オリンパス・ペンライトE-PL1【第2回】

使い心地をE-P2と比較

Reported by 本誌:鈴木誠


純正の本革ショルダーストラップ(実勢価格3,980円)を装着

 E-PL1限定パンケーキキットの発売により、マイクロフォーサーズのオリンパス・ペンシリーズはより一層悩ましいラインナップになったと思う。EVFやマイクアダプターも利用できるE-P2、拡張性ではE-P2に譲るものの、同様のデザインで価格も手頃になってきたE-P1、軽量でストロボを装備し、カラフルになったE-PL1と、甲乙付け難いファミリーである。

 私自身もE-PL1を買っておきながらE-P2とE-P1は未だ気になる存在であり、いずれかのパンケーキキットの購入シミュレーションもたびたび行なっている。3機種ともバッテリーが共通なため、「もう1セットあれば会社にも充電器を置けるし、パンケーキ(M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8)も知っておきたいよなあ……」などと、意識が朦朧とすることしきりだ。

 また外観を見れば、E-P2とE-P1には銀塩カメラのペンやペンFにも見られるような絞り加工を施したトップカバーがあったりと、単純にスペックで比較できないところも悩ましく楽しい部分。そのE-P2とE-P1においても、アクセサリーポートの有無でホットシュー周りの印象が異なるなど、こだわればキリがない。

 そこで今回は、兄貴分であるE-P2を短期間ながら試用する機会に恵まれたため、実際にE-PL1と使い心地を比べてみた。なお、私がオリンパス機に触れたのはE-PL1が初めてである。

E-PL1と大きく異なるボタン配置

E-P2(ブラック)

 E-PL1では、それまでのE-P1およびE-P2にあった背面の2つのダイヤルと、いくつかのボタンを省略している。E-PL1の第一印象としてダイヤルがないことに不安を感じた方も少なくないのではないだろうか。かくいう私もそうであり、購入後も「ダイヤルは不要」とは言い切れずにいた。実際の印象については後述する。

 操作部の具体的な違いは、E-P2(操作部はE-P1も共通)にはE-PL1の操作ボタンに加え、ボディ上面右手側に露出補正ボタン、背面にAEL/AFLボタンを備える。また、背面の方向キー周囲にダイヤル、E-PL1の動画ボタンの位置に横向きのジョグダイヤルを備える。

 E-P2は、E-PL1にはないISO設定ボタンを備えている点が少々うらやましい。ちなみにE-P2の露出補正ボタンは、E-PL1の電源ボタンのあたりに位置している。


E-PL1のボタンE-P2のボタンとダイヤル

露出設定の素早さはE-P2に譲る

 実際の操作例も含めて紹介しよう。私は主にマニュアル露出で撮影するため、それを基準に比較する。E-PL1は、撮影画面で方向ボタン上を押すと露出設定を行なえる状態になり、方向キーの左右で絞り値、上下ボタンでシャッタースピードが変わる。この操作はカスタマイズできない。

E-PL1の撮影画面。左の画面の状態で上ボタンを押すと、右の状態になる。焦ると上ボタンを押し忘れがち

 せっかちな私がE-PL1でよくやるミスとして、明るい場所で撮影したまま夜までカメラを出さず、一気に絞りを開けたりシャッタースピードを遅くしたい時に、間違って上ボタンを押す前に露出を変えようとほかのボタンを押してしまい、各設定メニューが呼び出されることがよくある。さらにそれをOKボタンの連打で消そうとすると、今度は勢い余ってライブコントロールまでひょっこり現れたりするのだ。

OKボタンを押すと、デフォルト状態ではライブコントロールが表示されるオリンパス機でお馴染みのスーパーコンパネも搭載。メニューから両方ともオンにしておき、INFOボタンでライブコントロールと使い分けることもできる

 ライブコントロールはちょっとしたアニメーションと共に表示され、スーパーコンパネを利用している場合でも表示を消すのにシャッターボタンの半押しか、OKボタンを2度押す必要がある。そのため、とっさの時には自分のミスながらストレスを感じてしまう。見た目に味気ないかもしれないが、モード切り替え時のヘルプ表示などを消すことができるのと同様に、ライブコントロールのアニメーションもオフにできたら嬉しい。

 いっぽうE-P2では、2つのダイヤルでダイレクトに露出設定の変更が可能だ。片方のダイヤルで絞り値、もう片方のダイヤルでシャッタースピードといった具合である。任意で入れ替え可能のため、クリック感の確かな横向きジョグダイヤルに絞り値、大きく動かせるダイヤルにシャッタースピードを割り当てると、私には都合がよかった。

 E-P2のダイヤルのカスタマイズ性はなかなか魅力的で、例えば絞り優先時など、ダイヤルの片方が余る場合は露出補正かストロボの調光補正(ストロボ非搭載のため、外部ストロボ用)を割り当てられる。回転方向に対する設定値の増減も任意で選択でき、それも撮影時とメニュー操作で別の回転方向を設定できる。

 これらは慣れに応じたカスタマイズが可能なため、サブカメラとして使うにも嬉しい要素のひとつだろう。加えて、オリンパスのフォーサーズおよびマイクロフォーサーズカメラでは、電子式フォーカスリングの回転方向も任意に変更できる。

E-P2のダイヤル機能設定画面(マニュアル露出時)。P/A/S/Mそれぞれで割り当てを変えられるE-P2のダイヤル方向設定メニュー

E-PL1のシンプルな測距点変更

 測距点変更の操作はE-PL1の気に入っているポイントのひとつで、方向ボタンの左を押すとダイレクトに任意のAF測距点を選べるようになるほか、上下左右の端の位置からさらにボタンを押すとマルチターゲットAFとなる。文章では伝わりづらいかと思うので、動画をご覧頂ければと思う。

 動画では左ボタンだけを押している。測距点変更とAFモードの変更が同じ階層で行なえるため、「AF関連はこのボタンを連打」という具合に覚えることが少なくてよい。

 E-P2のAFボタン(左ボタン)は、AFモード選択のほかにストロボ、測光モード、バックライトのオンオフ、手ブレ補正の設定を操作できるよう割り当てを変更できるが、測距点移動の画面を呼び出すことはできない。

 ちなみにE-P2は、設定メニュー内の「ボタン/ダイヤル」→「方向ボタン機能」の項目で、撮影画面でいずれかの方向ボタンを押した際に、本来割り当てられている機能ではなく測距点移動の画面を呼び出すようにも設定できる。この設定にした場合、使い勝手はE-PL1と近くなる。

 また、測距点変更にライブビューの拡大表示を利用する方法もある。E-PL1では拡大ボタン、E-P2ではINFOボタンをそれぞれ押すことで拡大範囲の枠が表示され、方向ボタンで上下左右に移動する。拡大表示と通常表示はOKボタンで切り替わる。

 拡大枠は通常の測距点変更より細かく移動でき、測距点の位置も連動している。これを利用すれば、E-P2でもINFOボタン一発で測距点移動の状態に移れるというわけだ。INFOボタンを押して元の状態に戻すと、拡大枠は中心位置に戻るようになっている。実際にE-P2で試した動画を掲載するので、挙動を確認してほしい。

 だが、動画からもお分かり頂けるかと思うが、拡大枠を素早く思い通りにコントロールするには慣れが求められそうだ。使い勝手の面では、通常の測距点移動のほうが優れている。なお、E-PL1で上の動画のような拡大枠移動を行なう場合、E-P2より多少レスポンスがよい。

 これら2つの方法で使い心地を比較した結果、測距点移動においてはわかりやすさも含めてE-PL1がよりスマートで好印象だった。

欲を言えば“サクサク”に

 これもまた、せっかちならではの注文かもしれない。E-PL1で方向ボタンを速く連打すると、すべてに反応してくれないことがある(“もっさり感”ではないためストレスは少ないが)。ボタンの数などハード面については慣れや工夫でカバーできるだけに、ソフト面に対しては多少贅沢を言いたくなってしまう。特にE-PL1の方向ボタンは撮影時にダイヤル操作の代わりも担うので、反応はより良くあってほしい。

 とはいえ、それでもライブコントロールの操作レスポンスなどはE-P2よりも上がっているように感じられた。E-P2のあとでE-PL1を手に取ると、その動作もいくぶん俊敏に思えるほどだ。

 また、モードダイヤルはE-PL1の操作性が好みである。確かにデザインや質感は好みのわかれるポイントだが、カメラを構えた状態でも右手人差し指と親指でつまんで回せるというのは、親指の腹で回すより確実かつ楽である。マニュアル露出とアートフィルターなど、ダイヤル上で離れているモードの間を行き来する際には速く回せた方がありがたい。

E-PL1のモードダイヤル(写真はシャンパンゴールド)E-P2のモードダイヤル。背面左手側にあった

あくまで“兄弟”の機種

 2009年7月のE-P1発売から1年弱で3機種が登場したオリンパス・ペンシリーズだが、改めてE-P2とE-PL1を触り比べてみて、見た目やスペック以上の細かな違いに気づいた。両機種の発売時期は3カ月しか違わないのだが。

 しかし、必ずしも後発のE-PL1が優れているかといえばそうではなく、操作性やストロボの有無、外観の雰囲気など、好みを含めて各自が選ぶことになるだろう。どうしても譲れない機能の差がなければ、どれを買っても間違いはない。たとえ私がE-P2を買ったとしても同じ結論に至ったように思う。というわけで、今後もE-PL1を愛用してゆく所存だ。



本誌:鈴木誠

2010/6/2 00:00