ソニーα55【第2回】

新江ノ島水族館でイルカのジャンプを連写しまくる

Reported by 伊達淳一


10コマ/秒撮影を行なえる「連続撮影優先AE」モード

 α55がこれほど注目を集めているのは、おそらく「AF追従10コマ/秒の超高速連写」のためだろう。ボクが、α55の連続撮影優先AEを初めて試してみたのは、新江ノ島水族館のイルカショー「スプラッシュ!」。そのときは、まだ、ベータ機が手元に届いたばかりで、α55の使い方もそれほど熟知していない状態で、特に深く考えることなく、オートフォーカスモードをコンティニュアスAF(AF-C)にして、連続撮影優先AEでイルカのジャンプシーンを連写しまくった。快感~!

 もっとも危惧していた動体に対するEVFの追従性はそれほど悪くはなく、10コマ/秒と連写スピードが速いこともあって、連写中でもイルカの動きをかろうじて追うことができた。ただ、シャッタースピードが1/500秒と遅く、イルカのジャンプシーンはすべて被写体ブレ。感度をチェックしてみるとなんとISO100で撮影されている。どうやら1/500秒を下回らないと感度アップしてくれない仕様らしい。当然、ISO感度を手動でもっと高感度に設定しようと試みるものの、液晶モニターには『現在の撮影モードでは無効です。「P/A/S/M」モードで有効になります』という無情なメッセージが表示されるだけ。う~ん、困った仕様だ。


1,620万画素で10コマ/秒の超高速連写が行なえる「連続撮影優先AE」。AF-C時には、絞り開放(F3.5よりも大口径レンズはF3.5固定)、ISOオートという制約はあるものの、10コマ/秒でAFも追従する。α55の目玉の機能の一つだAF-C時には感度はISOオートのみで、感度や絞り値を手動で設定することはできない仕様だ

 仕方なくシャッター優先AEにして、感度をISO800に設定して再度チャレンジしてみたものの、連写スピードは6コマ/秒なので、10コマ/秒の連続撮影優先AEと比べると、連写中のEVFの更新がぎこちなく、イルカの動きが追いづらい。痛し痒しだ。

 家に帰ってから、取扱説明書を調べてみると、ちゃんと次のように書いてありました!
「マニュアルフォーカスモード、またはオートフォーカスモードの[シングルAF]のときは、ISO感度と絞り値を設定できる。[シングルAF]のときのフォーカスは1枚目で固定される」

 つまり、AF-CならAFは追従するけどISO感度も絞り値も自由にならないのに対し、AF-S(シングルAF)ならピントは1コマ目で固定されるけどISO感度も絞り値も自由に設定できるというわけだ。

 ちなみに、連続撮影優先AE時は、連写中、1コマ1コマ絞り羽根を動かしている時間的余裕はないので、一度、絞り込んだらそのままの状態で連写し続ける仕様だ。そのため、AFが追従するAF-Cに設定されている場合には、連写中でも位相差AFを動作させるため、絞り値はF3.5固定(F3.5より暗いレンズは絞り開放)で撮影されるのだ。

 このAF-C時の絞り値の制約はよくわかる。問題はなぜAF-C時にISOオートのみに制限されているのか、だ。もし、不適切なISO感度を設定することで、シャッタースピード上限の1/4,000秒にぶち当たってしまい露出オーバーになったり、逆に感度が低すぎてシャッタースピードが遅くなりすぎるのを危惧してのことなら余計なお世話だし、AF-SやMF時にISO感度の手動設定を許可するというのも妙だ。本当にそういった誤設定を心配するなら、適正露出が保てない場合は、強制的にISO感度を増減感して適正露出を保つセーフティシフトを行なえば済む話だ。もし、ファームウェアアップデートで対応できるなら、AF-C時のISOオートの縛りを解除してほしいと思う。

AF-SやMFに切り換えれば、連続撮影優先AEでも、任意の絞りや感度に設定して、超高速連写が行なえるAELボタンの設定を[再押しAEL]にすれば、AELボタンを一度押せば、絞りとシャッタースピードが固定され、マニュアル露出的に使用できる

 そんなわけで、現状では、AFは追従するけどISO感度も絞り値も自由にならないAF-Cと、ピントは1コマ目で固定されるけどISO感度も絞り値も自由に設定できるAF-Sのどちらかを選ばざるをえないのだが、個人的には、AF-Sで小刻みに連写を繰り返すというスタイルがお薦めだ。

 ある程度明るい場所であれば、絞りをF8~11くらいまで絞って被写界深度を少しでも深めにし、シャッタースピードが1/2,000秒以上になるように手動でISO感度を設定。ISO800かISO1600程度ならノイズの増加もそれほど目立たないし、高感度ノイズリダクションによる解像感の低下も被写体ブレしてしまうよりは遙かにマシ。それに、ある程度、絞って撮影することでレンズの収差も少なくなり、キリッと描写が引き締まってくる。

 まあ、撮影シーンや被写体によっても違うだろうが、AF-Cで連写し続けるよりも、AF-Sで3~4連写したら、もう一度、シャッターボタンを押し直し、ピントを合わせ直してからまた3~4連写を繰り返したほうが、総じて良い結果が得られると思う。

 というわけで、製品版のα55を手にし、新江ノ島水族館へリベンジ。今度は、オートフォーカスモードをAF-Sに設定し、1/2,000秒以上の高速シャッターが切れるように、ISO感度をISO800、もしくはISO1600に設定。水面の明るさでAEロックをかけ(AELボタンを再押しAELに設定すると、もう一度、AELボタンを押すまでは、連写を繰り返しても絞りやシャッタースピードは固定されたままなので、マニュアル露出的に使用できる)、イルカがジャンプしてくる瞬間を狙って連写しまくった。

撮影場所/新江ノ島水族館

 まだまだ修行不足で、イルカがジャンプしている短い瞬間に、小刻みに連写を繰り返すことはなかなかできなかったものの、イルカがジャンプしても撮影距離がそれほど変わらないシーンなら、1コマ目のピント位置でもほとんど無問題。思い切って高速シャッターを切ったことで、イルカのスピンジャンプで飛び散った水滴も1滴1滴シャープに描写されている。また、Gレンズとはいえ、70-300mm F4.5-5.6 G SSMは、絞り開放では1,620万画素に対しては描写が微妙に甘くなりがちだが、今回はF8~F11まで絞って撮影しているので、非常にシャープに仕上がっている。

 カメラに向かって高速で近づいてくる、あるいは遠ざかっていく被写体には、AF-Sでは被写界深度でカバーできない可能性が高いが、動きがそれほど速くない被写体だったり、撮影距離がほとんど変わらない被写体なら、AF-SでISO感度を高感度に手動設定して、ある程度、絞り込んで撮影した方が歩留まりは高かった。エントリーモデルでここまで撮れれば大満足だ。

 回転しながら横方向にジャンプするイルカをアップでフレーミングし続けるのは、一眼レフの光学ファインダーでもかなり苦労するので、EVFとなるとなおさら。できれば、右目でEVFを覗きながら、左目で被写体の動きを追いながら、その動きに合わせてカメラを振る、いわゆる“両眼視”ができるようになれば、もっと大幅に歩留まり良く撮影できるはずだ。とはいうものの、ボクは双眼鏡を覗くのも苦手で、超望遠レンズともなるとうまく両眼視できないのだが、100mm前後の緩い焦点距離くらいなら、なんとか両眼視のまねごとはできる。まずは、焦点距離を欲張らず、標準から中望遠の画角で両眼視のトレーニングをしていくといいだろう。

α55で連写するときは、オートレビューを[切]にするのが鉄則。これを守らないと地獄が待っている(笑)

 それと、α55で連写するときは、オートレビューを[切]にするのが鉄則。オートビューを[切]にしていれば、連写を止めれば速やかにライブビューが表示され、連写後にEVFや液晶モニターがブラックアウトすることはないが、オートレビューが表示されるようにしていると、連写終了後に数秒間はEVFやファインダーがブラックアウトし、シャッターボタンを半押ししてもライブビューには復帰しない。そのため、なかなか次の撮影が行なえず、せっかくのシャッターチャンスを逃してしまう恐れもある。オートレビューを[切]にしている場合でも、メモリカードへのアクセスランプが点灯している状態で再生ボタンを押すと、なかなか再生画像が表示されなかったり、シャッターボタンを半押ししてもライブビューになかなか復帰しないことがある。α55で連写するときは撮影に専念し、撮影画像の確認は撮影が一段落してからにしたほうが無難だ。


「連続撮影優先AE」実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置の画像は元画像を非破壊で回転させています。

 「スプラッシュ!」で一番絵になるのが、スピンジャンプ。トレーナーが手をクルクルッと回して合図するので、次はスピンジャンプだな、とわかりやすいが、だいたい飛び出す場所は決まっているものの、イルカの気分次第で微妙に水面から顔を出す場所は変わる。このカットを撮影したときも別の場所を狙っていたのだが、ちょっと違う場所から飛び出したので、あわててフレーミングし直し、連続撮影優先AEで連写。置きピンしていた場所と距離はほとんど変わらなかったため、ピントはバッチリ。1/3,200秒の高速シャッターを切っているので、動体ブレもほとんどしていない。これで10万円以下で買えるエントリーというのだから、恐ろしい時代になったものだ。このカットを撮影したときのEVF内をムービーで記録しているのでご参照あれ。

撮影場所/新江ノ島水族館

・共通設定:α55 / 3,264×4,912 / 1/3,200秒 / F8 / -0.3EV / ISO800 / 100mm

 水中深く潜り、イルカに足を押してもらって、水の中からジャンプするトレーナー。スプラッシュの目玉だ。とりあえずトレーナーが飛び出してくる位置を予想し、水面付近に置きピンしながらその瞬間を待つ。EVFだけを覗いていると画面外が見えないので、左目も開けて、周囲の状況を広く把握するのがコツ。予想していたよりも右寄りから飛び出してきたので、慌ててフレーミングを調整するものの、動きが速く、なかなか追いつけない。EVFだから追いつけないというのではなく、もっと機敏にフレーミングし直す力を身につける必要がありそうだ。もう少し、ズームを引いて撮影すれば、フレームアウトするリスクも少なくなる。画素数も多いので、引き気味に撮って、大きくトリミングするというのも手だ。

撮影場所/新江ノ島水族館

・共通設定:α55 / 3,264×4912 / 1/3,200秒 / F11 / 0EV / ISO1600 / 100mm

 これはAF-Cで撮影した江ノ島のトンビ。のんびりと飛んでいるので、横方向に移動する被写体でも安定して追い写しできる。ただ、AF-CだとF3.5よりも暗いレンズは絞り開放で撮影されるので、よほど高性能なレンズでないと1,620万画素のα55だと、ちょっと甘めの描写になりがち。また、被写界深度も浅くなるので、その分、高いフォーカス精度も要求されるが、ピクセル等倍でチェックするようなキビシイ観賞環境では、なかなかビシッと気持ちよく決まるカットは少なめだ。これではフラストレーションが溜まる一方なので、画像サイズをM(8.4M)に落とすことで、多少は見かけの歩留まりも向上するし、撮影枚数も約1.5倍に増えるので、思う存分、連写しまくれる。

・共通設定:α55 / 3,568×2,368 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 300mm

 これは前回、掲載したTru-Finder内を記録したムービーで撮影されたカットの抜粋。下北沢の駅で撮影した小田急ロマンスカーだ。このカットだけは、タムロンAF18-250mm F3.5-6.3 Di II(Model A18)を使用して、AF-Cで撮影しているが、やはり高倍率ズームを絞り開放で使うのは、1620万画素のα55だとちょっと厳しい感じ。とはいえ、こうした便利ズームでも10コマ/秒の高速連写でAFが追従するのは見事。ポストカードサイズ程度のプリントなら、この程度のピントの甘さは許容範囲内。うるさいことを言わず、肩の力を抜いて連写を楽しみたい。

・共通設定:α55 / 4,912×3,264 / 1/640秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 140mm



伊達淳一
(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。

2010/9/24 14:45