新製品レビュー

Nikon 1 J5(実写編)

その瞬間を逃さない高速連写と4K動画

レンズはダブルレンズキットに含まれる1 NIKKOR 18.5mm f/1.8

ニコン「Nikon 1 J5」は、1型センサーを搭載したミラーレスカメラ「Nikon 1」シリーズの最新モデルだ。昨年発売した「Nikon 1 J4」から高速連写性能を受け継ぎつつ、自分撮り対応のチルト可動式モニターを搭載するなど外観デザインの一新を図っている。

撮像素子にはシリーズ最多画素数となる有効2,081万画素センサーを、処理エンジンには新開発「EXPEED 5A」をそれぞれ採用。機能面では、同社製デジカメでは初めて4K動画に対応したことがトピックだ。

前回のレビューでは外観と機能を確認したが、今回は実写編として写りの性能をチェックする。

標準ズームで遠景描写を検証する

まずは遠景の描写を見てみよう。下の2枚は、レンズキットに付属する標準ズーム「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM」を使って、ズームのワイド端とテレ端で撮影したもの。発色の調整機能であるピクチャーコントロールは、初期設定のスタンダードを選択した。

広角端
焦点距離10mm(F5.6)
望遠端
焦点距離30mm(F5.6)

どちらのカットも遠景の細かい部分までシャープに解像している。小型のエントリー機+キットレンズの組み合わせとしては悪くない描写だ。

気を付けたいのは、ここでは絞り値をF5.6に設定したが、これ以上絞り込むと回折の影響でシャープネスが低下すること。このあとの作例では狙いに応じて適宜絞り込んでいるが、解像を優先する場合はF5.6までに抑えるのがいいだろう。

ISO感度別の画質をチェックする

撮像素子には、高感度に有利な裏面照射型CMOSセンサーをNikon 1シリーズでは初めて搭載した。これまでと同じくローパスレス仕様で、センサーサイズは13.2×8.8mm(ニコンCXフォーマット)。有効画素数は2,081万画素。感度はISO160〜12800に対応する。

以下は、感度を変えながら撮影したJPEGデータだ。高感度ノイズ低減は、初期設定である「標準」を選択した。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO160
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

どの感度までを許容できるかは用途によって異なるが、ISO1600くらいまではノイズの粒はあまり目立たず、ノイズ低減処理によるディテール描写の低下もさほど気にならない。

なおISO6400とISO12800については、通常の高感度ノイズ低減のほかに、高速連写と画像合成によるノイズリダクション(NR)を選択することも可能だ。

豊富になったクリエイティブモード

クリエイティブモードは、静止画および動画にさまざまな効果を加えて撮影するモードだ。Nikon 1 J5では新たに、ポップ/レトロ/硬調モノクローム/ノスタルジックセピア/クロススクリーン/魚眼効果/美肌効果の7種類が追加され、全19モードが利用できる。

クリエイティブモード選択時のファイル形式は、JPEGのみが選択でき、RAW記録には非対応となる。また全19モードのうち半分は動画撮影にも対応する。RAW現像やPhotoshopなどの扱いに慣れた上級者には不要だが、ビギナーがちょっとした効果を手早く得たいときには役立つ機能といえる。

通常撮影
ポップ
レトロ
硬調モノクローム
ノスタルジックセピア
クロススクリーン
魚眼効果
美肌効果

新搭載した4K動画とタイムラプス動画を試す

モードダイヤルを「アドバンスト動画」の位置にセットすると、通常のフルHD撮影のほかに、4K動画、タイムラプス動画、スローモーション、早送り動画、ジャンプカット、4秒動画の6モードが選べるようになる。

・4K動画
解像度3,840×2,160ピクセル、フレームレート15fpsに対応。露出モードはP/S/A/Mを選択でき、音声はオートほかマイク感度を3段階から選べる。フレームレートが少ないのはやや残念だが、子どもの成長記録用などには生かせるだろう。

・タイムラプス動画
設定した間隔(5/10/30秒)で自動的に撮影を行い、その静止画をつないで動画として記録するモードだ。以下は、撮影間隔5秒で約15分間撮影したもの。

そのほかのスローモーション動画、早送り動画、ジャンプカット、4秒動画については従来機から継承したものだ。

・スローモーション動画

・早送り動画

作品集

カモメの羽ばたきを至近距離で撮影。高速タイムラグと高速連写を生かすことで、撮る直前にイメージしたとおりの瞬間を押さえることができた。シャッター速度は1/1,000秒に設定。胴体部分はくっきりと写る一方で、翼はほどよくブレて動感が出た。

1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / ISO160 / F5.6 / 1/1,000秒 / ±0EV / 10.4mm

公園の片隅に咲いていたシャガの花をクローズアップで撮影。こうした植物の接写では、Jシリーズ初となるチルト可動式モニターが重宝する。ピクチャーコントロールはコントラストを+3に設定し、シャドウ部を引き締めている。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F11 / 1/60秒 / ±0EV / 18.5mm

逆光で生じた長い影が横断歩道のパターンに重なるタイミングで撮影。ホワイトバランスは晴天にセットし、全体を少し赤っぽい色合いに染めて雰囲気を高めている。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F5.6 / 1/500秒 / ±0EV / 18.5mm

内蔵ストロボにコマンダー機能はないが、マニュアル発光に対応しているので、市販のスレーブ式外部ストロボを利用することが可能だ。上からスポット的に光を当てることで周辺を暗く落とし、日中ながら夜の書斎の雰囲気を演出した。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F1.8 / 1/60秒 / ±0EV / 18.5mm

蔵造りの町並みでおなじみの川越での1コマ。春の紅葉を近景に配置することで、その後ろにある黒い家屋と、白い洋風建築を際立たせた。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F5.6 / 1/200秒 / -0.3EV / 18.5mm

感度をISO800にセットし、単焦点レンズ「1 NIKKOR 18.5mm f/1.8」の絞り開放値で撮影。薄暗い水槽+動き回る魚という難条件だったが、AFはスピーディに作動し、狙いどおりのフレーミングとタイミングで撮ることができた。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO800 / F1.8 / 1/400秒 / ±0EV / 18.5mm

手水舎の龍神がシルエットになるカメラポジションを選び、画面内の色彩をモノトーンにまとめることで、細部まで作り込まれたチャーミングな造形を引き立たせた。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F8 / 1/250秒 / ±0EV / 18.5mm

今が見ごろのツツジの花を、あえてぼかして表現するために手前に小物を置いて小物側にピントを合わせた。電子式による高速シャッターに対応しているので、こうした明るい屋外シーンでも単焦点レンズの開放値が問題なく利用できる。

1 NIKKOR 18.5mm f/1.8 / ISO160 / F1.8 / 1/10,000秒 / -0.3EV / 18.5mm

子どもやペット撮影に最適なカジュアルなカメラ

今回の試用では、素早い連写と短いタイムラグによって、シャッターチャンス重視のスナップを楽しむことができた。

気になったのは、1コマ撮影の際、シャッターを切った後にアフタービューが表示されるまで一瞬待たされること。イライラするほどではないが、ほかのレスポンスが高速であるだけに、この表示の遅延が惜しい。気になる場合はセットアップメニューから「撮影直後の画像確認」をオフにして対処したい。

画質については、細かい部分までをきっちりと描く解像性能と、1型センサーにしては比較的良好な高感度性能を実感できた。

注意したいのは、小型軽量&高速レスポンスだからといってラフな撮り方をすると手ブレやピンぼけが生じやすいこと。2,081万画素センサーの高精細を生かすには、正確なピント合わせと慎重なホールディングが欠かせない。

Nikon 1 J5は、コンパクトカメラの感覚でカジュアルに持ち運びつつ、レンズ交換による表現の自由度と、一眼レフに勝る高速連写が味わえるカメラだ。

メカっぽくなった外観からは誤解しがちだが、決してマニアックなカメラではない。EVF非対応などエントリー機として割り切った仕様を理解したうえで、気軽に楽しむのがいい。ちょこまかと動き回る子どもやペットの撮影のほか、瞬間を切り取るスナップショット用に適している。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。