リコーGR DIGITAL III【第3回】

「ハイコントラスト白黒」と「クロスプロセス」を試す

Reported by 種清豊


 10月の初めにリコー「GR DIGITAL III」のファームウェア第3弾が更新された。公開から約1カ月経ち、すでにファームアップを行なったユーザーも多いと思う。

 2009年の発売以来4度目の更新となるファームウェアだが、機能修正の項目は少なく、細かな機能拡張を主に続けてきた。2010年5月には撮影画像をカメラ内でトリミングする機能が加わったり、WBの追加など撮影に直接かかわるV.2.10が公開されている。そして今回のファームV.2.20でも修正項目とともに拡張機能が追加されている。

 今回のバージョンでは撮影時の選択肢として、シーンモードに「ハイコントラスト白黒」と「クロスプロセス」が追加された。ハイコントラスト白黒はその名の通り通常の白黒撮影よりもコントラストを強調し、フィルムを粗粒子現像をしたイメージのざらついた表現で撮影できる。クロスプロセスは、通常のカラー撮影では得られにくいカラーバランスの崩れた写真が撮影可能だ。

今回の機能拡張ファームアップで、「ハイコントラスト白黒」と「クロスプロセス」が使用可能になった

 ハイコントラスト白黒、クロスプロセスともにそれぞれ簡単な効果を調整できる。ハイコントラスト白黒ではコントラストを3段階に調節でき、クロスプロセスは色調を3種(ベーシック、マゼンタ、イエロー)、コントラストを3段階、周辺光量の減光量を変更できる。ハイコントラスト白黒、クロスプロセスのいずれも通常設定での撮影も同時に記録可能だ。効果を適用していない写真も撮影しておきたい人には便利だろう。

ハイコントラスト白黒ではコントラストが調整可能加えて、クロスプロセスでは色調が変更可能だ

 どちらもデジタルカメラの撮影機能として今となっては珍しくは無いかもしれない。ただ、あくまで広角専用機というシンプルで真面目なカメラというイメージのGR DIGITAL IIIに、少しアクセントをつけることができたのではないだろうか。そのほか、MF時の画面拡大倍率を4倍にしたりと、発売以来16項目の機能拡張が行われた。

 発売から1年と少し経つGR DIGITAL III。製品サイクルの早いデジタルカメラにおいて、若干地味かもしれないが、1つの製品を長く使っていくためにもファームウェアでの機能拡張はユーザーにとって大変ありがたいことだということを改めて感じることができた。

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

※縦位置の画像は、非破壊で回転させています。

実写サンプル

●3モードの比較

 フィルムでのクロスプロセスのように毎回不安定で不均一な仕上がりとまでは行かないが、大体の色の転びはつかみやすい。ベーシックの場合は青と緑が増し、全体的に明るめの仕上がりになるようだ。

通常撮影
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/28秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
ハイコントラスト白黒(コントラスト-1)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/26秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト+1、減光 強)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/28秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm

●ハイコントラスト白黒

 木の板塀などアンダー目で撮影するとより質感が出る被写体などは、ハイコントラスト白黒で撮影するとイメージが強くなる。

通常撮影
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/570秒 / F4 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
ハイコントラスト白黒(コントラストMAX)
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/930秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
通常撮影
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/60秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
コントラスト-2
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/60秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
コントラスト-1
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/64秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
ハイコントラスト白黒(コントラストMAX)
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/68秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
ハイコントラスト白黒(コントラスト-1)。晴天順光下で撮影するだけでかなり強いコントラストの画像が得られる。当然ながらフラットなライティングよりは、陰影がある被写体のほうがその効果を強調して表現できる
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
ハイコントラスト白黒(コントラストMAX)。こちらも順光で撮影。空のグラデーション部分の粒子感が出ている
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm

●クロスプロセス

 今回作例はWBオートで撮影したが、クロスプロセスは通常撮影同様WBを変更して撮影できるので、単純にクロスプロセスを使った時よりも、色の変化をつけた撮影が可能であることを付け加えておく。

通常撮影
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調イエロー、コントラスト+2)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調マゼンタ、コントラスト+2)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト+2)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 6mm

 逆光でやや日陰の位置で撮影。ボンネットに落ちる影の部分も緑色に変化しているのがわかる

通常撮影
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/24秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト普通)
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/79秒 / F2.5 / +0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm

 通常撮影のほうが色ははっきりとコントラストが高く見える。色によって写りが大きく変化するクロスプロセスの特徴が出ている

通常撮影
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/143秒 / F4 / +0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト)
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1/810秒 / F2.5 / +0.3EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
通常撮影
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト-2)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,150秒 / F3.2 / +0.7EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm

 クロスプロセスとともに、周辺光量を落として撮影。三段階に周辺光量を落とせるが、強に設定しないとなかなか効果が伝わりにくいようだ。曇天でフラットな光の中の撮影でも色の変化は充分に確認できる。

通常撮影
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/2,000秒 / F11 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 6mm
クロスプロセス(色調ベーシック、コントラスト 普通、周辺減光 強)
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/2,000秒 / F11 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 6mm





種清豊
(たねきよ ゆたか)1982年大阪生まれ。京都産業大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、写真家竹内敏信氏のもとで約3年間のアシスタントを経て、2007年よりフリーランスに。主に日本各地に残る明治、大正、昭和初期のクラシックな素材から現代の街まで幅広く撮影中。また人物撮影や、東京の下町の祭も撮影。キヤノンEOS学園講師、NPO法人フォトカルチャークラブ講師。ブログはこちら

2010/11/11 00:00