オリンパス・ペンE-P1【第4回】

新ファームウェアでAFはどう変わったか

Reported by 小山安博


普段の外出には単焦点の「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」だけを装着している。レンズ交換式の意味がないといえばないのだが。コンパクトな単焦点ラインナップの拡充に期待したい

 オリンパス・ペン E-P1のファームウェアが9月半ばに公開された。2本のオリンパス製レンズに関してもファームウェアが公開されており、本体はC-AF(コンティニュアスAF)撮影時の動作改善、レンズ2本はAF動作の改善、とある。

 ちょうど本企画のためAFに関して執筆していたこともあり、早速試そうと思ったのだが……。

 E-P1のAFはコントラスト方式だが、マウントの信号接点をフォーサーズ規格の9ピンから11ピンに増やすなど、AFの高速化が図られている。そのため、暗所撮影でなければ、コントラストAFはずいぶん高速になった。位相差AFのように気持ちよくピントが合うのではなく、レンズが前後してピント位置を走査するのは仕方ないとして、それが高速化されているのでストレスは小さい。

 ピント精度についても、原理上コントラストAFの方が有利とされている。ただし、E-P1では「ジャスピン」にならない場合がたまにあり、以前から気になっていた。

 実際に試してみよう。ファームウェア更新前に、マトリョーシカを並べて撮影したのが以下の写真。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

 左がジャスピンと思われる写真だが、同じ状態で撮ったにもかかわらず右の写真はピントがどこにあっているのか分からない状態。

E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.0MB / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 42mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.0MB / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 42mm

 少しカメラを振って、1つ後ろの人形にピントを合わせてみても同じようなことが起きた。

E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.0MB / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 42mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.0MB / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / WB:オート / 42mm

 実地でテストしていても、このようにピントが微妙な例が発生。おおむねジャスピンなのだが、たまにピントが外れる場合がある。たまにとはいえ「どこにピントが合っているか分からない」状態が発生するのはちょっと弱る。

 そこで、念のためオリンパスプラザに預けてチェックを行なってもらったのだが、特に問題がないとそのまま返却されたので、オリンパスとしては標準的な動作ということなのだろう。

 さて、預けている間にオリンパスから新ファームウェアが登場。ボディ、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6のいずれもバージョン番号は1.1。オリンパスプラザから本体が戻ってきた後、早速インストールをして試してみた。

 本体よりもレンズのファームアップで「AF動作の改善」とされているので期待していたが、感覚的にはあまり大きな変化は感じない。そもそもピントが外れるシーンがそれほど多くなかったこともあって、確認が難しい部分ではある。

 下に掲載した写真は、ボディ、レンズとも新ファームウェアを適用した上でチェックしたもの。やっぱりピントが外れてしまうケースが見られる。

E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.1MB / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.2MB / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm

 いろいろと試した結果、特に苦手なのは斜め方向に被写体が並んでいる場合のように感じられた。もともとE-P1のAFポイントは、1つ1つが大きい。ピンポイントの位置にピントを合わせたい場合でも、AFポイント内に複数の被写体が混在してしまうこともあり、それでピントがうまく合わないような印象だ。同じマイクロフォーサーズ機のLUMIX DMC-GF1のように、ピンポイントでAF測距ができれば良かったのだが。この現象はファームウェアのアップデートをしたあとでも変わらないようだった。

 下がAFポイント内の別の被写体に合焦してしまった例。AFポイントを流れる水が水面にぶつかるポイントにあわせて撮影したつもりだが、右の写真はちょっと後ろにピントが合っている。

E-P1 / ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 約7.6MB / 3,024×4,032 / 1/1,000秒 / F4.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 73mmE-P1 / ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 約7.7MB / 3,024×4,032 / 1/800秒 / F4.9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 90mm

 さて、E-P1には通常の11点/1点AFのほかに顔検出AFとMFも利用できる。顔検出AFは、人の顔を検出してその位置にAF/AEを合わせる機能で、ピントの中抜け防止や逆光時の露出最適化で役に立つ。

 便利で使いやすい機能だし、ライブビューならではの機能なので人物撮影時には積極的に使いたい。ただ、顔検出の速度自体は標準的なのだが、顔を認識する精度が弱めだ。これはE-420のころからだが、ちょっと横を向いたり、カメラから離れたりするとすぐに顔を検出しなくなる。顔検出をすると画面上の顔が白枠で囲まれるのだが、その状態からシャッターボタン半押しでAFを動作させると、顔の向きを変えていないのに顔検出AFが動作しないこともあって、少し謎が残る。

E-P1のAFエリア。11点AFの中から自由な1点を選択できるが、1つ1つのポイントが大きいピントが合うとAFポイントが消えて、右上に緑の丸が表示される。顔検出の場合も同様で、どの位置にピントが合ったか分からなくなるのは残念な仕様。パナソニックのDMC-GF1も同じ仕様だが、何か理由があるのだろうか

 ピントが心配なときに役立つのがMF機能だ。ライブビューを使った快適なMFができるのがE-P1のメリットの1つだ。フォーカス設定を「S-AF+MF」にしておくと、フルタイムマニュアルフォーカスが可能になるので、AFであわせた後にピントリングを回すとMFが行なえる。

 ライブビューを生かし、MF時にピント位置を拡大表示することも可能。拡大倍率は7倍、10倍の2種類。この7倍と10倍という倍率はちょっと不思議で、その差が小さいため、2種類の意味をあまり感じない。5倍と10倍くらいがちょうどいいと思うのだが。

MF撮影時の拡大表示。こちらは10倍こちらは7倍

 拡大表示機能のおかげで、特に三脚に設置した状態でのピント合わせは完璧に行なえる。ただ、リングの反応が非常に敏感で、ちょっと触ったくらいで拡大表示されてしまうのはちょっと困る。シャッターボタン半押しでピント合わせを行った後、左手でレンズを支えるように持っているだけのつもりでもいきなり拡大表示になってしまうからだ。拡大表示になってから通常表示に戻るまで約8秒。シャッターボタン半押し状態で待つには長い。

 すぐに拡大表示をキャンセルしたい場合は、AEL/AFLボタンを押す。いったんシャッターボタンから手を離せばすぐに拡大表示はキャンセルされるが、またAFのやり直しになるので、AEL/AFLボタンを押す方がいい。ただ、AEL/AFLボタンを押そうとしてシャッターボタンから手が離れてしまう場合もある。

 そこでMFを頻繁に使うよう場合、メニューからAEL/AFLボタンの設定を「mode3」に切り替えると、AEL/AFLボタンにS-AFが割り当てられ、シャッターボタン半押しにAEL、全押しで露出になって使いやすくなると思う。この場合、親指でAFを行い、あとはMFでピントを調整し、シャッターボタン半押しで拡大表示がキャンセルされるので構図を整え、シャッターを切る、という流れになる。この設定にしておくと、カメラに詳しくない人に撮影してもらう場合にちょっと困るのだが、AFとMFを併用するには都合がいい。

メニューの設定画面からAEL/AFLモードを選択して、ボタンの割り当てを変更できるmode3ではAEL/AFLボタンでAF動作に切り替えられる

 E-P1は、基本的にはじっくり撮影するカメラだ。コントラストAFではスポーツの撮影は難しいし、連写もそれほど高速ではない。ストロボがないのはともかく、AF補助光もないので暗い環境でのAFも難しい。その点、MFも併用してじっくり考えて撮るにはコントラストAFでも問題ないし、MFも使いやすい。

 もちろん、一部のシーンをのぞけばたいていはAFでも満足いく結果になる。何より、気軽に持ち歩けるので、いつでも撮影できるというのがE-P1の本分だと思う。この気楽さは、ほかのデジタル一眼レフにはなかなかないメリットだ。


E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約7.4MB / 3,024×4,032 / 1/500秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約5.8MB / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約9.1MB / 4,032×3,024 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.5MB / 4,032×3,024 / 1/1250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約6.7MB / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約6.2MB / 3,024×4,032 / 1/200秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 42mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.3MB / 3,024×4,032 / 1/400秒 / F10 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 14mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.6MB / 3,024×4,032 / 1/160秒 / F10 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約8.1MB / 3,024×4,032 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.6MB / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.1MB / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 28mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.7MB / 3,024×4,032 / 1/25秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO1600 / WB:オート / 14mm


小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/10/22 21:50