新製品レビュー
PENTAX Q7
ワンランク上の基本性能を手に入れたQ
Reported by 大浦タケシ(2013/7/9 00:00)
PENTAX Qシリーズは、小型のイメージセンサーを積み、いわゆるミラーレスカメラとしては最小サイズのボディを持つモデル。これまで発売されてきた「PENTAX Q」、「PENTAX Q10」は1/2.3型センサーであったが、新しい「PENTAX Q7」はそれより一回り大きい1/1.7型センサーを搭載する。加えて多岐に渡るブラッシュアップが図られ、より完成度の増したモデルとしている。
本テキスト執筆時の量販店店頭価格は、ボディ単体3万9,800円前後、「02 STANDARD ZOOM」の付属するズームレンズキットが4万9,800円前後、ズームレンズキットに「06 TELEPHOTO ZOOM」の加わったダブルズームキットが6万9,800円前後である。
Q7のトピックは、前述のとおり1/1.7型となったイメージセンサーだ。有効画素数は1,240万画素。裏面照射型CMOSセンサーとする。PENTAX Q登場時やQ10の登場時など、このセンサーサイズに対する要望は少なくなかったように記憶する。実際、裏面照射型ではあるものの、1/2.3型のセンサーでは高感度特性や階調再現性などつらく感じられることも多く、レタッチ耐性になるとちょっとトーンカーブをいじっただけで描写が破綻してしまうこともあった。今回のイメージセンサーのサイズアップは、これまで描写に不満のあったユーザーにとって諸手を挙げて歓迎すべきものといえる。
センサーサイズの拡大により、最高感度がそれまでのISO6400からISO12800へとアップ。ノイズレベルも比較してみたところでは、ISO200を境にQ7のほうが次第に有利となっていく。階調再現性にしても、ハイライトやシャドーの粘りはQ7が一歩秀でているように思えるほか、細部の描写もあきらかにQ7の1/1.7型センサーが凌ぐ。今さらとはなるが、描写の違いを見るとQシリーズは最初から1/1.7型でもよかったのでは、と思うのは筆者だけではないはずだ。
イメージセンサーがサイズアップしたことで気になるのが、これまでラインナップされてきたQ専用レンズのイメージサークルだろう。「01 STANDARD PRIME(焦点距離8.5mm)」、「02 STANDARD ZOOM(同5-15mm)」、「06 TELEPHOTO ZOOM(同15-45mm)」に関しては、ケラレの発生はなく、そのままワイド化される。ちなみに35mm判相当への換算は4.6倍となる(QおよびQ10では5.5倍)。
一方、ユニークレンズシリーズといわれる「03 FISH-EYE(焦点距離3.2mm)」、「04 TOY LENS WIDE(同6.3mm)」、「05 TOY LENS TELEPHOTO(同18mm)」に関しても、仕上がりを見る限りケラレがないように見える。しかし、同シリーズのレンズでは、それぞれのイメージサークルの大きさに合わせて自動的にクロップ処理を行ない、その後カメラ内の補間処理でフル画素記録としているという。
作例撮影では、01 STANDARD PRIME、02 STANDARD ZOOM、07 MOUNT SHIELD LENSの3本を使用した。07を除きいずれも個人的にも所有しており、やはり筆者所有のPENTAX Q10で使用しているが、Q7では画角が広くなった分スナップ撮影など使いやすく感じられる。Q10は今後も併売されるとのことだが、ワイド系のレンズの好きなユーザーならその選択に迷うようなことはないだろう。
余談とはなるが、Qシリーズといえば、古い8mmカメラ用のDマウントレンズで撮影を楽しむユーザーもいるかと思う。1/2.3型(約6.2×4.6mm)でもダブル8のフォーマット(約4.5×3.3mm)より大きいため、これまで一部のレンズではケラレが生じることがあったが、1/1.7型(約7.6×5.7mm)となるとその可能性はより高くなってしまう。ダブル8規格もしくは1/2.3型と同等となるサイズに切り出しのできるクロップ機能が搭載されると、マウントアダプターを楽しむユーザーには便利に思えるがいかがだろうか。
Q10とQ7のカラーを除く外観および操作系は同じだ。しかしながら、機能的な仕様は、イメージセンサー以外にも細かく異なっている部分は多い。ちょっと気になった変更点をいくつかをピックアップしてみよう。
画像エンジンは「Q ENGINE」を新たに採用する。従来のエンジンよりもクロックスピードを10%アップしたといい、起動をはじめとする諸動作が高速化されている。Q10も操作感はそう悪くなかったが、撮影からポストビューまでの表示やメニュー操作などスピーディで、サクサク感はさらに向上しているように感じられる。スピードといえば、AFも同様だ。メーカー発表値だとQ10の1.5倍のAF速度とのことであるが、こちらもその違いは実感できるほどである。また、低輝度への対応もより強くなっており、測距可能な輝度範囲はQ10のEV1〜EV18からEV0〜EV18となる。
センサーシフト方式の手ブレ補正機構SRは、シャッタースピード換算でこれまでの2段から、3段へと進化。風の影響を受けやすく不安定になりやすい軽量コンパクトなカメラにとって心強い見方となることだろう。連写中のAEが追従するようになったことも注目しておきたい部分。撮影中被写体の明るさが変わっても気にならずに撮影が楽しめる。連続撮影コマ速は5コマ/秒とQ10から変更はない。
画面表示としては新たに水準器が加わる。画面の右端に表示され、水平あるいは垂直になるとそれぞれの表示が緑色に変わり視認性はたいへんよい。ただし、ちょっと残念に思えるのが、レスポンスがあまりも良すぎること。三脚を使用した時はさほど気にならないが、手持ちでの撮影の際は、ほんのわずかな手の動きにも敏感に反応してしまい水平垂直の調整が却ってしづらい。もう少し水準器の感度を落としてもらうと使いやすくなるように思える。
マニュアルフォーカス時の画像拡大の名称を「MFアシスト」から「MF時の自動拡大」と変更するとともに、最大倍率がこれまでの4倍から6倍へとアップ。特に拡大率の向上は、MFのユニークレンズシリーズで撮影を行なう際や、マウントアダプターで撮影を楽しむユーザーには朗報といえる。ピントの合った部分のエッジとコントラストを強調する「フォーカスアシスト」は従来と同じく搭載されているので、併用するとより精度の高いMF操作が行なえる。
そのほか、シャッター音を「K-5」、「645D」、「*istD」を模した3種類から選ぶことができる設定や、Eye-Fiカードへの対応なども新しい部分である。
PENTAX Qシリーズは楽しいカメラだと思っている。いわゆる高級コンパクトデジカメよりも小さなボディなのにレンズ交換が楽しめ、しかも多彩な機能を搭載する。マニアックな向きには、古いシネレンズで遊べるのもよい。しかしながら小さなセンサー故に描写にいろいろと不満があったのも事実で、より大型のセンサーを望む声も少なくなかった。Q7は、そんなユーザーの意見にメーカーが真摯に耳を傾け実現したもので、正に“スモールを究めた”ものといえるだろう。描写に口うるさいカメラ愛好家もこれで納得してくれるはずだ。通常色(シルバー、ブラック、イエロー)含め計120通りものカラーパターンが用意されるが、あなたはどのカラーがお好みだろうか。