豊かな旅を

コロナ禍において最も不便で残念なことのひとつは、海外への渡航制限です。自由に撮りたい場所に行けず、会いたい人に会えない時間がこれほど長く続くとは思いもしませんでした。しかしながら、最近は少しずつ規制が緩和され、周囲にも海外ロケや旅行を計画する人が見られるようになってきたように思います。

海外へ向かうときに必要になる本といえばガイドブックですが、そこで頭に浮かぶのは「地球の歩き方」シリーズだという方は多いのではないでしょうか。英語が堪能な方の中には「ロンリープラネット」派だという言う方もいらっしゃるかもしれません。どちらにせよ、ガイドブックというのは眺めているだけで楽しいものでもあります。学生の頃は、行く予定もない国のガイドブックを、古本屋で日がな一日眺めたりしていました。

今回は、そんなガイドブックの中から、テーマ別にまとめられた本を紹介したいと思います。コロナ禍が終わったらどこに行こうかと考えながらページをめくれば、まずは心の中だけでも豊かな旅ができるはずです。

『W11 世界の祝祭』地球の歩き方編集室 編(学研プラス・2021年)

はじめは、「世界の祝祭」。祭りには、その土地の特徴が凝縮されます。衣装や食べ物、祈り方、祝い方、踊り、習慣など、大事に育まれ守られてきた文化の全てが集約される日でもあるでしょう。遺構や自然景観を目的に旅を計画するのも魅力的ですが、祭りを目当てにしてみるのも、特にスナップシューターにとっては面白いのではないかと思います。

普段の日常では撮影できない、特別なエネルギーに溢れた光景をレンズに収めることができます。2月は、ブラジルのリオのカーニバル。3月は、インドのホーリー祭といったように、月ごとに祭りの日を知ることができ、アクセス情報と共に、いつ訪れれば良いのかが分かります。

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『W07 世界のグルメ図鑑』地球の歩き方編集室 編(学研プラス・2021年)

次に紹介するのは「世界のグルメ図鑑」です。食事にはその国の伝統や文化、風土、歴史など様々な物事が含まれます。また、単純においしいものが食べたい。食べたことがない料理を食べてみたいというのは、旅の大きな目的である方も少なくないでしょう。私も、取材で訪れた場所では、必ずその土地の料理やお酒をいただくようにしています。

本書には116の国と地域の料理が紹介されていますが、面白いのは、探してみると日本でも体験できる料理が多いということです。また、日本のどこで食べられるかをまとめたガイドブックも付属しています。もちろん、実際にその土地で食べる経験にはかないませんが、世界の料理を知るという点では、多くの驚きと発見があるのではないかと思います。

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『地球の歩き方 ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方』地球の歩き方編集室 編(学研プラス・2022年)

最後は、「地球の歩き方」と「月刊ムー」のコラボレーションによる「地球の歩き方ムー」です。超古代文明や、未確認飛行物体、未確認生物といった世界の様々な不思議を軸にまとめられたガイドブックです。人知を超えた遺跡やパワースポット、未知の生命体を探す新たな世界への旅に出たい方には必携の書と言えます。

実際に現在行ける場所から、幻の大陸へのアクセス方法まで、雑学を交えながら知ることができます。旅の会話集として、地球人の共通語であるエスペラント語による「幽霊が出るので部屋を変えて」や「心霊写真スポットは近いですか?」などの日常会話が掲載されています。

無限の想像力を展開し、冒険心が刺激される一冊になるでしょう。未だ実際に誰も捉えたことがない被写体を探している方にもおすすめです。

大和田良

(おおわだりょう):1978年仙台市生まれ、東京在住。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。2011年日本写真協会新人賞受賞。著書に『prism』(2007年/青幻舎)、『写真を紡ぐキーワード123』(2018年/インプレス)、『五百羅漢』(2020年/天恩山五百羅漢寺)、『宣言下日誌』(2021年/kesa publishing)等。東京工芸大学芸術学部非常勤講師。最新刊に『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(2022年/インプレス)。