レンズの教科書

被写体&シーン別・レンズワークの実践:ペット

自然な様子を愛らしく写し撮る

散歩の途中、飼い主同士が会話に夢中になっているときに元気に駆け回る犬たち。日本ではマナー違反となりますが、海外ではよく目にする光景です。二匹はとても楽しそうでした。素早くて動きの予測もできないので、望遠レンズで狙うのではなく、広角レンズで追いかけながら近づいて撮影しました。

35mm相当・プログラムオート・F4・1/500秒・-0.3補正・ISO100・WB:太陽光・シングルAF

1.周りの様子も一緒に切り取って臨場感を出す
2.大口径の中望遠レンズでポートレート風に切り取る
3.フットワークを生かしやすいレンズでスナップする

ペットの写真というと、室内で撮られたもの、仕草や表情だけのアップのものをよく目にします。それらの写真は被写体のとても愛らしい姿がとらえられているものばかりです。でも、屋外での自然な様子や、もっと周りの状況が写っているなど臨場感のある写真を見てみたいと思うこともあります。

スナップ感覚でアプローチしてみるのも有効です。広角レンズでフットワークを生かして思いっきり迫ってみましょう。画角が広いので、被写体に近づいてアップで狙っても、背景など周りの様子も一緒に画面に入りやすくなります。これがちょうどよい臨場感につながって効果的です。

じっとしていれば問題ないのですが、動き回るペットへのピント合わせは大変です。状況に応じてシングルAFとコンティニュアスAFを効果的に使い分けたり、顔認識AFを利用したりするのもいいでしょう。

  • スナップ:人物などの被写体の瞬間的な動作や表情を、自然な形や雰囲気の中ですばやく撮影した「スナップ写真」「スナップショット」の略です。
  • コンティニュアスAF(こんてぃにゅあすえーえふ):被写体の動きを予測してピントを合わせ続けるAFモードです。シャッターボタンを半押ししてもピントは固定されず、フォーカスエリアと重なっている部分にピントを合わせ続けます。
  • 開放F値(かいほうえふち):レンズの絞りが完全に開いた状態のF値(=絞り値)で、レンズの明るさを示す指標です。「絞り開放」と呼ぶこともあります。その値が小さいほど明るいレンズということになります。

1.周りの様子も一緒に写し込む

仕草や表情だけをアップで狙うのではなく、被写体がどのような場所にいるのか、周りの様子と合わせて切り取ってみましょう。臨場感がプラスされて、写真を見る人に撮影現場の状況などが伝わりやすくなります。

28mm相当・プログラムオート・F5.6・1/125秒・-0.3補正・ISO200・WB:太陽光・シングルAF

2.大口径の中望遠レンズでポートレート

ペットの顔だけのアップを狙うときは、ポートレート風に切り取ってみるといいでしょう。人物撮影のときと同じように開放F値が明るい大口径の中望遠レンズで、大きなぼけを生かして雰囲気よく仕上げると効果的です。

85mm相当・絞り優先オート・F1.4・1/500秒・ISO100・WB:オート・シングルAF

3.外出先で出合ったペットをスナップする

ペットを飼っていなくても、彼らを撮影する機会はたくさんあります。散歩中の犬、放し飼いの猫など、外出先で魅力的な被写体や微笑ましいシーンに出合うことがあるでしょう。標準レンズなどフットワークを生かしやすいレンズで狙うと効果的です。

50mm相当・プログラムオート・F8・1/250秒・ISO200・WB:太陽光・シングルAF

この連載は、MdN刊「レンズの教科書 撮る楽しさを味わうための写真の手引き」(岡嶋和幸 著)から抜粋・再構成しています。

本連載で紹介しているレンズ焦点域や撮影シーンごとのレンズワーク解説だけでなく、レンズ本体や表現効果の基礎知識、レンズのポテンシャルを引き出すワンランク上の使いこなしなど、全6章で構成されています。

10月7日には著者の岡嶋和幸氏を迎えた出版記念セミナーを開催。2部構成のセミナーに加え、質疑応答と懇親会が行われます。

レンズの教科書 撮る楽しさを味わうための写真の手引き(MdN刊、税別2,000円)

岡嶋和幸