交換レンズレビュー

SP 45mm F/1.8 Di VC USD

無理のない開放F値が圧倒的な描写力に繋がった

今回はニコンD810で試用した。発売は9月。実勢価格は税込7万8,420円前後

タムロンの35mmフルサイズ対応単焦点レンズ、「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」(Model F013)と「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」(Model F012)は、同社のニュージェネレーションレンズとして今年9月の発表以来注目を集めている。

先般SP 35mm F/1.8 Di VC USDのレビューを掲載したが、隙のない描写と堅実なつくりでその実力は前評判どおりのものであった。今回はもう1本のSP 45mm F/1.8 Di VC USDの実力をチェックしてみたいと思う。対応マウントは、ニコンF、キヤノンEF、ソニーA(予定)。

デザインと操作性

鏡筒のデザインは、基本的にSP 35mm F/1.8 Di VC USDと同じだ。マウント側のブランドリングは鈍く銀色に光り、本レンズのアイキャッチになっている。鏡筒右側面部に貼り付けられ「SP」と記された銀色のバッジも同様だ。フォーカスリングのラバーや、AF/MF切り換えスイッチおよび手ブレ補正機構ON/OFFスイッチの意匠などもまったく同じで無駄の無いシンプルなものである。

レンズ構成は8群10枚。そのなかには2枚のガラスモールド非球面レンズ、1枚の異常低分散レンズが含まれる。フィルター径は67mm
後玉は思いのほか大きい。ブランドリングとマウント面の間には防塵防滴用のラバーを備える

焦点距離の表示以外に異なるところといえば鏡筒の長さ。具体的にSP 35mm F/1.8 Di VC USDの鏡筒は78.3mmであるのに対し、本レンズは89.2mmと長い(いずれもニコンFマウント用の場合)。また、質量についても450gに対し520g(同)と重く仕上がる。標準単焦点レンズというよりは、中望遠レンズに準じた大きさ・重さと述べてよいだろう。

フォーカスリングの操作感も大きく変わらない。適度な重さのトルク感を持ち、回転角も似たような焦点距離を持つAFレンズのなかでは大きい。もちろん、超音波モーターによりAF合焦後シームレスにMF操作によるピント位置の微調整も可能としている。フォーカスリングの回転方向にしてもSP 35mm F/1.8 Di VC USD同様キヤノンと同じ。焦点距離が長くなった分ピントの微調整を行う機会は増すように思われるが、ニコンやソニーのデジタル一眼レフユーザーのなかには戸惑う人もいることだろう。

質感、つくりとも向上したレンズフロントキャップと同リアキャップ。メーカーロゴも新しい
AF/MF切り換えと手ブレ補正ON/OFFの2つあるスイッチは大きく操作感も良好。手袋をしたままでも比較的楽に操作できる

手ブレ補正機構はシャッタースピードに換算して約3.5段分の補正効果が得られる。SP 35mm F/1.8 Di VC USD は3段分なので本レンズのアドバンテージといえる。余談ではあるが、タムロンの関係者は手ブレ補正のことを“防振”と話すことが多い。シンプルな呼び名ながら、機構の特徴をうまく表しているように思える。

ニコンDfにSP 45mm F/1.8 Di VC USDを装着してみた。同レンズが中望遠レンズのように見える。デザイテイストの違いによる違和感はさほどない
花型のフードが付属する。このフードはSP 35mm F/1.8 Di VC USDと共通だ

遠景の描写は?

撮影時の天候は晴れ、大気中の水蒸気は比較的少ないほうと思われる。

ピントを合わせた画面中央部の描写については、SP 35mm F/1.8 Di VC USD同様開放から十分な解像感である。ビルの壁のつなぎ目や窓の桟など鮮明に描写する。絞り込むに従いシャープネスは増していき、より鮮明に。

SP 35mm F/1.8 Di VC USDと比較するとシャープネスはこちらのほうが上回るように思える。コントラストについては絞り全域で高く、いわゆる抜けのよいレンズといえるだろう。

一方画面四隅の描写については、絞りF2.8まで解像感は緩め。ただし、35mm同様に像の流れや色のにじみについては作例を見るかぎり見受けられない。絞りF4になるとエッジのキレはよくなり、絞りF5.6になると画面中央部の描写と大きく変わらなくなる。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:D810 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

単焦点標準レンズの“標準”といえば一般に50mm F1.4となるだろうが、それよりも焦点距離が短く開放値の大きい本レンズでも、不足のない大きなボケが得られる。しかもボケは極めて柔らかくナチュラル。色づきや濁りといったものが発生することがない。

合焦面から滑らかにデフォーカスになっていく様子は官能的に思えるほどで、開放絞りがF1.4でないことへの引け目は、まったく感じるようなことがない。最短撮影距離は一般的なフルサイズ対応の標準レンズとしては圧倒的な0.25mを実現。絞り羽根は9枚で、円形絞りとしている。

絞り開放・最短撮影距離(約25cm)で撮影。D810 / 1/10秒 / F1.8 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm
絞り開放・距離数mで撮影。D810 / 1/100秒 / F1.8 / -0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm
絞りF4・距離数mで撮影。D810 / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

逆光耐性は?

逆光特性については、SP 35mm F/1.8 Di VC USDと似た結果が得られた。画面のなかに太陽が入る条件でも、画面の外にある条件でも、撮影した画像に関していえば上々の結果。ゴーストについてはほとんど見当たらず、フレアも光源の周辺のみとする。eBANDコーティングとBBARコーティングというタムロン独自のコーティングが施されるが、その効果は文句ないものである。

条件によっては異なる結果がでるのかもしれないが、概ね逆光に強いレンズといえるだろう。なお、フードは花型のものを同梱するが、これはSP 35mm F/1.8 Di VC USDと同じものである。コストの問題が大きいのだろうが、可能であればより画角に合ったものを用意して欲しく思える。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。D810 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D810 / 1/640秒 / F8 / -0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

作品

ピントは右下黄色い手漕ぎボートに合わせている。絞りはF11。回折現象はわずかにはじまっているが、画面手前から奥の恐竜の形をしたボートまではシャープネスの高い描写だ。

D810 / 1/8秒 / F11 / -0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

開放F1.8での撮影だが、ピントの合った部分のキレは高い。コントラストも文句ない高さで、キリッと締まった描写である。何より合焦面からなめらかにボケていく様子は美しく感じられる。

D810 / 1/50秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO500 / 絞り優先AE / 45mm

絞りはF2.8。クセの無いナチュラルなボケ味である。色収差や解像感の低下など画面の隅々まで見受けられず精細で緻密な描写が得られる。ポートレート撮影でもこのレンズは大いに活躍してくるはずだ。

D810 / 1/80秒 / F2.8 / -1EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

最大絞り値のF16まで絞り込んでいる。回折現象は当然発生しているものの画面周辺部まで像の乱れなどなく、きっちりと解像している。このレンズの描写をフルに活かしたければ、ピントとブレには留意が必要。

D810 / 1/6秒 / F16 / -0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

感度を上げ手持ちで撮影を行っている。シャッター速度は1/50秒。手ブレ補正機構の助けもあり、ブレの発生はほぼない。前ボケについては乱れたような部分は見受けられず、素直でクセのないボケ味である。

D810 / 1/50秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO250 / 絞り優先AE / 45mm

明暗比の高い条件だが、シャドー部のディテールもしっかりと再現している。さらに画面全体がクリアで鮮明な描写である。キレキレのシャープネスではないものの、それでもピントの合った部分の解像感の高さには驚かされる。

D810 / 1/25秒 / F8 / -1EV / ISO64 / 絞り優先AE / 45mm

まとめ

先般掲載したSP 35mm F/1.8 Di VC USDに負けず劣らず本レンズも総じて写りがよい。ガラスモールド非球面レンズ2枚に異常低分散ガラス1枚を用いるとともに、無理のない開放値による光学的な優位性で描写特性は圧倒的と言ってよい。

大柄な鏡筒は敬遠する向きもあるかもしれないが、得られる描写を考慮すれば十分納得できるものだ。唯一の悩みがあるとすれば、本レンズとSP 35mm F/1.8 Di VC USDとの画角の違いが少ないことだろう。どちらが自分にとって最上のレンズであるか悩む写真愛好家も少なくないはずだ。

新SPシリーズ2本の登場は、いうまでもなくタムロンにとって新しいフェーズに入った証しといえるだろう。マクロレンズ数本であったこれまでの単焦点レンズのライナップだが、今後積極的に展開していくことは明らかである。

タムロンファンはいろいろ思惑があろうかと思うが、筆者個人として特に期待しているのが今回のレンズ2本を含む開放F1.8シリーズの構築。例えば超広角21mmや中望遠90mmがライナップされると使い回しのよいシリーズとなるように思えてならないからである。SP 45mm F/1.8 Di VC USDと SP 35mm F/1.8 Di VC USDは、そんな淡い期待をも抱かせてくれるレンズである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。