おもしろ写真工房

「水中宙玉」大ブレークか!?

意外にマッチする水の中と宙玉……水中写真家たちの力作を紹介!

「水中宙玉」(すいちゅうそらたま)とはカメラを水中ハウジングに入れ、水中で撮影する宙玉写真のこと。これが最近ブームになりつつあるのだ。しかしダイビングのできない私は、対抗手段として“水中を携帯する方法”を編み出したのであった。

海の中の生物は色鮮やかなものが多く、宙玉との相性がすごくいい。「水中宙玉」にはまるダイバーがただいま増殖中(撮影:萩原慎司氏)
これが潜れない私が考えついた「水面宙玉」写真だ。どうやって撮影してるかわかりますか?

 最初の出会いはFacebookだった。「水中宙玉」のグループができたという案内を受け、私も参加することにした。加わってみるとすでに大勢の人が「水中宙玉」を楽しんでいた。そしてその中心となっていたのが、管理人であり、千葉館山の「波左間海中公園」というダイビングサービスで働いている萩原慎司氏だった。

 萩原氏は水中でお金をかけずに魚眼撮影を行う方法として、玄関のドアスコープを使った撮影法を試していたが、そんな中で宙玉と出会ったとのこと。最初は自分1人で研究していたが、ダイビングに訪れるお客さんに作ってあげるようになり、どんどんはまっていったようだ。

 お客さんにはタダで作ってあげているので、材料は極力安いものを使っている。透明アクリルを円型に切るのも1枚1枚ノコギリで切っているのでよくみるとゴツゴツしたりしている。筒には自転車のタイヤ・チューブを巻いたりして手作り感満載なのだが、深い海の中でも耐えられるように水圧を考えたその仕組みは質実剛健だ。

 1番びっくりしたのは玉と円板を黒い両面テープで貼付けているところ。普通は写真に写る接着箇所を黒にしようとは思わないと思うが、玉の影に隠せば光が屈折するおかげで、接着箇所の黒い部分が写らなくなってしまうのだ。確かに多少接着剤がはみ出したりしても写りには影響ないことは知っていたが、ちょっと衝撃的だったな(笑)。

 まあ黒を使う必要はないけれど、萩原氏みたいな両面テープによる工作はありですね。接着剤によってはアクリルが曇ってしまったりすることがあるけれど、テープなら曇ることはないし、失敗しても貼り直すことが可能。玉を自作する場合にいい方法だと思います。

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アクリル板に空けた穴に黒い両面テープが貼ってある。ここに透明球を付ければ宙玉ができる。最初にこれを見た時は「なんで黒?」と、目がテンになりました

 萩原氏が水中宙玉を進化させたのは、宙玉をハウジングの外側に取り付けるという方法を考えだしたことだ。それまでは宙玉をハウジング内に収めるため、極力レンズと宙玉部分を短くする。ハウジングのポートを延長するというのが当たり前だった。しかしポートが延長できるようなハウジングばかりではないので、この宙玉外付け法の発明により、さまざまなハウジングへの対応が可能になったというわけだ。

 では実際にどうやって取り付けているのかというと、シリコン製の漏斗を使っている。私も現物を見るまでどんなものなのかよくわからなかったのだが、100円ショップなどで売られているもので、折りたたむとコンパクトになる道具だ。それを接続箇所に取り付けるだけなのだが、うまく付けると水圧も加わり水中で外れてしまうこともないそうだ。人のハウジングに工作をしているので、接着剤を使ったりすることができず考えた方法だとのこと。

これが萩原氏愛用の水中宙玉機材。カメラはソニー サイバーショットDSC-RX100。ハウジングはサンコーレアモノショップで購入したもの。宙玉の筒にはプラスチック製の保存容器を使用している
真ん中のピンク色の輪がシリコン製の漏斗。宙玉側とボディ側に同寸のものを取り付けた状態
宙玉側の漏斗をボディ側の漏斗の上にかぶせようとしているところ
漏斗がかぶさり、接続された状態。ボディ側の方が1回り大きめなので、ぴったりと取り付けることができた
上から巻いてある黒いゴムは自転車のチューブ。萩原氏の工作はなるべく安く作り上げるというのがポイント
これが海に持ち込む際の完成形。ストロボが取り付けられているが、この金具もホームセンターなどで買って自作した
ダイソーで売っている「シリコン 折りたためるじょうご」。よくこの漏斗を接続に使おうと思いついたものです(笑)。萩原氏エライ!
本来はこのように伸ばした状態で、液体を注ぐのに使うもの
これは一代前の機材。宙玉部分の前にはもう1枚アクリル板が入っている。表面硬度「6H」で傷がつきにくく、割れにくいそうだ。水中では頑丈さも要求される

 さらに最近では、宙玉部分が密閉されていれば、「レンズと宙玉の間に水の層があっても大丈夫」ということがわかり、シリコン漏斗ではなく、フィルターネジで取り付けるという方式も考案された。これはハウジングにフィルターネジが切ってあるタイプの製品の場合で、ステップアップリングなどを使って宙玉部をハウジングに取り付けるものの、シリコン漏斗による防水対策は施さないのだ。

 ネジの隙間から水が入り込み、薄い水の層ができるのだが、あまり写りには影響せず、工作が簡単になるということで、水中宙玉界で注目を集めているシステムだ。水中宙玉の場合、チップスターの空き箱で工作するというわけにはいかず、日夜技術革新のための努力が成されているのである。

OLYMPUS STYLUS TG-2 Tough用の機材。宙玉のボディ側にも丸いアクリル板が取り付けられ、空気が入らないようになっている。ハウジングの赤いリングの部分は海水が入ってもオーケーなので、シリコンじょうごは不要だ
萩原氏が潜っている館山の海ではソフトコーラル(軟らかいサンゴ)が見られる。黒潮と親潮の交じり合うところで、さまざまな魚と出会うこともできる。DSC-RX100、ISO400、F7.1、1/30秒、水中ライト(撮影:萩原慎司氏)
波左間海中公園にはマンボウも生息する。萩原氏はマンボウをコントロールできるマンボウ使いとしても有名だ。DSC-RX100、ISO125、F7.1、1/100秒、水中外部ストロボ(撮影:萩原慎司氏)
海底の空き缶から顔をのぞかせるニジギンポ。これは楽しいショットですね。DSC-RX100、ISO160、F7.1、1/80秒、水中外部ストロボ(撮影:萩原慎司氏)

どんどん広がる水中宙玉の輪

 萩原氏が「水中宙玉グループ」を作ってくれたおかげで、宙玉使いのダイバーたちと知り合うことができるようになった。塩入淳生氏は沖縄の久米島で水中宙玉写真を撮っている「宙玉人」(そらたまんちゅ)だ。

 いつもはFacebookできれいな海の写真を見せていただいているが、今回は機材の写真を提供してもらった。キヤノンPowerShot S100をRecseaのハウジング(WHC-S100)に入れた宙玉用の機材は、黒くてなかなかカッコいいですね。

 ハウジングと宙玉部は67mm径のネジで接続できるようになっており、この間は海水で満たされているとのこと。67mmというのは水中の機材としては汎用性の高いネジ径で、クローズアップレンズやワイコンにも水中で取り替えることができるそうだ。これはみんな真似したいんじゃないかな。

工作に使った材料。水圧に耐えられるように3mm以上のアクリル筒、塩ビパイプや耐圧性のあるクローズアップレンズ(INON社製)を使用。水中用でないクローズアップレンズを使う場合は、耐圧、防水対策をする必要があるとのこと
完成した外付けのレンズ部。「水中では光が減衰するためストロボを焚くことが多いのですが、ストロボ光の映り込みを防ぐため、宙玉の直前までビニールテープで遮光します」
ハウジングと宙玉部を接合した完成形。筒の部分が長いと浮力が強くなり耐圧性能も下がるので、クローズアップレンズを使って宙玉が大きく写るようにし、筒が短くなるようにするというのがポイント
ギンガメアジの大群。魚影が濃いなあ。PowerShot SX280 HS、INON UCL-165/330M67、ISO640、F8、1/200秒、AUTOフォーカス(マクロ)、INON Z240 ストロボFULL発光(撮影:塩入淳生氏)
波打ち際、透明度の高い水と青空のコントラストがきれい。PowerShot S100、INON UCL-100M67、ISO640、F8、1/200、Mフォーカス、INON Z240 ストロボFULL発光(撮影:塩入淳生氏)
ハナミノカサゴ。PowerShot S100、INON UCL-100M67、ISO640、F8、1/200秒、Mフォーカス、INON Z240 ストロボFULL発光(撮影:塩入淳生氏)

 岡空圭輔氏は関西在住で、和歌山県で潜ることが多いようだ。宙玉以外の水中写真もマクロの世界を繊細に撮った写真がなかなかいい感じ。機材は35mmフルサイズの一眼レフ機。ドームポートを使いすべてをハウジング内に収めるシステムだ。

カメラはEOS 5D Mark II。水中カメラハウジングはジリオン製。レンズポートは20mm、43mmの2つのエクステンションチューブとドームポートを装着することにより、宙玉が収まるようになっている
レンズはEF 40mm F2.8 STM(左側)。その先に4枚のクローズアップレンズが取り付けられている(No.10×1枚、No.3×3枚)。さらにその先の少しずつ広がっている部分はケンコーメタルフードで、長さの調整をしている。宙玉は77mmのセンターフォーカスフィルターに直径25mmのアクリル球を接着
オオカワリイソギンチャク。放射状に広がるバックのボケも美しい。EOS 5D Mark II、EF 40mm F2.8 STM、ISO400、F6.3、1/25秒、水中ライト(撮影:岡空圭輔氏)
ウミシダ。水中の生物って、まったく不思議な形状をしてますね。EOS 5D Mark II、EF 40mm F2.8 STM、ISO800、F16、1/80秒、水中外部ストロボ(撮影:岡空圭輔氏)
キンギョハナダイの群れ。ストロボに浮かび上がる姿がきれい。EOS 5D Mark II、EF 40mm F2.8 STM、ISO1000、F16、1/80秒、水中外部ストロボ(撮影:岡空圭輔氏)

水中宙玉に向いたカメラは、まず専用のハウジングが入手しやすいということ。それと接写に強い機種。どうしてもケラれてしまう(筒の内側が映る)場合はクローズアップレンズを使ってケラレを解消する。

またOLYMPUS STYLUS TG-3 ToughやRICOH WG-4といった機種は接写に強く、クローズアップレンズなしでピントが合い、筒も短くできるのでおすすめ。ほかにもこういう機種はあると思うので、見つかったらぜひ情報をお教えください。

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 レンズ交換式カメラの場合は、接写リングを使用する、コンパクトな広角系レンズのレンズを使うということで、レンズ長(宙玉や筒も含む)を短くすることが可能。さらにハウジングにエクステンションリングやドームポートが用意されている場合には、ハウジング側を延ばすことができる。

 以下は私が水族館で撮影した際の機材だ。フルサイズのカメラにAPS-C用のマクロレンズ(40mm)を使用している。クローズアップレンズや接写リングは不要。しかしこれが60mmとか90mmのマクロレンズの場合は、宙玉をレンズから離さないと(筒を延ばす)、玉が画面内で大きくなりすぎてしまう。

ニコン D600、AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G。メタルフード(ケンコー)や保護リング(八仙堂)で宙玉との距離を空けている(60mm程度)。接写リング等がいらないシンプルなシステムだ

 筒を短くする、背景にもなるべく広い範囲を写しこむ、玉の輪郭をハッキリ写す、という観点から言えば、24mm〜50mm(35mm判換算)ぐらいの焦点距離のレンズが、宙玉には向いていると言える。ただし、この焦点距離のマクロレンズというのは少ないので、マクロでない場合は接写リングの使用は不可欠。クローズアップレンズよりも倍率を上げやすく、筒を短くすることができる。

水族館で私が写したクラゲ。35mmフルサイズだと被写界深度が浅くなり、絞りF8でもこんな感じでボケるようになる。ニコンD600、AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G、ISO3200、F8、1/50秒
こちらは焦点距離25mmのレンズを使い、絞り11で撮影。球の輪郭がハッキリしてきた。水の色が違うのは照明の影響。ニコンD600、カールツァイスDistagon T* 2.8/25、ISO3200、F11、1/15秒

水中を携帯する?

 さて、今回はダイバー達による水中宙玉を紹介してきたわけだが、最後に私が思いついたアイディアを披露したい。Facebookの水中宙玉グループではよく「水没」という言葉を見かける。私はハウジング内に水が入ってしまうのかと思って、ちょっとビビっていたのだが、実際にはハウジングの外側に付けた宙玉部に水が入ってしまうということで、カメラが水浸しになるということではないと聞いて安心した。

 しかし、水没して宙玉が水面に浮かんだような写真がおもしろく、「これを再現できないだろうか?」と思った。宙玉部にわざと水を入れて持ち歩けば、陸でも水に浮かぶ宙玉のイメージを撮影することができるというわけだ。

 工作は簡単にテストするため塩ビ製の円柱型クリスタルBOXを使って行った。これならハサミやカッターで切ることができる。フタの部分に穴を空け、宙玉を取り付ける。底側にはステップアップリングを付けてカメラのレンズに装着。そして水が出し入れできるような穴を空ければ完成だ。屋外で使うのであれば多少水が漏れたって構わない。

 撮影は宙玉写真を撮るのと同じように接写リングを付け、クローズアップで行う。実際に撮影してみたのが以下のような写真だが、ちょっとおもしろいイメージが撮れたと思う。なんか水と宙玉というのは相性がいいみたいだな。水の量を調整したり、上向きにしたり下向きにしたりで、雰囲気も変わってくる。ネーミングは「水没宙玉」というのを考えたのだが、ちょっとネガティブな感じなので「水面宙玉」とした。「水中宙玉」ともどもよろしくお願いします!

工作に使った円柱型クリスタルBOX(80円)。ホームセンターにて購入
フタの部分に穴を空ける。この部分に宙玉を接着して撮影する
フタの部分に宙玉を接着し、レンズにはステップアップリングとテープでくっつける
上に空けた穴から水を注ぎ入れる。水の量は水位調整装置(スポイト)を使って調整する
「水面宙玉」で撮影した写真。悪くないですね。これだけ見た人は何だと思うかな? D5300、Ai AF Nikkor 28mm f/2.8D、ISO400、F8、1/500秒
水面と宙玉を少し離れさせてみた。こうすると玉が水の上に浮かんでる感じになるね。D5300、Ai AF Nikkor 28mm f/2.8D、ISO800、F16、1/50秒
下から上向きに撮影。水中から空を見上げているような感じだ。うーむ、これはなんだろう(笑)。D5300、Ai AF Nikkor 28mm f/2.8D、ISO400、F11、1/320秒

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 これは館山に行った時に宙玉で撮影してきた夕焼けのタイムラプスムービー。宙玉とタイムラプスの組み合わせは相性が良さそうだ。D5300でインターバルタイマー撮影し、Adobe Lightroomでつなげた。



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Facebookの「水中宙玉」グループに参加したい方は管理人さんにメッセージを。潜らない人の参加も可。
https://www.facebook.com/groups/832273703465153/

最近「ZEN NEWS」というのを始めました。写真関連の情報を配信の予定。(宙玉で打ち上げ花火を撮ると/宙玉工作に向いた接着剤について)
http://www.zenji.info/wp/

萩原慎司氏の勤めるダイビングサービス「波左間海中公園」
http://hsmop.web.fc2.com/

塩入淳生氏が運営するダイビングサービス「COLORCODE」
http://www.dive-colorcode.com/

岡空圭輔氏のブログ「Welcome to My Under Sea World」
http://white.ap.teacup.com/underseaworld/

上原ゼンジ

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos―まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「写真の色補正・加工に強くなる レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社)などがある。
上原ゼンジ写真実験室