2012年冬:いま話題の“高級コンパクト”6機種を試す(画像編)
先日お送りした「操作編」に引き続き、今回は画像編をお送りする。繰り返しとなるが、比較したカメラは、OLYMPUS STYLUS XZ-2、キヤノンPowerShot G15、ソニーサイバーショットDSC-RX100、ニコンCOOLPIX P7700、パナソニックLUMIX DMC-LX7、FUJIFILM XF1の6モデルだ。
■レンズスペックと画角
まずは描写の要となるレンズのスペックを見てみよう。下記の焦点距離はいずれも35mm判換算の値だ。ワイド端の開放値が明るいのがLUMIX DMC-LX7。しかも広角端は他よりも広い24mm相当としている。テレ端が最も明るいのもLUMIX DMC-LX7で、サイバーショットDSC-RX100やFUJIFILM XF1といったスリムボディ系とは1段分ほど異なる。
PowerShot G15、STYLUS XZ-2などもテレ端側が明るく、使いやすいように思える。ボディサイズとのトレードオフとはいえ、ワイド端の開放値が明るくてもテレ端が暗いと少し残念な気分になるが、これらのモデルはそのようなことがないのもいい。また、COOLPIX P7700の7.1倍ズーム倍とテレ端の200mm相当で開放F4というのも、よく頑張ったといえる数値だ。
機種名 | 焦点距離(35mm判換算) | 開放F値 | 光学ズーム倍率 |
OLYMPUS STYLUS XZ-2 | 28-112mm | F1.8-2.5 | 4倍 |
ソニーサイバーショットDSC-RX100 | 28-100mm | F1.8-4.9 | 3.9倍 |
キヤノンPowerShot G15 | 28-140mm | F1.8-2.8 | 5倍 |
ニコンCOOLPIX P7700 | 28-200mm | F2-4 | 7.1倍 |
パナソニックLUMIX DMC-LX7 | 24-90mm | F1.4-2.3 | 3.8倍 |
FUJIFILM XF1 | 25-100mm | F1.8-4.9 | 4倍 |
・広角端
OLYMPUS STYLUS XZ-2(28mm相当) | ソニーサイバーショットDSC-RX100(28mm相当) |
キヤノンPowerShot G15(28mm相当) | ニコンCOOLPIX P7700(28mm相当) |
パナソニックLUMIX DMC-LX7(24mm相当) | FUJIFILM XF1(25mm相当) |
・望遠端
OLYMPUS STYLUS XZ-2(112mm相当) | ソニーサイバーショットDSC-RX100(100mm相当) |
キヤノンPowerShot G15(140mm相当) | ニコンCOOLPIX P7700(200mm相当) |
パナソニックLUMIX DMC-LX7(90mm相当) | FUJIFILM XF1(100mm相当) |
参考までに、それぞれテレ端でどこまで被写体に寄ることができるかも試してみた。絞りは開放、マクロモードのあるものはそれにセットし、合焦するギリギリの位置まで近づいて撮影している。テレ端の焦点距離や開放値がそれぞれ異なり、撮影距離の計測は行なっていないので目安程度だが、参考にしてもらえれば幸いだ。
ちなみに、センサーサイズの大きいサイバーショットDSC-RX100(1型)やFUJIFILM XF1(2/3型)はこの撮影条件ではやや不利。総じて1/1.7型の機種の近接撮影能力が高く、中でもSTYLUS XZ-2がテレ端でもっとも被写体を大きく画面に引き寄せることができた。
・望遠端(最短距離)
OLYMPUS STYLUS XZ-2 | ソニーサイバーショットDSC-RX100 |
キヤノンPowerShot G15 | ニコンCOOLPIX P7700 |
パナソニックLUMIX DMC-LX7 | FUJIFILM XF1 |
■多様なアスペクト比
アスペクト比については、いずれも4:3、3:2、16:9、1:1を搭載する。デフォルトはサイバーショットDSC-RX100(3:2)を除けば、すべて4:3のアスペクト比となる。注目はLUMIX DMC-LX7だ。他のモデルはデフォルトのアスペクトをベースに上下もしくは左右を切ってしまうため、画角はデフォルトよりも必然的に狭くなってしまう。しかしLUMIX DMC-LX7に限っていえば、アスペクト比を変えても画角の変わらない(1:1は除く)マルチアスペクト対応の撮像素子を搭載する。下記サンプルの画像サイズを見るとわかるが、例えばデフォルトの4:3より横に長い16:9では、天地は詰めるものの、左右を伸ばしたものとなる。3:2でも同様で、ある意味得したような気分になる。PowerShot G15は、先に紹介したアスペクト比のほかに4:5も搭載している。
・OLYMPUS STYLUS XZ-2
4:3 / 3,968×2,976 | 3:2 / 3,936×2,624 |
16:9 / 3,968×2,232 | 1:1 / 2,976×2,976 |
・ソニーサイバーショットDSC-RX100
3:2 / 5,472×3,648 | 16:9 / 5,472×3,080 |
4:3 / 4,864×3,648 | 1:1 / 3,648×3,648 |
・キヤノンPowerShot G15
4:3 / 4,000×3,000 | 3:2 / 4,000×2,664 |
16:9 / 4,000×2,248 | 4:5 / 2,400×3,000 |
1:1 / 2,992×2,992 |
・ニコンCOOLPIX P7700
4:3 / 4,000×3,000 | 3:2 / 3,984×2,656 |
16:9 / 3,968×2,232 | 1:1 / 3,000×3,000 |
・パナソニックLUMIX DMC-LX7
4:3 / 3,648×2,736 | 3:2 / 3,776×2,520 |
16:9 / 3,968×2,232 | 1:1 / 2,736×2,736 |
・FUJIFILM XF1
4:3 / 4,000×3,000 | 3:2 / 4,000×2,664 |
16:9 / 4,000×2,248 | 1:1 / 2,992×2,992 |
■歪曲収差・周辺減光
ディストーションおよび周辺減光については、ワイド端とテレ端で見てみた。COOLPIX P7700は「ゆがみ補正機能」のONとOFFで撮りくらべている。
・COOLPIX P7700
まず、そのCOOLPIX P7700だが、ゆがみ補正機能によって大きく異なる。OFFの場合ではワイド端でタル型のディストーションがはっきりわかるほどだが、ONにすると歪みをほとんど感じないほどに補正される。テレ端では糸巻き状のディストーションだが、こちらもONにすると同様に分からなくなる。周辺減光はワイド端、テレ端とも1段ほど絞ること解消する。
広角端(ゆがみ補正ON)
F2 | F2.8 |
F4 | F5.6 |
F8 |
広角端(ゆがみ補正OFF)
F2 | F2.8 |
F4 | F5.6 |
F8 |
望遠端(ゆがみ補正ON)
F4 | F5.6 |
F8 |
望遠端(ゆがみ補正OFF)
F4 | F5.6 |
F8 |
・PowerShot G15
ディストーションはどちらの画角も弱め。周辺減光も少なめで、開放から1段ほど絞るとほぼ完全に解消される。
広角端
F1.8 | F2 |
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
望遠端
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
・STYLUS XZ-2
こちらもディストーションが弱めながら現れる。周辺減光はワイド端、テレ端とも開放から1/3段絞るだけで大きく改善される。
広角端
F1.8 | F2 |
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
望遠端
F2.5 | F2.8 |
F4 | F5.6 |
F8 |
・LUMIX DMC-LX7
ディストーションは6モデルのなかでは強く現れるが、周辺減光はほとんど見受けられない。メニュー表示などにはないが、カメラ内部の機能としてヴィネットコントロールが内蔵されているのかもしれない。
広角端
F1.4 | F2 |
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
望遠端
F2.3 | F2.8 |
F4 | F5.6 |
F8 |
・サイバーショットDSC-RX100
ディストーションや周辺減光はわずか。こちらはどちらも自動補正が働いている可能性が高い。LUMIX DMC-LX7およびサイバーショットDSC-RX100のいずれも、1段ほど絞ると周辺減光は改善されるようだ。
広角端
F1.8 | F2 |
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
F11 |
望遠端
F4.9 | F5.6 |
F8 | F11 |
・FUJIFILM XF1
ディストーションは小さい。これもカメラ側の補正機能が働いているものと思われる。絞り開放時の周辺減光もわずかで、1/3段絞ると改善される。なお、総じてワイド端はタル型、テレ端には糸巻き型のティストーションが現れる。
広角端
F1.8 | F2 |
F2.8 | F4 |
F5.6 | F8 |
F11 |
望遠端
F4.9 | F5.6 |
F8 | F11 |
仕上がり設定をデフォルトとした場合の描写については、いずれも色の極端な偏りなどなく、デジタル一眼レフの絵づくりになれた目にも違和感のない滑らかな階調再現性だ。6モデルとも色あいなども含め、不自然な印象はない。強いてあげればLUMIX DMC-LX7がやや赤みが強く感じることと、COOLPIX P7700がやや落ち着いた絵づくりであることぐらいである。ただし、この2モデルの描写が劣るようなわけではなく、メーカーの思想の違いといってよいレベルだ。
そのほかとしては、PowerShot G15とサイバーショットDSC-RX100がよく似た仕上がりで、どちらもクセがない。FUJIFILM XF1は仕上がりに「Velvia」と名がつくように、どことなくフィルムライクな仕上がり。STYLUS XZ-2はもっともコントラストが高く、記憶色重視の絵づくりといってよいだろう。
■ISO感度
最後に高感度特性を見くらべてみよう。パソコンの画面で50%と100%(等倍)に画像を拡大して判断することにしたが、ISO400までなら6モデルとも等倍でもノイズなどほとんど気にならないレベルだ。コンパクトデジタルカメラとして考えるなら十分なものといえるだろう。
ISO800となると、100%拡大で1/1.7型センサーのCOOLPIX P7700、PowerShot G15、LUMIX DMC-LX7のノイズが強く現れはじめる。またISO1600となると、同じ1/1.7型のSTYLUS XZ-2も含め、50%拡大でもノイジー。合わせてエッジのにじみや解像感の低下が生じはじめる。なお、ノイズの質については、どれも似たような印象だ。100%で見ると2/3型の FUJIFILM XF1もノイズが強く現れはじめる。
サイバーショットDSC-RX100は、今回の6機種の中で最もセンサーが大きいだけに高感度特性も優位であるが、さすがにISO3200になるとノイズが強く現れはじめる。ノイズリダクションの強弱や現像処理などによっても変わってくるかと思うが、デフォルト設定での“撮って出し”のJEPGでは、描写を重視するならCOOLPIX P7700、PowerShot G15、STYLUS XZ-2、 LUMIX DMC-LX7 、FUJIFILM XF1の5モデルはISO400あたりまで、サイバーショットDSC-RX100はISO800までと考えておくとよいだろう。実際のところは、以下の実写サンプルでご判断いただきたい。
機種名 | センサーサイズ | 有効画素数 | ISO感度 |
OLYMPUS STYLUS XZ-2 | 1/1.7型CMOS | 1,200万 | 100-12800 |
キヤノンPowerShot G15 | 1/1.7型CMOS | 1,210万 | 80-12800 |
ソニーサイバーショットDSC-RX100 | 1型CMOS | 2,020万 | 125-6400(80〜25600) |
ニコンCOOLPIX P7700 | 1/1.7型CMOS | 1,219万 | 80-3200(6400) |
パナソニックLUMIX DMC-LX7 | 1/1.7型MOS | 1,280万 | 80-6400(12800) |
FUJIFILM XF1 | 2/3型CMOS | 1,200万 | 100-3200(12800) |
・STYLUS XZ-2
・PowerShot G15
・サイバーショットDSC-RX100
・COOLPIX P7700
・LUMIX DMC-LX7
・FUJIFILM XF1
2回に渡り、高級コンパクトといわれる6モデルを並べて見てきた。いずれも操作性、描写ともコンパクトデジタルカメラとして不足を感じるようなことがなく、その完成度の高さとともに、所有欲を満たすものばかりである。正直、このなかから最高の1台を選ぶことは至難ともいえるもので、最終的にはどのカメラを選んでも後悔することはないように思える。
古い話で申し訳ないが、フィルム時代の90年代、高級コンパクトがブームとなったときがあった。当時は10万円を越すものがほとんどで、誰しもが簡単に手を出せる代物ではなかった。しかし、デジタルの高級コンパクトといわれるものは、その半分以下の価格のものが多く、しかもフィルム代や現像代は当然かからないわけだから、敷居は格段に低い。これを機に、ぜひ高級コンパクトデジタルカメラの購入を検討してみてほしい。
【12月6日】記事初出時、レンズスペック表の中でサイバーショットDSC-RX100およびPowerShot G15の焦点距離表記に誤りがあったため、修正しました。あわせて画角サンプルのキャプションも修正しています。
2012/11/30 12:00