気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

PENTAX K-30【第6回】

「Eye-Fi」をダイレクトモードで安定して使うコツ

 無線LAN機能を持つSDメモリーカードを利用すれば、撮影を中断することなく写真にアクセスすることが可能になる。特にフィールドワークや風景撮影においては、ノートパソコンの代わりにタブレット端末やスマートフォンを使う事で機材の軽量化にも貢献し、移動中や悪天候でも撮影画像のバックアップや共有が可能になるなど多くのメリットを生む。

現行Eye-Fi X2シリーズはすべての製品でJPEGファイルのダイレクトモード転送が可能。最上位のPro X2はRAWファイルの転送もできる。

 類例に見える製品が数多く登場しているが、先陣を切ってこの分野を拓いたのはまぎれもなくEye-Fiシリーズだ。後発のライバルはユーザーがスマートフォン上のアプリやブラウザを操作して、カメラ内のカードにある画像をブラウズおよびダウンロードするのに対し、Eye-Fiの特徴はカードから転送先のデバイスに向けて画像を“自動的に”転送することにある。写真のバックアップ用途としては、言うまでもなく自動転送機能を持つEye-Fiが適している。

 Eye-Fiはライバルに較べ高機能である反面、設定が複雑で扱いが難しいというイメージを持たれがち。そこで、今回はEye-Fiのダイレクトモードをフィールドカメラの行動力を拡張するものと捉え、Eye-Fiカードおよびカメラそれぞれについて、安定して使うための設定のポイントについて書いてみよう。

 Eye-Fiは、撮影を行ないファイルがカードに書き込まれるまでは、普通のSDHCメモリーカードとまったく同じ働きをする。そして書き込み終了後、ある条件が整うとEye-Fiの中に組込まれた無線LAN機能が起動し、撮影画像を順次転送する。その“条件”を整えてやることがEye-Fiを上手に使うための基本だ。

 その条件とは、まず第一に「カメラの電源が入っていること」。これは当たり前だろう。大事なのは次の条件、「カメラの測光系がオフ(待機)になっている」ことだ。これはあまり知られていないのではないだろうか。

 測光系がオフになっている必要があるのはなぜか? カメラの測光系(TTL露出計)がオンになっているということは通常シャッターが半押しされている状態であり、その時SDカード内のメモリーはカメラバッファからの高速なデータ転送に備え、カメラ側にロックされている。この状態ではEye-Fiのコントローラーや無線部からメモリー内のデータにアクセスすることができず、Eye-Fiは動作しないのだ。

 この2つの条件を安定して満たすには、TTL露出計の作動時間は撮影に支障のない範囲で短く、オートパワーオフまでの時間は転送に充分なだけ長い方が好都合ということになる。一概に何分何秒と言えるものではないが、K-30の機能としては測光作動時間は最短3秒に設定できる。オートパワーオフまでの時間は普通5分以内、長目に見ても10分もあればいいだろう。転送途中でオフになってしまう事が多いなら時間を伸ばす。あるいは後述する操作でEye-Fiを再起動すれば、何回かにわけて転送可能だ。

測光作動時間を3秒にすれば、データの書き込み後すかさずEye-Fiが起動し接続先を探し始める。
オートパワーオフは普通5分で充分だが、私はライティングなどの作業中も接続を維持するために10分に設定している。

 オートパワーオフを長くすると消費電力が気になる場合、転送終了次第ダイレクトモードネットワークを切断するようにEye-Fi側で設定しておけば、消費電力は一般のSDカードと変わらない。逆に転送終了後も接続を保つように設定すると、バッテリー消費はそれなりに大きくなるが、次のショットを撮影した時、接続待ちがなくキビキビと転送される。

転送終了からダイレクトモード切断までの時間はPCのEye-Fi Center App.で設定できる。最短で30秒から設定できるが、私はこれを4分に設定している。
これを「永久」にすると、カメラの電源がオフになるまでEye-Fiはネットワークを維持する。

 転送途中でEye-Fi内部のデータへのアクセスが途切れると、通信の状況によってはエラーが生じEye-Fiの転送機能がフリーズすることがある。なにをするとアクセスが切れるかと言えば、1つには先に書いた「オートパワーオフ」による電源断。もう1つは、これも先に書いた「シャッター半押し」によるデータアクセス遮断だ。

 実際の撮影では転送中でもかまわずレリーズする方が普通なので、Eye-Fiを使うユーザはシャッター半押しによるエラーを必ず経験する。特に半押しをせずに一気にレリーズするとフリーズしやすいようだ。一旦フリーズすると自然に復旧することはないが、Eye-Fiを“再起動”すれば再接続され自動的に転送が再開される。再起動の方法は簡単で、ただカメラの電源スイッチを1度オフにし、再びオンにすればそれでいい。

 システムを理解しないうちにフリーズを経験すると、わけもわからないまま設定をいじり回して状況を混乱させてしまいがちだ。そのうち無意識にカメラの電源をON/OFFし、Eye-Fiが再起動され正常に復するので、結局、ユーザーにはなにが起こったのか理解されないまま終わってしまう。“Eye-Fiは不安定”といわれがちなのはそんなところだろう。

カメラの電源を一旦OFFにし、再びONにするとEye-Fiが再起動する。それでも転送が再開しない時は1コマ捨て駒を撮影すれば、Eye-Fiが接続動作に入り再開される。

 Eye-Fiは当初ネットワーク経由でWebサービスに写真をアップロードするものとして設計され、後にダイレクトモードが追加された。いわば後づけの機能であるため、ネットワーク経由の転送と共存させるための余計な動作が設定を複雑なものにしている面が多い。その辺りのことも整理しておこう。

 Eye-Fiは周囲にネットワークがある場合にはそれに接続を試み、接続できなかったときだけダイレクトモードのアクセスポイントを起動させる。撮影が行なわれた後、まずネットワークを検索するわけだが、その順番は

  1.転送先PC上で起動しているアドホックネットワーク
  2.登録済みのルーターや公衆無線LANサービス(鍵付きAP)
  3.オープンネットワーク(暗号化されていない公開AP)
  4.上のすべてが見つからない場合、ダイレクトモードを起動

となっている。つまり、登録されたネットワークをすべて検索して接続待ちし、オープンネットワークを探し、それがないとき初めてダイレクトモードを起動し、さらにスマートフォンからの接続を待ち、その後に転送する。ずいぶん余計なプロセスだしユーザーには動作状況が見えないので、なおさら待たされる感じが強い。

 この待ち時間を短縮するための方法は簡単だ。これはEye-Fiの公式サポートに記載されている内容なので秘訣でもなんでもないが、手っ取り早く言えば上のリストの1.2.3をすっ飛ばしてしまえばよいのだ。具体的にはまず1と2をなくすために、Eye-Fiカードに登録したネットワークをすべて削除してしまう。

アドホックネットワークや個人所有の無線ルーターなどはEye-Fi Centerのプライベートネットワークとして登録するのだが、ダイレクトモードのみを使うならばここには何も登録せずにおく。

 その上で「公衆無線LAN」タブの「公衆無線LANおよびオープンネットワークに接続する」オプションのチェックを外して「保存」する。こうしてやれば3の工程も無視され、そのカードは一切ネットワークを探すことなく撮影後直ちにダイレクトモードで起動するようになる。要するにEye-Fiの高機能をあえて封印し「ダイレクトモード専用」にしてしまうわけだ。これでレスポンスはずいぶん改善される。

 「転送モード」タブにある「サーバー経由の転送を有効にする」のチェックも外しておく。このチェックは先の「公衆無線LANおよびオープンネットワークに接続する」が有効でない限り機能しないはずだが、念のため外しておこう。

公衆無線LANの機能はEye-Fi Pro X2とEye-Fi Explore X2に購入から1年間付帯するサービスで、バージョンや購入時期によりメニューに現れない場合がある。設定がある場合はオフにし、現れない場合は無視してかまわない。
サーバー経由の転送というのは、Eye-Fiと転送先が同一ネットワーク上にない時にWeb上のEye-Fiサーバーを経由して転送する機能。これを有効にするとEye-FiがAPを探し初めてしまうのでOFFにしておく。

 スマートフォン側では、あらかじめデバイスにEye-Fiアプリをインストールし自分のEye-Fiアカウントとパスワードでログイン可能な状態に設定しておく。その上で、インターネットに接続可能な場所からペアリングを行なう。パソコンのEye-Fi Centerからアカウントに登録したEye-Fiカードのなかから使用するEye-Fiカードを選び、「画像の受信」をタップして、ファイルの種別「写真」、「RAW」、「動画」の中から転送したいものをOnにするだけだ。

接続するEye-Fiカードを選択するとそのカードのSSID/WPAキーなどの基本情報、ネットワークのインストールや転送ファイルの設定などが可能。
「写真」というのはJPEGのことで、「RAW」一般的なRAWファイル形式、「動画」は主要な動画ファイル形式に対応する。

 Eye-Fiアプリの設定のほかに、デバイスがEye-Fiのダイレクトモードネットワークに接続できるようにしておく必要がある。Eye-Fiを挿入してEye-Fi Centerを開くと「ダイレクトモード」タブの左下の辺りにそのEye-FiのSSIDとWEPキーが表示されているはずだ。「ダイレクトモードを起動」ボタンをクリックするとEye-Fiがダイレクトモードネットワークを立ち上げるので、デバイスにそれを登録する。iOSの場合「ネットワーク」メニューから「新しいネットワーク」をタップし、SSIDとWPAキーを入力して接続できればOKだ。

基本操作はデバイスをルーターに接続する時と同様に、SSIDとパスワードを「ネットワーク」コントロールパネルで設定する。
iOS版のEye-Fiアプリにはネットワークプロファイルをインストールする機能が追加されているようだ。同じ機能がAndroid版にあるのかどうかは、デバイスを所有していないので私にはわからない。

 実際の転送がどの程度のレスポンスで行なわれるのかを動画で見ていただこう。

 テストの方法は、転送先デバイスとして初代iPadを使い、1,600万画素JPEG 最高画質(★★★)で5コマ連続撮影し、転送終了と同時にもう1度5コマ連続で撮影し、最後に1コマずつ撮影し、接続された状態でのレスポンスを見た。測光作動時間は3秒、Eye-Fiカードは転送終了後4分間ダイレクトモードネットワークを維持するように設定した。


 テスト撮影の繰り返しを通じ、最初の5コマを撮り終えてからネットワークがつながるまでの時間はおおよそ7秒から18秒のあいだに分布していた。iPadがネットワークを探しにいく間隔が10秒に一回程度であることによるばらつきと思われ、接続にかかる時間は7秒前後といったところだろう。5コマを転送するのにかかる時間は26〜28秒ほど。感じ方はひとそれぞれだが、私自身は自分のiPadとEye-Fi Pro X2の使い勝手には充分満足しているし、日々の仕事にも不自由なく使っている。ネットワークの転送速度とプレビューの生成はいずれも転送先デバイスの性能に依存するので、より新しい機種であればこれより多少速くなるはずだ。

 駆け足で、Eye-Fiの作動のメカニズムと、レスポンスよく使うためにダイレクトモード専用として設定する方法について説明してきた。とりあえず、フリーズしたら再起動をかけるということと、むやみにネットワークを登録しないということだけを守れば、Eye-Fiへの評価は改善するものと思われるし、動作の仕組みを知っていれば自分の使用状況に合わせた設定も経験の中でわかってくるはずだ。フィールドワークや仕事でEye-Fiを使おうと考えているが、いまひとつ使いこなせていないというような方にも参考になれば幸いに思う。

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/