新製品レビュー

ソニーサイバーショットDSC-RX1R

“ローパスレス”の解像感を「RX1」と見比べる

 ローパスフィルターを省き、更なる解像感を追求するイメージセンサーが昨今のトレンドといってよいだろう。いくつかのカメラメーカーからそのような仕様のカメラがリリースされ、話題を呼んでいる。

 そして今回、2013年に“世界初のフルサイズコンパクト”として登場し、カメラグランプリ大賞を受賞するなど注目を浴びたサイバーショットDSC-RX1(以下RX1)をベースとしたローパスフィルターレスモデル「サイバーショットDSC-RX1R」(以下RX1R)が登場した。その描写は、ソニーファンのみならず、大いに気になるところだ。本稿では、両モデルの描写の違いについて作例も交えながら紹介していきたいと思う。

 本稿執筆時点の実勢価格は24万8,000円前後で、RX1R・RX1ともに同じ。RX1Rはバリエーションモデルという位置づけのため、RX1も併売となる。

 最初に述べたように、RX1RとこれまでのRX1の違いはひとつ。ローパスフィルターの有無である。35mmフルサイズ相当の有効2,430万画素CMOSセンサーにカールツァイス・ゾナーT* 35mm F2のレンズを組み合わせ、映像エンジンBIONZを搭載する部分に変更はない。外観もカメラ銘以外はRX1と同じだ。

優れた描写特性を誇るカールツァイスT* Sonar 35mm F2を搭載する。バヨネット式の専用フードは別売。
RX1との外観上の違いは、製品銘のみ。最後の“R”は赤文字としており、印象的。

 なおRX1については本誌新製品レビューのほか、筆者が長期リアルレポートを行なっているので見ていただきたい。

 光学ローパスフィルターレス構造のメリットといえば、いうまでもなく撮像素子本来の持つ解像感が得られることである。そもそも光学ローパスフィルターを搭載するのは、RGBのカラーフィルターをベイヤー(Bayer、バイヤー)配列とするイメージセンサーでは、被写体によって干渉縞(=モアレ)や偽色が発生してしまうから。光の高周波成分を抑えるローパスフィルターは、モアレや偽色の発生を低減するのである。

 しかし、このローパスフィルターは諸刃の剣ともいえるもので、解像感の低下も招いてしまう。そこで、思い切ってローパスフィルターを外してしまおうというのが、RX1Rをはじめとするローパスフィルターレスのデジタルカメラのコンセプトといってよいだろう。

 ちなみに、その火付け役となったのは2012年4月発売のニコン「D800E」(同機種はローパスフィルターの効果を“無効化”する構造)。中判デジタル一眼レフカメラの「PENTAX 645D」など、それ以前からローパスフィルターを外したカメラは存在していたが、D800Eの登場がローパスフィルターレスを身近な存在にしたといってよいだろう。

 掲載したRX1RとRX1の比較作例は、三脚にカメラを固定し、露出、記録画質、クリエイティブスタイル、ホワイトバランス、ISO感度など条件を揃えた。なお、筆者の設定ミスから歪曲収差の補正を、RX1R:オート、RX1:切としてしまっていることをお許しいただきたい。どちらもフォーカスはAFを利用している。

 まず注目の解像感だが、パソコンの画面で50%程の拡大ならば、その差はほとんど感じられず、どちらも鮮鋭度は驚くほど高い。RX1がこの拡大率でRX1Rと同等としているのは、高い解像感の得られる多点分離光学のローパスフィルターを搭載していることも大いに関係しているのだろう。この拡大率なら両者いい勝負である。

RX1RとRX1を並べてみたが、違いはカメラ前面部の製品銘のみ。さて、あなたはどちらで撮りたい?

 違いが明確になるのは、さらにそれより大きく等倍に拡大したときとなる。両者の画像を比較すると鮮鋭度が異なることが認識できる。RX1Rの画像は、エッジがさらに締まり、心持ちコントラストも高く感じられる。特に高周波領域を多く含むような被写体や、遠くの木々や岩肌のような被写体では違いが大きく感じられる。

 これがプリントになるとその違いはより見極めやすくなる。特にA3ノビ以上のサイズとなると、この解像感が本当に活きてくるといってよい。大判プリントを楽しんでいるデジタルユーザーにとってこの上ない描写といってよいだろう。

 ただし、両モデルの解像感の違いに万人が気付くレベルかというと、少々疑問が残らないでもない。今回の検証のように、じっくりと見比べないかぎり、その差は感じないこともあるように思える。そのことの判断については、作例を見ていただき、個々で判断していただきたい。

 モアレや偽色に関しては、今回撮影したRX1R/RX1の作例では目立ったものは見当たらない。細かな繰り返しのパターンを持つ被写体がない風景撮影では、さほど気にしなくてもよさそうである。

 今回の作例ではすべてJPEGで撮影を行なっているが、RX1Rクラスのカメラを使うユーザーであれば、RAWで撮影するユーザーが多いと思う。しかし、純正の現像ソフト「Image Data Converter」の使い勝手は正直さほどよいとはいい難い。今回の作例のなかではモアレなどの発生は見極められなかったが、万一のためにもモアレの補正機能などを強化した現像ソフトの登場を強く望みたい。

 筆者がソニー関係者から聞いたところによると、そもそもローパスフィルターを外したきっかけは、RX1のシャープネスの高さゆえに、同フィルターを外した絵も見てみたいとするユーザーの要望からだという(カメラ愛好家とは何とわがままなものだろうか)。その結果は見事に思惑どおりで、コンパクトデジタルとして、あるいはデジタルカメラとして他の追従を許さない高い解像感が得られる。今回のRX1R試写を通じて、同社のデジタルカメラに対する本気度が以前にも増して高まっているように感じた。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・ISO感度
 各画像のサムネイルは、下の画像の青い枠内を等倍で切り出しています。

DSC-RX1R

ISO50
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600

【参考】DSC-RX1

ISO50
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600

・描写比較

 各画像のサムネイルは、青い枠内を等倍で切り出しています。

DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/400秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/400秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1R / 4,000×6,000 / ISO100 / F5.6 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1 / 4,000×6,000 / ISO100 / F5.6 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/400秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/400秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F11 / 1/160秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F11 / 1/160秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/800秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/800秒 / 35mm
DSC-RX1R / 4,000×6,000 / ISO100 / F11 / 1/160秒 / 35mm
DSC-RX1 / 4,000×6,000 / ISO100 / F11 / 1/160秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F4 / 1/2,000秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F4 / 1/2,000秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/125秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/125秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/320秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/400秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F5.6 / 1/500秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F11 / 1/200秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F11 / 1/250秒 / 35mm
DSC-RX1R / 6,000×4,000 / ISO100 / F2 / 1/1,600秒 / 35mm
DSC-RX1 / 6,000×4,000 / ISO100 / F2 / 1/1,600秒 / 35mm

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。