サンディスクに聞く「Extreme Pro」のこれから

Reported by 小山安博

 サンディスクは2月2日、これまでで最大容量となる128GBのCF「Extreme Pro」と、同社初のUHS-I対応SDHCメモリーカード「Extreme Pro SDHC UHS-I」を発表した。

 Extreme Pro CF 128GBは、これまで存在しなかった100MB/秒の転送速度を謳う。また、SDHCメモリーカードには、これまでCFでのみ展開していた「Extreme Pro」がラインナップに加わった。今回はこの2つの製品について、米SanDisk Retail Product Marketing DirectorのSusan Park氏に話を聞いた。

 なお、2つのカードの詳細については当該記事を参照して欲しい。(インタビュアー:小山安博)

Susan Park氏

――まず、CFのExtreme Proについて、従来の90MB/秒の転送速度から100MB/秒に高速化しました。

 今回のExtreme Proは、ハイエンドの一眼レフならびにプロのビデオ市場向けのカードです。VPG(Video Performance Guarantee)に対応しており、20MB/秒の連続書き込みをカード容量一杯まで行えることを保証しています。

 (高速・大容量のCFは)放送やプロフェッショナル向けのカムコーダーのようなハイエンド市場では、たとえばキヤノン製のプロ向けカメラが対応するなど、VPGのトレンドがあります。このカードは(現時点で)もっとも高速で、最大容量のカードになっています。

Extreme Pro CF 128GB。現行の同社製CFで最高速の100MB/秒モデルとして、ラインナップの頂点に位置する

――VPGのサポートは初めてですか。

 VPGでは連続20MB/秒の書き込みを保証するために審査を通過する必要があります。100MB/秒の速度を実現したことで、この20MB/秒をクリアできたため、VPGに対応できました。現在この基準をパスしているのはサンディスクだけです。サンディスクでは、今後CFのすべての容量でVPGに対応することにしています。

――SDカードの「Extreme Pro SDHC UHS-I」では、サンディスクでは初めてUHS-Iに対応しました。

 Extreme Pro SDHC UHS-Iは、SDカードでは初めてのProブランドです。SD3.0の規格に準拠したバスアーキテクチャであるUHS-I(Ultra High Speed-1)に対応し、45MB/秒の書き込み速度に対応しています。動画用の常時書き込み速度10MB/秒を実現した「U1」のロゴも取得しています。

 単純な速度だけでなく、内部のアーキテクチャも重要で、信頼性やデータの完全性を確保するため、新しい「パワーコアコントローラー」を搭載しました。これによってデータ管理機能が進化し、高速化に加えて破損したデータがあってもほかのデータに影響しないような保護機能を提供するなど、信頼性が向上しています。

 (SDカードに使われている)メモリアーキテクチャは、大量のデータを、完全性を確保しながら迅速に保存するために非常に複雑です。カードの転送速度だけでなく、連写時の記録も重要なので、カード全体でデータの流れを管理することが重要になっています。

 サンディスクは、カメラメーカーと緊密な関係を築いており、カメラからカードへのデータがどのように流れるかが分かっていて、メモリの構造も熟知しています。そのため、最高の性能を備える「Extreme Pro」カードを作ることができました。

Extreme Pro SDHC UHS-I。規格上最大104MB/秒の転送が可能なUHS-I規格を採用している

――UHS-Iの規格上はもっと高速化できると思いますが。

 将来的なことをここで話すことはできませんが、今までのサンディスクの製品を見てもらえば分かるとおり、常にパフォーマンスを向上させており、これは今後も継続していきます。今回の45MB/秒を選択したのは、一番いいバランスを取ったということで、このスピードと消費電力、そして実際にカメラで使ったときのこれまでの経験から得られる知見、それらのバランスを取ったため、このスピードとなっています。

――クロック数を上げて高速化するUHS-Iのやり方で最高速度を出そうとすると、実際にカメラのバッテリーに影響があるほど消費電力が増えるということでしょうか。

 そうです。仕様自体の最高速度は確かにもっと高速ですが、消費電力も大きくなるため、この速度を選択しています。

――新搭載のパワーコア・コントローラーは、今後Extreme Proでのみ展開するのでしょうか。

 パワーコア・コントローラーでは、従来よりも高速性や信頼性の向上などが実現できます。パワーコア・コントローラーには多額の研究開発費を投資しており、Extreme Proだけでなく、UHS-I対応のExtremeラインでも搭載していく予定です。

パワーコア・コントローラーは、CFのExtreme Proシリーズにも搭載しているメモリーコントーラー。4つのメモリーダイに同時アクセスする「クアッドコア・プロセッシング」(4段積層プロセッシング)技術を採用し、従来製品の2倍の処理速度を実現するとしている。UHS-I対応のExtremeラインにも搭載予定という

――SDXCバージョンのUHS-Iを採用する予定は。

 今、サンディスクのSDXCカードは、(15MB/秒の速度である)Ultraシリーズのみを出しています。これは消費者が(より大容量のカードを)購入しやすい価格を実現するためです。将来はもちろん、SDXCにUHS-Iの導入を検討していくと思いますが、時期的なものはコメントできません。

――さらに高速なUHS-IIの採用についてはどうですか。

 UHS-IIをサンディスクのカードに導入するには、まずホストとなる(カメラなどの)製品が対応したときに検討すると思います。UHS-IIの仕様自体は決まっていますが対応するホスト機自体がほとんどありませんので、コンシューマが本当にメリットとなるような時期にUHS-IIを出すと思います。

規格上318MB/秒をサポートするUHS-IIの概要。正式な策定は2011年春としている(写真は2011 International CESでSDアソシエーションが展示したパネル)

――今後、SDカードがさらに高速化してくると、CFがどうなるとお考えでしょうか。

 CFとSDは全く違う規格ですし、CFはパラレル、SDはシリアルインタフェースとアーキテクチャも違います。消費電力も異なりますし、カメラメーカーにとっても我々にとってもこうした違いは製品開発において考慮するポイントとなります。カメラに最適なカードはどれかといった点も考えなければなりません。今の段階で、SDがCFに取って代わるかどうかは分かりません。パフォーマンスだけでなく、デザインも含めて考える要素があるので、一概には言えません。

 コンシューマ向けのカメラに関してはサイズの問題もあって、SDカードが使われるようになっていますが、ハイエンドなプロ用のカメラに関しては、サイズよりもパフォーマンスが大事な要素だと思いますので、より高速なCFが使われるのではないかと思います。

――今後のCFとSDの住み分けは。

 SDがコンシューマ、CFがハイエンドというのがここ2~3年の使われ方でした。今の段階でどうなるか判断するのは非常に難しい。SDがプロ向けにももっと使われるようになるかもしれません。将来的にカードのスペックがどう進化していくのか、(カメラなどの)ホスト側がどう進化するのか分かりません。

――USB3.0対応リーダーについても教えて下さい。

 現在、USB3.0対応のPCは市場にそれほど多くはありません。2011年末から2012年初めぐらいに主流になるのではないでしょうか。そういう状態でカードリーダーだけ出してもしょうがないので、まだローンチはしません。将来はUSB3.0に移行するのは間違いないので、それにあわせて製品を出すのは間違いはありません。

――無線LAN内蔵のSDカードが市場にはありますが、サンディスクとしてのお考えを教えて下さい。

 無線LAN内蔵カードや無線LAN内蔵デジタルカメラもあり、現在は評価している最中で、まだ計画はありません。

 無線LAN内蔵カードの価格は、通常のSDカードより3~4倍高価になっています。無線LANのチップなどが必要なのでどうしてもコストは上がってしまいますが、通常のSDカードでそれだけの値段を出せば、より大きな容量のカードが購入できます。日本市場においては、無線LAN内蔵による利便性よりも、少しでも大きな容量をお客様が求めているのだと思います。(サンディスク マーケティング部ディレクターの大木和彦氏による補足)





小山安博

2011/2/23 11:16