交換レンズレビュー

EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM

侮れない描写の廉価版フルサイズズーム

今回はEOS 5D Mark IIIで試用した。発売は201412月。実勢価格は税込6万4,200円前後

35mmフルサイズフォーマットのEOSに対応する標準ズームレンズである。同社には同じ画角を持つレンズにEF24-105mm F4L IS USMがあるが、位置付け的に本レンズはその廉価版となる。

ちなみにAPS-C用のEF-Sを除くEF標準ズームは4本ライナップされているが、本レンズが唯一の非Lレンズ。さらに非Lレンズは同じ望遠ズームも1本しかなく(DOレンズを除く)、広角ズームに至っては存在しない。フルサイズ対応のズームのなかでは絶滅危惧種のような非Lレンズであるが、その描写がいかなるものか検証してみよう。

デザインと操作性

鏡筒は以前にリリースされていた非Lレンズの標準ズームから大きく変化。洗練されたシンプルなスタイルとする。フルサイズ対応の標準ズームとしては細身な鏡筒も魅力的だ。

光学系には非球面レンズ2枚、UDレンズ1枚を使用。フルサイズ機の高解像感を活かした撮影が楽しめるコストパフォーマンスの高いレンズである

ただし、距離目盛りの表示窓がないのはこれまでと同じ。花火の撮影などではマニュアルフォーカスで距離目盛りを無限遠に合わせることもあるが、そのような撮影も楽しみたい写真愛好家にとって、残念ながら本レンズは厳しいこともあるかも知れない。

テレ端の繰り出しは大きい。鏡筒先端の赤い帯は当然ないが、その分精悍な印象だ。レンズフードは同梱されない

ズームリングの操作感はこのクラスとして上々だ。トルク感がズーム全域で変化するようなことは少なくスムースである。テレ端での鏡筒の繰り出し量は多め。そのため、ズームロックを備えているのは便利なところだ。

AFについては、リードスクリュータイプのステッピングモーターによってUSMと同等に思えるほど滑らか。作動音も至って静かである。またフルタイムMFに対応しているのもうれしい部分である。

リードスクリュータイプのステッピングモーター(STM)の採用で、高速で滑らかなAFを実現する。手ブレ補正機構ISの補正効果はシャッター速度に換算して4段

フィルター径は77mm。別売のレンズフードEW-83M(税別3,300円)が用意されているのでユーザーはぜひ揃えるようにしたい。

遠景の描写は?

画像中央部部に限っていえば、ワイド端およびテレ端とも開放から十分な描写である。シャープネスはパソコンの画面で大きく拡大しないかぎり、緩さのようなものはほとんど感じられない。コントラストもズーム全域で良好だ。

1段ほど絞るとシャープネスはぐっと増してきて、このレンズの本領が発揮される。画像周辺部となると、テレ端は色のにじみがわずかにあるものの絞り開放から上々の描写。一方、ワイド端は作例を見るかぎり少々緩めで、絞り込んでも劇的には改善されない。もっともクラスを考えれば総合的に十分な描写で、そう悪い印象ではない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
F3.5
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
F3.5
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ワイド端、テレ端ともボケ味にクセなどなく素直。廉価なズームレンズでは、濁ったようなボケ味のものも少なくないが、本レンズはクリアに感じられる。

さらに合焦面からの大きくデフォーカスとなるまで滑らかにボケていき、乱れのようなものもない。テレ端の玉ボケも美しい。決して明るいレンズではないが、絞りを開いて積極的にボケを活かした撮影を楽しんでみるのもよさそうである。なお、最短撮影距離は0.4m。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約40cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/800秒 / F3.5 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/400秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/200秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
望遠端
絞り開放・最短撮影距離(約40cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/500秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
絞りF8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
絞りF11・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/160秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm

逆光耐性は?

画面のなかに太陽が写りこんで入る条件では、撮影した画像を見るかぎりワイドおよびテレ端とも、ゴースト、フレアの発生をよく抑え込んでいる。非常に心強いレンズといってよいだろう。

さらに画面のなかにある太陽を他の被写体で隠した場合、ゴースト、フレアとも皆無。いずれも、条件によってはゴースト、フレアとも発生することもあるかとは思うが、逆光に強いレンズに仕上がっている。

ちなみに、今回のレビューに際して全てのカットはフードなしで撮影を行っているが、なかでもボケ味の作例など、逆光でありながらゴーストやフレアの発生は見受けられず、満足いく結果が得られている。

広角端
太陽が直接入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/2,500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
太陽が隠れる逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
望遠端
太陽が直接入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/4,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
太陽が隠れる逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/3,200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm

作品集

焦点距離42mm、絞りF8。鋭いキレとコントラストの高さでシャキッとした描写が得られた。画象周辺部の描写もクラスを考えれば不足のないところ。ディストーションも気にならないレベルである。

EOS 5D Mark III / 1/800秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 42mm

焦点距離はテレ端105mm、絞りは開放F5.6としている。背景のボケは乱れのようなものはなく、全体的に柔らかな印象。玉ボケも美しいほうである。前ボケも乱れのようなものはなく素直。

EOS 5D Mark III / 1/400秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm

焦点距離85mm、絞りF5.6。ほぼ開放に近い絞り値であるが、シャープネスもコントラストも文句ないものである。周辺減光の発生もこの作例に限っていえばほとんど感じられない。

EOS 5D Mark III / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 85mm

焦点距離は35mm、絞りはF5.6。ピントの合った部分のディテールは上々だ。ステッピングモーターの採用で静寂性が高く、素早いピント合わせを行うが、スナップ撮影などでは心強く感じられる。

EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

焦点距離50mm、絞りF5。こちらも開放絞りである。ピントの合った部分から滑らかにボケは大きくなっていく。画面周辺部の色のにじみは弱く、作例のような条件では、気になるようなことはないだろう。

EOS 5D Mark III / 1/60秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

焦点距離は39mm、絞りはF8。キレ、コントラストも良好で、ディテールの再現性は高い。金属やレンガ壁の質感など、文句ないものである。強いディストーションも感じられず、良好な描写特性だ。

EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 39mm

まとめ

「侮れない描写」。今回本レンズの描写を検証した印象である。Lレンズの影に隠れて目立たない存在ながら、意外にも写りはよく楽しめるレンズだ。

本来、このレンズのスタンスは、フルサイズ用標準ズームでの撮影を手軽に楽しんだり、Lレンズまでの描写を追い求めていないEOSユーザーに向けたものだろう。しかしながら、同社は妥協することなくつくり込んでおり、好感の持てるレンズである。

作品撮りは大口径の単焦点レンズだが、ちょっとした撮影ではズームレンズという一過言ある写真愛好家も納得するレンズである。今後、本レンズの流れを汲む広角ズームや望遠ズームの登場にも期待したいところだ。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。