新製品レビュー

Nikon 1 J5(外観・機能編)

モダンデザインに変身したスタンダード級1インチモデル

Nikon 1 J5(シルバー)+1 NIKKOR 18.5mm f/1.8

ニコンのミラーレス「Nikon 1」は、高速レスポンスと小型軽量ボディを両立したレンズ交換式カメラだ。用途やターゲットに応じて「V/J/S/AW」という4ラインが用意されているが、中でも価格と性能のバランスを取り、より多くのユーザー層にアピールするスタンダードな製品が「J」シリーズである。

そんなJの最新モデル「Nikon 1 J5」が登場した。2014年に発売した「Nikon 1 J4」から外観デザインを変更し、新たにチルト可動式モニターやコマンドダイヤルを装備する。撮像素子や処理エンジンも改良し、新機能として4K動画やタイムラプス動画に対応。Nikon 1の新しい展開を感じさせる大きなモデルチェンジといっていい。

発売は4月23日。価格はオープン。発売時の店頭価格は、ボディ単体が税別5万1,000円前後、標準パワーズームレンズキットが税別5万6,000円前後、ダブルレンズキットが税別6万8,000円前後、ダブルズームレンズキットが税別7万4,000円前後となる。

今回のレビューでは、その外観と機能をお伝えしよう。

レトロでメカニカルな印象の新型ボディ

まず注目したいのは、一新されたボディデザインだ。これまでのJシリーズは、凹凸を最小限に抑えたフラットな形状が特徴だった。携帯性と収納性に優れ、ビギナーにも取っ付きやすいシンプルでスマートなデザインだったといっていい。

だが今回のJ5では、その路線が軌道修正され、グリップ部やボタン類が突き出た、より高機能を感じさせるメカっぽいデザインに生まれ変わった。どちらを好むかは人によって分かれるが、操作感が向上したことは確かだ。

動画ボタンのまわりにコマンドダイヤルを新装備。前面から消えた「1」のロゴマークは液晶モニターの上枠に小さく印刷されている

具体的には、従来は平坦だったボディ前面にゆるやかな膨らみが加わり、多少だがグリップ感がよくなった。天面に埋め込まれるように配置されていた、モードダイヤルとシャッターボタン、電源ボタンについては、それぞれがボディから突き出た形状になり、指へのフィット感が向上した。さらに、天面右端にコマンドダイヤルを、前面下部にファンクションボタンを新設したことや、電源をボタン式からレバー式に変更したことも、使い勝手を高める改良といえる。

意匠の面では、これまでのNikon 1では欠かせなかった、シリーズ名である「1」のロゴマークがボディ前面から消えたことに気付く。グリップに膨らみを与え、前面にシボ革風素材を張り付けたため、ロゴを配置するスペースがなくなったのかもしれない。

標準ズームを装着した状態。カラーバリエーションは、写真のシルバーのほか、ブラックが用意されている
親指が当たる部分にもシボ革風の素材を配置し、ホールド感を高めている。背面のボタン類は右手側に集中配置。Wi-Fiボタンが新設されている
Nikon 1 J4に比べると、幅と高さはわずかに縮小し、奥行きは3mmアップ。重量は33g増加した。それでも気軽に持ち運べる小型軽量ボディだ

ちなみにメーカーでは、この新デザインを「モダンなデザイン」とうたっている。モダンとは、現代風であると同時にレトロとも解釈できる言葉である。確かに、近年流行のクラシックカメラ風味が漂うデザインだ。素材は樹脂が主体で高級感こそあまりないが、手のひらに収まる小ぶりなスタイリングには、どことなく可愛らしい雰囲気もある。

キット付属の標準ズーム「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM」は、電源に連動して自動的に沈胴する仕掛け
左側面には、ストロボのポップアップボタンを装備。端子カバー内には、これまでと同じくUSB端子とHDMI端子を備える

液晶のチルト可動化で構図自由度が向上

外見上のもうひとつの見どころは、Jシリーズでは初めてチルト可動式の液晶モニターを採用したこと。可動の角度は、上に最大180度、下に最大86度に対応。ハイポジションやローポジションからの撮影が無理なく行えるほか、自分撮り用にも役立つ。

液晶の仕様は、3型/約104万ドットのTFT。これまでと同じくタッチパネルに対応し、タッチ操作による撮影やAFエリアの移動などが行える

セットアップメニューで「自分撮りモード」をオンにした場合は、液晶を上に180度回転させると、画面上に「美肌効果」「セルフタイマー」「露出補正」のアイコンが表示され、それらをタッチして各機能を素早く設定可能になる。最近のトレンドに沿った新機能だ。

液晶表示の精細感と追従性は問題のないレベル。ただし表面の反射はやや大きめで、明るい屋外では視認性が低下する。液晶の明るさは±3段の範囲で調整できるので、屋外では+側に設定して対応したい。

セットアップメニュー内にあるモニター表示の設定画面。ここで、液晶の明るさや格子線表示、各種情報表示の内容を切り替える

気になったのは、上位のVシリーズとは異なり、液晶上に表示される各種撮影情報のオン/オフを切り替えるためのDISPボタンがない点だ。情報表示を切り替えるには、セットアップメニューをいちいち呼び出す必要がある。しかも、撮影モード時は情報をすべて非表示にはできず、画面の端にある被写体に文字が重なって見えにくくなる点も不便に感じる。このあたりは割り切りが必要だ。

充実したクリエイティブモードと動画機能

新機能としては、自動的に連写に設定されるスポーツモードや、人物写真に対して撮影後に各種補正を施すメイクアップ効果を搭載した。また、J4やJ3では省かれていたインターバルタイマー撮影機能が復活した。

動画関連では、解像度3,840×2,160ピクセル、フレームレート15fpsで撮る4K動画や、静止画をつなぎ合わせて動画に仕上げるタイムラプス撮影に新対応している。

メイクアップ効果の設定画面。小顔やビッグアイ、ホワイトアイ、クマ軽減、歯のホワイトニングなど8種類の効果を適用できる
アドバンスト動画モードのひとつとして4K動画撮影が用意。露出はP/S/A/Mが選択でき、内蔵マイクの感度調整や光学手ブレ補正にも対応する

画像や動画にエフェクトを加えるクリエイティブモードについては、ポップやレトロ、硬調モノクローム、ノスタルジックセピアなどが追加され、全19モードが用意。Wi-Fi機能は、NFCによる接続が可能になった。

操作面では、モードダイヤル内に「P/S/A/M」の各モードが加わったことが従来との違いだ。これまでのJシリーズでは、プログラムオートとシャッター優先オート、絞り優先オート、マニュアル露出の各モードを選ぶには、モードダイヤルを「クリエイティブモード」に合わせたうえで、メニュー画面から選択する必要があった。それがダイヤル操作で素早く選択可能になったのはありがたい。

ボディ天面には、内蔵ステレオマイクや動画撮影ボタンを装備。モードダイヤルではオートからマニュアルまで10モードが選べる

シャッター速度や絞り値は、天面に新設したコマンドダイヤルと背面のロータリーマルチセレクターを使ってダイレクトに調整できる。さらに前面に設けたファンクションボタンでは、初期設定の場合、ISO感度設定の呼び出しができ、必要に応じて割り当てのカスタマイズも可能だ。

これまでのJシリーズは見た目のシンプルさを重視していたが、本機ではボタンやダイヤルが追加され、各種機能へのアクセス性が向上した

一眼レフに勝る連写スピードを継承

Nikon 1に共通の特長である高速連写は、Nikon 1 J4の性能を受け継いでいる。すなわち、AF追従で最高約20コマ/秒、AF固定で最高約60コマ/秒に対応する。JPEGだけでなく、RAW+JPEGでもこのハイスピードで撮れるのは優秀だ。

十字ボタンの右側を押すと、連写/セルフタイマーの設定画面が表示。最高で約60コマ/秒という動画に匹敵する高速連写が楽しめる

注意したいのは、連続撮影ができる最大のコマ数がこれまでと同じく20コマであること。上位のNikon 1 V3の連続40コマに比べて少々見劣りする部分であり、むやみに連写するとすぐにバッファがいっぱいになる。肝心の瞬間を逃さず撮るには、ある程度シャッターチャンスを予測して連写をスタートするようにしたい。また、書き込み時間を短縮するには高速なカードを選ぶことが大切だ。

記録メディアは、microSDメモリーカード、microSDHCメモリーカード、microSDXCメモリーカードに対応。通常のSDカードは使えない
バッテリーには新型の「EN-EL24」を採用。CIPA準拠の電池寿命は約250コマとなる

AFについても、Nikon 1 J4を継承する。アドバンストハイブリッドAFと呼ばれるシステムで、105点の位相差AFと171点のコントラストAFがシーンに応じて自動的に切り替わる仕組みだ。多くのシーンで快適に作動するAF性能を実感できた。

フォーカスモードは、AF-A/AF-S/AF-C/MFが選べる。レンズ側にフォーカスリングがなく、マニュアルフォーカスの操作はボディ側で行う仕様はこれまでと同じだ

撮像素子には、ニコンCXフォーマット(13.2×8.8mmサイズ)の有効2,081万画素CMOSセンサーを搭載。Nikon 1では初めてとなる裏面照射型だ。画像処理エンジンは新開発のEXPEED 5Aとなる。

手動ポップアップ式の小型ストロボを内蔵。通常のTTL発光のほかに、フルから1/32までの6段階のマニュアル発光にも対応する

動きの瞬間を捉える高機動力と高速性能

トータルとしては、携帯性と高速性のメリットを維持しながら、液晶のチルト可動化と操作のブラッシュアップによって、より使い勝手のいいカメラに進化した、という印象だ。

液晶上の情報表示がフレーミングの邪魔になる点や、拡大再生したままコマ送りができないことなど、個人的にはもどかしく感じる改善要望点はいくつかある。ただ、そもそもJシリーズはオート主体で気軽に撮るためのカメラである。操作と機能にもっとこだわる人向けには、上位のVシリーズが用意されている。

Nikon 1 J5は、Vシリーズとは違って電子ビューファインダーや外部ストロボ、リモコンには非対応となる。またメカニカルシャッターは非搭載で、ストロボ同調速度は1/60秒と遅い。そういったNikon 1 J5にできないことを納得できる人にとっては、よりコンパクトなボディと求めやすい価格が大きな魅力になるはずだ。

これまでと同じく、レンズマウントはニコン1マウントで、シャッターにはエレクトロニックシャッターを採用。操作音をオフにしてほぼ無音で撮ることも可能だ
EVFはなく、撮影は液晶表示を見ながら行う。チルト可動に対応しながら、ボディの厚みと重量の増加を極力抑えたことはありがたい

AF追従で世界最速の連写スピードと、世界最短の撮影タイムラグ、そして小型軽量ボディならではの機動力を生かして、大きくて重いカメラでは撮れないような、日常の中にある一瞬のタイミングを写し止めたい。そんな撮影意欲がかき立てられるカメラである。

次回は、作例を中心にした実写編をお伝えしよう。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。