特別企画

フォクトレンダーの「S/C→VMアダプター」とは?

ニコンS/コンタックスCレンズをソニーα7で快適撮影

 フォクトレンダーからニコンSとコンタックスC(旧コンタックス)用のマウントアダプター、「S→VMアダプター」および「C→VMアダプター」が登場する。内爪式のニコンSならびにコンタックスCマウントレンズが装着でき、ボディ側はVMマウント(ライカM互換マウント)を採用した製品だ。

 一見するとコンタックスCのカプラー(距離計連動式のマウントアダプター)に似ているが、実は決定的なちがいがある。それはヘリコイドを搭載していない点だ。内爪式のニコンS/コンタックスCレンズはピントリングがなく、本来はボディ側のヘリコイドでピント調整を行っていた。他ボディで流用する際はマウントアダプター側のヘリコイドが不可欠だ。ところがフォクトレンダーのS/C→VMアダプターはヘリコイドがない。当然ながら、このままではピント調整は不可能だ。

右がニコンS用、左がコンタックスC用のアダプターだ。それぞれフランジバックが最適化されている
カプラー(写真右)と並べてみた。マウント構造はほぼ同様だが、S/C→VMアダプターはヘリコイドがない

 ではどうやってピント調整するのかというと、本製品は同社のVM-Eクローズフォーカスアダプターと組み合わせて使用する。S/C→VMアダプターとVM-Eクローズフォーカスアダプターを二段重ねにして撮影するのだ。VM-Eクローズフォーカスアダプターは近接撮影用のヘリコイドがあり、これをニコンS/コンタックスCレンズのピントリング代わりに使用する。VM-Eクローズフォーカスアダプターのボディ側マウントはソニーEマウントなので、α7シリーズと組み合わせればニコンS/コンタックスCレンズのフルサイズ撮影が可能だ。

ボディ側マウントはVMマウントを採用。VM-Eクローズフォーカスアダプターと組み合わせる
レンズ、S/C→VMアダプター、VM-Eクローズフォーカスアダプターの順に取り付ける。アダプターの二段重ねだ

 さて、ニコンSとコンタックスCは構造の似通ったマウントだ。コンタックスCのマウントアダプター(カプラー)にニコンSレンズを付けて代用することもしばしばである。ただし、厳密にはフランジバックがわずかに異なっている。ニコンSマウントのフランジバックは31.95mm、コンタックスCマウントは31.75mmだ。コシナは一時期ニコンSマウントのレンズをラインアップしていたこともあり、ニコンSとコンタックスC、二本立てでの製品化となった。同社のCゾナー50mm F1.5(ニコンSマウント)をS→VMアダプターで試したところ、装着はジャストフィットでガタツキがない。また、無限遠もほぼジャストで気持ちよく撮影できた。

 一方、コンタックスCはオプトンゾナー50mm F1.5をC→VMアダプターに装着してみた。年代もののオールドレンズということもあり、取り付けは若干ガタツキがある。また、無限遠撮影はオーバーインフ気味で、拡大表示でていねいにピント合わせする必要があった。レンズの個体差によるところも大きいが、日頃マウントアダプターを使い慣れている人なら普段通りのフィーリングで使用できるだろう。

 すでにVM-Eクローズフォーカスアダプターを所有している人にとって、S/C→VMアダプターは安価にニコンS/コンタックスCレンズを楽しめるステップアップアイテムだ。ただし、S/C→VMアダプターとVM-Eクローズフォーカスアダプターをともに新規購入すると、国産の高品位カプラーと大差ない値段になってしまう。しかしながら、S/C→VMアダプターにはカプラーにはないアドバンテージがある。それはレンズの操作性だ。

レンズの固定はカプラーでおなじみの板バネ式だ。板バネを押下げてレンズを着脱する
ピント調整はVM-Eクローズフォーカスアダプターを使用。ヘリコイドをまわしてピントを合わせる

 内爪式のニコンS/コンタックスCレンズをカプラーに付けると、カプラーのヘリコイドがまわると同時にレンズ鏡胴自体も回転してしまう。そのため指標位置が変わり、絞り制御はお世辞にも快適とは言えない。また、絞りリングをまわした際、カプラーのヘリコイドもいっしょにまわってしまう。絞りを変えた後は再度ピントを微調整する必要があり、カプラーは何かと手間のかかるアダプターだ。

 その点S/C→VMアダプターとVM-Eクローズフォーカスアダプターの組み合わせは、ピント調整してもレンズ鏡胴は回転しないし、絞り調整によってピントがズレることもない。絞りリングとピントリングが独立しているので、撮影操作はいたって快適だ。この快適さこそ、S/C→VMアダプターとVM-Eクローズフォーカスアダプターのアドバンテージである。

 なお、コシナはCP+2014にて、VM-Eクローズフォーカスアダプターと組み合わせるヘリコイド未搭載の専用レンズをいくつか展示していた。VM-Eクローズフォーカスアダプターを核にしたレンズシステムという展開は、他社にはないアドバンテージである。S/C→VMアダプターは相当マニアックなアイテムだが、クローズフォーカスアダプターシステムの一翼を担う重要な製品と言えるだろう。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp