交換レンズレビュー

FE 70-200mm F4 G OSS

待望のフルサイズEマウント望遠ズームを試す

35mmフルサイズ対応Eマウント望遠ズームレンズだ。焦点距離やズーム全域でF4通しとする開放絞りから、カメラマニア風に言うと“小三元”にカテゴライズされるものである。

今回はα7で試用した。発売は2014年3月。実勢価格は税込15万4,040円前後

FEシリーズの望遠レンズは、単焦点レンズも含め現時点で本レンズが唯一。そのため注目しているα7シリーズユーザーも少なくないことだろう。なお、FEシリーズ小三元3本のうち広角および標準ズームはカールツァイス銘であるのに対し、本レンズはGレンズとなっている。

デザインと操作性

鏡筒のデザインはAマウントの白いGレンズに準じたものとする。オフホワイトの鏡筒にズームおよびフォーカスリングはブラックのラバー製。カメラ側から見て左側面にはスイッチ類が縦一列に並ぶ。

光学系には高度非球面 AA (Advanced aspherical) レンズを2枚採用するほか、スーパーEDガラス、EDガラスなどを贅沢に使用。採用。反射率を大幅低減するナノARコーティングも施される

鏡筒は一見コンパクトに思えるが、実際は一眼レフ用70-200mm F4クラスと大きさ重さは変わらない。バックフォーカスが短くできる設計の自由度の高いミラーレス用交換レンズであるため、よりコンパクトにできそうなものであるが、同社としては余裕を持たせた光学系とすることで描写を優先させた結果なのかも知れない。

アンバランスとはいえないまでも、鏡筒に対しやや大柄に思える三脚座が付属する

操作感については、焦点距離を同じとするAマウントの70-200mm F2.8 G SSM IIに準じている。動体撮影時などピント位置を固定できるフォーカスホールドボタンを備え、迅速なフォーカスを可能とするフォーカスレンジリミッターなどを配する。

さらにフォーカシングによる全長変化のないインターナルフォーカシング方式を採用。光学式手ブレ補正機構も含め充実した機能の搭載とコンパクトな鏡筒で、隙のない操作感を実現している。

ズームリングおよびフォーカスリングの操作感も良好だ。ズームリングはトルク感が変化するようなことがなく至ってスムース。フォーカスリングも緻密なピント合わせが容易だ。いずれもGレンズならではの精度の高さを感じさせるものである。

鏡筒と同じオフホワイトのレンズフードが付属。黒一色とするよりもスマートなイメージだ

遠景の描写は?

ワイド端およびテレ端とも画面中央部は開放から十分な描写だ。さらに1段絞るとシャープネス、コントラストともぐっと増し、Gレンズらしい緻密で繊細な描写が楽しめる。画面周辺部となると、作例を見るかぎり絞り開放では甘め。ただし、こちらも1段絞ると見違えるようにシャープネスが増す。特にワイド端では顕著だ。

周辺減光に関しては、ワイド端では開放絞りで強く現れるものの1段絞ると大きく解消。テレ端では絞りF5.6まで強めに現れ、絞りF8で大きく改善される。回折現象は絞りF11から見受けられるようになるので、総合的に見ればワイド端、テレ端とも描写のピークは絞りF5.6からF8あたりと考えてよい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

広角端、望遠端のいずれもボケの端に気なるようなにごりの発生はなく、さらに従来のズームレンズで時おり見受けられるごちゃごちゃと乱れるようなクセもない。合焦面からデフォーカスになるまで滑らかに変化していくボケ味も美しく、ワイド端、テレ端ともズームレンズとして素直で柔らかいボケが得られる。

玉ボケについては、濁りがわずかにあるものの気になるようなことは無い。また、円形絞りを使用しているため、絞り込んでいっても口径食の現れる画面周辺部を除き玉ボケはほぼ真円となる。なお、最短撮影距離はワイド端1m、テレ端1.5m(AF時。MF時はテレ端1.35m)となっている。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約1m)で撮影。α7 / 1/500秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 70mm
絞り開放・距離数mで撮影。α7 / 1/1,000秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 70mm
絞りF8・距離数mで撮影。α7 / 1/250秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 70mm
望遠端
絞り開放・最短撮影距離(約1.5m)で撮影。α7 / 1/400秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 200mm
絞り開放・距離数mで撮影。α7 / 1/1,000秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 200mm
絞りF8・距離数mで撮影。α7 / 1/250秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 200mm

逆光耐性は?

画面のなかに太陽が写りこんで入る条件では、ゴーストが現れている。ただし、これはどのようなレンズでも多かれ少なかれ現れるので、致し方ないところ。むしろ本レンズは少ないほうと言ってよい。

画面のなかにある太陽を他の被写体で隠して撮影したときのものは、ゴーストの発生は見受けられず、フレアについては皆無といってよいレベル。いずれもナノARコーティングが強力に内面反射を抑えているのだろう。

なお、太陽を本レンズのような望遠レンズで直接覗くと、ミラーレスといえども撮影者自身の身体およびカメラにダメージを与えることがある。そのため十分気をつけて行っていただきたい。

広角端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 / 1/1,600秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 70mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7 / 1/1,250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 70mm

作品集

焦点距離130mm、絞りはF5.6。画面中央部のキレは上々。周辺部には甘さが残る。コントラストが低いように思えるのは、若干露出オーバーのため。周辺減光は気にならないレベルだ。

α7 / 1/640秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 130mm

こちらは焦点距離122mm、絞りF5.6としている。画面中央のシャープネスは高く、立体感を感じさせる描写だ。強力な手ブレ補正機構に加え、適度な重量感のおかげで手持ち撮影でも不安に感じることはない。

α7 / 1/2,000秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 122mm

絞りは開放F4。ボケは乱れるようなことは少なく、どちらかといえばナチュラルな印象だ。この作例を見るかぎり、絞り開放での解像感も高く、色のにじみの少ない描写である。

α7 / 1/160秒 / F4 / 0EV / ISO320 / 絞り優先AE / 127mm

焦点距離はワイド端に近い84mm。絞りは開放から1段絞ったF5.6で撮影。画面周辺部のわずかな部分を除き、線の細いキレのある描写だ。Gレンズらしい優れた描写特性といってよいだろう。

α7 / 1/1,600秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 84mm

ピントの合った部分から滑らかにボケは大きくなっていく。ボケの周囲に色付きが発生するようなこともない。その柔らかいボケ味から、ポートレートでも活躍してくれる望遠ズームといえる。

α7 / 1/200秒 / F4 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 166mm

ロールス・ロイスのスピリット・オブ・エクスタシーにピントを合わせている。その下のラジエーターグリルも含め金属の質感が艶かしい。絞り開放での解像感およびコントラストは文句ないものだ。

α7 / 1/500秒 / F4 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 162mm

まとめ

いわゆる“写りのよいレンズ”である。前述のとおりFEシリーズ唯一の望遠レンズであることから、現時点ではα7シリーズユーザーはAマウントを除いて本レンズしか選択肢はないが、しかしながら買ったことを後悔するようなことは決してないはずだ。

ちなみに廉価なFEシリーズの望遠ズームを出す前に本レンズをリリースしたのは、本格的に同社のデジタル一眼の軸足がα7シリーズとなったことの現れであることはいうまでもない。現在、他の小三元レンズとともに人気を博しているが、大口径の大三元レンズの登場も期待して止まない。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。