ペンタックスK-7【第3回】

カスタムイメージ「リバーサルフィルム」を検証する

Reported by 中村文夫


 前回のレポートから間が空いてしまったが、7月28日に公開されたK-7用ファームウェア(Ver.1.10)について検証したい。今回のバージョンアップの最大の特徴は、カスタムイメージにリバーサルフィルムが追加されたことだろう。名前が示す通り、このモードを選ぶと、カラーリバーサルフィルムで撮影したような鮮やかな発色を得ることができる。

 なおリバーサルフィルムには多くの種類があるが、K-7に採用されたモードは、富士フイルムのベルビアを代表とする「記憶色」を意識したものであるという。具体的に説明すると夕焼けや新緑などを実際よりも鮮やかに再現することで、風景写真で好まれる発色が得られる。


リバーサルフィルムの設定画面。リバーサルフィルムは、シャープネスのみ調整可能だリバーサル以外のカスタムイメージは、彩度、色相、コントラストなども設定ができる

 それからもうひとつ、今回のバージョンアップで、電子水準器の表示方法も変更された。従来は味気のないバーグラフ表示のみだったが、バージョンアップを機に645Dと同様のグラフィック表示に変更。傾きの度合いが直感的に読み取れるうえ、露出補正やマニュアル露出時の表示と見誤る危険も回避された。ただ645Dと同じ表示を採用したことで、前後の傾きを検出する機能がないことが目立つようになったことは否めない。

左がK-7、右が645Dの水準器表示画面。645Dの方が傾き表示のドットが細かく表示される。またK-7は前後の傾きを検出する機能がないので、表示が省かれている

 これ以外では、動画編集機能、ライブビュー時のAF機能などの充実が図られている。

 最初にベルビアを意識した発色と説明したが、実際に使ってみた率直な感想はベルビアではなくフォルティアである。フォルティアとは赤や緑などの原色を極端に強調するカラーリバーサルフィルムだ。現在は製造中止だが、まるで蛍光色でペイントされたような強烈な色調が得られる超個性的なフィルムだった。

 フィルムの場合、撮影してから画像を見るまでの間に現像というプロセスが挟まるので、その間に脳内で色味が醸成されてしまう。そのため色の忠実性より、撮影者のイメージに近い色が好まれる傾向がある。これが「記憶色」と言われる所以である。これに対しデジタルは即座に画像の確認が可能。目の前にある被写体と色味の比較ができるので、フィルムのときより色味の差が強く感じられてしまう。そんな意味で今回のリバーサルフィルムモードは、好き嫌いが分かれるかもしれない。だが、その特性を理解したうえで被写体を選べば、力強い味方になるはずだ。いずれにしてもカスタムイメージの選択肢が増えたことは歓迎すべきことといえるだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・リバーサルフィルム、ナチュラル、鮮やかの比較

 リバーサルフィルム、ナチュラル、鮮やかの比較。カスタムイメージをリバーサルフィルムに設定して撮影。ナチュラルと鮮やかは同時記録したRAWデータからボディ内現像で生成した。

 リバーサルフィルムは、ホテイアオイの緑が、極端に強調されている。またナチュラルでは、金魚のオモチャの赤が少し濁りぎみだが、リバーサルフィルムでは透明感が増し、鮮やかな発色になった。

リバーサルフィルム
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約10.9MB / 3,104×4,672 / 1/20秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
ナチュラル
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約6.5MB / 3,104×4,672 / 1/20秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
鮮やか
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約6.4MB / 3,104×4,672 / 1/20秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm

 3枚を比較すると、ナチュラルはあっさりしすぎて、どこか、もの足りない印象。これに対しリバーサルフィルムは補正が過度で、ハイビスカスの黄色が蛍光色のように見える。
リバーサルフィルム
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約10.7MB / 4,672×3,104 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
ナチュラル
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約5.7MB / 4,672×3,104 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm
鮮やか
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約6.8MB / 4,672×3,104 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 50mm

 緑や黄に比べ、白は、それほど差が出ないようだ。
リバーサルフィルム
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約7.8MB / 4,672×3,104 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 40mm
ナチュラル
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約5.9MB / 4,672×3,104 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 40mm
鮮やか
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約6.5MB / 4,672×3,104 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 40mm

 ピンクも思ったほど強調されないが、リバーサルフィルムは背景の緑が強調された結果、全体に締まった印象になる。
リバーサルフィルム
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約9.4MB / 4,672×3,104 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
ナチュラル
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約6.4MB / 4,672×3,104 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
鮮やか
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約5.8MB / 4,672×3,104 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm

 リバーサルフィルムは、刈り入れ間近の稲穂が緑色になり、ちょっと不自然に見える。
リバーサルフィルム
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約10.4MB / 4,672×3,104 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 16mm
ナチュラル
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約6.2MB / 4,672×3,104 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 16mm
鮮やか
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約6.6MB / 4,672×3,104 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 16mm

 ナチュラル、鮮やかに比べ、リバーサルフィルムは赤が強調され、より夕陽らしく見える。
リバーサルフィルム
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約7.7MB / 4,672×3,104 / 1/200秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 45mm
ナチュラル
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約5.7MB / 4,672×3,104 / 1/200秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 45mm
鮮やか
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約6.3MB / 4,672×3,104 / 1/200秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 45mm

 オートホワイトバランスによるタングステン光下での撮影。ナチュラル、鮮やかは、赤みが抑えられたが、リバーサルフィルムでは、逆に赤が強調される結果になった。
リバーサルフィルム
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約9.9MB / 4,672×3,104 / 1/20秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
ナチュラル
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約6.6MB / 4,672×3,104 / 1/20秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
鮮やか
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約5.8MB / 4,672×3,104 / 1/20秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm

・リバーサルフィルムの作例
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約10.4MB / 3,104×4,672 / 1/160秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 50mmK-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約8.5MB / 4,672×3,104 / 1/30秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約9.7MB / 3,104×4,672 / 1/15秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mmK-7 / A Macro 50mm F2.8 / 約9.9MB / 3,104×4,672 / 1/15秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm
K-7 / DA 16-45mm F4 ED AL / 約10.3MB / 4,672×3,104 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18mm




中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。

2010/9/17 11:51