何気ない風景をダイナミックに変える「絶景写真術」

写真家・GOTO AKIに教わる「渓流」写真

シャッター速度の変化で表情を引き出す

川の中に三脚を立てて撮影。水の流れでぶれないように三脚のまわりを大きめの岩で固定した。キヤノンEOS 5D Mark III/EF17-40mm F4L USM/40mm/絞り優先AE(F16、6秒、-0.3EV)/ISO 200/WB:太陽光

この夏、渓流など涼しげな場所へ出かけられる方も多いでしょう。このページでは、写真家のGOTO AKIさんが渓流や滝など水辺の絶景を撮るためのテクニックを紹介します。(編集部)

シャッター速度を変えてさまざまな表情を切り取る

渓流撮影で被写体となるのは、滝や川の流れ、岩場、紅葉など植物の色、射し込む光などだ。主題となる滝や川の流れは「ゆっくり」写すか「速く」写すか、シャッター速度で表現が変わる。0.5〜1秒ぐらいのスローシャッターでは、三脚を使用して川や滝の流れが滑らかに描写される。

逆に1/500秒より速い高速シャッターでは水面や滝の水しぶきなどが水のダイナミックな質感として描写される。露出は滝などは周囲に比べると明るい場所が多いので白とびをしやすく、マイナス補正することで滝のディティールも描写される。

滝だけにスポットライトのように太陽光が当たっている場合は、光が当たらない場所との露出差が大きすぎるので、HDR機能をオンにするか、直射光が当たらない時間帯や薄曇りの天候を狙おう。

生き物のような滝しぶき

暗い庭園にある水流が速い滝。ISO感度を1600に設定し、シャッター速度を上げて撮影した。キヤノンEOS 5D Mark II/EF70-200mm F4L IS USM/200mm/シャッター優先AE(F4、1/1,600秒)/ISO1600/WB:太陽光/10/27 9:53(晴れ)
しぶき撮影は高速シャッター+連写で!

被写体はスポットライトが射し込んでいる流れの速い滝。高速で流れ落ちる滝は肉眼ではそのディティールが観察できないので、高速シャッターで連写し、一番しぶきの形がよい一瞬の表情を後から選択しよう。

撮影時に注意したいのは明暗のバランスだ。明るい部分が画面の端にあると中途半端なフレーミングに見えるので、画面の中ほどに入る構図でとらえよう。明るい部分は暗い部分の存在によって引き立つので、明るいしぶきを主役とする場合は暗い部分を背景に入れると画面が引き締まり、バランスがよい。

ヒストグラムを表示して白とびを防ぐ

明暗差が強い撮影現場では、明るい部分が白とびしないように、ファインダーを見ながらシャッターボタンを半押しするなどして明るめの箇所(この写真では画面中央下)で露出を合わせよう。

写真のシャドウ部は多少黒つぶれしていても写真の明るい部分を引き立てる効果があるが、明るい部分が白とびしてしまうとRAWで撮影していても現像で救えないので撮影時の露出は重要だ。液晶モニターにヒストグラムを表示して撮影した画像をチェックすると、白とびと黒つぶれが直感的にわかるので便利だ。

しぶきの表情を高速シャッターで連続撮影。被写体の水の表情が変化すると同時に、ハイライトとシャドウが混在し露出が変わりやすい。マニュアル露出にするか、あるいは絞り優先AEなどで撮影する場合はAEロックで露出を安定させよう

マクロで覗く水の流れ

標準ズームレンズのマクロモードに切り替え、手ブレしないようシャッター優先AEで撮影した。キヤノンEOS 5D Mark III/EF24-70mm F4L IS USM/80mm(マクロモード)/シャッター優先AE(F7.1、1/100秒、+0.6EV)/ISO800/WB:太陽光/12/19 8:31(曇り)
幻想的な水と氷の世界をマクロ撮影で切り取る

マクロでの撮影は被写体を抽象化する効果があるので、幻想的な写真を撮りたいときに有効だ。冬の朝8:30頃、空は曇天。曇天の朝や太陽が昇る前の色温度が高い時間帯は、光が青く静寂な空気感を醸し出す。

撮影場所では至る所に氷の割れ目や窪みがあり、幻想的な水と氷の光景を作り出していた。使用するレンズをマクロモードに切り替えて氷の窪みへレンズを近付けた。もちろんマクロレンズでもよい。

構図は3分割法で、画面に安定感を与えるため、縦横を3分割したときの交点と氷の窪みを合わせて撮影。画面左上にシャドウ部を入れることでハイライトが相対的に明るくなり、メリハリのある画面構成が生まれた。

質感を意識した絞り値でやわらかに描写する

マクロは手ブレが目立ちやすいので、手ブレ補正スイッチはオン。手ブレをしない「1/焦点距離」秒より速いシャッター速度(1/100秒)で撮影するためにISO感度を800に上げた。シャッター優先AEでも絞りの数値にも気を配ろう。

マクロ撮影は背景がぼけやすいが、ぼけ過ぎると色だけの写真になってしまう。背景の質感をやわらかに描写するため、ここでは少し絞ったF7.1がちょうどよいと判断した。被写体がシンプルで単色なので、AFではピントが合いにくい。MFに切り替えてピントの欲しい氷の窪みに合わせた。WBは現場の青みのある色温度を写真でそのまま再現するため「太陽光」で撮影した。

神秘的なスローシャッターの滝

滝が落ちる水面のカーブを意識してカメラ位置を決定。滝の近くで撮影するとしぶきでレンズが濡れるので1枚撮影するごとにレンズクリーナーで水を拭き取った。キヤノンEOS 5D Mark III/EF24-70mm F4L IS USM/47mm/マニュアル露出(F18、30秒)/ISO320/WB:太陽光/5/24 14:53(曇り)
光を受けた部分のラインに着目してフレーミングする

上の写真は裏見の滝としても有名な鍋ケ滝。天気は曇天、午後3時頃の山の日陰のため、色温度の高い状況での撮影だ。ここで注目したポイントは滝が水面に落ちて明るくなっている箇所だ。

水面から音が聴こえてくるようなリズムを重視して、カーブを描きつつ画面右上から画面左下へ光が抜けて行くような構図を意識した。滝そのものは30秒という長秒でとらえることでシルクのように表現し、幻想的な光景へと仕上げた。滝の撮影は全体だけでなく、細部の表情を切り取ることで、バリエーション豊かな写真が撮れる。

仕上がり設定「風景」で幻想的な色彩に仕上げる

現場の光に応じて青みがかった色にすれば、より神秘的なイメージが高まる。ここでは、青みの強い幻想的な色彩を強調するために、仕上がり設定は「風景」(キヤノンEOS 5D Mark IIIの場合)に設定した。「風景」にすることで、メリハリのあるシャープな色合いに仕上がる。

また、絞りはF18まで絞り込むことで、光の筋をしっかり見せた。何をどう見せたいかで絞りを決定していこう。

滝が落ちた場所のラインに注目
滝を裏から撮影した現場カット。光のラインに視線が行くのがわかる

滝を撮影するときに広角レンズで全体を撮影することで満足していないだろうか。水のリズム、光と影のバランス、滝の流れるスピードに応じたシャッター速度の変化など、視点を変えるだけで写真のバリエーションは豊かになる。

70-200mm、可能であれば300-400mmぐらいまでの望遠レンズがあると、滝の細部の表情を切り取ることができる。滝では水だけでなく、光の明暗を意識するとシンプルだがメリハリのある左の写真のようなアイデアが浮かぶだろう。流れる水の動きを強調するときは、岩場などの動かない箇所を画面に少し入れて、「静」と「動」を対比させると効果的だ。光の明暗や色で滝を観察してみよう。

望遠レンズで細部を切り取る
滝を斜め裏から300mmで撮影。斜めに落ちる影のラインで明暗を2:1の比率にし、メリハリのある構図とした。露出は滝が白とびしないようマイナス補正した。キヤノンEOS 5D Mark III/EF300mm F2.8L IS II USM/300mm/絞り優先AE(F5.6、1/40秒、-0.6EV)/ISO1600 /WB:太陽光/12/22 12:23(晴れ)

滝撮影の装備はしっかりと!

滝をはじめ、水場は足を滑らせがちなので、渓流釣り用の滑らない靴などを準備しよう。水しぶきでレンズが濡れるので、レンズを拭く専用の布を用意して持って行くといい。

また、三脚は必須アイテムだ。筆者は軽量で振動に強いとされるカーボン製の三脚を使用しているが、川や滝の近くで水に入って使用すると微振動が気になってくる。三脚の脚を大きめの石などで固定し、さらにストーンバッグかカメラバッグを三脚に付けて重くして安定させるといい。

筆者愛用の渓流釣り用の靴「タビ」。指先の感覚に優れ、タビ型構造で脱ぎ履きもしやすい

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この記事は、インプレス刊の書籍「何気ない風景をダイナミックに変える 絶景写真術」から抜粋・再構成しました。「空」「水」「山と樹」「大地」の4つをテーマに、美しい風景をさらに魅力的な写真へと変化させるテクニックが満載です。

「何気ない風景をダイナミックに変える 絶景写真術」(インプレス刊、3月6日発売。120ページ。税別1,700円)。誰もが憧れる絶景シーンの撮り方を豊富な作例とプロならではの着眼点で解説します。

GOTO AKI

写真家、1972年生まれ。自然風景を抽象画のように切り取る独自の世界観で注目を集める。2015年キヤノンカレンダー作家。個展に「LAND ESCAPES」(2010)、「LAND×FACE」(2015)他多数。最新写真集「LAND ESCAPES -FACE-」がAmazonなどで販売中。

http://gotoaki.com/