新製品レビュー
ニコンD5300
Wi-Fi&GPS内蔵になったバリアングル機
Reported by 大浦タケシ(2014/1/15 08:00)
エントリークラスのデジタル一眼レフは、毎年ほぼ決まった時期にモデルチェンジを繰り返すものが多い。陳腐化してしまうのが早く感じられる反面、リニューアルする時期の予測が容易で、購入のタイミングも掴みやすいように思える。今回ピックアップするニコン「D5300」も例外ではなく、昨年12月にちょうど1年ぶりのモデルチェンジを果たしたエントリーモデルである。本テキスト執筆時点での実勢価格は、「AF-S DX NIKKOR 18-140mm F3.5-5.6G ED VR」の付属するレンズキットが11万9,800円前後、ボディ単体が8万9,800円前後。
一見スペックだけ見るとD5300は、先代「D5200」から大きな進化はないように思える。しかしながら、よく吟味していくとブラッシュアップされた部分は少なくない。まずのそのひとつがイメージセンサーだろう。有効2,416万画素とD5200とほぼ同じ画素数のイメージセンサーは、新たに開発されたもの。このところのニコンデジタル一眼レフではすっかり定着した感のある光学ローパスフィルターレス構造としており、「いよいよこのクラスも!」と思わせられる。
ちなみに先般発表されたローエンド機「D3300」もローパスフィルターレスとしているので、上位機「D7100」も含め最新のニコンDXフォーマット機はローパスフィルターレスで統一されたことになる。一般にイメージセンサーは、同等の画素数の場合、設計が新しいほど高感度特性や階調再現性が有利となる場合がほとんどなので、この新しいイメージセンサーには大いに期待してよいだろう。
画像処理エンジンもD5200の「EXPEED 3」から、より進化した「EXPEED 4」とする。最高コマ速は5コマ/秒とこれまでと違いはないものの、最高感度はISO12800と1段分アップしている。もともとニコンは他社にくらべ常用最高感度を低く設定する傾向があるため、今回の引き上げは高感度特性によほどの自信があってのことと思える。
実際、厳密なものではないが、以前掲載したD5200レビュー記事中のISO6400の作例画像と、D5300で撮影したISO12800の作例画像を比較してみると、輝度およびカラーのノイズレベルとも違いはほとんどない。色のにじみなどの発生についても同様である。これはEXPEED 4ばかりでなく、イメージセンサーの特性も関係していると思われるが、総合的にニコンDXフォーマットのデジタル一眼レフとしては、D5300は現在最も高感度特性の優れたカメラといって差し支えない。
ファインダーは従来通りペンタミラータイプとする。コスト的にペンタプリズムの採用はやはり難しいようだ。視野率に関しては95%と先代と同じとするが、倍率はこれまでの0.78倍から0.82倍へとアップ。わずかではあるがファインダー像は大きくなり、視認性が向上している。D7100の0.94倍ぐらいあると文句の付けどころがないが、現時点ではクラスを考えれば不足のないところといえる。
なお、ファインダー倍率を1.17倍に拡大するマグニファイングアイピース「DK-21M」は、カタログなど見るとD5300には対応していない。実際は装着できないことはないのだが、液晶モニターが干渉してしまい、完全にはセットできないのである。装着できるようになるとファインダー倍率も計算上0.96倍になり、視認性が飛躍的に向上するだけに残念といわざるを得ない。
液晶モニターは先代同様バリアングルタイプを採用。ただしディスプレイは3型92万ドットから3.2型104万ドットへとスペックアップしている。カメラ背面部を見ると、液晶モニターの大きさがより際立っており、ボタン・ダイヤル類がカメラの端っこで小さくなっているのが印象的だ。撮影した画像を閲覧する際や、RAW現像をはじめ画像編集メニューを使用する時など、このモニターの大きさは重宝する。
AFおよび測光に関してはD5200を継承する。AFは9点のクロスタイプセンサーを持つ、定評ある39点マルチCAM4800DXオートフォーカスモジュールセンサーを採用。AFエリアモードには、動体撮影では便利なダイナミックAFのほか動く被写体を追尾するニコン独自の3D-トラッキングも搭載される。測光に関しては2016分割RGBセンサーによる高精度なマルチパターン測光を可能とするなど隙のないスペックを誇る。
注目の機能としては、Wi-FiとGPSの採用だろう。どちらもニコンデジタル一眼レフとしては初めての内蔵となる。Wi-Fiに限っていえば、同社はコンパクトデジタルカメラに早い時期から採用してきているだけに、デジタル一眼レフへの搭載が今になったことは少々意外に感じられなくもない。
そのWi-Fi機能は、専用のアプリ「Wireless Mobile Utility」をインストールしたスマートデバイスとの連携により、リモート撮影や写真転送が可能。リモート撮影は露出の設定などができない簡易的なものだが、タッチ操作でピントを合わせたい位置は自由に決めることができる。自分撮りや撮影者も画面に入るような記念写真の撮影など、重宝することだろう。
さらに、カメラに装填されたメモリーカード内の画像を取り込むのも簡単で快速。SNSへの画像のアップも手間がかからない。カメラとスマートデバイスの連携は一見煩雑そうに思えるかも知れないが、そう感じたユーザーにこそ使ってみてほしい、手軽に楽しめる機能である。
経度、緯度、標高および時刻(UTC:協定世界時)を付加できるGPSも、セットアップメニューの位置情報記録をONにするだけだ。位置情報の埋め込まれた画像はD5300に付属するソフト「ViewNX 2」や同社の画像共有保存サービス「NIKON IMAGE SPACE」、また位置情報に対応した写真共有サイトなど使って地図上に表示することができる。移動ルートを記録可能なロガー機能も搭載しており、旅行のときなど有効に活用できそうである。
GPSを使用する際、便利なのがA-GPS機能である。一般に位置情報の履歴が消滅している“コールドスタート”からGPS機能をONにした場合、衛星からの電波を捕捉し測位するまでに少々時間を要する。しかし、同社のホームページからA-GPSファイルのダウンロードを行ない、メモリーカードを使ってカメラに読み込ませると、位置情報を測位するまでの時間を“ホットスタート”並みに短縮することができる。測位に手間取ると撮影した画像に位置情報が付加できないことがあるが、そのような失敗を回避すべく積極的に使いたい機能といえる。
なお、GPSというとバッテリーの持ちが気になるところだが、今回短期間ながら使った印象としては、GPSをオンにすると、GPSをオフにしたときに比べてやや消耗が早いかな、と思う程度。ただし、それでもGPS機能を使う際は予備のバッテリーを多めに持っていくほうがよさそうである。
Wi-FiとGPSが内蔵機能として加わり、ニコンとしては初の“全部入り”デジタル一眼レフとなったD5300。そのほかの機能もブラッシュアップがなされ、エントリーモデルとしてひとつの完成形といってよい。ライバルはキヤノンEOS Kiss X7iをはじめとするデジタル一眼レフのほかミラーレスも含まれるが、充実した機能などその内容から決して2番手に甘んじるようなことはないように思える。もしあなたが現時点でビギナーであれば、カメラの腕が上達してからも不足無く使え、ベテランなら心強いサブ機として撮影を強力にサポートしてくれるカメラである。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
・ピクチャーコントロール
・作例
【1月15日】記事初出時「内蔵ストロボは、外付けストロボを使用した『ニコンクリエイティブライティングシステム』に対応する」と記載していましたが、同機能は対応する外付けストロボを装着した場合に限るため、該当部分を修正しました。D5300の内蔵ストロボはアドバンストワイヤレスライティングのコマンダー機能を持ちません。