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【新製品レビュー】ニコンCOOLPIX S1000pj

〜世界初のプロジェクター内蔵デジカメ
Reported by 北村智史

 世界で初めてプロジェクターを内蔵したデジタルカメラ。有効1,210万画素CCDに、28〜140mm相当の光学5倍ズームを搭載。新しいハイブリッド手ブレ補正機能も注目したいポイントだ。当初、9月発売予定とアナウンスされていたが、注文数に対して十分な台数を用意できないため、10月23日に延期された。大手量販店の店頭価格は5万1,800円となっている。

ごく普通のボディにプロジェクターを内蔵

 フラットでスクエアなフォルムのボディは、側面や上面などに鏡面仕上げのパーツを多用したデザインで、きらびやかな反面、指紋などが目立つ。大きさは99.5×23×62.5mm(幅×奥行き×高さ)で、コンパクト機としてはまずまずの小ささにおさまっている。重さは電池とメディア別で155g。こちらもちょっと重めに感じられる程度で、携帯性の面でも不満に感じることはない。プロジェクターという、今までなかった要素を詰め込んでいるにしては小型軽量と言える。

 搭載レンズは28〜140mm相当でF3.9〜5.8と少々暗め。レンズシフト式の手ブレ補正機構を内蔵している。Webサイトなどには記載がないようだが、画像処理によってリアルタイムで歪曲収差の補正を行なっており、電源オン時に一瞬だけ補正なしの映像を見ることができる(かなり短い時間だけなので液晶モニター画面の撮影はできなかった)。

 その関係もあるのかもしれないが、広角端の中心部は十分に高い解像感が得られているのに対し、画面四隅は少々アマさが気になる。一方、望遠端は全体的に力不足の感があり、広角端がシャープなだけにユルさが目に付いてしまう。

 最短撮影距離は通常時は広角端で30cm、望遠端で50cm。マクロ時はズーム操作時のバーグラフ表示の△マークより広角側(Exif情報によると6.9mmくらい以下)でレンズ前3cmまで寄れる。望遠端の数字は公表されていないが、実測でおよそ30cm程度となる。

 電源は容量1,050mAhのリチウムイオン充電池。例によって、模造品対策用のホログラムシールが貼付されている。CIPA基準の撮影可能コマ数は約220コマだ。記録メディアはSDHC/SDメモリーカードと内蔵メモリーが36MB。

 起動は割と速めに感じるが、ズームやAFの動作スピードは普通。上面の電源ボタン近辺は外装パーツがわずかに浮いているのか、押すとキシキシと鳴る。もちろん、写りにはまったく影響はないはずだが、ちょっとばかりいただけない感じである。

搭載レンズは5〜25mmの折り曲げ式。向かって右にあるのは上がリモコン受光部、下がセルフタイマーランプ/AF補助光 バッテリーは容量1,050mAhのリチウムイオン充電池。記録メディアはSDHC/SDメモリーカード+内蔵36MBメモリー
上面のシャッターボタンまわりの操作部。電源ボタンの向かって左側あたりを押すとキシキシと音がするのが気になるところ こちらは背面の操作部。カメラ本体も角張っているが、十字キーなどもスクエアなデザイン。上の9つの点はスピーカーの穴だ

最大40型での写真投影が可能

 本機の最大の特徴が内蔵プロジェクター。使用説明書のスペック表によると、0.4型反射型の単灯単板式でアスペクト比は4:3、解像度はVGA相当(約92万ドット)。光源には高輝度白色LEDを採用しており、明るさは最大10ルーメン、コントラストは30:1。投影距離の範囲は0.26mから2m。画面サイズは5型(10×7.5cm)相当から40型(80×60cm)相当。付属のバッテリーでの電池寿命は約1時間となっている。

 試してみた印象としては、真っ暗にできる部屋であれば、なんとか見られるかなぁ、と言ったところ。明るさもコントラストも低いので、写真を鑑賞する目的に適しているとは言いがたい。実際、据え置き型の製品では、低価格タイプでも2,000ルーメンのものもあるくらいで、わずか10ルーメンの本機のパワー不足は火を見るよりも明らかだ。

 が、どういう内容の写真なのかをざっとチェックする程度であれば、ちょっとした暗がりとA4サイズ程度の白紙があれば十分に役に立ってくれる。旅先のホテルなどで、その日に撮った写真を家族や仲間といっしょに見るといった用途には有用だ(AVケーブル持っていって、備え付けのテレビにつなげば、なんて野暮は言いっこなしである)。

 見やすい高さに投影できるように少し角度を付けられる専用の「プロジェクタースタンドET-2」、撮影時にも使える「リモコンML-14」が付属している。ただし、台形歪みを補正する機能はないので、スクリーン側で調整する必要がある。

 ボディサイズの関係からか、投影レンズの画角が狭めなため、30型相当の画面サイズを得るには1.5mの投影距離が必要になってしまう。テーブルに置いて近くの壁に投影するような使用条件が少なくないだろうことを考えれば、もっと広角なレンズのほうが使い勝手がいいのではないだろうか。

 また、プロジェクターモード時には画像の情報(コマ番号など)が表示されないので、「あ、この写真プリントしてね」とか言われたりしたときにはちょっと困るかもしれない。プロジェクターモードでの情報表示のオンオフを選べるようにしてもらえると便利だと思う。

 なお、プロジェクターを使うとかなり温度が上がる(通常撮影でもわりと温かくなりやすい気がしたが)。ヤケドをするほどではないとは思うが、それなりに注意して取り扱うほうがいいだろう。

画面中央の黒い部分がプロジェクター窓。明るさは10ルーメン。2mの距離で40型相当の画面サイズが得られる 向かって左側の丸いボタンがプロジェクターのオンオフスイッチ。右側のフォーカススライダーでピント合わせを行なう
テーブル三脚に固定してブツ撮り用の背景紙に投影したところ 付属のスタンドに載せた状態。少し角度を付けられるので壁に投影するときに便利。台形歪みを補正する機能はない
撮影時にも使える赤外線リモコンが付属。撮影時はシャッター、ズーム、プロジェクターモード時はコマ送りなどの操作が可能だ 背面のチャージランプの右側にもリモコン受光部がある。三脚撮影時やプロジェクターモード時にはありがたい

有用な「ハイブリッド手ブレ補正」

 もうひとつ、注目したいのが「ハイブリッド手ブレ補正」機能。光学式補正に画像処理による電子式補正を組み合わせることで、さらに高度な手ブレ補正を行なうというもの。使用説明書には「シャッターを2回きって画像補整をする」とあり、そのため通常撮影よりもレスポンスは悪くなる。

 シャッター速度が1/4〜1/5秒程度になる条件で、0EV、光学式補正のみ、ハイブリッド補正で各10コマずつ撮ってブレ具合をチェックしてみたところ、ピクセル等倍で見てブレていないと見なせるコマの数は、0EVで2コマ、光学式補正のみで7コマ、ハイブリッド補正では9コマだった。

 おおざっぱな印象としては、光学式補正の効果がシャッター速度で2〜2.5段程度、ハイブリッド補正はさらに0.5〜1段程度の効果がありそうな感じ。ただし、ハイブリッド補正はブレ具合などの条件によっては、いかにも画像処理やりました的な仕上がり(強めのノイズ処理を施したような、ディテール再現が悪くなった感じ)になることもある。とは言え、光学式補正だけで撮るよりも失敗率が減らせるのだから有用なのは間違いない。高感度とうまく組み合わせて使えば、街の夜景レベルの明るさは手持ちで十分対応できるだろう。

 また、手ブレや被写体の動きを検出して、自動的に感度を上げ下げする「モーション検知」機能も搭載(当たり前だが、感度オートに設定しているときだけ有効になる)。動き検出だけでなく、手ブレにも対応というのがミソで、しっかり構えられていれば低感度で高画質に撮れるし、構え方が悪くてブレそうなら高感度で失敗を防ぐといった具合にはたらいてくれる。

「ハイブリッド手ブレ補正」は光学式補正と電子式補正を組み合わせることで、手ブレによる失敗を減らすことができる機能だ 光学式補正のみ(画面左)とハイブリッド補正(画面右)の画像を比較したもの。ハイブリッド補正のほうがディテールが少しアマいのがわかる
手ブレや被写体の動きを検出して感度の上げ下げを行なう「モーション検知」機能。初期設定では「AUTO」になっている AFは「顔認識オート」、9点自動選択の「オート」、中央1点の「中央」、のほか画面上の任意の場所(99点から選択)でピント合わせが可能な「マニュアル」が選べる
「情報AUTO」は、シャッターボタン半押しで大半の表示が消えて、画面が見やすくなるモード。こういう細かさは便利なところだ 露出補正時の画面。補正値を変えたら十字キー中央の「OK」ボタンを押さないと確定されない。誤操作を生みやすい仕様だ
ポストビューはオンオフが選べるだけで、表示時間は固定。しかも、約1秒ほどの短時間なので、確認する前に消えてしまうのが難点 再生時の画面。必要最小限の情報だけで、露出値などもわからない。もう少しサービスしてくれてもいいのではないかと思う

まとめ

 筆者個人としては、プロジェクター内蔵にそれほど惹かれはしないが、試みとしてのおもしろさ、新しい写真の楽しみ方という可能性の部分では高く評価できると思う。コンパクト機の大きさ、重さを逸脱せずに、プロジェクターを内蔵しているという点も立派だ。

 実売5万円オーバーの価格はコンパクト機としては安いとは言えないものの、同程度の明るさを持つコンパクトタイプのプロジェクターは、安価なものでも2万5,000円程度することを考えれば、まずまず納得できる価格だろう。パソコンのモニターやテレビ画面とは違った雰囲気で写真を見てみたいとお思いの方には注目の1台と言える。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

●画角と歪曲

 搭載レンズは35mmフィルムカメラ換算で28-140mm相当の光学5倍ズーム。広角端の画面中央部はシャープ感が高いが、四隅は像の崩れが目立つ。また、望遠端は広角端に比べると解像力が低めの印象だ。

 画像処理で歪曲収差の補正を行なっていて、広角端でも非常に端正な描写が得られる。画像処理による歪曲収差補正については賛否両論あるが、画面の端に直線をフレーミングしても気にならないというのはうれしい。

広角端
4,000×3,000 / 1/153秒 / F7.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
望遠端
4,000×3,000 / 1/268秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25mm(140mm相当)
広角端
4,000×3,000 / 1/410秒 / F7.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm(28mm相当)

●感度

 ベース感度はISO80で、フル画素での最高感度はISO1600。ISO3200と6400は3メガ記録となる。ピクセル等倍で見て不満に感じないのはISO200まで。A4サイズのプリントならISO400でも使えそうな感じだ。ISO800になるとノイズ処理によるディテール再現の劣化が目立ちはじめる。ISO1600以上はオマケのレベルとしか言いようがないが、Lサイズプリント程度なら、まあまあ見られる画にはなってくれそうだ。

 なお、通常の感度オートは上限がISO800までだが、「感度制限オート」では上限をISO200まで、またはISO400までに抑えることができる。

感度設定範囲はISO80〜6400まで。ただし、ISO3200と6400に設定すると記録画素数が2,048×1,536ピクセル以下に制限される
ISO80
4,000×3,000 / 1/48秒 / F5.8 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO100
4,000×3,000 / 1/63秒 / F5.8 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO200
4,000×3,000 / 1/133秒 / F5.8 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO400
4,000×3,000 / 1/290秒 / F5.8 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO800
4,000×3,000 / 1/147秒 / F11.6 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO1600
4,000×3,000 / 1/302秒 / F11.6 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO3200
2,048×1,536 / 1/531秒 / F11.6 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ISO6400
2,048×1,536 / 1/1,036秒 / F11.6 / -0.3EV / WB:オート / 25mm(140mm相当)

●ピクチャーカラー

「標準カラー」でも色ノリはいい。「ビビッドカラー」は彩度だけをアップした感じで、コントラストやシャープネスはほぼ変化なし。モノクロ系の「白黒」、「セピア」、「クール」も、特に凝った処理は施されていないようだ。

ピクチャーカラー:標準カラー
4,000×3,000 / 1/244秒 / F7.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm(28mm相当)
ピクチャーカラー:ビビッドカラー
4,000×3,000 / 1/238秒 / F7.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm(28mm相当)
ピクチャーカラー:白黒
4,000×3,000 / 1/232秒 / F7.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:- / 5mm(28mm相当)
ピクチャーカラー:セピア
4,000×3,000 / 1/226秒 / F7.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:- / 5mm(28mm相当)
ピクチャーカラー:クール
4,000×3,000 / 1/215秒 / F7.9 / -0.3EV / ISO80 / WB:- / 5mm(28mm相当)

●ハイブリッド手ブレ補正

 手ブレ補正は光学式補正のみと光学式+電子式のハイブリッド補正が選べる。ハイブリッド補正は2回シャッターを切って画像処理を行なう関係でレスポンスは低下するし、条件によっては画像処理くさい写りになってしまうこともある(手ブレが少なければ光学式補正のみと同等の画質になる)。光学式補正のみでは救えなかったコマもハイブリッド補正なら使える画面になると思えばいいだろう。

光学式補正のみ
4,000×3,000 / 1/4秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
ハイブリッド補正
4,000×3,000 / 1/5秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm(28mm相当)

●自由作例

マクロ機能での最短撮影距離はレンズ前3cm。これはめいっぱい寄って撮ったカット
4,000×3,000 / 1/163秒 / F4 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.9mm(39mm相当)
手ブレ補正で画面が揺れる関係で、本当はきちんと左右を合わせたいのになかなかぴたっと決まってくれない。数少ない泣きどころではある
4,000×3,000 / 1/25秒 / F4.8 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 14.9mm(83mm相当)
細い通路から見上げた青空。ほとんど露出0EVでもOKなくらい露出がいい本機だが、こういうシーンだけは大幅な補正が必要となる
4,000×3,000 / 1/524秒 / F7.9 / -1EV / ISO80 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
望遠端の最短撮影距離は通常時は50cmまでだが、マクロ時にはもうちょっと寄れるようになる。自宅ではかってみたら30cmくらいだった
4,000×3,000 / 1/414秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25mm(140mm相当)
小振りなメリーゴーラウンド。シマウマやキリンが混じってるのはまだいいとして、ウサギらしいのがいるのはちょっと不思議
4,000×3,000 / 1/91秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25mm(140mm相当)
発色の傾向は、同社のデジタル一眼レフの「スタンダード」に似ているが、若干鮮やかめのチューニングのように思える
4,000×3,000 / 1/34秒 / F5.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 25mm(140mm相当)
ハイブリッド手ブレ補正の効果に期待して撮ったカット。広角端とは言え、シャッター速度1秒でこのブレなさは恐るべしである
4,000×3,000 / 1秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm(28mm相当)
セール中のペットショップの店先にいたメンフクロウ。顔がハート型なのが特徴。辞書によると、おもにネズミを食べるらしい
4,000×3,000 / 1/33秒 / F4.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 14.9mm(83mm相当)
青空はやっぱり明るくなりすぎるのでマイナス補正が必要になる。標準域の画角なのに、広角端よりも周辺光量低下がやや目立つ
4,000×3,000 / 1/252秒 / F8.4 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 9.9mm(55mm相当)
サービスステーキの“メガ盛”は魅力的だと思うけれど、ランチに1,500円はちょっときびしいものがある。普通なら-0.3段補正か
4,000×3,000 / 1/15秒 / F4.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 14.9mm(83mm相当)




北村智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2009/9/24 00:00


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