夏休み特別企画:ニコン「ファーブルフォトEX」を楽しむ

〜デジタル一眼レフカメラを装着可能な携帯型実態顕微鏡
Reported by若林直樹

右が今回の主役「ファーブルフォトEX」。左はD90

 夏休みの思い出と言えば、昆虫採集して標本を作ったり、虫や草の観察日記を一生懸命した自由研究を思い出す。中でも父に買って貰ったおもちゃの顕微鏡で見た世界は新鮮で、その思い出は鮮明に残っている(そのおかげもあって、生物関係の大学に行くことにしたのだ……)。

 その頃は下手なスケッチをしただけだったが、「写真にとって記録できたらどんなに楽だろう」って思っていた。しかし当時より、カメラを装着できる顕微鏡はプロ用カメラを買うくらいの値段になってしまう。手頃なものはないかと思っていたら、2003年に「ファーブルフォト」の発売を知った。ただしコンパクトデジカメ用ということもあり、ちょっと気になったものの、結局購入にはいたらなかった。

 ところが2月に発売された「ファーブルフォトEX」は、デジタル一眼レフカメラを装着できるのが特徴。そのうえ屋外でも使えるというのでさっそく購入した。これならファインダーでピント合わせもできるし、マクロの世界を高画質な写真に収められる。自分で楽しむのも良いが、お子さんの夏休みの自由研究に使ってみてはいかがだろう。きっと他人とは違う写真付き観察記録ができあがるだろう。

ファーブルフォトEXとは

 ファーブルフォトEXは、ニコンビジョンから発売された携帯型「双眼実態顕微鏡」だ。直接観察できる双眼と一眼レフカメラ装着用の「カメラマウント」が備わっている。このカメラマウントにオプションのアタッチメント(カメラアタッチメントNSA-L1専用)を取り付けて、ニコンデジタル一眼レフカメラを装着することができる仕組みだ。Fマウント仕様なので、ほぼ全種類のニコンデジタル一眼レフカメラを装着できるが、本体重量と形状の関係でD1〜D3は推奨されていない。

 ファーブルフォトEXは倍率20倍で固定され、双眼を使用して実視野は直径11mmだ。デジタル一眼レフカメラでの撮影範囲はそれより狭く、アタッチメントの中間リング数で倍率が変わる。数mm程度の動植物などを観察するのに適している。

本体にはグリップが用意され、底面には三脚穴がある。またツリヒモ取り付け部があるなどアウトドアでの撮影に適した仕様になっている
双眼には両方に視度調整が付いている。カメラでピントを合わせ双眼両方の視度をそれに合わせることで双眼で観察しながらでも撮影ができる仕組みだトルク調整機能付きフォーカスノブ。接地面から上方34.5mm、下方5.5mmの範囲でピント合わせができる。またトルク調整ネジがあるのでピントずれを防止できる
標準プレートを外し、地面の上の被写体を観察することもできる。またプレート裏にはカップが凹型のカップが設けられ、水生生物などの観察に使えるデジタル一眼レフカメラ用アタッチメント「NSA-L1」(オプション)。別にコンパクトデジタルカメラ用もオプションで用意されている
対物レンズ面には「観察光学系対物レンズ」×2と「撮影系対物レンズ」がある。照明装置として左右に白色LEDが搭載され、片方もしくは両方の照射が可能だ

D90に装着してみる

デジタル一眼レフカメラ用アタッチメント「NSA-L1」(左)とファーブルフォトEX(右)

 ファーブルフォトEXにデジタル一眼レフカメラを装着するにはオプションのカメラアタッチメント「NSA-L1」を使用する。アタッチメントには中間リングが2つあり、リングの数を変えることで倍率を変えられる。カメラアタッチメントをデジタル一眼レフカメラ(ここではD90)に装着してからファーブルフォトEXに装着する。この時奥まで入れしっかりリング固定ネジで固定することが必要だ。単純な作りなので難しいことはない。

 カメラ側の設定は絞り値は変更できないので、プログラムオート、絞り優先、マニュアルで撮影可能だ。撮影画像のコントラストが弱くなることが多いので、RAW現像で調整する方が良いだろう。

カメラアタッチメント「NSA-L1」は4つに分離。中間リングの数で撮影倍率が変わるD90にカメラアタッチメント「NSA-L1」を装着
アタッチメント装着部にあるラバーカバーを外し「NSA-L1」の付いたD90を差し込みアタッチメント固定ネジで固定するヘッド部分は360度回転可能。カメラも回転できるので、目的に合わせたアングル撮影ができる
アタッチメントのリング数を変えて方眼紙を撮影。写る範囲確認してみた。
中間リングなし(撮像面倍率3.5倍)。約6.3mm×4.3mmの範囲が写る中間リング1つ(撮像面倍率 4.4倍)。約5mm×3.3mmの範囲が写る中間リング2つ(撮像面倍率の5.2倍)。約4.5mm×3mmの範囲が写る

観察してみる

D90、リモートコードMC-DC1、アングルファインダーDR-6を装着

 さて、実際に試してみよう。スローシャッターで撮ることが多くなるので必ずリモートコードまたはリモコンを、そしていかなるアングルでもファインダーで確認できるようにアングルファインダーを用意したい。また被写体を採集する道具や観察するために載せるシャーレやピンセットなどあれば便利だ。普通のレンズと違い、絞りはないのでピント域は狭くピントをしっかり合わせる必要がある。まずはフラットな物を観察してコツをつかむとよい。

レリーズとアングルファインダーは必ず用意しようシャーレやピンセットなどがあると便利。フィルムケースは動き回る虫などを観察するのに使用する
ライトボックスなどがあれば透過光での撮影も可能だライトボックスは撮影範囲外の光を黒紙などで遮光した方がシャープな画像が得られる
木の幹などは三脚を使って固定して撮影するとよい

作例(静止画)

 それでは実際に撮った写真を見ていただこう。D90でRAW撮影、PhotoShop CS4(Camera RAW)でRAW現像してある。

ハイビスカス(左)の花粉(右)。中間リング2つで撮影。花粉には細かい突起物があるのにビックリ
木の幹についたコケ(左)を斜めから中間リング1つで撮影(右)
ジョロウグモの仲間。中間リングなし(中央、右)
小型のセミの抜け殻(左)。中間リングなしで顔の部分を撮影(右)
キノコ(サルノコシカケの仲間、左)。中間リングなし(右)
雑草の種。中間リング2つで撮影カエデの葉
クロメダカの卵。中間リングなし
ニンテンドーDS Lite(左)の液晶画面を中間リング2つで撮影(右)

作例(動画)

 動画を撮れるデジタル一眼レフカメラなら動きのある微生物を撮ってみるのも面白い。

もうすぐ生まれそうなメダカの卵を観察すると心臓が動いていることがわかる(D90で記録。36.4MB)

まとめ

 ファーブルフォトEXの撮影倍率は、本格的な顕微鏡と違い「見えそうで見えない物」を観察できることから、思わぬ発見も多い。マクロの世界は覗き始めたらキリがない。それも机の上でなく、野や山や海に携帯できて対象物を採集しなくても直接見ることができるのが、ファーブルフォトEXの面白い点だ。その不思議な世界をデジタル一眼レフカメラで撮れるからこそ観察記録ができるし、面白い作品作りもできそうだ。

 残り少ない夏休み、ニコンのデジタル一眼レフカメラをお持ちなら、お子さんと一緒にファーブルフォトEXで楽しんでみてはいかがだろうか。





雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や 癒される空間を求めて国内外を旅している。撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。HPはhttp://homepage2.nifty.com/nao-w/

2009/8/19 14:32