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【新製品レビュー】リコーGXR MOUNT A12(実写編)

〜オールドレンズ撮影にうれしい操作性と充実の補正機能
Reported by 澤村徹

 オールドレンズファン待望のベースボディ、リコーGXR MOUNT A12の発売がいよいよ目前に迫ってきた。ライカMマウントレンズが直接装着でき、ローパスレス、周辺画質の最適化など、画質にこだわった夢のマウントユニットだ。

オールドレンズを理想的な環境で使えるのが、GXR MOUNT A12の魅力である

 今回は実写可能な試作機を入手したので、描写性能、操作性、そしてGXR MOUNT A12ならではのアドバンテージに迫ってみよう(前回の「機能・外観編」はこちら)。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

レンズごとに周辺画質を最適化

 一般的なレンズ交換式カメラは、当然ながら純正レンズの受け皿として設計されている。一方、GXR MOUNT A12はライカM互換マウントを採用しているものの、装着対象となるレンズはライカ製レンズだけではない。同マウントを採用したレンズは古今東西さまざまなメーカーから登場しており、マウントアダプターを介せばさらに多くのレンズが対象となる。そのためGXR MOUNT A12は、周辺光量補正、ディストーション補正(歪曲補正)、色シェーディング補正(周辺の色かぶり補正)という3つの周辺画質補正機能を搭載した。まずはこれらの効果から見ていこう。

周辺光量補正 色シェーディング補正
ディストーション補正

 3つの周辺画質補正機能のうち、もっとも特徴的なのが色シェーディング補正だ。一部のミラーレス機では、広角オールドレンズを付けると周辺部に色かぶりが発生しがちだ。オールドレンズはテレセントリック性(レンズから射出された光がイメージセンサーに対して垂直にあたること)を必ずしも考慮していないため、周辺部分の受光が急角度になってしまう。その影響で周辺部に色かぶりが発生してしまうのだろう。

 ソニーNEXシリーズでオールドレンズを使っている人なら、20mm前後の広角オールドレンズを付けた際、長辺方向の両端がマゼンタにかぶって落胆したおぼえがないだろうか。こうした点を踏まえ、GXR MOUNT A12はマイクロレンズレイアウトをチューニングし、周辺部に十分な光量を確保できるように配慮している。

 色シェーディング補正はさらに補正が必要な場合、B(ブルー)とR(レッド)の2系統で四隅の色合いを調整するという仕組みだ。なお、今回21mmのオールドレンズを何本か試してみたところ、未補正の状態でごくわずかにシアンかぶりする傾向があった。背景の種類にもよるが、初期状態のままで色かぶりはさほど気にならない。必要に応じて色シェーディング補正を使うといったところだろう。

 周辺光量補正と歪曲補正は、いまや多くのデジタルカメラが採用している補正機能だ。ただし、GXR MOUNT A12に関しては、これらの機能を積極的に使うか否か、意見が分かれるところだろう。周辺光量落ちや歪曲は収差の一種だが、オールドレンズにとっては個性の一部ともいえる。こうした描写をフラットに補正するよりも、そのまま活かした方がオールドレンズらしさを楽しめるという意見もあるはずだ。オールドレンズとの付き合い方に応じて、補正機能を使い分けるとよいだろう。


・実写サンプル:周辺光量補正

 GR Lens 21mm F3.5を使い、F5.6で撮影している。初期状態では四隅が暗くなっているが、周辺光量補正を「+3」にするとすみずみまで明るく撮影できた。また、同機能はマイナス側に補正することもでき、あえて四隅を暗くしてトンネル効果風に撮影することも可能だ。

周辺光量補正:OFF 周辺光量補正:+3
周辺光量補正:-3

・実写サンプル:色シェーディング補正

 同じくGR Lens 21mm F3.5を使い、色シェーディング補正を施してみた。本機能は四隅をコーナーごとに独立して色調調整できる。使い方は、かぶっている色をマイナス方向に補正するか、かぶっている色と補色関係にある色をプラス補正しよう。

色シェーディング補正:OFF 色シェーディング補正:B-2
色シェーディング補正:R+2

・実写サンプル:ディストーション補正

 ディストーション補正は歪曲収差を補正する機能だ。樽型収差と糸巻き型収差を、弱、中、強の3段階で補正できる。単焦点の広角レンズは優秀なものが多いので、これも必要に応じて適用するといったところだろう。

ディストーション補正:OFF ディストーション補正:樽型-強
ディストーション補正:糸巻き型-強

レンズ名やF値をマイセッティングに登録可能

 このようにGXR MOUNT A12はレンズごとに周辺画質の補正が可能だ。ただし、レンズを交換するたびに設定変更するのは面倒だろう。そこで出番となるのがマイセッティングだ。

 GXR MOUNT A12はモードダイヤルのMY1〜3を筆頭に、マイセッティングボックスとSDカードにそれぞれ6つずつマイセッティングを保存できる。前述の周辺画質補正機能の設定はもちろん、登録したマイセッティングは、レンズ名、F値、焦点距離を入力することが可能だ。

マイセッティングボックスとSDカードに登録したものを、MY1〜3に呼び出して使うというスタイルが一般的だろう レンズ情報入力は、登録済みのマイセッティングに対して行なえる。アルファベットの大文字小文字を切り換えることもでき、レンズ名を正確に入力できる

 これらの値はJPEGのExifに反映され、マイセッティングをレンズプロファイルとして利用できる。よく使うオールドレンズごとにマイセッティングを登録し、必要に応じてMY1〜3に呼び出して使うと便利だろう。

 また、SDカードに保存したマイセッティングは、パソコン上で一般的なデータファイル(IFOファイル)としてやり取りできる。ユーザー間でのマイセッティングの共有は無論のこと、主要オールドレンズについてマイセッティングをデータベース化するとおもしろそうだ。

オールドレンズに特化したマイセッティングは、名称をオールドレンズ名に変更しておくと整理しやすい
レンズ情報入力して撮影したJPEG画像を、Adobe BridgeでExif表示してみた。レンズ名、焦点距離、絞り値がそれそれ反映されている。絞り値は、撮影時の絞り値として記録される SDカードに登録したマイセッティングは、MYSETフォルダーに保存されている。この中にあるIFOファイルがマイセッティングの正体だ

オールドレンズの個性は引き出せるか!?

 実際にオールドレンズを装着し、GXR MOUNT A12の描写傾向を見ていこう。

 GXR MOUNT A12の画質面でのポイントは2つある。ひとつはローパスフィルター未搭載という点だ。ローパスフィルターはモアレ対策に欠かせないパーツだが、これを省くと解像感がアップする。要はよりシャープに写るというわけだ。

 2つめはマイクロレンズレイアウトをチューニングし、周辺の色かぶりを防いでいる点だ。シャープさと周辺画質、このあたりを重点的に見ていくと、GXR MOUNT A12のベースボディとしての優秀さが見えてくるだろう。なお、作例は試作機でRAW撮影し、Lightroomでストレート現像している。


・実写サンプル:GR Lens 21mm F3.5

 リコーの広角フィルムコンパクト「GR21」のレンズを、ライカLマウント化したものだ。LMリングを介してGXR MOUNT A12に装着している。

GR Lens 21mm F3.5

 周辺部はわずかにシアンに色かぶりしているが、背景が空だとほとんど気にならない。他機種で使っているとそれほどシャープに感じなかったレンズだが、GXR MOUNT A12では開放から鋭さが感じられる。

GXR MOUNT A12 / GR Lens 21mm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/1,700秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 21mm GXR MOUNT A12 / GR Lens 21mm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/270秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 21mm
GXR MOUNT A12 / GR Lens 21mm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/140秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 21mm

・実写サンプル:Summilux 35mm F1.4

 ライカの大口径タイプの35mmレンズだ。線が細く鋭いシャープネスが特徴で、そうした先鋭感をGXR MOUNT A12はしっかりと再現している。

Summilux 35mm F1.4

 雨後の撮影だったせいか、普段よりも高発色な仕上がりだ。この点を差し引いても、GXR MOUNT A12は心持ちビビッドになる印象を受けた。

GXR MOUNT A12 / Summilux 35mm F1.4 / 3,776×2,832 / 1/440秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm GXR MOUNT A12 / Summilux 35mm F1.4 / 3,776×2,832 / 1/200秒 / F1.4 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 35mm
GXR MOUNT A12 / Summilux 35mm F1.4 / 3,776×2,832 / 1/470秒 / F1.4 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 35mm

・実写サンプル:XR Rikenon 50mm F2

 1978年に登場したリコーXR500に付属していた標準レンズだ。和製ズミクロンの異名を持ち、低価格でありながら写りのよいレンズとして知られている。

XR Rikenon 50mm F2

 とはいえ、普及価格帯のレンズなので、開放近辺では滲みは否めないところだ。F4あたりを境にシャープさが増してくる。なお、本レンズはペンタックスKマウントを採用しており、取り付けは近代インターナショナルのペンタックスK-ライカMアダプターを用いている。

GXR MOUNT A12 / XR Rikenon 50mm F2 / 3,776×2,832 / 1/950秒 / F2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm GXR MOUNT A12 / XR Rikenon 50mm F2 / 3,776×2,832 / 1/150秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm
GXR MOUNT A12 / XR Rikenon 50mm F2 / 3,776×2,832 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm

実写サンプル:Elmar 5cm F3.5

 バルナックライカの標準レンズで、通称沈胴エルマーと呼ばれている。沈胴した状態でレンズチェッカーを取り付けると、後玉がわずかにレンズチェッカーからはみ出していた。GXR MOUNT A12装着時は沈胴しないように注意しよう。

Elmar 5cm F3.5

 コントラストは穏やかで、さらりとした描写の標準レンズだが、GXR MOUNT A12との組み合わせではやや発色が強めだ。

GXR MOUNT A12 / Elmar 5cm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/1,600秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm GXR MOUNT A12 / Elmar 5cm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/2,300秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 50mm
GXR MOUNT A12 / Elmar 5cm F3.5 / 3,776×2,832 / 1/4,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 50mm

撮影時の操作性を検証する

 撮影時の操作性は、フォーカスアシストの使いこなしがポイントになるだろう。フォーカスアシストは2種類ある。MODE1はピントの合った部分のコントラストを強調、MODE2は画面をグレー化して輪郭強調するタイプだ。

 同機能はFnボタンにアサインしておくとすばやく呼び出せる。今回試写している最中は、Fn1にフォーカスアシストを、Fn2に拡大表示を割り当て、適宜使い分けながら撮影した。フォーカスアシストで大まかにピントを合わせ、開放撮影のように厳密なピント合わせが必要な場合は、拡大表示に切り替えるという使い方だ。

 なお、フォーカスアシストおよび拡大表示を使っている際、シャッターボタンを半押しすると通常表示に切り替わる。シャッターボタンから指を離すと、再度フォーカスアシストおよび拡大表示に戻る仕組みだ。通常表示と特殊表示を切り替える手間が省け、撮影に集中しやすい仕様といえるだろう。

Fnボタンにはさまざまな機能が割り当てできる。フォーカスアシストはここにアサインしておくと便利だ 拡大表示は2/4/8倍から倍率を選択できる。また、部分拡大と全体拡大が選択可能だ

 GXR MOUNT A12のフォーカルプレーンシャッターは最速1/4,000秒だ。ただし、電子シャッターを使えば最速1/8,000秒で撮影できる。オールドレンズは大口径タイプのレンズが多いので、開放撮影で電子シャッターの1/8,000秒に期待する人も多いだろう。

 ただし、電子シャッターは最速1/8,000秒を選んだとしても、手ブレ対策が必要だ。CMOSセンサーは上から順に1ラインずつ露光していくため、1ライン自体は1/8,000秒で制御できても、センサーの上側と下側で露光にタイムラグが生じてしまう。そのため手ブレが発生したり、高速に動く被写体が歪んでしまうのだ。

 こうした電子シャッターの特徴を踏まえ、動きの少ない被写体をていねいに撮るように留意するとよいだろう。なお、電子シャッターは無音で撮影できるので、赤ちゃんの寝顔や動物の自然な姿を狙いたいときに便利だ。

モードダイヤルを「SCENE」に合わせ、シーンモード選択画面の「ES」を選ぶ。これで電子シャッターで撮影できる 電子シャッターはマニュアル露出になる。アップダウンダイヤルを使い、1/8,000秒から1秒の間で設定可能だ

まとめ

 現在オールドレンズ向けのベースボディは、マイクロフォーサーズ、ソニーNEXシリーズといったミラーレス機が人気だ。そうしたなか、GXR MOUNT A12のアドバンテージはどこにあるだろう。

 ライカMマウントレンズをマウントアダプター不要で装着でき、レンズごとに設定を最適化できる。この点は当然ながらGXR MOUNT A12の強みだが、他社製カメラからの乗り換えを促すほどではない。GXR MOUNT A12の絶対的なアドバンテージはやはり、広角オールドレンズの安定描写にあるのではないか。

 NEXとGXR MOUNT A12はともにAPS-C搭載機で、どちらも広角オールドレンズを広角らしい画角で撮影できる。ただし、NEXに20mm前後の広角オールドレンズを付けると、周辺部がマゼンタに色かぶりしてしまう。この色かぶりがかなり目立つため、せっかく広角らしい画角で撮影できても、無加工では画として成立しづらい。

 GXR MOUNT A12はマイクロレンズレイアウトをチューニングしているだけあって、20mm前後の広角オールドレンズでもほぼ色かぶりなしで撮影できる。広角オールドレンズファンにとって、GXR MOUNT A12は貴重な選択肢といえるだろう。

 最後にシャッター音に触れておこう。GXR MOUNT A12のフォーカルプレーンシャッターは、コトンといった小気味よいサウンドだ。既存のミラーレス機はボディサイズのわりにシャッター音が大きく、街中のスナップで気が引ける場面も少なくない。その点GXR MOUNT A12のシャッター音は耳にやさしく、スナップシューターとして使いやすい。こうしたディテールの作り込みに、リコーらしさを嗅ぎ取ることができる。

【2011年8月30日】色シェーディング補正についての解説を修正・加筆しました。





(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。カメラならびにデジタル関係を得意するフリーライター。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、ひと癖あるカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。近著は「OLYMPUS PEN E-P2/E-P1カスタムブック」「GR DIGITALカスタムブック」(ともに翔泳社)他。http://metalmickey.jp

2011/8/29 00:00