新製品レビュー

ソニーサイバーショットDSC-QX100

1型センサーの“レンズスタイルカメラ”を実写検証

 10月25日にソニーから登場した「サイバーショットDSC-QX100」は、Wi-Fiを利用してスマートフォンを液晶モニター代わりにしてしまうという、まったく新しいコンセプトのカメラである。サイバーショットの名が示すとおり本機はコンパクトデジタルカメラに属するのであるが、液晶モニターをもたない円柱状の独特の形状から、兄弟機の「サイバーショットDSC-QX10」とともに「レンズスタイルカメラ」という新たなカテゴリーが設けられている。

 近頃はWi-Fi機能を内蔵したカメラもそう珍しくはなくなってきており、「モニターはスマートフォンに任せて、もっと小型なカメラも可能なのではないか?」と考える人も多かっただろう。この分では近い将来に実現するかもしれないと思っていたが、意表をつくかたちで早々と現実のものとなったこのレンズスタイルカメラ。今回はカメラとしての利便性や有効性はどれほどのものなのか、レポートしていこう。

 なお、執筆時点での大手量販店での店頭価格は5万4,980円程度。本機と同スペックのレンズやイメージセンサーを搭載している同社の「サイバーショットDSC-RX100」が4万9,800円程度、「サイバーショットDSC-RX100M2」が7万円程度なので、購入の際には価格も参考にして考えるといいだろう。ちなみにイメージセンサーはQX100とRX100M2が共通スペックの裏面照射型CMOSセンサーを搭載している。

円柱状の不思議なボディデザイン

 搭載するレンズはカールツァイス「バリオゾナーT*」、35mm判換算で焦点距離28-100mm相当のズームレンズで、広角端ではF1.8の大口径(望遠端ではF4.9)を誇る高性能レンズだ。

 撮像素子はコンパクトデジタルカメラとしては大型の1型裏面照射型“Exmor R”CMOSセンサーを搭載し、画像処理エンジンには「BIONZ」を採用するなど、画質に関する基本的な仕様は高画質なコンパクトデジタルカメラとして人気のRX100M2と同等である。

 ボディデザインは非常にシンプルな円柱形である。大きさは62.5×62.5×55.5mmで、まるで一般的なカメラからレンズ部分だけを取り出したような感覚。レンズスタイルとはよくいったものだと思う。重さは本体のみで約165gと大変に軽いのも特徴のひとつであるが、外装はプラスチック製で、手にして感じるような高級感は残念ながらあまりない。ただ、このカメラは後述のようにスマートフォンに固定して使用する機会が多いので、あまり質感にこだわって重くなると使用上で差し支えがあろうことから、この大きさと重さは妥当といえるだろう。

 その他、本体左側にはズームレバーとシャッターボタン(これらの操作はスマートフォン側からも可能)、上部に電源ボタン、右側に表示パネル、先端部にコントロールリングがあるが、いずれも本体に対してフラットになるように設置されており、筒型のデザインを邪魔していない。本体のみであれば手の中への収まりもよく、大変に軽快である。

電源を入れるとレンズバリアが開き、円筒形のボディからレンズが出てくる。レンズはカールツァイス「バリオゾナーT*」、35mm判換算28-100mm相当で、光学式手ブレ補正を備える。撮像素子は1型裏面照射型“Exmor R”CMOSセンサー
本体左側のズームレバーとシャッターボタン。本体だけでもカメラの操作は可能であるが、その場合、液晶モニターがないためノーファインダーでの撮影となる
本体上部の電源ボタン周辺。NFC機能を使うときの目印となる「N」マークや、ステレオマイクが見える
本体右側の表示パネル。表示項目はメモリーカードの未挿入表示と電池残量表示だけと、小さく最低限の表示のみをする
充電は付属のmicroUSBケーブル経由で行なう本体充電型。別売のアクセサリーキット「ACC-CSBN」があれば、外部のチャージャーで充電することも可能だ
メモリーカードスロットおよびmicroUSB端子。記録メディアはメモリースティックマイクロ、メモリースティックマイクロ(M2)、microSDXC/SDHC/SDカードに対応する
本体背面部のバッテリー室。蓋の裏面にはスマートフォンとの接続設定に必要なSSIDとパスワードが記載されている
同梱のバッテリーは「NP-BN」。CIPA準拠で約220枚の撮影が可能としている

スマートフォンとの接続

 QX100はズームレバーとシャッターボタンを搭載し、撮影した画像はQX100に装填したmicroSDカードやメモリースティックマイクロに保存できるため、本体だけでも撮影は可能である。とはいえ、液晶モニターがないため思い通りのフレーミングをすることはできない。また、撮影モードの変更や露出の制御なども本体からはできず、基本的にはスマートフォンとのWi-Fi接続が前提のカメラだ。

 Wi-Fi連携はAndroid OSもしくはiOS対応のスマートデバイスで可能であり、ソニーが無償提供する「PlayMemories Mobile」アプリをあらかじめインストールしておく必要がある。特徴的なのは、カメラ本体の電源を入れると同時に常にWi-Fi機能もオンになるので、一般的なWi-Fi内蔵のデジタルカメラのように別途Wi-Fi機能をオンにする手間がない。カメラの電源を入れたら、スマートフォン側のWi-Fi設定でQX100と接続(ペアリング)し、その後「PlayMemories Mobile」アプリを立ち上げれば撮影準備を完了することができる。

 もしNFC機能を搭載したスマートフォンをお持ちなら、さらにペアリングは簡単。QX100とスマートフォンを近づけるだけでペアリングできる。NFC機能はカメラ本体の電源が入っていない状態でも有効で、両方のNマークを近接すると自動的にカメラが起動して「PlayMemories Mobile」アプリも立ち上がる(スマートフォンの電源はオン)。本機を使う場合はNFC機能を搭載したスマートフォンの方がずっとストレスなく写真撮影ができるだろう。

 ただし、接続開始から撮影可能となるまでにはそれなりに時間を要する。今回は同じくソニーのスマートフォン「Xperia Z1」もお借りして接続時間を実測してみたが、NFC機能を使った場合でも、カメラの電源オフの状態からだと約15秒前後、カメラの電源オンの状態からだと約7秒を平均で要した。

NFC機能を搭載したスマートフォンならカメラとスマートフォンの「N」マークをタッチするだけで自動的に接続され撮影完了状態となる。カメラ側の電源がオフの状態でも応答するので接続作業は大変に簡単だ。
今回試用したスマートフォンはソニーの「Xperia Z1」。5型の大きなモニターとNFC機能の搭載で、QX100との組み合わせは快適だった。もちろん他のAndroidスマートフォンやiPhoneとも組み合わせられる。

 NFC機能を使わずスマートフォン側からWi-Fi接続すると、概ね8〜10秒程度で撮影可能状態となるが、Wi-Fi接続とアプリの起動までに必要とする時間と手間を踏まえると、NFCペアリングより結果的には長くかかってしまう。接続方法自体は難しい操作でないが、撮影可能までに要する時間は、Wi-Fi機能の利用を前提とした本機の大きな課題であろう。シャッターチャンスに対応するという能力においては、正直にいって期待しないほうがよいカメラである。

 Wi-Fiでの接続が確立すると、カメラ本体とスマートフォンは独立して動作するため、カメラから離れた場所でスマートフォンを操作して撮影する、いわゆるリモート撮影が電波の届く6〜7mの範囲で可能だ。一方で、スマートフォンにカメラを固定して使うこともでき、この場合は同梱のスマートフォンアタッチメントを本体背面に装着して、バネで伸縮する爪でスマートフォンを挟みこんで固定する。

一般的なスマートフォンへの固定は、同梱のスマートフォンアタッチメントで行なう。カメラ背面に装着し、バネで伸縮する爪でスマートフォンを挟み込んで固定する

 なお、今回試用した「Xperia Z1」には別売で専用のアタッチメントケースが用意されており、これを使えばより簡単便利にカメラを固定することができる。もともとがレンズだけのようなスタイルであるだけに、スマートフォンにカメラを固定すると、さながら普通のカメラのようになり、違和感なくカメラを構えて撮影できる。

「Xperia Z1」には別売で専用のカメラアタッチメントケースが用意される。「Xperia Z1」にケースを付ければバヨネットマウントにレンズを取り付ける感覚で、QX100を装着することができ便利だ。

アプリに依存したカメラ操作

 カメラの操作は、そのほとんどを「PlayMemories Mobile」アプリ上で行なうことになる(というよりカメラ本体に操作系統がほとんどない)。アプリでの操作はライブビューを見ながらタッチ操作で撮影するという一般的なもの。スマートフォン内蔵のカメラ操作に慣れた人なら迷うことなく撮影できるだろう。

スマートフォンでQX100を操作するためには、ソニーが無償提供する「PlayMemories Mobile」アプリをあらかじめインストールしておく必要がある。

 アプリ上で可能な操作項目としては、撮影モードやホワイトバランスの変更、露出補正や絞り値の調整など多岐に渡る。露出モードはソニー製のカメラらしく「おまかせオート撮影」や「プレミアムおまかせオート」などの全自動モードのほか、「プログラムオート撮影」や「絞り優先撮影」などクリエイティブな撮影モードも選択できるのが特徴的。

撮影可能状態の「PlayMemories Mobile」アプリの画面。シャッター、ズーム、画像再生などをタッチ操作で行う。ピントを合わせたい場所に任意でタッチAFをすることもできる。
撮影モードの選択も可能。全自動モードである「おまかせオート撮影」や「プレミアムおまかせオート」の他に「プログラムオート撮影」や「絞り優先撮影」が選択できる。
撮影モードを「絞り優先撮影」にした場合の絞りの設定画面。
「プログラムオート撮影」および「絞り優先撮影」では±3EVの範囲で露出補正を行い、写真の明暗を調整することができる。

 ただ、ISO感度がオート設定しかなく、保存できるデータ形式もJPEGのみ(=RAW記録に非対応)。メモリーカードのフォーマットがアプリ上からしかできないことなども、高性能レンズを搭載する1型撮像素子のカメラとしてはやや不満を感じた。ファームウェアの更新で機能向上を果たせる可能性もあるので、ここは今後に期待したいところだ。

カメラ側の各種設定もスマートフォンで行なう。ホワイトバランスや画像サイズ、フォーカスモードなどを設定できる。ただしISO感度はオートのみ、データ形式はJPEGのみでRAW記録はできない。

 撮影した画像はカメラ本体のメモリーカードの他に、スマートフォンにも同時保存が可能で、これを活用すれば撮影した画像をすぐにTwitterやFacebookなどにアップロードできる。

カメラ本体のほかにスマートフォン側にも撮影した画像を同時に保存することができ、カメラ側の画像を後からスマートフォンに送信することも可能だ。スマートフォンに画像を保存すればそのままSNSなどに画像をアップロードできて便利である。

RX100シリーズ同等の画質

 高性能レンズとコンパクトデジタルカメラとしては大型の1型センサーを搭載しているだけに、画質に関しては定評あるRX100シリーズ譲りの高画質であるといえるだろう。スマートフォン内蔵のカメラとは格段の差があることはもちろん、A4程度の大きなプリントでも破綻のない描写を楽しむことができる。サイズによっては、より高画質の求められる印刷用途にも十分対応できるはずだ。

 特にレンズの性能は素晴らしく、ズーム全域で破綻のない高いシャープネスとコントラストを期待以上に得ることができる。また、広角端では開放F値がF1.8の大口径で、レンズ先端から5cmの接写も可能。スマートフォンのカメラどころか一般的なコンパクトデジタルカメラでもなかなか得難い背景ボケなどを楽しむことができ、応用範囲の広い多彩な表現が可能だ。

 ただ、画像の圧縮率やノイズリダクションの設定など画質に関する設定がほとんどないのは、RX100シリーズのポテンシャル高さを知っているだけに、高性能を持て余すようでもったいない気もする。それでも、調整などの難しいことは考えずに気軽に高画質を望む人にとっては、本機のように割り切ったスペックであるほうが、むしろ向いているだろう。

画角サンプル(クリックで拡大します)

広角端(28mm相当)ではレンズ先端から約5cmの接写が可能。F1.8の大口径を利用すれば背景を大きくぼかした本格的な撮影ができる。
接写は広角端のみなので、中間付近の焦点距離(55mm相当)になるとそれほど被写体に寄れなくなるが、それでも撮像素子が大きいのである程度の背景ボケは期待できる。
望遠端(100mm相当)も被写体に寄ることはできないものの、圧縮効果による中望遠らしい表現をQX100で楽しむことができる。

まとめ

 本機の最大の特徴は、高画質なコンパクトデジタルカメラであるRX100シリーズの画質を、スマートフォンと連携することによってより手軽に得るというところにあるが、もし本機を写真撮影を本位とした純粋なカメラとしてとらえたなら、機能面や操作性で大いに不満のあるカメラということになってしまうだろう。本機で撮影しようとするほどに、スマートフォンと接続して撮影可能状態になるまでの時間や、設定の自由度の少なさがストレスとなってしまうのだ。

 だが、本機はここ数年でカメラ内蔵のスマートフォンが普及したことによる、写真撮影を楽しむ層の広がりに対する新しい試み、と考えると大変に興味深いカメラとなる。実際に使っていて感じたことは、とにかく軽く小さく、バッグの隅に押し込んでおける便利さがあるということで、“スマートフォンで写真を撮っていて、チョットいい写真を撮りたくなったときに取り出す”くらいの感じというと理解してもらえるだろうか。

 必要なときに必要十分なカメラ機能だけを持ち歩けるという訳だ。Wi-Fiによるスマートフォンとの連携が他のカメラでも一般的になりつつあるいま、「こんなステキな写真が撮れるのはこのカメラだけ!」といったQX100ならではの使い道というのは実はあまり思いつかないでいるのだが、その使用用途をユーザー自身が探して存在価値を見出していく、そんな画期的なカメラなのだと思う。

実写サンプル

・絞りと高感度

 ※DSC-QX100はISO感度のマニュアル設定ができないため、明るさが異なる2シーンで撮影しています。

サムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています

ISO160 / F1.8 / 1/80秒
ISO160 / F2 / 1/80秒
ISO160 / F2.8 / 1/40秒
ISO250 / F4 / 1/30秒
ISO500 / F5.6 / 1/30秒
ISO1000 / F8 / 1/30秒
ISO2000 / F11 / 1/30秒

サムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています

ISO3200 / F1.8 / 1/6秒
ISO3200 / F2 / 1/5秒
ISO3200 / F2.8 / 1/3秒
ISO3200 / F4 / 1/1.6秒
ISO3200 / F5.6 / 1.3秒
ISO3200 / F8 / 2秒
ISO3200 / F11 / 2.5秒

・作例

DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F2.8 / 1/500秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F4 / 1/200秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 3,648×5,472 / ISO400 / F4 / 1/80秒 / 25.6mm(69mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F8 / 1/1,600秒 / 12.6mm(34mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F4 / 1/640秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F4.9 / 1/200秒 / 37mm(100mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F8 / 1/320秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO250 / F4.9 / 1/125秒 / 37mm(100mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F4 / 1/200秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F3.5 / 1/100秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO320 / F4 / 1/80秒 / 25.3mm(68mm相当)
DSC-QX100 / 3,648×5,472 / ISO160 / F5.6 / 1/800秒 / 14.4mm(39mm相当)
DSC-QX100 / 3,648×5,472 / ISO160 / F2.8 / 1/400秒 / 11.8mm(32mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F4 / 1/250秒 / 10.4mm(28mm相当)
DSC-QX100 / 5,472×3,648 / ISO160 / F5.6 / 1/100秒 / 12mm(32mm相当)
DSC-QX100 / 3,648×5,472 / ISO160 / F4.9 / 1/640秒 / 37mm(100mm相当)

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。