【新製品レビュー】カシオHIGH SPEED EXILIM EX-FC150

高感度に強くなった薄型高速連写モデル
Reported by 本誌:武石修

HIGH SPEED EXILIM EX-FC150

 カシオが11月27日に発売した高速連写対応モデル「HIGH SPEED EXILIM」シリーズの最新モデルのうち、軽量薄型タイプを受け持つのが、本機「HIGH SPEED EXILIM EX-FC150」だ。量販店での実勢価格は3万9,800円+ポイント10%といったところ。カラーは、今回試用したゴールドのほかにレッドとブラックをラインナップしている。

 HIGH SPEED EXILIMの2009年冬モデルは、このEX-FC150のほかに高倍率ズームレンズを搭載した「HIGH SPEED EXILIM EX-FH25」がある。EX-FH25とEX-FC150は、同じタイプの裏面照射型のCMOSセンサーを採用したいわば姉妹機同士。EX-FH25は光学20倍ズームを搭載しており野鳥撮影や運動会など望遠を活かした撮影ができる。ただし、スタイルは“高倍率ズーム機”のそれなので、普段持ち歩くにはサイズが大きい。普段持ち歩けるスタイリッシュさを持ちながら、上位機と同等のハイスピード撮影機能を実装しているのがEX-FC150と言える。なお、本誌ではEX-FH25のレビューも掲載済なので併せてご覧いただきたい。


 では、ざっとスペックを見てみよう。撮像素子はEX-FH25と並び、裏面照射型のCMOSセンサーをカシオで初めて搭載。センサーサイズは1/2.3型で、画素数は有効1,010万。感度はISO100~3200。裏面照射型CMOSセンサーは、センサーの表面から光を照射していた従来のCMOSセンサーとは異なり、背面から光を入射させることで、センサー上の配線やトランジスタの影響を受けることなく、フォトダイオードに入る光の量を増大させることが可能。高感度時の画質向上を謳っている。デジタルカメラではソニーに次いで2社目の製品化となる。

 レンズは35mm判換算の焦点距離37~185mm、F3.6~4.5の光学5倍ズーム。センサーシフト式の手ブレ補正機構を搭載する。最短撮影距離はマクロモードの広角端で約3cm。オートマクロ機能を搭載しているので、被写体に近づけば自動的にマクロモードになるのが便利だ。本体サイズは99.8×28.8×58.5mm(幅×奥行き×高さ)と、5倍ズームを搭載していることを考えると十分薄い。バッテリーと記録メディアを含む重量は約174g(実測)。電源はリチウムイオン充電池「NP-40」。CIPA準拠の撮影枚数は300枚。

イルミネーションの時期にぴったりな「HS夜景と人物」を新搭載

 EX-FC150は、2009年2月に発売した「HIGH SPEED EXILIM EX-FC100」の後継モデル。静止画の連写速度は従来機の30コマ/秒から40コマ/秒にアップしている。この連写速度は、高価なプロ用デジタル一眼レフカメラでもまだ実現できていない連写速度だ。また、高速連写を活用した撮影モードを新たに搭載。カシオ機のシーンモードである「ベストショット」に「HSライティング」と「HS夜景と人物」が加わった。

ベストショットには「HSライティング」と「HS夜景と人物」を新たに追加した
従来からの暗部補正機能「ライティング」も搭載

 HSライティングは、逆光の人物など明暗差の大きい被写体で黒ツブレや白トビを軽減できる機能。露出の異なる写真を3枚高速連写し、合成することでダイナミックレンジを拡張できる。3枚の連写は高速に行なうため、手持ちで撮影が可能だ。従来のモデルは、黒ツブレを軽減するための「ライティング」という機能を搭載していた。これは、撮影した1枚の画像を処理することで暗部のレベルを持ち上げることができた。

 今回ライティングとHSライティングを比較したところ、HSライティングの方がかなり暗部が明るくなりダイナミックレンジが広がる印象。ただ、高速に動いている被写体などは連写でもずれが発生する場合があるので、そのときはライティングをONにして撮影したい。なおHSライティング使用時にも、さらにライティングのON/OFFは選択できるが、今回試したところでは特に差は出ないようだった。

 もう一つの大きな新機能が「HS夜景と人物」だ。これは、手前の人物と背景の夜景を両方キレイに写すための機能。これまでのカメラでは長いシャッター速度で夜景を写し、その間にストロボを炊いて人物を写し込む「スローシンクロ」と呼ばれる方法で撮影するのが一般的だった。ただし、スローシンクロを行なう場合にはカメラを三脚などに固定しなくてはならないのが欠点だった。HS夜景と人物は、速いシャッター速度で連写した画像を合成し、最後の連写の際にストロボで人物を写すことができる。手ブレの心配がないため、手持ちでスローシンクロ風の撮影が可能になったわけだ。これからのイルミネーションの時期には是非活用したい機能だ。

 一方、人物が入らない夜景のみのために「HS夜景」も従来から引き続き搭載している。夜景を高速連写で撮影して合成するもので、手持ちでも手ブレを軽減できる。


手持ち時の夜景で、手ブレを軽減する「HS夜景」も利用できる
レンズは5倍ズームハイスピード機を表す「HS」のプレートが付く

高感度画質は1段強程度の向上

 HIGH SPEED EXILIMの面白い機能がハイスピードムービーだ。従来モデル同様に最大1,000fpsでの撮影が可能。30fpsで再生することで、超スローモーション動画を生成できる。フレームレートと記録解像度は、224×64ピクセルで1,000fps、224×168ピクセルで420fps、448×336ピクセルで240fps、640×480ピクセルで30~120fpsとなっている。また、30fpsと240fpsあるいは30fpsと120fpsというように、動画撮影中にフレームレートを変更することも可能で、動画の途中から超スローモーションになるという映像も撮影できる。引き続き1,280×720ピクセル、30fpsのHD動画も撮影可能。

ハイスピードムービーは120fpsから1,000fpsを選択できる。途中でフレームレートを変えられるモード(下2つ)も面白い静止画は最大40コマ/秒で連写できる
高速連写時は、撮影画面に黄色の枠が出て知らせてくれるシャッターを押す前に遡って撮影ができる「パスト連写」も搭載
こちらは通常の撮影画面

 カシオ独自の撮影機能も多数搭載しており、動きものをスロー映像で見ながら撮影できる「スローモーションビュー」やシャッターボタンを押す以前に遡って被写体を記録できる「パスト連写」などが利用可能。そのほか、画面内に被写体が入ったときに自動的に撮影できる「ムーブイン連写」や反対に画面から被写体が出たときに自動撮影する「ムーブアウト連写」といった機能も引き続き搭載している。

操作ボタンは前モデルを踏襲動画撮影のために専用ボタンを配置。同軸のリングでハイスピードムービーと通常の動画を切替える
シャッターボタン周り、HSのボタンを押すと高速連写モードに切り替わるSLOWボタンを押すと、液晶モニターにスロー映像が表示されそれを見ながら落ち着いてシャッターを押すことができる。

 さて今回の目玉である高感度画質だが、EX-FC100のISO400でざわざわと出だしていたノイズは、EX-FC150のISO400ではほとんど見られない。さらに、双方ともISO800ではノイズの差はかなり大きくなる。もちろんEX-FC100ではかなりノイズが目立ってくるが、EX-FC150ではさほど目立ちはしない。ISO1600では、EX-FC150でもノイズが増えディテールの喪失が見られる。ただ、EX-FC100のISO1600よりはずっとキレイだ。

 今回は裏面照射型のCMOSセンサーを使用したためか、最高感度はEX-FC100のISO1600からISO3200に1段分上がっている。裏面照射型CMOSセンサーとは言え、ISO3200は流石にディテールの喪失が大きく常用は厳しいかなといったところではある。EX-FC150のISO3200がEX-FC100のISO1600と同等かややノイズが少ないかなという感じで、新旧モデルで同じ被写体で比較したわけではないが、概ね前モデルに比べて画質は1段強程度向上しているといえそうだ。

裏面照射型CMOSセンサーを使用しているが、ベース感度はISO100だ。最高感度はISO1600から3200に向上した無線LAN機能搭載SDカードの「Eye-Fi」にも対応

まとめ

5倍ズームとあって、レンズ部分が盛り上がっているが持ち歩くのに不便はない

 CMOSセンサーの高速読出し機能を活かし、高速連写やハイスピードムービーなどデジタルカメラの新ジャンルを切り開いてきたカシオだが、今回の裏面照射型のCMOSセンサー搭載でEX-FH25と合わせて完成度がさらに高まった印象だ。このクラスでISO800が常用できるのはポイントが高い。

 量販店のポイント還元などを考慮すると価格は3万円台後半で、裏面照射型CMOSセンサーという新デバイスや全部覚えるのが大変なほど多くの独自機能を搭載していることを考えるとお買い得かもしれない。高速連写やハイスピードムービーに興味があるが、EX-FH25では“大きく重い”といった向きには試して欲しい1台だ。


本体側面にUSB/AV出力端子を搭載バッテリーと記録メディアスロット
付属の充電器とバッテリーバッテリーと記録メディアを含む重量

実写画像

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

画角

EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F8.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F10.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mm

歪曲収差

EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F3.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 8.9mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mm

ISO感度

※共通設定:EX-FC150 / 3,648×2,736 / F4.5 / 0EV / オート / WB:オート / 32mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200

HSライティング

HSライティング:OFF、ライティングOFF
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mm
HSライティング:OFF、ライティングON
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mm
HSライティング:ON、ライティングOFF
EX-FC150 / 3,456×2,592 / 1/250秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / HSライティング / WB:オート / 6.4mm
HSライティング:ON、ライティングON
EX-FC150 / 3,456×2,592 / 1/200秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / HSライティング / WB:オート / 6.4mm

HS夜景と人物

EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/15秒 / F3.6 / 0EV / ISO400 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,456×2,592 / 1/8秒 / F3.6 / 0EV / ISO800 / HS夜景と人物 / WB:オート / 6.4mm

HS夜景

EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/2.5秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO400 / オート / WB:太陽光 / 32mmEX-FC150 / 3,456×2,592 / 1/6秒 / F4.5 / +1.3EV / ISO800 / HS夜景 / WB:太陽光 / 32mm

動画

※サムネイルをクリックすると動画をダウンロードします

【ハイスピードムービー】

120fps / 640×480ピクセル / AVI / 16秒 / 23MB
1,000fps / 224×64ピクセル / AVI / 1分23秒 / 8MB
30-240fps / 448×336ピクセル / AVI / 51秒 / 39MB
30-240fps / 448×336ピクセル / AVI / 51秒 / 39MB

【HD動画】

30fps / 1,280×720ピクセル / AVI / 17秒 / 56MB

そのほか

EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 23.3mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F4.5 / 0EV / ISO125 / オート / WB:オート / 32mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 19.8mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 27.3mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 16.9mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 32mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 19.8mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート / 19.8mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F3.6 / 0EV / ISO200 / オート / WB:オート / 6.4mm
EX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F3.6 / +0.7EV / ISO800 / オート / WB:オート / 6.4mmEX-FC150 / 3,648×2,736 / 1/25秒 / F3.6 / 0EV / ISO800 / オート / WB:オート / 6.4mm





本誌:武石修

2009/12/24 12:59