新製品レビュー

キヤノンEOS Kiss X7

持ち出したくなる小型ボディに基本性能を凝縮

 ファミリユースやエントリーユーザー向けのレンズ交換式カメラの勢力図といえば、今やミラーレスモデルがデジタル一眼レフを凌ぐ。そのため、カメラメーカーのなかには、エントリークラスのデジタル一眼レフに対して明らかに消極的と見受けられるところもあるほどだ。しかしキヤノンに関していえば、今もってエントリークラスのデジタル一眼レフに重きを置いている向きが見受けられる。

 今回試用した「EOS Kiss X7」は、極限まで贅肉を削ぎ落とした超コンパクトなボディサイズを実現したほか、飛躍的に向上したライブビュー時のAFなど、ミラーレスカメラに真っ向対決するようなデジタル一眼レフに仕上がっている。本稿執筆時点での量販店店頭価格は、ボディ単体が7万4,300円前後、EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STMの付属するレンズキットが8万2,300円前後、EF-S 55-250mm F4-5.6 IS IIを加えたダブルズームキットが10万4,200円前後だ。

わかっていても手にして驚く小ささ

 まずEOS Kiss X7を手にして驚かされるのは、いうまでもなくボディの大きさだ。編集部による外観インプレッションの記事などでも予備知識は得てはいたが、実機を手にしてみるとそのサイズにあらためて驚かされる。これまでも最小、最軽量を謳うデジタル一眼レフは数多く出てきているが、本モデルはAPS-C機として圧倒的な小ささ、軽さなのである。

 例えばレンズに対して、左側面はレンズロック解除ボタンの幅ほどしか出っ張っておらず、右側面の小振りなグリップもマウント側にこれまでになく寄っている。シャッターボタンもそれに合わせてペンタ部にぐっと寄った位置になっているのも独特だ。ボディの高さ・幅がこれまでになく小さいため、ボディ単体を正面から見るとマウント部が異様に大きく感じられるほどである。

ペンタ部からストラップ取り付け部の間が狭く、電子ダイヤルもペンタ部に寄ったところに配置される。モードダイヤルと同軸とするレバータイプの電源スイッチは使いやすい。
グリップの上端がエプロン部とくっついているのもこれまでにないものだ。シャッターボタンもボディ中央に寄った位置となる。
内蔵するストロボのガイドナンバーは9.4(ISO100・m)。外部ストロボのワイヤレス制御は残念ながらできない。
アイピース上部には、ファインダーに接眼すると自動的に液晶モニターの表示が消灯するアイセンサーを備える。

 さらに背面部も3型の液晶モニターがその多くの部分を占め、まるでEVF内蔵の高倍率ズームコンパクトを見ているようである。唯一、ボディの奥行きに関してはミラーボックスが存在することからミラーレスカメラのような薄さではない。ボディの幅や高さにくらべ奥行きがあるため、ころっとした丸っこいフォルムとなっている。

 ちなみにボディサイズは116.8×90.7×69.4mm。重量はバッテリーと記録メディア込みで407g。一部のミラーレスカメラとはサイズ的に拮抗しているといってよい。

インターフェースは上からマイク、リモート、USB、HDMIとなる。マイクはステレオ入力に対応。USBにはGPSレシーバーGP-E2の接続が可能だ。
ボディが小さくなり行き場のなくなったカードスロットは、バッテリーボックスと共有するようになった。使用可能なカードはSDXC/SDHC/SD(UHS-I対応)。
バッテリーは従来よりも一回りコンパクトなLP-E12を採用。フル充電からの撮影可能枚数は、光学ファインダー使用時で380枚、ライブビューで140枚。同梱のチャージャーで充電する仕様だ。
35mmフルサイズ機のEOS 5D Mark IIIとサイズを比較してみた。前後にカメラを並べているが、それでも大きさの違いは圧倒的だ。EOS Kiss X7ではマウント部が異様に大きく見える。

 これだけ小さいと心配になるのがホールディングだろう。カメラがコンパクトであると、とかく持ちにくく、グリップを握った指の関節がレンズやマウントのエプロン部などに当ってしまうことがあるからだ。

 しかしながらEOS Kiss X7は手にしっくりと馴染み、さらにグリップ自体の厚みが少ないためか、指が窮屈に感じられるようなことはなかった。グリップを握る指の関節がレンズの鏡筒に触れるようなことも皆無である。慣れの問題でもあるが、グリップを握った際のシャッターボタンをはじめとする操作性に関しても、これまでのエントリー機から劣るようには感じない。もちろん小さなボディなのでボタンのレイアウトなど窮屈に思えるところもないわけではないが、操作性自体は思った以上に快適である。

手頃でコンパクトなEF 40mm F2.8 STMを装着。カメラとして大変軽快にまとまる。本題から些か逸れるが、実焦点距離22mmないし25mmのパンケーキEF-Sレンズがあるとこれまた楽しそうだ。
EF 70-200mm F2.8 L IS II USMを装着してみた。“白レンズ”としてはコンパクトなほうであるが、EOS Kiss X7に付けるとレンズが一回り以上大きく感じられる。

積極活用できるライブビューAF

 ミラーレスモデルに対抗するためか、ライブビューでのAFが高速なのもEOS Kiss X7の特徴だ。イメージセンサーの画素の一部を用いた位相差方式のAFと、従来からのコントラスト方式のAFを組み合わせたハイブリッドAFを採用。しかも、位相差方式で測距できる範囲を画面内80%ものエリアに広げたという「ハイブリッドCMOS AF II」で、兄弟機EOS Kiss X7iの採用する「ハイブリッドCMOS AF」よりカバー範囲が広い。

 同社のハイブリッドAFというとミラーレスカメラの「EOS M」に実績があるが、正直にいえばその評判はあまり芳しいものでなはい(同社はファームウェアアップデートでのAF高速化を予告している)。理由はライバルにくらべ測距が丁寧すぎるからだ。

 しかし、そんな先入観を持ってEOS Kiss X7を試すと、その違いに驚かされるはずだ。シャッター半押し開始とともにさほど間を置くことなく合焦し、ピント合わせに時間を要しない。もちろんデフォーカスからのピント合わせにはそれなりに時間を要するし、レンズによってもその速度は異なってくるが(レンズキットとして付属するステッピングモーター採用のEF-S 18-55mm IS STMは特に速かった)、実に気持ちよく速やかにピントが合うのである。普段光学ファインダーで撮影することの多いカメラ愛好家も、この速さを知ればライブビュー撮影も積極的にやってやろうという気になるはずだ。

 液晶モニターは3型104万ドット。このところキヤノンが用いることの多いアスペクト比3:2のものである。撮影した画像をフルに液晶モニターに表示できるため、同じ3型でも4:3のものより表示される画像は大きい。兄弟機のEOS Kiss X7iと異なり、液晶モニターは固定式となる。

 ライブビュー関連の話がでたので、もう一方の光学ファインダーを見てみよう。EOS Kiss X7は、従来のKissシリーズ同様ペンタミラーを採用。視野率はこのクラスとしては一般的な95%となる。倍率はデジタルのEOS Kissシリーズでは最大となる0.87倍で、小型軽量化を図りながらこの数値としたことは頑張ったと褒めてよいだろう。フォーカスエリアについては、こちらも従来同様菱形にレイアウトされる9点。ただし、全点クロスタイプの「EOS Kiss X7i」と異なり、X7のクロス測距は中央のみとなる。

ライブビュー画面。表示は写真のほかに情報表示なしやヒストグラム表示などが、INFO.ボタンで切り換えられる。液晶モニターはタッチ操作に対応する。
(参考)ファインダー内部。フォーカスエリアのレイアウトは、これまでのEOS Kissシリーズと同じだ。中央のみクロスタイプとしている。

エントリー機としてバランス十分の基本性能

 そのほかのキーデバイス仕様はEOS Kiss X7iに準ずる。APS-Cサイズで有効1,800万画素CMOSセンサーに、映像エンジンはDIGIC 5を搭載。画素数に関しては「EOS Kiss X4」以降変わっていない。同社では、APS-Cセンサーの現行上位モデルも同じ画素数としていることを考えると、階調再現性や高感度特性なども含め現時点でもっともバランスがよいと考えているのだろう。

 実際、階調再現性はAPS-C機として不足のないもので、高感度ノイズに関してもISO3200までなら描写は十分実用レベル。解像感の低下もほとんど気にならないといってよい。設定可能な通常感度はISO100からISO12800まで。拡張機能によりISO25600での撮影も可能とする。連写速度は最高4コマ/秒を実現。EOS Kiss X7iは5コマ/秒だが、どちらもクラスを考えれば十分といえる値だ。

 機能的に目新しいところとしては、まずSCN(スペシャルシーン)モードを新設したことだ。これは従来のかんたん撮影ゾーンに独立していた「夜景ポートレート」「手持ち撮影」「HDR逆光補正」に、新たに「キッズ」「料理」「キャンドルライト」を加え集約したもの。モードの選択はメニューから行なう。これにより、かんたん撮影ゾーンに独立して搭載されるシーンモードは、一般的な「ポートレート」「風景」「マクロ」「スポーツ」のみとする。全部のモードを並べたほうがよいのか、今回のように2段に分けた方がよいかはユーザーの好みを見ていくしかないが、このモードダイヤルの表示はシンプルで分かりやすく思える。

新設されたSCN(スペシャルシーン)モードでは、従来のかんたん撮影ゾーンに独立していた「夜景ポートレート」「手持ち撮影」「HDR逆光補正」に加え、「キッズ」「料理」「キャンドルライト」を搭載する。
メニューの表示はこれまでと大きな変更はない。使用状況に応じた5つのタブが画面上部に並び、素早く設定項目を探すことができる。

 ライブビューでボケの大きさを確認しながら設定できる背景ぼかし設定も新しい機能である。CA(クリエイティブオート)モード時のみ有効だが、ボケを表現に積極的に活かしたいエントリーユーザーには優しい機能だろう。同じCAには作画効果のあり/なしの2枚が同時に撮れるエフェクトショット機能も搭載。「ピクチャースタイル」「クリエイティブフィルター」「雰囲気を選んで撮影」のなかから1つを選び、撮影直後のポストビューでも2枚同時に表示する。ノーマルの状態との比較検討できる便利な機能である。

CA(クリエイティブオート)モードのエフェクトショット設定画面。作画効果あり/なしの2枚が同時に記録される。
ライブビュー撮影時のCAモードでは、ボケの大きさを確認しながら設定できる背景ぼかし設定を新たに搭載。初心者でも被写界深度のコントロールが容易に。

気負わなくていい一眼レフ

 気合いを入れて一眼レフを買ったものの、ふだん愛用しているバッグに入らなかったり、入っても重くかさばるため、結局は持ち出す機会が少ないという話を商売柄よく聞く。しかし今回ピックアップしたEOS Kiss X7ならばそのようなことは少なく、いつでもどこへでも気軽に連れ出していけるだろう。さらに、カメラを知る写真愛好家やプロのサブカメラ、あるいはちょっとしたお散歩カメラにも適しているように思える。

 例えにクルマを持ち出すが、トヨタに「iQ」という全長3mほどのミニマムサイズの2BOXカーがある。これをベースにカスタマイズしたクルマを、英国高級車メーカーのアストンマーチンが「シグネット」という名前で販売している。このEOS Kiss X7もそれに倣い、金属外装やペンタプリズムの採用、シンクロ接点などを搭載する高級版が出るというのも面白いように思えるが、いかがだろうか。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・ISO感度

高感度ノイズ低減:OFF

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600(拡張)

高感度ノイズ低減:弱め

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600(拡張)

高感度ノイズ低減:標準

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600(拡張)

高感度ノイズ低減:強め

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600(拡張)

マルチショットノイズ低減(4枚の連写合成)

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600

・ピクチャースタイル

※共通データ:EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 5,184×3,456 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 32mm

オート
スタンダード
ポートレート
風景
ニュートラル
忠実設定
モノクロ

・作例

EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約9.4MB / 5,184×3,456 / 1/320秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 55mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約9.4MB / 3,456×5,184 / 1/250秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / 55mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約9.1MB / 5,184×3,456 / 1/60秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / 18mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約5MB / 5,184×3,456 / 1/100秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / 55mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約6MB / 3,456×5,184 / 1/160秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / 24mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約7.3MB / 5,184×3,456 / 1/200秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 55mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約4.9MB / 5,184×3,456 / 1/2,000秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約4.8MB / 3,456×5,184 / 1/640秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約4.9MB / 5,184×3,456 / 1/4,000秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約9MB / 5,184×3,456 / 1/500秒 / F4 / -1.3EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約4.1MB / 5,184×3,456 / 1/200秒 / F4 / -0.7EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約7.3MB / 5,184×3,456 / 1/1,250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 18mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約4.2MB / 5,184×3,456 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 35mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約7.2MB / 3,456×5,184 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO3200 / 49mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約7.7MB / 5,184×3,456 / 1/50秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO250 / 34mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約6.3MB / 3,456×5,184 / 1/80秒 / F5.6 / +1EV / ISO640 / 44mm
EOS Kiss X7 / EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 約5.2MB / 3,456×5,184 / 1/50秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 18mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約8.9MB / 5,184×3,456 / 1/125秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / 40mm
EOS Kiss X7 / EF 40mm F2.8 STM / 約4.1MB / 3,456×5,184 / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 40mm

【2013年6月14日10時】記事初出時、編集部の設定ミスにより記事末に誤った著者名(編集部担当スタッフの名前)を表示していました。お詫びして訂正いたします。

【2013年6月14日10時40分】記事初出時に「イメージセンサーなどのキーデバイスはEOS Kiss X7iに準ずる」と記載していましたが、EOS Kiss X7のイメージセンサーはライブビュー時の撮像面AF範囲がEOS Kiss X7i(ハイブリッドCMOS AF)より広い「ハイブリッドCMOS AF II」対応のものを採用しているため、該当部分に修正・追記しました。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。