新製品レビュー

キヤノンEOS 80D(外観・機能編)

バリアングルモニターの中級機 強化されたAF機能に注目

キヤノンから発売された「EOS 80D」は、APS-CサイズのCMOSセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラである。

ファインダーでの像の見え方を重視した視野率約100%の光学ファインダーを搭載しながら、液晶モニターでのライブビュー撮影においても快適なAFが使える「デュアルピクセルCMOS AF」を採用するなど、幅広い撮影方法をユーザーに提供している。スペック的には、約2,020万画素であった前モデルのEOS 70Dから、約2,420万画素へと解像度を増すといった細やかな機能改善も行われている。

EOS 80Dの外寸と重量は約139×105.2×78.5mm、約730g(電池含む)と、EOS 70D(約139×104.3×78.5mm、約755g)とほぼ同等。筆者は前モデルのEOS 70Dも使用していたが、EOS 80Dを手にしてもほとんど違いを感じることがないほど、大きさも重さも似通っている。基本的な操作系にも変わりはなく、EOS 70Dから乗り換えてもすんなり移行できるだろう。

EOS二桁機のダイヤル&ボタン配置はEOS 80Dでも踏襲。メイン&サブダイヤルという2ダイヤル方式は中級機以上のEOSシリーズに採用されているもので、どの機種を手にしても違和感がない。
可動式の液晶モニターもEOS 70Dから引き継いでいる。二軸式のバリアングルモニターはローアングルやハイアングル撮影にとても便利。タッチパネル対応のため、指で触れた位置にAFでピントを合わせることができる。またタッチシャッターを有効にしておけば、タッチAF後にそのままシャッターが切れる。
リトラクタブル式のオートポップアップ内蔵ストロボ。ガイドナンバーは約12(ISO100・m)で焦点距離約17mm相当の画角をカバーする。ストロボを内蔵しているのもEOSのAPS-C機に共通する特徴。外部ストロボのワイヤレスコマンダーとしての役割も持つ。
使用できるメモリーカードはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。 高速バス規格のUHS-Iやeyefiカードにも対応している。
バッテリーはLP-E6Nが同梱。EOS 70DやEOS 5D Mark IIIに同梱のLP-E6も使用できる。充電器も共用可。
インターフェイスはHi-Speed USB相当のデジタル端子、HDMIタイプC、外部マイク端子、リモートスイッチ端子(RS-60E用)、ヘッドフォン端子。NFCアンテナの位置を示すマークもあり、これを用いてキヤノンの「コネクトステーション」にデータ転送が可能。またスマートフォンなどとのWi-Fi連携もEOS 70Dと同様に行える。
別売のGPSユニットGP-E2に対応。撮影画像に位置情報や時刻情報を付与できる。また電子コンパスで方位情報も得られる。

AF機能の強化

前機種EOS 70Dからの大きな進化のひとつに、AF機能の強化が挙げられる。まず光学ファインダー使用時のAF測距点が19点から45点に増えた。それに伴いAF測距範囲も広がったことで、構図に合わせてより最適な位置にAF測距点を設定できるようになった。これにより動きのある被写体でも測距可能範囲から逃すことなく追いかけやすくなる。

また45点の測距点が全てF5.6光束対応のクロスセンサーとなっており、さらにそのうちの最大27点でF8光束対応測距ができる。エクステンダーを使用した際に開放F8になるレンズでも、これらを利用してAF撮影が可能となっている。

ファインダー像に重なる液晶表示では、選んだAF測距点のほか、罫線、水準器も表示可能。これらは設定により表示/非表示を選べる。なお、EOS 80Dのファインダーの視野率は約100%となった。EOS二桁機としては初めてのことだ。

EOS 80Dでは、AF測距エリアを4つのモードから選択できる。45点の測距点から任意の1点を選択する[1点AF]、9分割から任意のゾーンを選び、その中の被写体にピントを合わせる[ゾーンAF]、ひとつのゾーンの面積を広げて3分割とし、ゾーン内の被写体にピントを合わせる[ラージゾーンAF]、45点の測距点からカメラが自動的に測距点を選択しピントを合わせる[45点自動選択AF]の4つだ。そのなかでも[ラージゾーンAF]はEOS 7D Mark IIにも搭載されているモードで、ミドルクラスの二桁機には初搭載となる。

撮影例1

EOS 80Dにて自転車ロードレースの撮影を行った。AFモードはAIサーボAF、AF測距点はラージゾーンAF(右側)に設定し、奥から手前に向かってくる選手に測距点を合わせながらカメラを振って連写した。

ラージゾーンAFでの撮影例・横位置
DPPにてAFポイントを表示

撮影例2

同じ設定でカメラを縦位置にし、上のゾーンのAF測距点を選手の顔に合わせ、奥から手前に向かってくる選手に測距点を合わせてカメラを振って連写した。

ラージゾーンAFでの撮影例・縦位置
DPPにてAFポイントを表示

これらふたつの作例はいずれもラージゾーンAFで追尾撮影したものだ。高速で向かってくる被写体だが、複数のAF測距点を面として連携させて被写体を捉えるラージゾーンAFと、動く物に連続してピントを合わせ続けるAIサーボの組み合わせにより、的確に選手にフォーカスを追随させ撮影できた。

EOS 80Dには被写体の色を検知して人物の肌色に優先的にピントを合わせる[色検知AF]も搭載されており、それが良好な結果を引き出していることも考えられる。

さらに「測距点乗り移り特性の設定」「45点自動選択時のAIサーボAF開始測距点設定」もEOS 80Dでは可能となっているので、これらを的確に設定すれば追尾撮影の精度をより高められるにちがいない。

また、EOS 80Dには「デュアルピクセルCMOS AFによる撮像面位相差AF」が搭載されている。一般的に一眼レフの光学ファインダーを使用してのAFと比べるとライブビュー時のAFは速度の面で不満があったが、撮像素子そのものに位相差AFセンサーの機能を持たせたデュアルピクセルCMOS AF搭載によりライブビュー時のAF速度は飛躍的に改善された。これはEOS 70Dにもあった機能となる。ときにハイアングルやローアングルでの撮影を要求されることもあるが、そのようなとき速くて確実なライブビューでのAFシステムはとても心強い。

ローアングルからのライブビュー撮影。ライブ1点AF+AIサーボAFで向かってくる選手にピントを合わせ続けて撮影。ある程度の速度であればライブビュー撮影でも追尾が可能。

新キットレンズ「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM」との組み合わせ

EOS 80Dの販売形態には、ボディのみの販売と、EF-S18-55 IS STMもしくはEF-S18-135 IS USMと組み合わせたレンズキットが用意されている。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMは、AF駆動用の超音波モーターとして新開発の「ナノUSM」が搭載された新レンズ。AFのレスポンスは十分に速く動きも静かだ。同レンズには電動ズーム化するための別売アタッチメントも用意されている。

キットレンズとして設定されているEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMと組み合わせたところ。EOS 80Dとのバランスは良い。女性の手でも大きすぎるほどではない。
別売のパワーズームアダプターPZ-E1は、EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMと組み合わせることで電動ズームレンズのように使える。
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMの鏡筒には、パワーズームアダプターPZ-E1と連動するための機構が設けられている。
パワーズームアダプターPZ-E1をEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMに装着し、EOS 80Dと組合せた状態

以下は、パワーズームアダプターPZ-E1でEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMのズームを操作したムービー。「FAST」とはいえどもその動きはゆっくりで、「SLOW」だとさらに低速になる。これはムービー撮影においてのズーム速度を想定してのものだろう。

今回は主にEOS 80Dの外観や基本機能などについてお話をさせていただいた。次回はいよいよ実際にフィールドにて実写した画像をもとに検証する。

撮影協力:JBCF 群馬CSCロードレース Day-1

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy