【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FX700

〜フルHDに対応した「タッチ・ムービーデジカメ」
Reported by 小山安博

 LUMIX DMC-FX700は、6月に登場したDMC-FX70の上位機種に位置づけられるタッチパネルデジカメだ。新たにフルHD動画の撮影に対応するなど、各種機能向上が図られている。

 発売は9月1日。実勢価格は3万円前後。カラーはエクストラブラック、シェルホワイト、ラグジュアリーゴールド、ジュネスシルバーの4色。


タッチパネルで素早い操作

 主要なハードウェアスペックは前モデルDMC-FX70に類似している。レンズはライカDCバリオズミクロンを搭載し、焦点距離は35mm判換算24-120mm、F値はF2.2-F5.9。撮像素子は1/2.33型MOSセンサーで、有効画素数は1,410万画素だ。

 DM-FX70との大きな違いは画像処理エンジン。従来のヴィーナスエンジンHD 2からヴィーナスエンジンFHDへと進化。最大の違いとしては、従来のAVCHD Liteによる720p動画の撮影に加え、AVCHDのフルHD(1080p)での動画撮影に対応した点が挙げられる。本体上部にはステレオマイクを搭載し、Dolby Digitalによる録音も可能だ。

 やや丸みを帯びてポップなカラーバリエーションを用意したDMC-FX70に対して、丸みを抑えてカラーも落ち着いたデザイン。より上級モデルの雰囲気をたたえている。

 本体上部には電源スイッチ、ズームレバー一体型シャッターボタン、動画ボタンを配置。背面には撮影/再生切り替えスイッチ、MODEボタン、MENUボタンが並び、ボタン配置はDMC-FX70と変わらない。背面には3型約23万ドットのTFTタッチパネル液晶モニターを備えている。

本体上部、ほぼレンズの真上にステレオマイクを搭載する。メニューから風音軽減のオン・オフも選べるシャッターボタンの隣に動画撮影専用の動画ボタンを配置。形状的には爪で押し込むような感じになり、押しやすいというわけではないが、誤操作はなさそう

 タッチパネルを採用しているが、最小限のボタン類は配置されており、画面へのタッチとボタンの2種類の操作を併用する形になる。撮影時に主に使うのはズームとシャッター、動画ボタンの3種類。基本的な撮影設定は画面タッチで行なう形だ。

 画面左下に表示される「Q.MENU」アイコンをタッチすると、画面上下にパナソニック製カメラでおなじみのクイックメニューが表示される。さらに画面には露出補正、ストロボ、マクロ、セルフタイマー、ズーム、DISP、タッチシャッター、連写の各アイコンが並び、Q.MENUをタッチしなくても、直接各機能の設定を呼び出せるので、素早い設定が可能だ。

撮影時の画面。画面右側のアイコンに加え、Q.MENUのような青地バックのアイコンはタッチで設定できる。それ以外の画面内の場所をタッチした場合はその場所にAFポイントが移動する

 たとえば露出補正アイコンを押すと、画面上に大きくバーが表示され、設定したい露出補正値にタッチするか、補正バーを指でタッチして左右にスライドさせることで露出補正ができる。十字キーで1/3EVずつ変更するより、ダイレクトに変更できて使いやすい。

 そのほかの設定でも、一覧表示された項目からダイレクトに画面タッチで選択できるので、たくさんの項目があっても素早い設定ができる。この辺りはタッチパネルのメリットだ。

露出補正画面。指でスライドさせて直感的に変更できるQ.MENUのISO感度変更画面。カーソルを1つずつ変更するより、離れた場所でも一気にタッチして選択できる

 タッチパネル自体は、デジカメでは一般的な抵抗膜方式(感圧式)。スマートフォンで主流の静電容量方式は、軽く画面に触れるだけで操作できるが、爪やペン先などでは操作できない。それに比べて反応に劣る(が正確性は高い)感圧式だが、DMC-FX700の反応は良好。少し押し込むような触れ方は必要だが、それでも以前に比べれば反応はかなりいい。

 Q.MENUからは直接撮影モードは変更できず、ハードウェアのMODEボタンを押してモードを変更する。MODEボタンからはインテリジェントオート、シーンモード、P/A/S/Mの各モードに変更できる。FX70に比べると、マニュアル撮影モードが充実しているのが特徴だ。

モード変更画面。マニュアル撮影モードが選択できる

 A/S/Mの各モードに切り替えると、画面下部に絞り値やシャッタースピードが常時表示され、そこにタッチすると変更画面になる。画面上にシャッタースピードと絞り値のバーが表示されるので、バーにタッチして左右に指をスライドさせれば数値を変更できる。

 カメラの細かい設定を行なうときはMENUボタンを押す。記録画素数やISO感度など、Q.MENUから設定できるものもあるが、それ以外の細かい設定も行なえる。画面のUIは、タッチパネル用にアイコンを大きめにしているが、矢印アイコンをタッチして画面を切り替えるなど、インタフェースとしてはあまりタッチパネルらしいところはない。


動画撮影時に有効な「タッチでズーム」

 撮影時にもタッチパネルは有効に利用できる。AFモードは顔認識、11点、高速1点など複数あるが、いずれのAFモードにしていても、画面をタッチするとその場所にAFポイントを移動させるタッチオートフォーカス機能を搭載。そのままシャッターボタン半押しすれば、画面の任意の位置にAFを合わせられる。普段は11点AFで、中抜けなどの場合に自分でピント位置を指定したくなっても、いちいちAFモードを切り替える必要なく、画面をタッチするだけで指定の位置でピント合わせができるのは快適だ。

 タッチAFを利用すると、画面上に新たに指マークにOFFと書かれたアイコンが表示され、それをタッチすると元のAFモードに戻るので、シャッターボタン半押しすれば元のAFが動作するのも分かりやすくていい。

 さらに「タッチでシャッター」機能も搭載。画面上のアイコンをタッチすると動作し、画面の任意の位置をタッチするとそのままAF合わせから撮影までが行なわれる。画面タッチだけでシャッターボタンも使わずに撮影できるのは面白い。カメラブレしやすくなる懸念はあるが、スマートフォンのカメラライクによりすばやい撮影ができていい。こちらも画面アイコンのタッチでオンオフできるので分かりやすい。

タッチでシャッターを選択すると、画面上の指のマークがオレンジ色になり、タッチした場所にAF合わせを行い、自動でシャッターが切れる

 AFモードを「追っかけフォーカス」に設定すると、タッチした被写体にAF/AEが合い、そのままその被写体を追尾してAF/AEを合わせ続けるので、より追っかけフォーカスが有効に使える。

 珍しいところでは、「タッチでズーム」機能を搭載。画面上の「TW」アイコンをタッチするとズームレバー風の画面が表示され、Tにタッチし続けるとズームアップ、Wにタッチし続けるとズームアウトするので、タッチでシャッターと併用すると、シャッターボタンに触れずに撮影ができるわけだ。さらに1タッチでテレ端、ワイド端に一気にズーミングすることも可能。このタッチでズーム機能は、静止画撮影時よりも動画撮影時に、ズームレバー音が録音されてしまう弊害を押さえる意味で有効だ。その代わり、タッチの衝撃でカメラブレが起きやすい欠点もあるにはある。

タッチでズームを使うと、画面上にズームレバーが表示されてズーミング操作が行なえる。上下にある矢印とT/Wのアイコンをタッチすると、そのままテレ端、ワイド端まで一気にズームする

フルHD記録のAVCHDに準拠

 DMC-FX700はフルHD動画をサポート。パナソニックのコンパクトデジカメはAVCHD Liteの720p記録までだったが、今年からはフルHD解像度のAVCHDをサポートする機種が出てきている。本機もその一つで、AVCHD/Motion JPEGの2フォーマットから選択可能。AVCHDでは1,920×1,080ピクセル、1,280×720ピクセルを選択できる。ちなみにMotion JPEGでは1,280×720ピクセル、848×480ピクセル、640×480ピクセル、320×240ピクセルから選べる。

 AVCHDのフルHDは画質FSHが17Mbps、FHが13Mbpsのビットレートとなり、HDは画質SHが17Mbps、Hが13Mbpsとなっている。

 動画撮影用の動画ボタンが独立配置されており、どの撮影モードからでも1ボタンで動画撮影が可能になる。撮影中の光学ズーム、常時AFなど、一般的なコンパクトデジカメの動画としては十分な機能と画質で、HDMI端子から薄型テレビにつないで見ても十分きれいに表示される。

本体側面にHDMI端子を装備する

 前述の通り、動画撮影時のズーミングはタッチパネルを使えばズームレバー音も入り込まず、ワイド端からテレ端まで一気にズーミングもできて便利。さらに、動画撮影中にタッチパネルで触れた部分にAFを合わせることも可能で、タッチでシャッター機能も動作し、画面にタッチした場所にAFを合わせて写真撮影を行なうこともできる。

 AFの追従性はやや遅めという印象もあるが、一般的なデジカメ動画としては十分なレベルだろう。ムービー撮影時もおまかせiA動画機能が動作し、人の顔や風景、ローライトといった認識機能が働き、最適な設定で撮影してくれる。動画撮影機能として機能は豊富ではないが、簡単に撮影できる。


便利な高速連写

 基本的な撮影機能も充実している。A/S/Mのマニュアル撮影モードに加え、連写性能の高さも特徴だ。最近はCMOSセンサーを搭載したコンパクトデジカメでは、下手な一眼レフカメラよりも高速な連写が可能だが、DMC-FX700でも、最大記録画素数で約10コマ/秒の連写を実現している。

 DMC-FX700はMOSセンサーであり、構造上は動体撮影時に被写体が歪むという欠点があるが、メカシャッターを採用したことでこれを防ぎつつ、秒10コマの連写が可能になっている。1回の最大撮影枚数は15コマまでなので、1秒ちょっとの連写が可能ということになる。

 しかも撮影後には記録時間で待たされることなく、すぐに次の撮影に移れるのもポイントだ。

 AFが動作する連写は最大約5コマ/秒・100コマまで、メカシャッターを使わない場合、記録画素数は減るものの約40コマ/秒・最大50コマ、約60コマ/秒・最大60コマという高速連写も可能。

 面白いのは、おまかせiAモードに設定して「おまかせ連写」を設定したとき。AFが動作する約2コマ/秒の連写と、約10コマ/秒の連写が自動的に選択され、シーンに応じて連写速度が変わるのだ。

 基本的には被写体の動きが速いかどうかで連写速度を変えるようだが、カメラを速く動かすだけでも連写速度は変わる。しかも、2コマ/秒のゆっくりとした連写の途中で被写体が速く動き出すと、連写速度も速くなってくれる。

 いちいち連写速度を考えることなく、勝手に速度を可変してくれるので、決定的瞬間を逃すことなく効率のよい撮影できそうだ。

 再生時には連写した画像がひとまとめに表示される。その中から最適な1枚を選び出す、といったことも可能。スライドショーのような連続再生もできるので、コマ送り動画を見るように画像を閲覧することもできる。

 画像単独表示の場合は画面にタッチして横に指をスライドさせるフリック動作で前後の画像送りも可能で、iPhoneのようなスマートフォン並みとは行かないが、なめらかに画像送りができる。お絵かきなどの画像編集機能は特にないようだ。


まとめ

 タッチパネルに合わせたUIを採用したことで、撮影を直感的に行なうことができるのが特徴。特に、どのAFモードでも、画面にタッチすればその場にAFポイントが動き、そのまま撮影も可能というのは直感的で、いちいち設定を変えないとタッチAFが使えないというカメラよりも分かりやすい。

 MOSセンサーの採用による高速連写やフルHD動画撮影機能、マニュアル撮影機能など、カメラ機能としても十分な機能を備えており、タッチパネルの操作性とコンパクトデジカメのトレンドをそつなく押さえたモデルといえそうだ。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・画角

 超解像技術を使うことで、通常のデジタルズームよりも高画質なズームを可能にしたiAズームも搭載。

広角端
DMC-FX700 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
望遠端(5倍)
DMC-FX700 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F5.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 21.5mm
iAズーム(6.5倍)DMC-FX700 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F5.9 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 21.5mm

・感度
ISO100
DMC-FX700 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/80秒 / F4.5 / 0.0EV / WB:オート / 12mm
ISO200
DMC-FX700 / 約5.6MB / 4,320×3,240 / 1/160秒 / F4.5 / 0.0EV / WB:オート / 12mm
ISO400
DMC-FX700 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/320秒 / F4.5 / 0.0EV / WB:オート / 12mm
ISO800
DMC-FX700 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5 / 0.0EV / WB:オート / 12mm
ISO1600
DMC-FX700 / 約5.6MB / 4,320×3,240 / 1/800秒 / F5.6 / 0.0EV / WB:オート / 12mm
ISO2500
DMC-FX700 / 約1.2MB / 2,048×1,536 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / WB:オート / 12mm

・ハイダイナミックレンジ
ハイダイナミックレンジ:オフ
DMC-FX700 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/60秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm
ハイダイナミックレンジ:スタンダード
DMC-FX700 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/20秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm
ハイダイナミックレンジ:アート
DMC-FX700 / 約5.2MB / 4,320×3,240 / 1/15秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm
ハイダイナミックレンジ:B&W
DMC-FX700 / 約4.6MB / 4,320×3,240 / 1/15秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm

・カラーエフェクト

 「ハッピー」はおまかせiAでのみ選択可能。派手な色調になる。

カラーエフェクト:標準
DMC-FX700 / 約5.2MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
カラーエフェクト:白黒
DMC-FX700 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
カラーエフェクト:セピア
DMC-FX700 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
カラーエフェクト:クール
DMC-FX700 / 約5.6MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
カラーエフェクト:ウォーム
DMC-FX700 / 約5.8MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 4.3mm
カラーエフェクト:ハッピー
DMC-FX700 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/400秒 / F4 / 0.0EV / ISO250 / WB:オート / 4.3mm

・そのほか
DMC-FX700 / 約5.6MB / 3,240×4,320 / 1/60秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 4.3mmDMC-FX700 / 約5.6MB / 3,240×4,320 / 1/13秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm
DMC-FX700 / 約5.6MB / 4,320×3,240 / 1/40秒 / F5 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 13.8mmDMC-FX700 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/50秒 / F2.2 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 4.3mm
DMC-FX700 / 約5.5MB / 3,240×4,320 / 1/200秒 / F4 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.3mmDMC-FX700 / 約5.3MB / 3,240×4,320 / 1/400秒 / F5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 13.8mm
DMC-FX700 / 約4.9MB / 3,240×4,320 / 1/1,000秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.3mmDMC-FX700 / 約5.3MB / 3,240×4,320 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 15.7mm
DMC-FX700 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/800秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 7.4mmDMC-FX700 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/2000秒 / F6.3 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.3mm

・フルHD動画
  • 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
【動画】1,980×1,080 / 16.4MB
【動画】1,980×1,080 / 16.4MB(「タッチでズーム」機能)




小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2010/11/8 12:22