新製品レビュー

キヤノンPowerShot S120

完成度を高めたポケットサイズの人気機種

 キヤノンが9月12日に発売した「PowerShot S120」は、S90にはじまる第2世代PowerShot Sシリーズとして5代目となるカメラ。“薄暗い居酒屋でもきれいな写真の撮れるカメラ”が開発コンセプトのひとつであった初代PowerShot S90以降、玄人好みのポケットカメラとして人気を博している。

 新しいS120も、そのコンセプトを引き継ぎながらも、さらに快適で快速な撮影が楽しめより完成度の増したカメラに仕上がっている。今回のレビューでは、主だった変更点をメインに見てみることにする。本テキスト執筆時点での実勢価格は4万7,900円前後である。

 まず大きく変わったのが映像エンジンだ。それまでのDIGIC 5からDIGIC 6へとアップ。解像感と高感度特性の向上のほか、画像処理の高速化が図られ、AF固定時の連続撮影のコマ速は最初の5枚目までが最大12.1コマ/秒、それ以降は9.4コマ/秒を実現する。しかもメモリーカードの空きがある限り、途切れることなく撮り続けることを可能としている。

 先代の「PowerShot S110」でも10コマ/秒を実現していたものの、10コマを上限に撮影が停止し、のんびり処理を行なっていたことを考えると、飛躍的な向上といってよいだろう。さらにS110ではこのハイスピード連写自体が撮影モードのひとつとなっていたが、S120ではP/Tv/Av/Mの各撮影モードでの使用を可能としており、応用範囲が広がっている。

 AF追従時のコマ速も、S110の2.1コマ/秒から5.5コマ/秒にアップしている。S120の大きな売りのひとつに、次に説明するAF高速化があるが、その恩恵を大きく受けたものといえるだろう。大きく動き回る被写体には追従の厳しいことも少なくないが、ピントにシビアな望遠撮影ではありがたく思える。

コントローラーホイールを中心にボタン類の配置される背面の操作部。それぞれのボタンは大きくミスタッチは皆無。
トップカバーはこれまでと同じく至ってシンプル。S120では、動画撮影用のマイク(ステレオ)とスピーカーもここに備わる。

 そのAF速度は、メーカーの発表値でS110の半分、0.1秒を実現する。このところミラーレスモデルなどでトレンドの撮像面位相差AFを使ったようなものではなく、コントラスト方式のみでこの速さとするのは、少々オーバーな表現ながら驚異的。これ以上の速さはもうできないのではと思えてしまうほどだ。撮影タイムラグを含めるとS110の約半分の0.13秒としており、速いコマ速とAFによりS120はこれまで以上にキレのよい撮影が楽しめる。

 レンズ開放値もわずかながら明るい。ワイド端はF2.0からF1.8へ、テレ端はF5.9からF5.7になった。コンパクトデジタルカメラとしては高感度に強い機種ではあるが、薄暗い被写体を撮影する場合など、レンズの開放F値も明るいに越したことはない。焦点距離は5.2-26mm(35mm判換算24-120mm相当)と変更はないものの、もともとかなり切り詰めた鏡筒の大きさであるだけに、開発者の苦労が忍ばれる。ちなみにレンズ収納時のボディ奥行きは、S110の26.9mmから29mmへと、2mmほどのアップに抑えている。

焦点距離はS110から変わりはないものの、開放F値はわずかに明るくなった。角度ブレとシフトブレに対応するハイブリッドISを採用。
左よりテレ端、ワイド端、レンズ収納時となる。テレ端でのレンズ繰り出しはさほどでもない。

 撮像素子は1/1.7型有効1,210万画素のCMOSセンサーと、スペック的な部分は先代より変わらないものの、新たに裏面照射型のCMOSを採用。従来のイメージセンサーでもその描写は不足を感じさせないものであったが、さらに高感度特性および階調再現性が向上している。

 実際S120の描写は秀逸で、デジタル一眼レフのサブカメラとして使用しても見劣りしてしまうようなことは少ないように思える。なかでも高感度特性に至ってはDIGIC 6との合わせ技により、従来の比ではない。もともと同シリーズは、カメラ愛好家をはじめとする多くのユーザーから支持されていきたが、そのことをさらに揺るぎないものとしている。

 操作性全般については、基本的にS110を踏襲する。レンズ根元部分の特徴的なコントローラーリングもこれまでと同様だ。カメラを構えると自然に左手の親指と人差し指でこのリングをホールドでき、しかも直感的に操作できる。クリック感も上々だ。リングには撮影に関わる主だった機能のいくつかを登録できるが、それはまたこのカメラを自分のものにするための儀式といえるものだろう。

 同じくRING FUNC.ボタンや動画撮影ボタンにもそれぞれ20を越す機能が用意されているので、これらも上手く活用するのがS120を使いこなす肝といえる。

初代S90から代々継承するレンズ付け根にあるコントローラーリング。クリック感も良好で、撮影に関するいくつかの機能を割り当てることができる。
コントローラーリングの機能の登録画面。好みの機能を割り当てることで、より使いやすくなること受け合いだ。
RING FUNC.ボタンの機能登録画面。20を越す機能の中から割り当てることができる。
動画撮影ボタンの機能の登録画面。動画を撮らないのであれば、他の機能を割り当てたほうが便利だ。

 3型の液晶モニターは、解像度が46.1万ドットから92.2万ドットにアップ。より高精細でピントの位置などの確認も容易としている。バリアングルタイプの液晶モニターではないが、ボディの厚みが増すことを考えると現状の固定式が現実的な選択といえる。2本の指を画面上で開閉するピンチ操作で再生画像を拡大縮小できるなど、従来通りのタッチ操作を可能としている。

 現在のデジタルカメラのトレンドであるWi-Fi機能もS110から踏襲している。注目すべきはFacebookやTwitter、YouTubeに加え、FlickrにもCANON iMAGE GATEWAY経由でアップできるようになったことだろう。Flickrのアカウントを持っているユーザーには見逃せない部分だ。今後撮影画像を積極的にアップしていきたいユーザーも要注目の機能といえる。

MF時のピーキングも新たに採用された機能。このあたりも本格志向なSシリーズらしいところ。
Wi-Fi機能も継承する。スマートフィンやタブレットとの連携を考えれば、今やWi-Fiは必須の機能といえるだろう。

 さて、今回は通常撮影の画質にフォーカスして試写を行なったが、S120の撮影モードには興味深い2つの新モードが追加されているので概要を紹介しておきたい。

 まずひとつが星空モード。星空と夜景を適切な明るさで写す「星空夜景」、連続撮影した星の軌跡を1枚に仕上げる「星空軌跡」、1分間隔の静止画を繋ぎ合わせてタイムラプス動画とする「星空インターバル動画」の3つを搭載している。いずれも三脚は必要とするものの、このモードにさえセットすれば初心者でもカメラ任せで星空撮影を楽しめるというものだ。これまで星空の撮影に興味のなかったベテランユーザーも試してみて欲しい機能である。

左より星空モードの「星空夜景」、「星空軌跡」、「星空インターバル動画」の設定画面。撮影に関する情報が表示されるので、初見でも分かりやすい。

 ふたつ目がクリエイティブフィルターのなかにある「背景ぼかし」モード。APS-Cや35mmフルサイズといった撮像素子の大きいカメラで絞りを開けて撮影したかのような背景ボケをつくりだすという。PENTAX Q7などに搭載されているBC(ボケコントロール)モードと同様といってよいだろう。撮影シーンに対し最適となるボケをつくるという「オート」も搭載されている。個性的な撮影モードをあれこれ試すのも、コンパクトデジカメの楽しみ方のひとつと言えるだろう。

バッテリーチャージャーが付属する。予備バッテリーを携帯するユーザーには、カメラ内充電よりこの方が具合がよいだろう。
三脚ネジ穴は光軸の中心に置かれる。こんなところにもカメラらしさへの拘りを感じる。

  「おとなの部活カメラ」。あちこちで展開しているので目にした読者もいるかと思うが、これは新しいPowerShot SおよびGシリーズのプロモーションで用いられているメッセージである。その筆頭ともいえるカメラがこのS120だが、以前にも増して隙のないつくりとなり、正に大人の楽しみにとことん付き合ってくれるモデルになったといってよい。

 シャッターを押すだけのカンタン撮影はいうまでもなく、一眼レフのようにじっくりと被写体と対峙するような撮影にも不足はない。しかも様々な表現を可能としており、撮影後の楽しみも含め、現在のコンパクトデジタルカメラのレベルからいえば、その完成度は驚くほど高いものである。昨今「スマートフォンで十分」などと囁かれるコンパクトデジタルカメラだが、そんな風評を跳ね返す最有力の1台として、筆者はこのPowerShot S120を掲げたい。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

 ※各サンプルのサムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています。

高感度ノイズ低減:弱

ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

高感度ノイズ低減:標準

ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

高感度ノイズ低減:強

ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

・歪曲/周辺減光

広角端F1.8
広角端F2
広角端F2.8
広角端F4
広角端F5.6
広角端F8
望遠端F5.7
望遠端F8

・作例

PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F1.8 / 1/160秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 3,000×4,000 / ISO80 / F2.8 / 1/1,600秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 3,000×4,000 / ISO80 / F2.8 / 1/1,600秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F5.7 / 1/320秒 / 26mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F2.8 / 1/2,000秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F5.7 / 1/400秒 / 26mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO160 / F4.5 / 1/1,000秒 / 15.2mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F4.5 / 1/250秒 / 17.6mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F2.8 / 1/160秒 / 7.8mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F2.8 / 1/160秒 / 7.8mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F2.8 / 1/125秒 / 7.8mm
PowerShot S120 / 3,000×4,000 / ISO80 / F1.8 / 1/640秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO80 / F2.8 / 1/2,000秒 / 5.2mm
PowerShot S120 / 4,000×3,000 / ISO400 / F5.7 / 1/640秒 / 26mm
PowerShot S120 / 3,000×4,000 / ISO80 / F5 / 1/125秒 / 19.2mm

【11時55分】記事初出時、「高感度ノイズ低減:弱」の作例に不足があったため、追加しました。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。