新製品レビュー

SIGMA dp0 Quattro(実写編)

まっすぐな線が美しい歪曲ゼロの超広角カメラ

SIGMA dp0 Quattroに、オプションの光学ビューファインダー「VF-51」とLCDビューファインダー「LVF-01」、ベースグリップ「BG-11」、付属フードを装着した状態

シグマの「dp0 Quattro」は、21mm相当の超広角レンズを搭載したレンズ一体型のデジタルカメラだ。dp Quattroシリーズの第4弾となる製品で、独自のFoveon X3ダイレクトセンサーが生み出す精細な描写に、ウルトラワイドレンズならではの広がりのある画角を組み合わせたことが見どころになっている。

同社による製品のキャッチコピーは「ディストーション・ゼロ」。無限遠撮影時の歪曲収差が1%以下であることをうたっている。一般的に、超広角レンズに多少の歪曲収差は付きものだが、それがほぼゼロなのは画期的といえる。

前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。

絞りごとの描写性能をチェック

まずは絞りによる写りの違いを見るために、カメラを固定した状態で絞り値を1段ずつ変えながら、同一の風景を撮影した。優雅でダイナミックな造形がたまらない河川敷の高架橋だ。

細部の表現力は、開放値のF4でも十分に高く、風景のディテールをきっちりと再現できている。画像周辺部の甘さもほとんど見られない。シャープネスが最も高いのはF5.6。それより絞り込むと回折の影響で徐々にぼんやりした写りになる。解像重視の場合、F11以上に絞るのは避けたほうがいい。

周辺部の減光は、開放のF4ではやや目立ち、絞り込むほどに低減していく。周辺減光を完全に抑えるにはF11まで絞る必要があるが、F11ではシャープ感が低下するので、周辺減光が気になる場合は後処理で補正したほうがいいだろう。

F4
F5.6
F8
F11
F16
F22

ディテールの表現力をチェック

さらに解像性能を確認するため、遠景がより細かく複雑な風景を撮ってみた。下の2枚は、ガラスのない展望スペースから捉えた浅草の全景だ。

1枚目は、電子水準器を見ながらカメラの左右と前後の傾きを最小限に抑えながらストレートな日の丸構図でスカイツリーを撮影した。ちょうど飛行船が浮かんでいたので、ツリーの先端に重なるタイミングでシャッターを切った。絞りはF4を選択。周辺減光は見られるが、シャープネスは非常に高い。遠くのビルの窓までくっきりと写っている。

ISO100 / F4 / 1/400秒

次は、同じ展望室にて、見下ろすアングルで交差点を写した。こちらは、仲見世の延長線上に水色の車や人力車が重なるタイミングで撮影している。絞りはF5.6を選択。色収差はそれなりに見られるが、周辺部までくっきりと再現する解像性能の高さはお見事だ。

ISO100 / F5.6 / 1/250秒

「ディストーション・ゼロ」をチェック

続いて歪曲収差を見るため、直線で構成された風景を撮影した。次の写真は、カメラを真上に向けて高層建築を下から捉えたもの。気持ちよく感じるくらい、垂直線や水平線が歪まずに写っている。この写真だけを見れば、超広角で撮ったと気付かない人もいるだろう。

ISO160 / F5.6 / 1/160秒

次は、カメラができるだけ水平アングルになるように注意しながら手持ちで撮影したもの。やはり歪曲はほぼ見られない。21mm相当の超広角で、ここまで直線がまっすぐに写るのは希少といえる。

ISO100 / F5.6 / 1/320秒

高感度の写りをチェック

撮像素子は、これまでのdp Quattroシリーズと同じくAPS-CサイズのFoveon X3ダイレクトセンサーで、画素数は有効2,900万画素となる。画像処理エンジンにはTRUE IIIを搭載する。

感度は、ISO100〜6400の範囲を1/3段ステップで選べる。感度を高めるほど暗部ノイズが増えるが、ISO400までは大きな問題にはならないだろう。解像感も維持できている。

ISO800では急激にノイジーになり、暗部はつぶれ気味になる。ISO1600ではノイズ低減処理の影響でシャープネスが損なわれ、発色もかなり悪くなる。画質重視の場合、ISO100〜400の範囲で使いたいところだ。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

作品集

最初の写真でも撮影した河川敷の高架橋を、より遠近感が引き立つカメラポジションから捉えた。焦点距離21mm相当が生み出すワイドな画角は、こうした巨大建造物の撮影にうってつけだ。視界の大部分を画面に収めることができ、その場で感じたスケール感や迫力をきっちりと表現できる。

ISO100 / F8 / 1/100秒

さらに、ストリートスナップ用にも使いやすい画角だ。下の写真は、歩行者が通過するタイミングを狙ったもの。平仮名で「ば」と書かれた文字の上に、逆光による長い影が重なり、道路上に複雑で美しい模様が生まれた。

ISO400 / F5 / 1/1,000秒

最短の撮影距離は18cmで、最大撮影倍率は1:7.8となる。もっと近寄って、1つのヒマワリのみをクローズアップで捉えることも可能だが、ここでは青空との色のコントラストを見せるために、少し引いた構図を選択した。茎の部分には、トライコームと呼ばれる産毛のような突起がリアルに写っている。

ISO100 / F8 / 1/1,000秒

螺旋階段を見下ろすアングルから狙い、吸い込まれるような造形美を表現した。手ブレ補正機構は非搭載だが、そもそも焦点距離が短いので、しっかりとカメラを支えて撮れば1/10秒前後の低速シャッターでも手持ち撮影は可能だ。

ISO500 / F4 / 1/5秒

こちらは、螺旋階段とその中央にある照明器具を真下から写したもの。こうした絵になる構造物を探しながら、本機1台のみを持って街をスナップするのは非常に楽しい。

ISO250 / F4 / 1/50秒

シグマdpシリーズは一眼レフやミラーレスカメラとは異なり、レンズシャッターを採用しているので、シャッター速度を高速にしてもストロボ光がシンクロする利点がある。下の写真は、小型の外部ストロボを上から照射し、絞りを絞り込みつつ1/1250秒の高速シャッターを使うことで、背景を暗く落として花の色彩と存在感を際立たせた。

ISO100 / F8 / 1/1,250秒

11種類が用意されるカラーモードから「モノクローム」を選択し、地面のテクスチャと歩行者のシルエットを強調した。やや大柄ボディかつ斬新なデザインなので、街中で撮影していると結構目立つ。だが、小さなカメラでこそこそ撮るよりも、目立つカメラで堂々と撮るほうが私には合っている。

ISO640 / F4 / 1/125秒

画角が広く、画面にいろんなものが写り込んでしまうのは、超広角レンズの難しさであり、面白さでもある。この写真では、並んだ3つの鉄橋によって空を覆い尽くすような構図を選び、その下に人影をアクセントとして配置した。

ISO400 / F4 / 1/1,000秒

風景やスナップ用に最適な画質とレンズ

今回の試用では、これまでのdp Quattroシリーズから受け継いだ精細なディテール表現力とクリアな描写を実感したうえで、超広角ならではの広がりのある画角を楽しむことができた。風景やスナップ用に最適な画質とレンズといっていい。

気になった点は、レンズ鏡胴の光沢部分に指紋やキズがつきやすいこと。屋外で連続して撮るとボディが熱くなりやすいことや、電池の持ちが心許ないこと、SDカードの出し入れが不自由なことなども改善して欲しい。画質に関しては高感度に課題が残る。

だが、これらの弱点が些細なこととして許せてしまうくらい、画質とレンズの魅力は高く、外観デザインの個性は突出している。嫌いな人はまったく受け付けないが、好きな人にとっては唯一無二の存在になるはずだ。被写体を選ぶだけでなく、撮り手も選ぶクセの強いカメラである。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。