交換レンズレビュー

XF90mm F2 R LM WR

開放から滲みなくシャープな描写

今回はFUJIFILM X-T1で試用した。発売は7月。実勢価格は税込10万6,590円前後

FUJIFILM Xシリーズの単焦点レンズにおいて、焦点距離が最長となるXF 90mm F2 R LM WRが加わった。35mm判換算で137mm相当となる本レンズは、開放F2と明るい設計で、ポートレートやストリートスナップに便利な仕様だ。

レンズ名の末尾に「WR」が付き、防塵防滴ならびに-10度の耐低温構造を採用している。FUJIFILM X-T1と組み合わせれば、シーンや天候を問わないオールラウンドなシステムを構築できるレンズである。

デザインと操作性

開放F2と明るめの中望遠レンズだが、APS-C用ということもあり、約540gと軽量にまとまっている。X-T1に装着した際もハンドリングしやすいサイズ感だ。

最大径75mm、全長105mm、重量約540g。開放F2の中望遠レンズとしてはコンパクトな鏡胴だ
EDレンズ3枚を含む8群11枚構成だ。フィルター径は62mm。7枚羽根の円形絞りを採用する

フォーカスリングの幅が広く、全域に渡って細かいローレットが施してある。このあたりの仕様はXFレンズらしい高級感のある外観だ。

フォーカスリングは幅広で、シビアな開放撮影でも微調整しやすい。絞りリングも搭載する

絞りリングは1/3段刻みで、7枚羽根の円形絞りを採用している。樹脂製フードが付属し、ハレ切り対策も申し分ない。

付属の樹脂製レンズフードを装着した状態。望遠レンズはフレアが出やすいので、フードは忘れずに装着したい

遠景の描写は?

本レンズは8群11枚の構成で、うち3枚のEDレンズを配し、望遠レンズで発生しやすい色収差を低減している。絞りを変えながら実写してみると、中央部、周辺部を問わず、開放からシャープでコントラストの付き方もよい。

試写した範囲では気になるような色収差も見当たらなかった。特にF2.8以降の描写は安定感がある。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:X-T1 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:X-T1 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ボケ味はこのレンズのアドバンテージを実感できる部分だ。開放F2のボケ量の多さは無論、円形絞りによる玉ボケの美しさ、そしてとろけるような滑らかなボケが目を奪う。

ポートレートはもちろん、ストリートスナップで被写体を立体的に捉えられるのが本レンズの強みだ。ボケ方は滑らかで、合焦部からゆっくり自然にボケていく。被写体が切り立つというよりは、合焦部からなだらかにボケていくタイプのレンズだ。

最短(60cm)に近い距離で開放撮影した。豊かなボケ量に加え、後ボケの滑らかさは特筆に値する。X-T1 / 1/1,600秒 / F2 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm
遠距離の被写体に開放でピントを合わせる。開放F2だけあって、この距離でもしっかりとボケる。X-T1 / 1/1,900秒 / F2 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm
開放で遠距離にピントを合わせ、前ボケのテイストを見る。ややザワつくが、二線ボケをうまく抑えている印象だ。X-T1 / 1/3,200秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

逆光耐性は?

逆光性能は、望遠ということもあり、いくぶんフレアが多めの印象だ。レンズフードを装着した状態でも、光源を写し込むとシャドウが浮く。光源を外しても逆光ではシャドウが浮きやすく、光を読みながらの撮影が大切になりそうだ。

見方を変えると、女性ポートレートなどでやわらかい光がほしいとき、このフレアが功を奏するかもしれない。

太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T1 / 1/850秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

作品

遠方にピントを送り、手前を大きくボカす。多少二線ボケっぽい見え方だが、うまく持ちこたえている雰囲気だ。夏雲の淡い陰影の付き方が心地良い。

X-T1 / 1/4,000秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

1段絞ってスカイツリーにピントを合わせる。開放近辺でも申し分ないシャープさだ。対岸の建物全域にわたってシャープに描かれている。

X-T1 / 1/3,500秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

F5.6まで絞ると、細部まで緻密な描き方だ。レンガ1枚1枚をていねいに描き、濃淡のちがいもしっかりと伝わってくる。

X-T1 / 1/240秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

開放は自然なシャープさで、滲みがない反面、過度に硬くなることもない。背景のボケに目を転じると、その滑らかな描き方にこのレンズの利点が見て取れる。

X-T1 / 1/1,900秒 / F2 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

テールランプの近辺にピントを合わせる。合焦部から横に視線を動かすと、自然とボケていくのがわかるだろう。合焦部とボケのつらなりはなだらかな描き方だ。

X-T1 / 1/600秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

夕刻の虹を濃厚に捉えることができた。建物の右半分がストンと影になり、力強い陰影で立体的な描き方だ。

X-T1 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 90mm

まとめ

本レンズは新開発のクアッド・リニアモーターを採用し、高速かつ静粛なAF動作を実現している。試写した際もAF動作でストレスを感じることはなく、積極的に被写体を追っていけるレンズだ。

35mm判換算137mm相当という焦点距離は手ブレ補正がほしくなるが、開放から滲みなくシャープに撮れるため、薄暗いシーンでもさほどISO感度を上げずに済む。滑らかなボケ味といい、開放描写の安定感といい、光学性能の良さを実感しやすい中望遠レンズである。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp